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6話 新型の拙者と子守歌



 マスターが潰れていた次の日からピリオドは多忙を極めた


 人目に付かない仕事は普段の運び屋に比べ単価も安くなるので毎日2・3件休みなく掛け持ちでこなして行く


 そんな状態であっと言う間に2週間が経った


 オヤジさんからの連絡で工場へ向かうとトレーラーが止まっていた


 オヤジさんの言われるままにトレーラーに乗り込む今日は事前に風呂には入っていてくれたみたいだ。1時間半ほど走った頃にボロボロの空港跡地に着いた


「100年ほど前に潰れた空港だ、安く借りれて人目に付かないのはここしかなかった」


 オヤジさんのトレーラーの荷台を操作して地面に下ろし中に入ると台車を押して新しいバイクを持ってくる


 ボディは黒だが光が指すと少し赤っぽくなるジェネレーター類は緑でとても綺麗なバイクだった


「それじゃ軽く乗ってみろ」


 言われた通りにバイクに跨りコンマをセットして火を入れる。緑色だった部分が蛍光色に光始め車体が浮く


 それから滑走路を軽く流していく一回りしてオヤジさんの元へ戻るとチェックが入る


「違和感はないか?」


「今の速度じゃ特に感じないよ」


「まぁそりゃそうか、よし次は3速で引っ張ってみてくれ」


 それから不具合が無いかを確認するように色々なテストをこなして行く。2時間ほどテストを重ねて不具合が無い事を確認すると


「それじゃいよいよ全開走行するぞ」


 スタート位置に着いてピリオドはアクセルを一気に開ける。人では到底耐えれない重力加速度がピリオドに掛かり6000mの滑走路の内計測区間である3000mを7.5秒で駆け抜けたその後旋回してピリオドはオヤジさんの元へ戻る


「どうだった?」


「時速1440だマッハは超えたな次はフルブレーキのテストだが本当に防具はいらねぇか?」


「大丈夫」


「んじゃここに来たらフルブレーキしてくれ」


 オヤジさんは滑走路にあった線の前に立つ


 ピリオドはスタート位置からオヤジさんまでフル加速で向かう途中で風の壁を突き破りソニックブームが出る。オヤジさんの前を通過すると車体を起こしウィリーをして全力のブレーキをする。加速時以上の重力加速度がピリオドにかかる。噴射口が全て前面に向き速度を落としていく制動距離は200mほどだったがその軌跡を見て唖然とする、そこには旧式で弱いとは言え人口の道が150mに渡り地面がえぐれていた


