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初投稿です。

設定はゆるめですので、生暖かく見守っていただけたら幸いです。


「どうした? ロイド。気分が悪くなったのか?」


その言葉に顔を上げる。知らず知らずのうちに考え込んでいたようだ。馬車の向かいに座る少年の紫色の目と視線がぶつかる。その目は少年らしからぬ理知的な光を讃えていた。


「…………殿下、申し訳ございません」


慌てて頭を垂れると、膝の上に置いている細かい彫刻が施された箱に前髪が触れた。


「だからそんなに堅苦しく話す必要はないと言っている。賢者としてお披露目が済めばもう私に王位継承権はない」


「しかし、殿下は白の賢者になられたのですから……」


「第四王子だった時は兄たちに何かあれば私にも王位が回ってきたかもしれない。でも、もう私は白の賢者になり国に仕える。大丈夫だ。私は王位継承権がなくなって安心している。もう、変に担ぎ上げられたり、食事に毒を盛られたり、母上が他の妃の方々から疎まれて嫌がらせされることもない」


 目の前に座る少年は穏やかに微笑んだ。金色の肩まである髪が馬車の動きに合わせて揺れる。その笑顔に思わず見惚れるが、田舎の舗装が行き届いていない道の振動で現実に引き戻される。


「ロイドは私が生まれた時からよく一緒に遊んでくれたじゃないか。しばらく会っていなかったからといってそんな口調で話をされると寂しい。アドニスもフローティアも……いなくなってしまったし……」


2人を亡くなったと言わずいなくなったと表現する少年、いや、ジークフロイト王子は悲し気に目を伏せる。彼はこのウィステリア王国の第四王子だ。紫紺の瞳と輝く淡い金髪をみれば、この国ではだれもが彼を王家の人間だと一目で認識する。彼の細い指には白く濁った石の付いた指輪がはまっていた。王家の人間がするにはあまりに簡素だが、不思議と目を引く指輪だ。


「すみません。しばらく会わない間にジーク王子が立派になっておられたので……昔のように接していいのか迷いました」


少し口調を崩し、昔のように呼ぶとジークフロイトは嬉しそうに微笑んだ。


「マナーや剣術の教師がさらに厳しくなったからね。もう耳に何かできるくらい白の賢者は立派でなければいけないって言われる。前任のフローティアが素晴らしかったからそれは仕方ないよね。これからは私も この石にふさわしいような人間にならないといけない」


まだ8歳の少年はそっと指輪の石を撫でる。


「叔父はフローティア様が亡くなってからふさぎ込むようになっていましたが……あんな急に亡くなるとは思っていませんでした。ですがジーク王子が白の賢者になられたことは叔父に伝えることができました」


「そうだった。白の賢者になってからアドニスには会えていなかったからね……アドニスはこのことを喜んでくれているだろうか」


「最初は驚いていましたが。8歳の、しかも王族が賢者となるのは前代未聞ですから」


ロイドは嘘を言ったわけではないが胸の痛みを顔に出さないように努めた。ロイドの叔父であり、最近亡くなった黒の賢者アドニスは決して喜んでなどいなかった。


読んでいただいてありがとうございました!

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