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28話 自我の始まりを変えろ



 自我の始まりを変えろ拙者が言った言葉を思い出すのに時間かかったピリオドだった


「忘れてるでござるな、アルファオメガ・アヴィを作った人の子孫が残した言葉でござるよ」


「もちろん覚えてたよ」


 拙者が一瞬疑うような目線が見えた気がしたピリオドだった


「まぁいいでござる今日の本題は本当はこっちでござるよ、もちろんピリたんの歌も本命ではござるが」


「それで何かわかったの?」


「自我の始まりを変えろ、まだ予測の段階でしかないでござるが多分アンとイドが絡んで来るでござるよ」


「なんで?」


「アンは単純でフランス語の1の意味のアンでござる強引に始まりと捉える事もできるでござる、次にイドでござるが精神分析の用語で自我・超自我・イドの3つからなる人格構成する領域でござる、これも少し強引でござるが自我をイドと結びつけることができるでござる。そしてアンとイドは一般的には今のアンドロイドの始祖と言ってもいいでござる。なので何かしらを知っている可能性は大いにあると思ったでござるよ」


「でも前回行った時は特に何も聞き出せなかったよ?」


「それはプロテクトでもかかってるんでござろう、二人の何かしらを変えると道が出てくるようになってるんではござらんか?」


 拙者の言い分は多少強引には感じたが他に手がかりがない為にアンとイドに連絡を取ってもう一度会う事なった


 アポから数日後アンとイドの事務所に来たピリオドと拙者は前回と同じ部屋に案内された


「それでご相談というのは?」


 男性型のアンが開口一番そう聞いて来た


「えーっとアンさんとイドさんはアルファオメガ・アヴィの事を本当に知らないのかという確認と、自我の始まりを変えろと言う言葉を聞いた事はないかという事を聞きに来ました」


「アルファオメガ・アヴィについては私達と同世代くらいだという事くらいしか知りませんよ、その言葉も残念ながら聞いたことはありません」


「そうですか」


「拙者はその自我の始まりを変えろという言葉が二人の事を指しているのではないかと思っているでござるよ」


 それから拙者はさきほどの理論をもう一度説明した


「その理論で行けば確かに私達が怪しいですね、ですが私達には何もわかりません仮にプロテクトがあるとしても解く方法がわかりません。お力になれずに申し訳ない」


 完全に行き詰ってしまった感がその場に流れていたがコンマの一言で変わる


《先輩試したい事があるんですけどいいですか?》


 コンマの提案はアンとイドをスキャンさせて欲しいという事だった、二人に確認を取りスキャンを実行してみると


《先輩ありました、人格プログラムの中にブラックボックスになっている部分があります》


 それを二人に説明するとそのまま解析してほしいと言うのでコンマと拙者が解析するがその場ですぐに分かる事はなかった


「やっぱりそんな簡単にはいかんでござるな、しかし時間をかけてれば何かわかるかもしれんでござるな」


「何か分かればその時には是非私達にも教えて頂きたいです、ブラックボックスがあるとは思ってませんでした」


「そうでござるな今のアンドロイドのひな型と言われているお二方にブラックボックスがあるほうがおかしいでござるしかし何故今まで気づかなかったんでござるか?」


「それはお恥ずかしながら今は議員等をやっていますが本業は会社経営です。会社を作ってから体のメンテナンスしかしていないのです。人格プログラムに不調が出たことも無いですし当時私達を作った技術者達はもう亡くなっています。かつて私達を作った研究所だった場所も建て替えられて今はこのビルになっていますのでメンテナンスがお座なりになっていたんですよ。ですが当時のデータがまったく残っていないわけでもないのでお探しして送りさせていただきますね」


 結局その日は何もわからなかったので帰る事にした


 後日拙者とコンマが送られてきた資料と共に人格プログラムの解析を始める


 送られて来た物は研究者の当たり障りのない経過報告書と手書きされたすごく汚い字の日記だったその日記を見た瞬間にコンマが


「これを解析するくらいなら先輩と同性能のアンドロイドを1から作った方が早いです」


 と根を上げるほど汚い字だったからだ。その中身は日記と言うよりはメモ書きで普通に読めた文字があっても続く文章はそのページの一番下に書いてあるような暗号に近い物になっていた