「200mか、まぁまぁだな異常はないか?」


「右のステップがちょっとグラつくそれと道が」


「あぁちょっと待ってろ応急処置するから、道は気にしなくていいどうせ解体予定らしいからな。ステップは来週までには丈夫にしとく」


 そのままテキパキとステップを直していくと、オヤジさんは何かを着る


「おやじさん何してるの?」


「あぁ?耐Gスーツ着てるんだよやっぱり自分の作った物は乗ってみないとな?」


「えっ?乗るの?」


「あたりめぇだろ安心しろタンデムで俺は後ろだから事故る心配はない」 


 オヤジさんは後部に跨りシートと自分を固定していく


「それじゃ頼んだ」


 ピリオドは仕方なく運転をする


「おぉやっぱりいいなこいつはそれにこの加速が…」


 オヤジさんは加速を始めて3秒ほどでブラックアウトした


 目を覚ましたオヤジさんは気合でバイクをトレーラーに乗せて固定して帰り支度を終える


「嬢ちゃん帰りは念の為に運転頼んだ」


「わかった」


 疲れていたのだろうオヤジさんは帰り道で10分も経たずに寝てしまった


 帰り道オヤジさんが横に居るのも忘れてピリオドは自然と鼻歌を口ずさんで居た


 工場に着くと眠っていたオヤジさんを揺すり起こす


「おやじさん着いたよ」


「ん?あぁ着いたか、たまには子守歌聞きながら寝るってものいいもんだな」


 今まで寝ていたのが嘘のようにオヤジさんは動き出す、鼻歌を聞かれて恥ずかしく思ったピリオドは少し赤くなる




 テストが終わった次の日にはピリオドは仕事を求めていつものバーへ来ていた


「仕事がないってどういうこと?」


「そのまんまだよこれが今のピリオドに任せられる最後の仕事だ、というかこの2週間の仕事も結構苦労して取って来たんだ、早く足を直してもらう事だな」


 マスターはカウンターの下から小包を取り出すとピリオドに渡す


「今回は配達?中身は?」


「普通は中身を聞かないもんだぜ?」


「爆発物だと嫌だもの」


「非合法のフィギアだとよ」


「何それ?」


「ドエロイ奴だ」


「うえぇ」


 嫌そうなピリオドに仕事は仕事だと言い含める


「普通の宅配でもいいじゃない」


「傷が着くのが嫌らしい。丁寧に運んで欲しいんだそうだ」


 マスターは目的の場所までの地図をピリオドの端末コンマに送った


 目的の場所へ着き部屋の番号を呼び出す


「安心と安全のスマイル運輸です」


「あ、はい…」


 小さく籠った声で男の返事が帰ってくる


 マンションの扉が開き男の部屋へ向かう


 男の部屋のインターフォンを鳴らすと小太りの男が出て来た


「こ、この上に荷物を…」


 男に言われたまま荷物を台の上に乗せると、レーザーが照射される


「ご、めんね、ぼ、ぼく潔癖なんだ…えっ?」


 その台は殺菌用の装置だった。男は消え入りそうな声で画面を見ながら疑問を浮かべるが、中身が中身だけに早くここから去りたいピリオドは受け取りウィンドウを出す


「こちらへサインを」


 サインを書き終わった男は荷物を投げ出しピリオドの手を握る


「き、きみ…」


 急な事に驚いたピリオドはその手を払いのけ「受け取りサインありがとうございました」と言ってその場を立ち去った


「うへぇ」


 バーへ帰るとマスターがニヤついて聞いてきた


「どうだった?」


「手を握られて気持ち悪かったから帰って来た」


「そのまま連れ込まれれば話は早かったんだがな」


 ニヤリと笑うマスター


「私を売ったの?」


 怒気を込めカウンターを叩きマスターに詰め寄る


「おいおい、俺は従業員には優しくて頼れるマスターだぞ?その大切な従業員を売った事なんて数回しかないぞ」


 マスター何食わぬ顔をしては答えた


「それで今回は私を売ったの?」


「ピリオドお前アンドロイドに詳しいやつ探してたろ?今回の配達先がそうだ顔繋ぎとあいつのテストだ。ピリオドがアンドロイドと気づくならよし気づかなければ別の適任者を探そうと思ってた。あいつの性癖は人形とかアンドロイドだからな、まぁこうなるだろうとは予想してたがな」


「性癖はあれだがあいつは無害だ、あいつから連絡があってこっちに向かってるらしい座って待ってろよ」


「嘘だったら腕と足の全部もらって行くからね?私にとっては人の腕も虫の足も引きちぎるのに大差はないのは知ってるよね?」


「怖い事言うなよ…本当に思春期の娘は難しいぜ」


 マスターが顔を若干引きつらせた、そのままマスターから離れた位置に座り言われたままに先ほどの男を待つ。バーに着いてから10分もしないうちに先ほどの男が店に大慌てで入って来た


「ママッマ、」


「俺はお前のママじゃねぇぞ」


 いつもの死んだ目をさらにどんよりさせたマスター


「そんな事はどうでもいいでござる、先ほどの彼女はもしかしなくてもアンドロであろう?先の話で見てほしい子がいるといったのは彼女の事でござろう?」


「興味が出たみたいだな、その彼女だ」


 カウンターの端に座っていたピリオドをマスターが指さした


「でゅっふ先ほどは失礼しましたな拙者は……名はここでは名乗らぬ方がいいのであろうから拙者にしとくでござる、貴女が拙者に見てほしいアンドロであるな?」


「・・・」


 ピリオドは返す言葉が見つからなかった


「心配はござらん先ほどは人間だと思ってちゃんと喋らなかったのでござるよ、拙者は人間が嫌いでござるゆえ」


 ピリオドは黙ってマスターの方を顎でさす


「あれは人間ではござらんよ腐った魚でござるよあの目は人間にはできんでござる」


「おい」


 思わぬトバッチリを受けたマスターはツッコムが拙者はそれを無視して話を進めていく


「それで何を聞きたいのでござるか?貴女に合う新型のパーツ?それともどこか機能をアップグレード?」


「ピリオド」


「ピリオドとは?」


「私の名前、貴女じゃ気持ち悪いからピリオドと呼んで」


「りょでござる、してピリオド殿は何をご所望で?」


「私をどこの会社がなんの目的で作ったのかを知りたいの」


「それではまずシリアル表示を見せてもらっても?」


「信用していいの?」


 マスターに視線を向けて確認するがそれを無視して拙者は言う


「拙者、人に厳しくドールとアンドロイドには優しくが信条でござるゆえ」


「だそうだ」


 マスターは一応信用しているのでピリオドは拙者の言う通りの情報を表示した

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