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現代式 正しい(?)論語の読み解き方その3

作者: Towa

これ連載版として一まとめにしました

よければ次からそっちを見ていただけるとうれしいです。

「【()(いわ)く、巧言(こうげん)令色(れいしょく)(すくな)いかな仁。】」

 

 先輩が今日の教えを提示する。


「今日のはまた短くて簡潔ですね」


「そうね、意味もとっても簡潔だし。『上辺だけの飾った言葉や態度は仁が薄い』ってだけだし」


「まあ、当然といえば当然ですね」


「さーて、今日も何か論語の新しい説を考えていこー!」


「先輩、今日も何かあるんですか?」


「ん?ないよ」


「ないんですか……」


「特に思いつかないから今から一緒に考えようかと思って。さあ琴浦君、何か意見を出しなさい」


「何か意見を出しなさいって……。別にないならないでいいんじゃないです

か?」


「やだ。私がつまんない」


 またこの人は……


「そう言われましてもね。そもそもあまりに当然のことすぎますし、何かを差し込めるほど長い文章でもないですし」


「そうなのよね。疑問を差し込む余地がないほど簡潔なのよね、これ」


「まあでもこれ、例外もありますよね。先輩みたいに。」


「例外?どういうこと?」


「簡単なことですよ。先輩は上辺を飾ってもが飾らなくても仁が薄いです」


「はぁー。私のどこが仁が薄いっていうのよ!」


「はっはっは、ご冗談を。もしかして先輩は自分は仁が厚いと思ってるんで

すか?それは勘違いですよ。先輩の場合逆に上辺だけでも飾った方がまだ見れる気がしますね」


「うぅー、なんなのこの後輩。そんなこと言う琴浦君だって仁が薄いんじゃないの?」


「何を言ってるんですか先輩。さっき言ってたじゃないですか。言葉を飾ったりするのは仁が薄いって。だからこそありのままの気持ちを言ったんですよ。そんな僕の仁が薄いはけないじゃないですか。少なくとも先輩より」


「むきゃーーー」


 ちょっと涙目の先輩がわけのわからない奇声を発する。


「そこまで言うなら、見せてあげようじゃない。私の本気を!」


「……飾らない行動こそ仁があるのでは?」


「何を言ってるの琴浦君。今からやるのは飾ってるんじゃないわよ。本気を見せるだけよ」


「はぁ、わかりました。では見せてください、その本気というやつを」

こうして先輩の本気(?)とやらを見ることとなった。





「【()(いわ)く、巧言(こうげん)令色(れいしょく)(すくな)いかな仁】」


 先輩が本日2度目の今日のテーマを提示する。


「それで、これにはどういった意味があるんです?」


「ふふっ。ではまず今日はそれについて一緒に考えてみましょう」

 

 うわっ、なんかちょっと寒気がした。


「あら、何か今失礼なことを考えていませんでしたか?」


「いえいえ、特に何も」


 なんか考えを読まれた。


「そうですか。ではまず【子曰く】のところから。この子というのは孔子先生のことを指します」


「はぁ」


「孔子先生は我らが論語部において最重要人物といっても過言ではありません」


「まぁそうですね」


「そもそもこの孔子先生とは、中国における春秋時代と呼ばれる時代の思想家でして」


「え?そこから語るの?」


 ―しばらく経過―


「……つまり論語とはその孔子先生とそのお弟子さんたちによる言行録でして」


これいったいいつまで続ける気だ?


 ―またしばらく経過―


「……であるからしまして」


「先輩、この調子だと内容について触れる前に時間切れになります」


「あら、そうですわね。では今から内容について触れましょうか」


「いえ、もう結構です」


 こうして先輩の本気とやらは終わった。





「それでどうだったかしら琴浦君。私の本気は」


「そうですね。正直、やればできるんだなーとは思いました」


「ふふん。そうでしょう、そうでしょう」


「でもそれよりも」


「それよりも?」


「正直きもかったです」


「な、きもいって何よ!」


「なんというか、普段の先輩を知っているだけに違和感ありすぎというか。

それからこっちの都合お構いなしにしゃべりすぎです」


「なんなのこの後輩。かわいくない。」


「いや、ちゃんとやればできるってのは伝わりましたよ。伝わりましたけ

ど、それを補って余りある違和感というか」


「じゃあどうしろっていうのよ!」


「やっぱりあれですね。自然体が一番。いやー、今日は論語の正しさが検証

できていい活動だったじゃないですか。飾ったりするのよくない」


「あなたはもうちょっと言葉を飾った方がいいわよ!かわいげがなさすぎよ!」


「それは出来かねますね。なんせ我らが孔子先生も飾ると仁が薄いって言ってるわけですし」


「何都合のいい時だけ論語を使ってんのよ」


「ははは、気のせいですよ」


「はい、今日の結論。言葉や態度をむやみやたらと飾るな!でも時と場合による。具体的にはどこかの後輩がかわいくない!」


「でも孔子先生は」


「異論は認めないわ。だいたいね、自分の本心ばっかりしゃべっても社会は生きていけないのよ」


「おぉー、先輩がちょっとまともなことを言ってる」


「私はいつだってまともよーーー!」


 こうして今日の議論も過ぎていく。

今日の結論、『時と場合によっては言葉や態度を飾るべきだ』ということらしい。

 相変わらず今回も部分的とはいえ見事に孔子の教えを否定しにいってるな。

 うち論語部なのに……。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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