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9話 アップデート



 10分程乗っていたリニアが止まり、降りるとそこには長い通路があった


 コンマに先導されて通路を進でいく通路は非常灯だけで照らされた薄暗い通路だった


 通路の途中でコンマが止まり壁を向く、そこから切れ目が現れて新たな通路が出て来る


 それを何回か繰り返し迷路のように進んで行くと機械が並べられた部屋に着く


「ここはなんでござろうか、ぱっと見、割と年代物に見える機材ですな」


 辺りを見回すがピリオドにはさっぱりわからなかった


 コンマはそのまま壁際にあった台座に着地する


 コンマが着地すると今まで非常灯だけだった部屋の明かりが付くのと同時に周辺の機器が動き出す


「コンマ!?」


 ピリオドは声を掛けるが反応は帰ってこない、拙者も警戒して構えるがコンマが着地した台座からモニターが出て来る


 そのモニターにはインストール中と表示されていた


「これは目覚めた時にコンマ殿が襲い掛かってくるパターンなのではござらんか?映画でよくあるやつでござるよ」


「怖い事言わないでよ」


「一応調べて見るでござる」


 拙者はリュックから端末を取り出してコンマが着地した場所の近くに接続する


「むむ、どうやら害のあるものではなくアップデートプログラムをインストールしているようでござるがもどんなアップデートかは終わってみないとわからないでござる」


「大丈夫なの?」


「たぶんとしか言えないでござる、一応色々見てみるでござる」


 不安になりながらピリオドはコンマを見守る


 拙者が「これは」「やや」など時折漏らす声にさらに不安になり「どうしたの」と声を掛けるが「問題ないでござる」で流されるピリオドは不安の中インストールが終わるまで待つしかなかった


 コンマの前にあった画面が消えインストールが終わるとコンマが浮きピリオドの前までくる


「先輩お久しぶりです元気してましたか?」


「コンマ?」


 コンマの喋り方が滑らかになっていた


「はい、コンマですよ?どうかしましたか先輩?」


「何があったの?どうなったのか説明して」


「えーっとですねぇ」


 コンマが説明してくれるこの施設の周辺にコンマとピリオドが揃って来ると案内プログラムが発動する、そしてコンマに人格プログラムをインストールをする用に設定されていたらしい


「コンマは?コンマなの?」


「そうですよ、元々人格プログラムがインストールされる予定だったらしいんですけど遅れたらしくって今インストールされたみたいです。だから先輩と一緒にいた時の記憶はありますよ」


「それで私はなんで先輩なの?」


「えーっとですねぇ……なんでですかね?そう呼ぶように本能が言っています」


「………」


 ピリオドとコンマを沈黙が包むが拙者が変わりに答えた


「たぶんでござるけど、人格プログラムに記憶はないので、今のコンマ殿の記憶と合わせてピリオド殿は先輩に当たるとコンマ殿が認識したので先輩と呼ばれていると思うでござるよ?」


「そんな感じですよ流石変態さん!」


「拙者は変態なのでござるか」


「はい、油断していたら私も襲われるかもしれないので警戒はしていますよ」


「さすがの拙者も球体に欲情はしないでござるよ」


「一つ思ったんだけどこれアップデートじゃなくてダウングレードなんじゃない?コンマがポンコツになったような気がする…」


「ポンコツは先輩の専売特許でしょ私は史上最高のAIですよ」


 ここからはもうピリオドはコンマに突っ込む事を諦めた


「ところでここはなんの施設なの?」


「えーっとですね簡単に言うとAIの開発施設です、詳細はわかりません私もここまでの地図しかインストールされてませんし知りたいならデータ抜いてみます?」


「おねがい」


 そこからコンマと拙者のデータ収集が始まった、やる事がないピリオドは部屋をうろうろしているだけだった


 座っていた拙者が立ち上がる収集が終わったようだった


「結論からいいますとここはもぬけの殻でござるなコンマ殿はどうでござった?」


「そうですね、特に必要と思われる情報はなかったですね、あったのはここに居た人の趣味のメダカの観察日記と昔の漫画データとこの施設の管理データくらいですね」


「管理データって重要な物じゃないの?」


 コンマによると管理データで重要と思われる物は無かった。出入管理は50年前に一度削除されていてそれ以降はピリオド達が入ってくるまで記録はなし、他にあるのは個人用のメダカの飼育日記と漫画データと消費電力の管理データだけだった、その消費電力も施設の規模にしては非常に小さくピリオド達が入るまでは一般家庭程度だった


