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大変お待たせいたしました。
面白いなと思っていただけたらお付き合いいただけると幸いです。
それは白の賢者フローティアの葬儀を翌日に控えた日。
安置されていたフローティアの遺体が盗み出される騒ぎが起きた。
わずかに残る魔力の気配を追ってロイドが単身踏み込んだのは、存在をほとんど知られていない王宮の地下室だった。
床には血で描かれた、見たこともない魔法陣。その中央には胸の前で両手を組み眠っているような白の賢者フローティアの遺体。
その遺体にすがりつきながら血を吐く叔父アドニスの姿。
ロイドはすぐにアドニスを引きはがした。
「ロイド、私は……私が賢者になってはいけなかった……私の心が弱かったのだ……フローティアなしでは……生きていけない……と思ってしまった……」
「なぁんだ、やっぱり失敗したのか。蘇りの魔法ってやっぱ嘘なんじゃね?」
アドニスがロイドの腕の中で息も絶え絶えに目を閉じた後、他に誰もいないはずの部屋で呆然としていたロイドの耳に聞こえてきたのは、ソラリスの口から洩れた声と同じだった。
姿は見えないが、濃い魔力が満ちていく。カランと軽い音がしたので地面に目を落とすと、アドニスの指から指輪が外れて落ちていた。
賢者の指輪が外れる。それはアドニスが死んだことを意味していた。
「そいつはお人好しだもんな。最後の最後まで迷うなんてダメだよなぁ。だからリバースになるんだっての」
クツクツと低く笑う声が聞こえる。
「一体……お前は誰なんだ?」
「つまんない質問だなぁ、小僧。我に名前などない」
部屋に満ちていた魔力がさらに膨れ上がる。その圧に耐え切れず汗が噴き出す。視界が段々狭く、暗くなる。
「さーて、アドニスにはそこそこ愉しませてもらった。次の賢者はどうするかな」
愉快そうに笑う声を聞きながらロイドは膨大な魔力の圧に耐え切れず気を失った。起きた時にはもう声は聞こえず、救護室のベッドに寝かされていた。




