第10話
こんばんは。
掲示板でジャズのこと書いてたね。
トランペットをやったことあるんだって?
わたしは楽器など触ったこともない。
子供の頃にリコーダーを吹いた覚えがあるくらいか。
ジャズもよくわからないな。
でも音楽聴くのは嫌いじゃないよ。
トランペットの音色も好きだしね。
今でも吹けるのかい?
君の吹くトランペットの音色を聞いてみたいね。
【須永カヲル】
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そう、日野皓正のことを書いたんだ。
昔好きだった人が、コンサートに行ったときのことを話してくれたんだよ。
で、日野さんは、ろくすっぽジャズのことを理解していない音大の若者を、叱咤激励しつつ、半ば無理やりにアドリブの場へ引き出すのだということを掲示板にはカキコした。
『ジャズといえばセッションだ。
かつて学生の頃、私の好きだったその彼と仲間が、音楽室でセッションを披露してくれたことがあった。なんかすっごく感動したのを覚えている。
彼らはすでに音楽が日常的であり、身体全体が音楽でできているのだと思った。その時、ジャズの良さは、このアドリブ、セッションにあるんだなーと漠然と感じたことを思い出す。』
私にとってはとてもいい思い出だ。
結局彼らの一員にはなれなかった私だけど、仮にもしばらくは一緒に過ごせた。
自分一人だけの幻想だったとしても、彼らの仲間だと信じられた。
今の私とカヲルも、そういう仲になれたらいいなと思う。
幻想でもいい。
いつかシャボン玉が割れてしまうように、儚く消えてしまってもいい。
だから、今だけ私に夢を見させて。
そう強く願う。