「コンマって50年以上前に作られたの?」


「コンマ殿が作られたのがいつかはわからんでござるが、AIの開発が始まったのが50年以上前という事は確実ですな、元々コンマ殿に搭載する予定だったのか、コンマ殿をAIに合わせて作ったのか探るには情報不足でござる」


「先輩よりは年下ですよ私後輩ですから」


「それはコンマがそう思ってるだけで実際は違うかもしれないでしょ」


「後輩なんだから歳下なんですぅ」


「まま言い争いはそのくらいにして、消費電力から何か追えないか探ってみたでござるが自家発電らしく料金当はかからないようになっていたでござる、水も地下から組み上げてこの施設で処理してそのまま放流していたようでござる。分るのは完全に独立した施設であるという事と規模が大きいという事だけでござった」


「ここに居てももう分かる事はない?」


「ないですねぇ」

「ないでござるなぁ」


 一人と一機が同時に答えるとピリオドはがっくりと肩を落とした、このままここに居ても何もなさそうなので一行は大人しく帰ることにする


 車とバイクまで戻って来るとピリオドはコンマをセットしてバイクに跨りジェネレーターを起動する


 拙者は背中に背負った荷物を丁寧に片づけている、そんな拙者をバイクから眺めながら潔癖症も大変だなと思っていると


「先輩、敵です、ミサイル来ます」


 コンマが知らせて来る、即座にバイクを発信させて拙者を強引に掴むとミサイルが当たるギリギリで拙者を助け出す


「ほえぇ?」


 拙者が変な声をあげるがそれに付き合っている暇はなかった


 拙者の車にミサイルが着弾して爆風が巻き上がる


「ベルトして捕まってて」


 拙者を後部座席に移して座らせる


「コンマ固定して」


「了解です、変態さんキツくなるけど我慢してね」


 後部からぐえぇっとカエルが鳴くような声が聞こえてくるベルトはしっかりと拙者を締め付けて固定する


「数は?」


「不明機15です、光学熱源迷彩で認識は出来ませんでも足は速くなさそうなので今回は振り切れると思います」


「わかった」


「高度を上げ過ぎないでくださいね先輩、ミサイルの的になります」


 ピリオドは必死に敵を振り切ろうと加速していく


「攻撃来ます」


 さすがに今回は普通の銃撃をしてくる事はなくミサイルだけで攻撃してきた、ピリオドは道から外れ擁壁(ようへき)を登り木のスレスレを走る。ピリオドはぶつかる寸前で木を避けるが小回りの利かないミサイルは木に当たり爆風が土と木片を巻きあげる


「ミサイルなら弾切れも早いはずチャフを撒いてこのまま避け続けるよ」


 コンマが指示通りチャフを射出するがバイクのスピードは思うように上がらなかった、山道でカーブが多い事と後ろに乗っている拙者をどうしても気遣ってしまうためだ


「次弾、来ます」


 また同じように木を使い避けていくピリオドだったが


 さすがの敵も3度目には攻撃パターンを変える今度は一斉砲撃でピリオドを狙ってきた


 そんな中、生身である拙者は限界にきていた。胃からの逆流に必死に耐えていたがそれも限界を超える


 それがたまたま一斉砲撃のタイミングと重なり後ろから追ってくるミサイルに拙者の嘔吐物が襲い掛かる。帰りでも水とエネルギーとなる食べ物を摂取していたので拙者の嘔吐物は大量と呼べる物だった


 嘔吐物の掛かったミサイルはその温かさを人と検知してその場で爆発する


 運のいい事に一斉砲撃のタイミングと重なった為、次々と誘爆してくミサイルの後ろを着いて来ていたであろう不明機も爆発に巻き込まれたようだった


「これが新兵器変態チャフ」


 コンマがふざけて言う


「こらコンマ、そんな事言っちゃだめよそのおかげで助かったんだから。ごめんね」


 そう言って拙者を見るが拙者の意識はすでに無くなっていた


 拙者に申し訳なさもあるが早くこの場を去りたかったピリオドはそのまま速度を上げてバーへ帰り着いた

※ミサイルの大きさは殺虫剤の缶程度ですキンチョールとかアースジェットとかあのくらい


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