第35話
さようなら──そしてまたいつか。
やめる───
それができたらいいなと思う時が「私」にもある。
「私」を捨てて、新しい誰かになって新しい関係を築きたい、
ゲームでリセットするように、と。
だけど私は悲しいまでにこの「私」に執着している。
初めて「私」の存在がこの世に生まれたのは今から15年前。
あれ以来私は、
私よりもこの「私」が現実だと感じつつ生き続けている。
実際の私はつまるところ、
それほどつまらない、価値のない、
取るに足らない人間でしかないんだ。
誰の心も繋ぐことの出来ない、そんな力もない───
時々考える。
どうして半分死んだまま生まれて来たあのとき、
息など吹き返したのだろう、
あのとき死んでいたら
こんなに苦しまなくてすんだのにと、
親が聞いたら泣くだろうことを考えてしまったりする。
やはり私はそんな無情な人間でしかないんだ。
だけど───
それでも私は生きたい───生きつづけたい───
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決心した。
掲示板の書きこみをもうやめようと。
削除の仕方はわかんないから、書きこみせずにほおっておけばいつか消えてしまうだろう。
いろいろあったよなあ。
初めてカキコしてくれた人。
ふと足をとめてカキコしてくれた人。
ケンカしちゃった人。
女の人。
男の人。
今でも親しくメル交してる人。
愛した人。
愛してくれた人。
格言書いたり。
詩を書き綴ったり。
くだらないお話したり。
熱く創作のことで議論したり。
グチ書いたり。
睦言かわしたり───
切ないくらいに想い出が押し寄せてくる。
なんでこんなに悲しいんだろう。
なんでこんなに辛いんだろう。
たかが掲示板。
でも、されど掲示板だったんだよね。
私は運悪く、私のことを嫌いだっていう人がいた。
野放しにしてくれる気はなかった人がいた。
もちろん、他の人たちもいろいろ攻撃とか受けてたかもしれないし、実際そうやって潰されていった人たちを私も見てきている。
できたらいつまでも続けたかった。
誰もがみんなそうだと思うんだけど、それでも諸々の事情でそうもいかないわけで。
本当なら私なんか、そういう人たちより絶対的に恵まれていると思うんだけど。
でも。
もう疲れたよ。
せっかくカヲルが支えてくれてたのに。
あんなにカキコが嫌いだといっていた彼だったのに。
私が掲示板に顔を出せなかったときにカキコしてくれた。
無理して連続カキコしてくれてたのに───
ごめんなさい、カヲル。
私は続けることができなかった。
それにしても。
カヲルから連絡がない。
私はもう決心したのに。
メールに私の想いを乗せて送っているというのに。
あなたは読んでくれたかしら?
あなたはどう思ったかしら?
早くあなたの答えが聞きたい。
早くすべてを終わりにしたい。
そして、新しい一歩を───




