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「お待たせして申し訳ございません」


「いや。私が知らせず勝手に来たのだから謝る必要はない」


頭を下げようとするとあっさり手で制される。知性と落ち着きが漂う、青の賢者オーディン・ファイテン。40代の彼が賢者の中で最も年上で、国王陛下と学園で同級生だったこともあり、賢者の中でリーダー的な存在だ。偏屈で扱いづらい性格の賢者達が多い中で彼は1番の常識人でもある。


「お越しいただいたご用件は一体……」


今日は賢者との遭遇率が異常に高い。新しい黒の賢者絡みだろうとロイドは当たりをつける。


「新しい黒の賢者が離宮に到着したと聞いたからな。王宮全体が浮かれ気味だ」


いつも冷静沈着なオーディンが珍しく顔をしかめる。見事な銀髪をオールバックにしていてまったく嫌味なくその髪型が似合っているのだが、盛大にしかめた表情がよく見えた。


「黒の賢者様は体調が思わしくありませんので面会はできませんよ?」


オーディンが何が気に喰わないのか分からないロイドはとりあえず釘をさしておく。


「そのくらい分かっている。誰だってあの石の膨大な魔力に最初は体がついていかない。成長途中の子供なら尚更だろう」


不機嫌そうにしたままオーディンは紅茶を飲む。彼も貴族出身のためマナーは完璧だ。いくら不機嫌でも紅茶をズズっとすすったり、ガチャンと音を立ててソーサーにカップを戻したりすることはあり得ない。


「いつからこの国は8歳の子供が賢者になったのを喜ぶような阿呆な国になったのか。たったの8歳だぞ? 8歳なら親元で愛情を受けて育つべき年齢だろう。また戦争が起きれば子供が駆り出されるかもしれないのに一体何を浮かれているのか」


あぁこの方らしいなとロイドは思う。ロイドだって疑問に思ったことだ。なぜ石は8歳の少女を選ぶのか。戦争が終わったといっても、またいつ起きてもおかしくない。ただ、どんなに考えたところで分かる訳はなかった。


「仕方がありません。今回は中々黒の賢者が見つからず皆焦っていましたから」


「彼女は元々孤児なんだろう? 戦後は孤児も増えたというのに相変わらず貴族たちは大して動きを見せていない。地域によって戦後孤児に対するケアはバラバラだ。中には寄付といって金だけ出してやった気になっている輩もいる」


オーディンは静かに怒っている。20年近く賢者を務める彼は、何度も戦場を経験したからこその怒りなのだろう。


「陛下はなんと?」


「アイツも賢者がやっと決まって良かったなどと抜かすから、山ほどの書類と一緒に放置してきた。しばらくアイツの仕事など手伝わん。顔も見たくない」


ロイドが思わず苦笑すると、侍女が呼びに来た。ソラリスの診察が終わったようだ。


「私も行こう。邪魔はしない」


国王でも頭の上がらない相手なので、ロイドが拒絶できるわけはなかった。


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