1話 ピリオド
ファミレスで夢を語り合う二人の少女、歳は二十歳前後に見える
語り合う二人は未来への夢と希望に満ち溢れていた
話をしている少女は今流行のアイドルの髪型を真似ているのだろう、最近多い流行の髪型だった。モザイクが掛かっていて顔は判別できない。モザイクの少女は語る
「いつか私の歌を世界中に届けるんだ」と
その言葉は少女の口癖でもあった
「だから▍▍▍▍も私についてきてよね!と言っても歌はまだまだ負けてるんだけどね私のライバルはすごいから!」そう言って希望に満ち溢れた笑顔でこちらを指を指して言う
「イジョウイジョウ」
騒がしく音を出す球体に起こされ目を覚まし時計を見ると、まだ起きるには早い時頃だった
「久しぶりに見た」
「イジョウイジョウ」
「うるさいポンコツ鳴り止め」
少女は球体を軽く叩き球体の音を止めると鏡を見る。そこに映っているのは先ほどの夢の少女達とは別の少女が映っていた
「ピリオドキショウ、ヨテイジカンヨリ2ジカンハヤイ」
「コンマが起こすからでしょうが」
「イジョウヲケンチ」
「はいはい、夢を見ただけだよ」
「イジョウイジョウ」
少女は有機アンドロイド、名前はピリオド
本来夢を見ることはあり得ないはずのアンドロイだ、眠りにつくと予定時間に起動するそれが有機アンドロイドの普通だ
「久しぶりに見たな…歌なんて今時、誰が歌っても一緒だろうに…」
ピリオドは起こされた腹いせに夢の中の少女達に悪態を吐く
「少し早いけど仕事でも行くか」
起きたがやる事も特に思いつかないので仕事場へ向かう事にした
着替えて準備が終わるとベランダから飛び降り地面すれすれでくるりと回り着地する
路上に止めてあるエアバイクに跨りコンマをハンドの間にくっ付ける
「外では喋らないように」
「リョ」
コンマの短い返事を聞くとエアバイクを出発させる
コンマはピリオドの相棒のような物だが、外では球体型の端末として偽装をしている、自立思考型の端末は現状開発不可能と言われているからだ。
路上駐車は本来褒められた行為ではないが許可を取るとホログラムで停止中は許可車両と表示されて駐車する事ができる、普通はこの許可を取得するのは難しい。仕事がら路上駐車をする事が多いピリオドはこれを不正に取得しているちなみにハッキングをしたのはコンマだピリオドはお願いしただけ
車は少ないが信号にかかったピリオドはコンマにお願いと声をかけると信号は全て青になり自動運転の車は道を開けるその空いた道を快調にスピード上げていく
コンマが警察の情報もハックしているので巡回の中のパトカーと出会う事も速度監視装置にかかることも無い
ピリオドにとってドライブは束の間の癒しこの間だけはピリオドは自由になれる気がしていた。仕事場までは普通に行けば15分ほどだがこの日はゆっくりとドライブを楽しみ2時間ほどかけて仕事場へ着いた
ビルの谷間にある隠れ家的と言えば聞こえはいいが隠れすぎてて客が来ないバーだ、深めにフード被り顔を見えなくしてから店に入る。コンマは浮遊しながら追尾してくる
「相変わらず」
ピリオドはここでは必要以上に喋らないように極力務めていた
「ピリオドか、バーは隠れ蓑だから客なんか来なくていいんだよ来たら鬱陶しいだろ、それより今日は早い到着だな」
やる気の無さそうな死んだ目をした男性がめんどくさそうに言う、年齢は40代後半だろうか白髪交じりで着ているシャツはよれよれで胸元もだらしなくはだけているが髪の毛は綺麗にセットされている。名前はマスターとしか聞いてないので本名は知らない
「目が覚めた」
「相変わらずのポンコツっぷりだな、アンドロイドってのは時間の融通が利かないのが相場なんだがな」
「仕事はちゃんとする」
若干ふくれっ面になるピリオド
「相変わらず表情豊かだな言われないとアンドロイドだと分からないな」
「顔は見えてないでしょ」
「口元は見えてる」
