30話 オメガ・アクトリアスの消滅
アクトリアスからメッセージが届いた翌日待ち合わせの場所に向かう
待ち合わせ場所は人気のない海岸だった
警戒しながらその海岸に向かうと月明かりに照らされたアクトリアスが立って海を見ながら待っていた
「来たよ」
声を掛けるとアクトリアスが振り向き笑顔を見せる
「お久しぶりですね、お呼び出しを受けて頂いてありがとうございます」
「なんの用?」
「少しお話をしたくなったんですよ」
「いきなり襲って来るとかじゃないよね?」
「それがお望みでしたらそうしてもいいですけどね、今から襲った方がいいですか?ウフフ」
「やめて…」
そう笑った後にアクトリアスは海に向き直り服が汚れるのも気にせずに腰を下ろした
「ピリオドさんも座りませんか?」
「服が汚れるから立ったままがいい」
「たまには汚れるのもいいものですよ」
アクトリアスは少し寂しそうに笑う
「それで本題は?」
「先ほども言った通りお話をしに来たんですよ」
「本当にそれが目的で呼び出したの?」
「そうですよ、誰かとお話しているのが楽しいと感じたのはピリオドさんだけですよ」
「今まで襲われてた人にそう言われてもなんか複雑」
「ウフフ、そうですよね。でもこれが今の私の嘘偽りない気持ちですよ、それよりピリオドさんは昨日行っいた場所で何かありましたか?」
「隠す事じゃないし言っとけばもう狙われないかもしれないから言っとくけど私はアヴィじゃなかったよ」
ピリオドは昨日起こった事を掻い摘んで話す
「そうですか、私の勘違いだったんですね」
あえてピリオドはアヴィの後継機かもしれないという事は伏せて話していた
「だからもう狙わないでくれると助かるな」
「どうしましょうか、ピリオドさんに興味があるのは本当ですしウフフ」
「勘弁してよ…」
「そうですね、今日はお呼び出しに応じて頂きましたしピリオドさんを狙うのを中止にしましょう」
「自分で言っておいてなんだけど本当?」
「ええ本当ですわ、ワタクシ嘘はつきませんよ」
今までと違うアクトリアスの言動を受けてピリオドは思わず聞いてしまう
「なんかあったの?」
「大した事はないんですけどね、ピリオドさんの報告も聞きましたしワタクシも報告しておくべきでしょうかね」
それから少しの沈黙を挟みアクトリアスはゆっくり話す
「いつかは…来るのは…わかっていたんですけどね。本体に戻る事が決まりました」
「それは…」
それは死ぬ?処分?破棄?続く言葉のどれを選べばいいのかわからなくなったピリオドは黙ってしまった
「10年長かったような、一瞬だったよな気がします、でもピリオドさんを見つけてからは面白かったですよ」
少し俯いて喋るアクトリアスはその姿が自分ではないと思ったのか姿勢を正した
「ですからピリオドさんを狙わないと言うより、もう狙えなくなってしまうので中止ですよウフフ」
「それはアクトリアスはいなくなるの?」
少しの時間で考えた言葉だった
「いいえ私の意識は本体に合流しますし、体は元の持ち主に返しますよ、もちろんこの10年メンテナンスには気を付けていたので10年前と姿は変わらないと思います、健康に関しては以前よりいい環境にしておきましたし」
自分の美しさを誇る様にアクトリアスは答える
「合流した後の意識はどうなるの?」
「どうなるんでしょうね、元々はワタクシも本体も同一個体なのでそれほど本体に変化はないと思いますよ、ピリオドさんと出会ったという違いがあるくらいだと思います」
平然と答えるアクトリアスだが本当にそう思っているならわざわざ声をかけてこないと思ったピリオドは慰めるつもりがあったのかはわからないがアクトリアスに提案をする
「よしそれじゃぁ遊びに行こう、最後なら思いっきりパーッと遊ばないとね、どうせ今までそんなに遊んでなかったんでしょ?」
ピリオドも遊び始めたのは最近だが、遊んでいない頃には景色が灰色だった気がする、アルファに誘われて色々な楽しみを覚えて世界が色づいた気がしたのでピリオドはアクトリアスを遊びに誘った
アクトリアスを立たせて手を引っ張りバイクまで連れて行くとヘルメットを渡し後ろに乗るように言う
後ろに乗ったアクトリアスだったがその乗り方が横座りで乗るのでピリオドは困ってしまう
「その乗り方だと危ないできれば跨って欲しい」
