第3話
はじめまして、コクケンさん
私のことはカヲルとお呼び下さい
もちろん本名ではないですが
私が一番気に入っているHNです
あなたと彼とのやりとりを
ずっと見守ってきた者です
少しきついことを言うようですが
あなたは少し被害妄想気味ですよ
それが悪いというわけではないですが
やはりああいうことを掲示板で書かれるのは
やめたほうがいいと思います
もしかしたら彼は
傷ついたかもしれません
どうしようもない感情が
抑え切れずに渦巻く時は
私が聞いてあげましょう
あまりお喋り好きではないですが
これから少しはあなたの
相談相手くらいにはなれそうです
はじめてのメールで
とても失礼なことを言ってしまいましたが
私はあなたの味方です
【須永カヲル】
****************
被害妄想───
やっぱり私ってそういう女なんだ。
でも、この人──カヲルさんってホントのホントに彼じゃないの?
ううん。
そんなことどうでもいいじゃないの。
よしんば彼だったとして、こうやって私のこと「味方です」って言ってくれてるんだから、それだけでいいじゃない。
たとえ、彼じゃなかったとしても、他にも私のことを心配してくれる人がいるってステキじゃない?
というか、メールがくるってなんかいい感じだね。(笑)
ネットを初めてまだ間もない私。
いつかは自分のホームページをと思って何とか立ち上げた。
そして、彼も持っていたのでリンクを繋げて足繁く通った毎日。
楽しかった。
ほんとに楽しくて楽しくて──ちょっとだけ調子に乗りすぎちゃったのかも。
静かで、ミーハーなことに無縁っていう感じの人だったから、私のこと「こんな人だと思わなかった」と心で思ったのかもしれない。
ああ、だめだめ。
そういうとこが「被害妄想気味」って言われる所以だよね。
もう忘れよう。
ううん、忘れない。
私は関わった人を忘れることはできない女。
起こってしまったことをグダグダ言うのは悪いクセだから、それを言うのを忘れてしまえってこと。
彼との思い出は胸にしまい、そうして新しい彼──カヲル──と、密やかな思い出を作っていこう。
私は夜中にも関わらず、さっそくレスをしたためた。