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12話 休日ライブ



翌日も夜遅くからアルファと打ち合わせをする


 アルファは昨日朝まで一緒だったが、午前の遅めの時間からずっと仕事をしていたみたいだ、いくらアンドロイドと言えど疲労はある


 単純作業だけなら1週間続いてもエネルギー補給さえできれば疲労しないがアルファがやっている事は多岐に渡る、精神構造は人間より丈夫だとはいえそれだけやっていれば疲労もたまるはずだ


 そのはずなのだが目の前で元気に歌いながら踊るアルファを超人を見るように眺める、今はコンマより2回りほど小さい球体型のドローン6機と動きを合わせて踊りの練習をしているところだった


 その視線に気づいたアルファが曲を止める


「演出のピリオドさん何か意見は?」


 問いかけられたピリオドは咄嗟にコンマを見てカンニングを要請する


 コンマから送られてきたメッセージは《私の方がかわいいと思います私を推薦してもいいですよ?》だった


 それを見たピリオドは項垂(うなだ)れる。演出として答えないわけにもいかず何とか回答を絞り出す


「うーん、エフェクトを入れたとしてもちょっと地味?もうちょっと動いてもいいと思う」


 そこでまた意見の交換が始まるあぁでもないこうで無いとそんな日が続いていた


 あくる日スタジオへ向かうとアルファが練習用の恰好をしていなかった


「今日は踊りはなし?」


「今日はなんと休みです」


「それじゃ私が来てもする事がないんじゃ…」


「前に少しピリオドのバイクの事を話してくれたでしょ?今日は何とバイクデートをします」


「アルファバイク持ってるの?」


「ふふふ私の指定席はピリオドの後ろに決まってるでしょ。さぁ行くよ」


 手を引っ張られて強引に連れ出されると流されるままにアルファを後ろに乗せる事になってしまう、ピリオドもアルファの休日だしここ最近のアルファを見ていると気分転換になればいいかと思い引き受ける


「どこか行きたい場所はある?」


「うーんどこでもいいけど、デートの定番と言えば海が見たいかな」


「畏まりましたお姫様」


「うむくるしゅうない」


 時間的には深夜と言ってもいい時間だ辺りを走る車は少なく大通りを抜けて海方面へと進んで行く


「バイクって気持ちいいもんだねぇ」


 アルファが後ろから肩に顔を乗せて話しかけて来る、少し邪魔だと思いつつもそれを払い除ける事はしなかった


「アルファの歌も踊りも素敵だけどね、バイクも負けないくらい良い物だよ、これに出会えて無ければ不安でスクラップになってたかもしれないし」


「ピリオドにとって相棒なんだねぇちょっと嫉妬しちゃうかも。でもいい子なんだねよしよし」


 そう言ってアルファはバイクを優しくなでるが、その言葉を聞いたコンマは対抗意識を燃やしたようでメッセージが表示される


《私が一番の相棒ですよ》


 即座に消して無視したので後でうるさいかもしれないと思ったがコンマの復讐は早かった、海に着くまでの間、普段より多く信号に掛かる事になった


 普段より時間はかかったがアルファの求めに応じて着いたのは海岸、時間的にも時期的にもそこにはピリオドとアルファしかいない


 砂浜の横から伸びる防波堤から先に向けて歩き防波堤灯台まで着いた二人はそこに腰を下ろす


「ご満足いただけましたか姫様?」


 ピリオドはイタズラ気に聞く


「余は満足じゃ」


 胸を張って声を低くして答えるアルファに二人は吹き出す


「それじゃ姫じゃなくて王様だよ」


「いつから姫じゃと思っておったのじゃワシは王じゃぞ」


 アルファは調子に乗ってピリオドを笑わせにかかった


「でも休日をこんな風に誰かと過ごせるとは思ってなかったからうれしいよありがとうピリオド」


「まぁ私は運転しただけだし、それに私も友達と出かけるなんて初めてだから楽しいよ」


「それとコンマもここまで案内してくれてありがとう」


 アルファはコンマにもお礼を言う、それに答えてコンマも光って応答する


「ところでピリオド話したくなかったらいいんだけどコンマってAI入ってるよね?」


「あぁーさすがにこれだけ一緒に居たらバレるか、入ってるよついでに言うと喋れる五月蠅いけど…」


 それを喋る事の許可と取ったコンマは今まで黙っていた分の鬱憤を晴らすように喋り始める


「ヒドイです先輩、私は淑女ですよ?そんなに騒がしいわけないじゃないですか、それとこうして喋るのは初めましてアルファ先輩」


 それを聞いたアルファは驚いていた。そんなアルファの反応を予想していたかのように気にも留めず喋る許可を貰ったコンマはこれでもかと喋り倒す


 アルファの曲のいい所、ダンスの素敵さ、ピリオドの愚痴、それとちゃっかり自分の方が踊りの時に居たドローンよりかわいいとの主張も忘れずに。それこそワンマントークショウでも出来るのではないかと言うくらい喋った


