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アルメリダン① 諦める
――――ダッシュは無理。なのでスーっと何事もないかのように歩くことにした。
「……」
「待ってくれ」
ドキーン。頼むから私に話しかけるんじゃない将軍。もしやすでに気がつかれていた?
私が欺いたと思い込んでいるのをあえて泳がせ、草葉の陰から笑っていたのかこの男!
「よかったら名を教えてくれないか」
(はぁ?)
客観的に見るとこの男<アルメリダン>は、新人の女中に扮した敵将に名を尋ねている。
たぶん正体が私だとは気がついていない。
―――体の一部が少し変化しただけなのに、こうまで違うのだろうか。
直接武器を交えたわけではないので、顔より羽等に目がいったとも考えられるか。
どうしたものか、偽りの名をクララにしようかクレマチスにしようかで迷う。
「……クレアです」
クレジアからジを抜いただけだが、別物になった気がする。
「いい名だ」
適当につけただけなのに?