11
久しぶりの更新です。
お読みいただきありがとうございます!
ブクマ・評価嬉しいです!
ジークフロイトが馬に回復魔法を施したおかげで夜中になる前には隣町まで到着することができた。その間にもさらに1度襲撃があったが、今度は騎士達だけで撃退した。
しかし、襲撃者たちの腕前は格段に上がっていた。
「なぁ、ロイド。襲撃者達に情報が漏れるのが早くないか?」
ジークフロイトが宿屋の部屋に到着してからずっと疑問に思っていたことを口にする。
「ええ。それは私も思っておりました」
賢者が確定してから襲撃までの間隔が狭すぎる。
情報が漏れたとすればあの司祭か、赤ん坊連れの母親かそれとも……
「見廻りのため外します。ジーク王子は休んでください。お疲れでしょう」
何か言いたげなジークフロイトを騎士たちに任せて部屋に残し、少し逡巡してから違う階の部屋へ向かう。
「どうですか? 彼女の様子は?」
「お嬢様はよく寝ていらっしゃいます。襲撃中でもよく寝ておられたのでこれからが心配ですが」
シルフォリアは肩をすくめながらロイドを部屋に迎え入れた。
「それで、襲撃はそろそろやめていただけるんですか?」
「……それは私に聞かれましてもわかりかねます。襲撃者達に聞きませんと」
ロイドの唐突な問いに対して、シルフォリアは顔をそらすわけでもなくゆっくりロイドに目を合わせた。
「雇ったのはあなたではなく、商会でしょうか?」
「襲撃者達がうちの商会に雇われたとでも証言したんですか?」
「いいえ」
「ふむ。証拠もなく疑われるのは困りますね」
「情報の漏れる速さから判断してあなた、あるいは商会、いえ……兄であるニコライ君の指示で襲撃者達を雇ったと考えるのが妥当です。最初の襲撃者達は時間がなく雑魚しか雇えなかったのに対し、先ほどは中々慣れた者達でした」
シルフォリアはロイドの言葉に薄く笑みを浮かべる。その笑みはまるでロイドをバカにしているようだ。
「魔術師様なら魔法で尋問でもなさるのかと思いましたが、ただの推測ですか。私か若旦那様を逮捕しますか? 若旦那様を逮捕したらお嬢様に対する人質にはちょうどいいかもしれませんねぇ」
やはりすぐに自白はしないか……おそらく人を間に何人も入れて依頼しているから足はつかないし、証拠も出ないだろう。ロイドはシルフォリアか兄のニコライが襲撃を依頼したと確信していた。
ちりちりとした緊迫感が部屋に満ちる。
ロイドとしても引くわけにいかない。襲撃が増えればそれだけ命を落とす人間が増える。ジークフロイトも危険に晒される。
シルフォリアは窓を背にうっすらと笑いを浮かべてロイドの出方を待っているままだ。
ロイドが強く拳を握りしめた時、むくりとベッドの上でソラリスが起き上がった。
「お嬢様、お目覚めですか?」
ロイドは緊張を解き、シルフォリアはすぐにベッドに駆け寄ったが、なぜか彼はベッドのすぐそばで膝をついて倒れ込んだ。
転んだだけかと思っていたが、起き上がる気配はない。不思議に思ってソラリスを見てぎょっとした。
「ああ、お前か。小僧。久しぶりになるのか? アドニスが死ぬ前以来だからそんなに久しぶりでもないのか。人間の時間の概念はよくわからんな」
ソラリスの口から中性的な声が発せられる。なにより驚いたのは、彼女の目が赤く光っているからだ。
「お前は……まさか……」




