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第124話

 やっぱり虎君は頼りになる。僕が知らないことも、虎君はちゃんと知ってるから。

 僕は当然のように理由を知りたいと思ったから尋ねる。この感覚の原因はなに? って。

 すると虎君はすごく優しく笑うと、『本当に知りたい?』って聞いてくる。

(知りたいから聞いてるのに、なんで確認するんだろう?)

 虎君の質問にそんな疑問を抱きながらも知りたいと頷いたら、虎君はまたキスしてきた。

(すごい……僕、今すごく幸せだ……)

 さっきよりもずっとずっと幸せな気持ちが胸を満たしてて、虎君と一緒ならもっともっと幸せになれる気がして嬉しかった。

 唇を離す虎君はコツンと額を小突き合わせると、『なら教えてあげる』って笑う。

 その笑顔にドキドキしてたら、次の瞬間僕は虎君に抱き上げられてて、ビックリした。

 突然のことに驚きながらも虎君にしがみついたら、虎君は今度は僕の額にキスして、そのまま僕をベッドへと運んだ。

『虎君……?』

 僕が今まで感じたことのない感覚の『理由』を教えてくれるんじゃなかったの?

 どうしてベッドに寝かされたのかわからない僕は、ちょっぴり戸惑い気味に虎君を呼ぶ。

 虎君はベッドに座るとそんな僕にまた微笑んで、僕に覆い被さってきた。

『ちゃんと教えてあげるから大丈夫』

 3回目のキスの直前にこぼされた言葉。僕はキスを受け取りながら、『早く教えて』ってねだった。

『葵は悪い子だな』

『え? どうして……?』

 言葉とは裏腹に嬉しそうな虎君の笑い顔に、さっき感じた呼び名のわからない感覚が身体を駆け巡る。

 ドキドキしすぎてこのまま止まってしまいそうな心臓を押さえるように手を握ったら、虎君はまた唇にキスを落としてくる。何度も、何度も……。

 僕の唇を啄むようなキスをたくさん落としてくる虎君。どうしようもないほど幸せな気持ちでそれを受け取っていた僕は、呼び名のない感覚がどんどん身体を支配していってることに気がついた。

(この感覚、なんだろう……虎君にキスされる度に強くなってる気がする……)

 知らない感覚が、怖い。

 これ以上身体を支配されたら、何かが変わってしまいそうな気さえした。

 でも、それでも僕は虎君からもらうキスを拒むことができない。拒みたくない……。

(虎君、大好き……)

 何度キスをもらったかなんて、もうわからない。

 幸せすぎて虎君のことしか考えられなくなる思考に、もっと虎君にさわって欲しいと思った。もっと虎君に触りたいって思った。

 そんな思いが虎君に届いたのか、それとも虎君も同じ気持ちでいてくれたのか、抱き締める手に力が籠って僕たちの距離は限りなくゼロに近づいた。

(もっと虎君を感じたい……)

 貪欲になる思いに歯止めが効かない。

 でも、僕が望むまま、虎君は僕に触れてくれた。

『と、らくん……』

 お腹に触れたのは、虎君の手。

 いつの間にかパジャマははだけてしまっていて、ぼんやりする頭の片隅で、

(虎君って器用だなぁ)

 なんて思っていた。

 パジャマの上着のボタンはすべて外されてて左右に開かれてる。

 コンプレックスでもある女の子みたいな自分の肌を虎君に見られて恥ずかしいと思いながらも、何故か隠す気にはならなかった。

 虎君は僕の肌を見下ろすと、笑った。それはからかいとかそういうのじゃなくて、もっとずっと愛に満ちていて、その笑顔だけで僕がどれほど虎君に愛されてるか実感できた……。

『触っても良い……?』

『うん……』

 触れようと伸ばされる手に、心臓が締め付けられる。

 虎君の指が僕の素肌に触れた瞬間、ずっと身体に渦巻いてた名前のわからない感覚が突然暴れだした。

 ただそっと触れられただけなのに、お腹に手を添えられただけなのに、僕の身体は僕の意思に反して過敏な迄に反応を示した。

 驚いたわけでもないのにビクッと跳ねる身体。それはゆっくりと動かされる虎君の手に反応してるようで、恥ずかしい。

 そんな僕を愛しげに見下ろす虎君の視線は更に羞恥を煽って、僕は身を捩って逃げようとしてしまう。

 でも、虎君からは逃げられない……。

 普段ならこそばゆいはずのふれあい。でも今は全然違う。こそばゆいと感じるよりも先に得体の知れない何かが身体を這い、下腹部にあつまって来てるみたいだった。

『虎く……、なんだか、僕、へん……』

『どう変なの?』

『身体、ムズムズしてるの……』

 もじもじと足を擦り寄せながら異変を訴えたら、虎君は『大丈夫だよ』って笑ってくれる。『普通のことだよ』って。

 虎君の言葉は、魔法みたい。

 虎君が『大丈夫』って言ってくれたら、僅かな不安もなくなっちゃうんだから。

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