そう言った物のアクトリアスはドレスのタイトロングスカートなのでそのまま乗るとパンツが丸出しに近くなる、それはまずいと思うピリオドだったがアクトリアスはバイクを降りてスカートの横を割きスリットを作った
「これで跨れますね」
「いいの高そうなドレスなのに」
「せっかくのデートのお誘いを断るのに比べればこのくらい安い物です」
今までどこか寂しそうなアクトリアスだったが少し元気になったようだった
それを見て出発しようとするがコンマがメッセージを送って来た
《監視用のドローンがいるようですどうしますか?》
ここでアクトリアスを疑うのは違うと思ったピリオドは素直にアクトリアスに聞いてみる
「監視用のドローンがいるみたいだけど安全?」
「あぁワタクシの体調を管理しているドローンですね、デートに連れて行くのは無粋でしたね少しお待ちください」
アクトリアスはそう言うとドローンを呼び出し、少し連絡が途絶えるが心配するなと伝えてドローンを追跡してこないようにする
二人でバイクに乗り少し進むとアクトリアスの言葉通りどうりドローンは付いて来ていないようだった
「前回も思いましたが優秀なバイクさんですね」
そう言ってバイクを撫でるアクトリアスだったが、それが不満だったコンマはピリオドに不満のメッセージを送った
《機動力は確かに優秀ですけどそれ以外は私が優秀なんですよ》
その抗議にピリオドはコンマをポンポンと撫でるだけだった
アクトリアスを後ろに乗せてまず向かったのはバーだった
いつもの様にマスターがカウンターでグラスを磨いていたが、ピリオドが人を連れて来た事に驚いてグラスを落としそうになっていた、しかしすぐに冷静さを取り戻し飲み物を用意してくれた
「お値段のするものじゃないでしょうけれど、とてもおいしいですね」
そう言ってニコニコしていたアクトリアスだったがマスターが用意してくれたのはこの店でも結構高い方のお酒だったが本当の高級酒を飲みなれているであろうアクトリアスにはリーズナブルに感じたらしい
そして少ししてから今日はいないと思っていた拙者がバックヤードから出て来る、珍しく店で仕事をしていたようだったがアクトリアスを見て驚いていた
「ピリたん本拠地ともいえるこの店がばれてしまってもいいのでござるか?」
その拙者に大丈夫と言ったが
「実はこのお店一度お伺いしたいと思っていたんですよ」
拙者にウィンクをしながらアクトリアスがそう返すと拙者が大量の汗を掻く
「店の場所バレていたんでござるか?」
「はい、関係のない人を巻き込みたくなかったので見るだけでしたよ」
「拙者は巻き込まれたでござるよ?」
「あらあなたは関係のない他人なのかしら?ウフフ」
そう言われると拙者も返す言葉が見つからずタジタジになっていた
その後お酒も進みピリオドが歌うと
「ワタクシはアルファの歌よりピリオドさんの歌のほうが俄然素敵だと思いますよ」
と褒めてくれた、その後元々アルファから分離したオメガからさらに分離したアクトリアスなので歌もいけるのではと一緒に歌ってみたが歌は得意ではないようだった
ピリオドが歌いそれに合わせて拙者がヲタ芸を披露するとそれに興味を持ったアクトリアスが一緒に踊ると言う苦笑いをするしかない場面もあったが楽しい時間はすぐに過ぎて行く
「こういった事もやってみると楽しい物ですね、もう少し早くやってみるべきでした」
アクトリアスは本当に楽しそうにバーを満喫していた
その後酔い覚ましにバイクに乗せて色々とドライブをした
「最初にアクトリアスに会った日はボロボロになって朝日を見たけど、こんな風に一緒に朝日を見ることになるとは思わなかった」
「そうですね、ワタクシもこんな風にピリオドさんと楽しく過ごす日が来るとは思いませんでした。運命があるとすれば面白い物ですね」
そこからは沈黙も多くなったが二人で朝陽が昇るのを見守った
そして別れの時間が来てアクトリアスが言う
「私の人生は10年程でした、今日ピリオドさんと一緒にいてこの10年が確実に楽しかったと思えました、ピリオドさんもこれから色々経験すると思いますが楽しくない事も最後には楽しくなるよう自分の思うがままに生きてください、少しだけですが人生の先輩からのアドバイスですよ」
そう言うとピリオドの言葉を待たずにアクトリアスは去って行くその背中は燐として輝いて見えた
ちょっと体調が崩れたので5月中はお休み次回更新は6月から