普通のアンドロイドは有機体でも表情に若干の違和感がでるそれ単独で見れば違和感は無いが頭の天辺から爪先までになると微妙な違和感が出て来る。たとえば真顔からいきなり笑顔になった場合、その表情の変化が早すぎて違和感を覚える、しかしピリオドにはそれがなかった
「荷物はこいつだ」
マスターはカウンターの下から一枚のクリタスタルメモリーを取り出すとピリオドに渡す
「中身は?」
「おいおい普通は中身を聞かないもんだぜ?」
呆れ顔をしたマスターはため息をつく
「足の付きそうな仕事はしない」
「最後に襲撃があったのだって1年半以上前だろ?どこのどなたかは存じませんがもう諦めたと思うぜ?」
「安心はできない」
「へいへいそれで内容は企業スパイで中身はペットロボだ」
マスターはホログラムで地図を表示する、その中にはベンチが表示されていた
「これをここに置いて来るだけだ、カメラは潰してある、依頼人への連絡は20分後間に合うな?」
「余裕」
ピリオドはクリスタルメモリーを受け取るとそのまま店を出る
「しかし本当にアンドロイドに見えねぇなわざと無口に振る舞う所なんて人間って言われた方がしっくりくるぜ」
ピリオドの出て行ったドアを見つめながらマスターはつぶやいた
今回の仕事内容は子供でも出来る簡単なものだ指定された場所に荷物を置いて来るだけ、ただし20分以内にという制約付き。姿を見られたくないピリオドは20分以内に指定の場所に着き姿を見られないように依頼人に物が渡るのを見届けて完了だ
「コンマ指定場所へのルートをクリアにして」
コンマのレンズが光り完了を告げる、コンマは指定場所までのルートの偽装をする
町の監視カメラ、他車の車載カメラをハッキングしてピリオドとバイクが映像に残らなくする、先ほどもやった用に信号が全て青になり自動運転中の車は道をあける、そして町にいる他のアンドロイドからも視認されなくなるアンドロイドから見れば透明人間が居るようなものだ。こうしてピリオドを捕らえられるのは純粋な人間のみになる
記録用監視用のカメラがそこら中にあるこの時代人間の記憶は曖昧なものとして参考程度にしかされないので警察はもちろん一般人でさえ流し聞く程度の価値しかない
非合法のやり方であれば強制的に人間の脳から情報を引き出す事は出来るが、1%で記憶の消失、80%で死亡、15%で廃人、4%で人格の破綻、人格の破綻とはほぼ獣状態になる事。なので軍ですらその行為をする事は公式には100%無い
「3分前かまぁまぁかな」
指定の場所に予定時刻の3分前に着き荷物を置く、そのままそのベンチが見える場所に移動して依頼人が受け取るのを確認するだけだ、5分後に依頼人が荷物を受け取るの盗撮したピリオドは静かにその場を去る
「依頼完了、帰りもよろしく」
軽くコンマを撫でてゆっくりとドライブしなが帰路に着く
バーに帰るとマスターが出迎える
「ご苦労さんこれ依頼料な、今回も現金でいいんだな?」
「電子マネーは信用できない」
差し出された現金をピリオドは金額も確認せずに受け取る、金に関してはマスターを一応の信用をしているというかここ以外で仕事を探すのは大変なので文句は言わない
「電子の申し子その最たるアンドロイドだろうに」
「自分の過去も分からない、知らない誰かの夢を見るそれだけで信用はないと思うよ?」
「そりゃそうだ」
バーでコーヒーを一杯頼むとピリオドは一口飲んで自分が頼んでいる事を聞く
「ところで人探しはどうなってる?」
「あぁあれかアンドロイドに詳しいやつ、一応いたぞ灯台下暗しってやつだなうちのセキュリティ担当が詳しいらしい、外部漏れの心配もないし適任だろ?」
「なら会わせてくれ」
「うちのセキュリティ担当だけあって変人なんだよ、近いうちに機会を作るから待っててくれ」
「わかった」
コーヒーを飲み干すと店を後にする
店を出た時には空が明るくなり始めていた。朝食を買って家に帰る、昼間は人目に避けるためにピリオドはあまり動かず家でひっそりと情報を収集する主にグータラネットやテレビをみているだけだが。
そうしてピリオドの短い1日は終わる