 仕事が終わるバーでコンマと拙者がお互い解析してきたデータの意見交換をするそんな日々が2週間ほど続いた


 解析の間に疲れたと言ってピリオドに歌を強請る拙者とコンマだった何も出来ないのを心苦しく思ったピリオドは出来立てのステージで何回か歌う事になった


 拙者とコンマは歌で騒ぐがマスターが毎回ちゃんと聞いていてくれていたのが嬉しかった。後でバンマスと歌った映像を共有していると聞いて恥ずかしくなったピリオドだった


 そして二人の解析の結果が出る


「これで間違いなさそうでござるな」


「そうですね、たぶん間違いないでしょうアンさんとイドさんにメッセージ送りますね」


 二人で話を進めていたのでピリオドが結果を聞く


「それで結局どうなったの?」


「解析の結果はですねブラックボックスの中はわかりませんがどうやら残された資料によるとアンさんとイドさんの人格データと入れ替える事が鍵みたいなんですよね」


「そんな事出来るの?」


「普通はそのまま上書きされてしまいますがお二人は特殊なのでどうやら大丈夫なようなんですよ」


「そのようでござるなしかしこんなプログラムを考えていたとは二人を作った技術者は紛れもない天才でござるな」


「天才ですけど底意地の悪さを感じますね、きっとこれ作った人は性格悪いですよ。まったく親の顔が見てみたいものですね」


 不満を露わにしたコンマを解析が大変だったんだと思いピリオドは慰める


「そんな事じゃ満足しませんよ、今度はこの曲を歌ってくださいそしたら私は満足です」


 頑張ったコンマに出来うる限りのお礼をしようと思ったがリクエストしてきた曲はとても可愛らしい物だったそんな曲を歌った事のないピリオドは顔を赤くしながらも歌った




 アンとイドに連絡も取れ二人の居るビルに向かう、二人と合流して経緯を説明する


「何が起こるか分からないから嫌だったら断ってくれていいからね」


「不安がないと言えば嘘になりますが問題ないんですよね」


「現段階ではやってみないと分からないとしか言えないでござる、しかし解析の結果人格を入れ替える事を前提とされて設計されているようでござるよ」


「わかりました、しかし少し時間を下さい、今の仕事を何があってもいいように後任に引き継ぎますので」


 二人の意思を確認したピリオドはそれから1か月程運び屋の仕事を続けていた


 その間にバンマスの勧めもあり、小さなライブハウスで歌う事も何度かあった

 


 二人が仕事の引継ぎも完了したと連絡があったのでビルに迎えに行く、先導でバイクに乗ったピリオドと自動追尾に設定した拙者の車にアンとイドを乗せて目的の場所へ向かう


 二人を車に乗せた拙者はアンとイドにこれから向かう場所の説明をしていた


「これから向かう場所は昔放棄された施設でござる、そこは完全独立した施設で機能自体はまだまだ生きてるでござる、二人のプログラムを入れ替えるにあたり普通の設備では入れ替えが出来ないとわかったので二人を作った研究者が残した日記に書いてあった場所でござるそこをたまたま拙者達が知っていたのでそこへ向かっているでござるよ」


「よくあれが読めましたね」


 研究者の日記を読めた事に感心したアンとイドだったそして拙者が説明した場所はかつてコンマがアップグレードした場所だった


 二人を連れて入り口付近に着く、前回と違い拙者も体力をつけたのか前回ほどバテてはいなかった


「こんな所に施設があるなんて信じられませんね」


 イドがその場の感想を言う。普段はアンを前面に押し出して後ろで控えているイメージが強いイドだが仕事を後任に引き継いで肩の荷が下りたのか遠慮なく喋るようになっていた


「ここから入るよ」


 2本の木の間のエレベーターに乗ると前回と同様にリニアに乗った


「地下にこのような施設があったとは驚きです」


「実はでござるなたぶん二人が作られたのはここだと思うでござる、二人を作った研究者が残した日記に何気なくかかれていた施設の感想がここと一致するでござるよ、その後移動してビルの前身の建物で完成はしたようでござるが」


「そうなんですか、それではある種の里帰りですねわくわくしてきました」


 これから死地に向かうような表情のアンとは違いイドは言葉の通りに好奇心を抑えられないといった様子だった


「双子でもやっぱり違うんだね」


「それはそうですよ、双子で同じ性格ならそれこそ量産型AIでいいじゃないですか、こう見えても現代アンドロイドのひな型ですからね」


 イドの新たな性格を発見した頃にリニアは停車をした


「ここの地図とかあったの?」


 前回とは違う道を進んでいる事に気付いたピリオドはそう尋ねる


「詳細な地図はなかったので日記に残されていた手がかりを頼りに探しているでござるよ」


 拙者の言葉通りそのまま3時間程彷徨いながら目的の部屋を探し当てた


「ここが目的の部屋であってる?」


「そうで…ござるな…はぁはぁ」


 流石に3時間も歩き回り疲れた拙者は息も絶え絶えになっていた


 少し休憩したのちに拙者が部屋の中のコンソールをコンマと探り始めた


 しばらくすると2mほどあるカプセルが2台分地下から出て来る


「アンさんとイドさんは本当にいいの?」


「今ここでそれを聞かれると決意が揺らぎそうですね」


 アンはそう答えたがイドは楽観的に見ているようだった


「大丈夫でしょ、元々ある機能みたいだしその機能を使ってなかっただけって事だしね、それに一応バックアップも取れるようになってるんでしょ?」


「そうでござるなそこは責任をもってやるでござるよ」


 それを確認できたイドはそのままアンをカプセルに押し込むと自分もカプセルに入る


 二人がカプセルに入ると上に上がっていたカプセルのドアが閉まった


 そこからは拙者とコンマはコンソールを操作していく、ピリオドは事故が無い様に祈るように待つ。2時間程たった頃に


「これでいけるはずでござる」


「はずってなんですか変態はこれだから先輩いけますよ」


 コンマの言葉の後にカプセルのアンの方だけが開く


「久しぶりに起こされたわね」


 中から出て来たのは見た目はアンだがどことなく雰囲気が違う人だった


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