「コンマってこんなに喋れたんだね」


「あまりにも五月蠅いから普段は人前で喋らないように言ってる」


「何言ってるんですか先輩、高性能なコンマちゃんが不埒な人に狙われるのを恐れて普段はただの端末のふりをしてなさいって言ってたじゃないですか」


「そんな昔の事は忘れた」


「ヒドイです!」


 その会話を聞いていたアルファは大笑いしていた、それからは3人で喋る


「そうなんだっていう事はコンマが演出全部してくれてたの?」


「そうですよ」


「その間ピリオドは?」


「先輩はやってるフリをするのがプロです」


「私だってちゃんと考えて意見だしてるでしょ!」


「アルファ先輩の時はですよね。その前の第6なんて何もしてなかったじゃないですか」


「してたもん…」


 語尾になるにつれてピリオドの声は小さくなっていった


「という事はコンマを勧誘すれば!」


 いい事を思いついたというようにわざとらしく手で拳を作り掌に打ち付ける


「コンマさんコンマさん3食昼寝付きで私に雇われない」


「わぁ!嬉しいです、アルファ先輩ならお金も持ってそうだし、ダンスもカッコイイし、歌も素敵なので考えちゃいます!!」


 その話を聞いたコンマはピョンピョン跳ねるように喜んでいた


「でも嬉しいお誘いですがその素敵な条件以上に心配になるポンコツな先輩がいるので私は断腸の思いですが、そっちの世話をしないといけない指名が勝っちゃうので本当に残念ですがお断りをしないといけないです」


「なんて意地の悪い二人なんだ」


 そう言ってピリオドは頬を膨らませると片方をアルファが指でもう片方をコンマが体で押してその頬の空気を抜く


 アルファとコンマが満足すると


「楽しいので100年歌姫アルファ、一曲歌います」


 そう言ってアルファは立ち上がり歌い始める、夜の静けさに溶け込むようなそれでいて未来が明るく見えるような歌だった


 その歌に釣られてピリオドも鼻歌を合わせていく、それにコンマが即座に音を鳴らしエフェクトを付けて行くそれに気づいたアルファがピリオドの手をとり立たせて一緒に歌い始める


 防波堤灯台で行われた即席ライブの観客は海と月だけだったがピリオドにとっての初めてのライブになった


 そんなライブが終るとアルファが真剣な表情でピリオドの肩を掴む


「ピリオド…」


「どうしたの?なんか怖い…」


「私は今非常に怒っています何故だかわかりますか?」


「私の歌邪魔だった?」


 その言葉を聞いたアルファは片方の手でピリオドの鼻をつまみグリグリと左右にふる


「逆だよ!!なんでそんなに歌がうまいんだよ、正直嫉妬するうまさだよ。そんなのを隠してるなんて損失だ今すぐ舞台に立ちなさい」


 興奮のあまり若干語気が乱れていたアルファの迫力に押されてしまう


「あのね…」


 それをなんとか耐えたピリオドは正体不明の敵から襲撃がある事を正直にアルファに話す。だから人前に顔は出せないと


「そう…、わかったわ、その問題は私でもなんとかできないかやってみる。それと今すぐは無理でもいつか必ず舞台に引っ張り出すから覚悟はしときなさい」


「アルファが危険になるのは嫌だよ…私は別にアルファと友達なら舞台は…」


「いいえこのままピリオドを眠らせておくのは世界の損失です、100年歌姫の言葉を信じなさい、コンマもそう思うわよね」


 有無を言わさぬ物言いのアルファの問いにコンマは即座に同調した


「アルファ先輩のいう事は最もだと思います、正直今の二人の映像を一人だけで楽しむのも優越感はありますが出来る事なら先輩には表舞台に立ってほしいです」


 それから意気投合した二人は帰り着くまでずっとピリオドを褒め倒していた、その言葉は嬉しいがそれ以上に恥ずかしくなったピリオドは顔だけ溶けてしまうのではないかと言うほど赤くなっていた

 




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