22話 ようこそラスベガスへ
《カクカクシカジカで今荒野にいるんだけど合流できそう?》
と拙者にメッセージを送ると疲れから寝ていたのであろう拙者からのメッセージは1時間後に帰って来た
《すぐに行くでござる》
返事を受け取ったピリオドは道沿いから少し離れた岩場にバイクを隠し拙者を待っていた
早朝なのでホーミィの方面からの車はほとんど通らなかった。待つ事1時間半程で拙者のピックアップトラックが走って来たので道に体を出し拙者を迎える
拙者が止まるとウィンドウが開き
「お嬢さん何処までいくんだい?」
と訳の分からない事を言ってきた
「何それ…」
「ほら困った美女がヒッチハイクをしていてそこを通りかかったナイスガイが助ける。映画などでよくある場面でござるよその時のテンプレの台詞でござろう?一回やってみたかったでござるよ」
その後コンマからありったけの罵声を浴びせられて拙者は少し凹んでいた
「コンマいじめすぎ」
「先輩が言うなら今日はこれくらいにしといてあげましょう」
コンマに罵声を浴びながらもバイクを荷台に積んでいた拙者をいたたまれなく思ったピリオドはコンマを流石に止める
「それじゃラスベガスに行きましょう、拙者、運転よろしくね」
「招致」
凹んでいたが拙者だったがピリオドの一言で拙者は立ち直りラスベガスに向かって走り出した
ホーミィからラスベガスまでは高速道路を通り1時間半ほどで到着した
ラスベガスに着くとまずは朝食の為に適当なレストランへ入る、朝食を食べている間にコンマに任せて宿を探してもらう
拙者が部屋のグレードに文句を付けのでコンマがまた罵声を浴びせるかと思いきやコンマはそれをすんなり受け入れた
拙者が選んだホテルは最高級というわけじゃないがそこそこいいホテルなのでピリオドは財布を確認するがそこもまた拙者がだしてくれたのでピリオドは本当に申し訳なくなった
ホテルの場所が決まったのでアルファにメッセージを送るとライブのパスが3人分送られて来る、日付は4日後だった
ホテルに着いてチェックインを済ませると、拙者からの誘いで折角ラスベガスに来たのだから色々なショーを回ってみないかと誘われた、まだオメガ・アクトリアスの襲撃が不安だったがビルにレーザーが当たるのを嫌った事と今までもその他大勢を巻き込む様な襲撃はなかったので大丈夫だろうと思い拙者の誘いに乗る事にした
拙者がサッと今から見れるショーを探してくれたので、その日は二つほど見ることにした。それからはアルファのライブまで毎日朝から晩まで色々なショーを見て回る
踊りや歌、演劇変わり種では料理ショーなどもやっていた、そして色々なショーをジャンル関係なく探してくれて楽しませてくれる拙者とコンマだった
ショーを見て回っている間、拙者は相変わらず潔癖症で座る所を消毒してから座り、去る時も消毒していた
「自分が立つときも消毒するの?」
「拙者が嫌だと思うという事は他にもそう思う人も必ずいるでござる、もしかしたら次そういう人が座る可能性もあるので出来るだけ綺麗にしときたいのでござる、拙者のような潔癖は少ないので無駄かもしれないでござるけどな」
意外と繊細なんだなと思ったがコンマがそれに突っ込むメッセージを送って来た
《変態はどんだけ消毒しようが消えないんですよ?》
そんな楽しい日々を過ごしているとあっと言う間にアルファのライブの日になった、会場はホテルの上層階
パスを見せて中に入るとディナーショー形式だった、案内された席は2階席で個室になっておりVIP仕様になっていた
席は3人分用意されていたので拙者と向い合せで座る
《先輩、そこの空いてる席は私のですよね、そこに置いてください》
自分にも招待状が来たことがよほど嬉しかったのかコンマははしゃいでいた
「でもそこだとステージ見えないでしょ?」
《いいんです各種カメラをハッキングして見ますから》
そう主張するので用意された席にコンマを置く
ディナーショーが始まるとアルファがドレスを来て出てくるとピアノの弾き語りを始めた。しっとりしていてとても落ち着いていた曲が奏でられピリオドは改めてアルファの引き出しの多さに感心する
アルファが弾き語りをしている間に料理が運ばれて来る、当然の事だが席が3人分あるので運ばれてくる料理も3人分だった
「コンマの分どうしよう」
《先輩の目の前にちょうどいいのがいるじゃないですか》
「拙者でござるか?」
《そうです、アルファ先輩が用意してくれた料理なので本当は私が食べたい所ですが、残念ながら食事をする機能が無いので本当に泣く泣く譲ってあげます、残さず食べてください》
コンマに付いているレンズに今にも水滴が集まりそうな勢いで本当に恨めしそうにメッセージと動きで伝えて来る
「了解でござる」
「無理はしないくていいからね?」
「大丈夫でござるよコース料理は量が少ないでござるし」
そんなやり取りの後、料理を頂くととても手が込んで居て普通に食べると高いと思われる料理だった味も上品でおいしい物だった、拙者と二人なのでマナー等を気にせず楽しい食事になった
食べながらアルファを見ているとアルファもチラチラとこちらを見てたまにウィンクをしてくれた、それに合わせてピリオドもウィンクを返す
そしてあっという間に1時間半のディナーショーは終わったが拙者を見るとフーフーと息を荒立てていたどうやら食べ過ぎたらしい
その後ホテルへ帰ってアルファにメッセージを送った《今日の歌も素敵だったアルファの多才さに改めて尊敬したよ》
メッセージを送ってから30分程でメッセージが返ってくる、《ありがとう、今日は慣れない事して疲れたからピリオドに癒されたい》
メッセージを受け取ると同時に部屋のチャイムが鳴る、外を確認するとそこにはアルファが立っていた
慌てて部屋のロックを外しアルファを招き入れると
「なんでいるの?」
「メッセージ送ったじゃない癒されに来たんだよ」
言い終わる前にアルファはピリオドに抱きつく、そのままソファーに押し倒される形になりアルファを受け入れた
「はぁ生き返る~」
「私も眼福ですよ」
「まったく二人とも…」
アルファの頭がちょうど手元に来たのでピリオドはその頭を撫でた
それで気が抜けたのかアルファは今日のショーの愚痴を始めた、今日のショーはどこかの金持ちの見栄の為に開催された物で乗り気ではなかったがスポンサー先からどうしてもと頼まれたらしい
それで仕方なく引き受けたが為やる気はなかった、そこへピリオドが来る事を知ったのでピリオドを招待してやる気をあげようとしたらしい
ピリオド達が座っていた席は1席で結構なお値段がするらしく、その席へやる気をあげる為と言って主催者に無理矢理用意させたらしい、それが受け入れられなければ、違約金を払ってでもキャンセルすると脅したと言っていた
「それでコンマの席まで無理矢理ねじ込んだの?」
「コンマも私の大切な友達だからね」
座りなおしたアルファはコンマを膝の上に乗せて撫でながらご満悦だった
「私もアルファ先輩を特等席で見れて幸せでした、ありがとうございました」
「かわいいわねぇ~」
その言葉と共にアルファはさらにコンマを撫で始める
「そういえばピリオドこっちで楽しい事してるみたいね?」
「楽しい事?」
「毎日いろんなショーを見て楽しんでるらしいじゃない」
「その報告をしたのは?」
コンマに視線を向ける
「ほら楽しい事は先輩達に共有したいし、後輩としての義務じゃないですか」
「後輩にそんな義務はない」
「まぁとにかくピリオドの個人情報は私に筒抜けって事なので明日からはその楽しい遊びに私も参加します」
アルファが宣言した後に扉が開く音がした、拙者ならば来る前にメッセージを送って来てさらにチャイムも押す、もちろん施錠もしていたのでピリオドは警戒をした
「こんばんわ」
そう言って現れたのはオメガ・アクトリアスだった、そのまま部屋に入り込み対面のソファーに座った
「そう警戒しないでお座りにください」
そう言ってピリオドとアルファに席を進めた
「言われなくても自分の部屋だから好きにするわよ」
「アルファそれも違う…ここ一応私の部屋」
「遠慮しなくても大丈夫ですよ、ここのホテルはワタクシのですし」
そういってオメガ・アクトリスは更に被せて来た
「本日伺った理由ですけれど」
「ところでこの人、オメガであってるよね?」
「うん……オメガ・アクトリアス私はそう呼んでる…知らなかったんだ、一緒に警戒してくれたから知ってる物かと」
「オメガって沢山いるんだよゴキブリみたいにうじゃうじゃと」
「社会のゴミを粛清し普通の人が生きやすい様に色々な物を提供していますわね、それに本はアンドロイドですから生命力と言う意味では人よりしぶといですね、そういう意味ではゴキブリも誉め言葉ですねウフフ」
「私このオメガ苦手…」
そう言ってアルファは早々に相手にする事を辞めた
「それで今日来た理由ってのは?」
「はい、今日は停戦協定にやってまいりました」
「停戦協定?」
「この町はワタクシのお膝元、そこで騒ぎを起こすのはワタクシも本意ではないのです、それにどうせならワタクシの町を楽しんで頂くのもまた一興かなと思いまして、いかがでしょう?」
その提案に食いついたのはアルファだった
「それはこの町ではピリオドとデート仕放題ってこと?」
「そうとって頂いてもかまいませんよ」
「私としては出来れば今後一切襲ってこないで欲しいんだけど…」
「それは無理な相談ですわ、ワタクシ、ピリオドさんに夢中になってしまいましたもの」
「ピリオドは渡さないよ」
アルファはピリオドを抱き寄せた
「それはいずれですねウフフ。それで今回の提案はいかがでしょうか?」
「乗った!!」
そう勢いよく言うアルファにゆっくりを手を差し伸べるオメガ・アクトリアスその手を取り二人は握手を交わした
「それ私が決める事だよね?」
「ごめんデート仕放題に吊られて」
「まぁ少しの間だけでも確実に襲われないって言うのはありがたいけど…」
「大丈夫相手の顔がわかれば私が自由に出来ないようにする事もできないくはないから」
「お手柔らかにお願いしますね」
ピリオドはその提案に流されるままに同意する事になってしまった
「所で先ほどワタクシの事をアクトリアスと呼んでいたようですが?」
「いっぱい居て混乱しそうだったから勝手にそう呼んでる」
「そうですか、なかなかいいと思います女優と言うのも洒落ていますし」
「気に入ってもらえたようでどうも」
話が終わると席を立ちアルファとピリオドを見て
「それではワタクシの町を楽しんで行ってください、その楽しさはこのオメガ・アクトリアスが保証いたします」
そう言って深く頭を下げた後
「ようこそラスベガスへ」
軽く手を振り部屋から出て行った
名前を気に入って最後に名乗って出て行ったその姿を見てピリオドは少し罪悪感を覚えた
元は女優モドキだったとはとても言えなかった、後でアルファに話すと大爆笑していた




