電車のホームで、君を
この作品はエブリスタで私が書いてる作品の転載です。
短編集の一部を抜粋しました。
エブリスタでは「雨憂」で活動しております。
もちろん自分が作者なので許可はありますwww
エブリスタの方がどうなのかですがね・・・
もしかしたら消す可能性もあります。
その時、何故、私はその人をかばったのかわからない。
それでも、私は彼を助ける事が出来てよかったと思っている。
私は彼を愛していた。
もうこの気持ちは届かないけれど。
駅のホームで電車を待ち続ける。
高校生の私はその時間さえじれったくて早く来ないかと
携帯を開いたり閉じたりを繰り返す。
そんなことをしているうちにその人はやってくる。
結構な数ある階段をゆっくり上がって来ます。
私の少し前に立って空を見上げている彼は、多分大学生くらい。
私は足音をたてないようにしてゆっくり彼の斜め後ろに移動。
彼の横顔を見るのが私は好きだ。
いつもこのホームで空を見上げてる彼は何故か遠くを見つめている。
とても悲しく、ぽっかりと穴の開いた心を埋めたいのに誰も居ない、そんな瞳をしていた。
何かしてあげたくても声をかけるのが苦手な私は少しだけ顔を眺めて後ろに立つだけだった。
そんなある日、彼は一輪の花を線路に投げ入れた。
手をあわせて、それからゆっくりと空を見上げた。
じっと見つめていると、彼の頬に涙が流れてきた。
彼はここで大切な人をなくしたのだろう。
私も彼に泣いてもらえるような人になりたいと、
勝手に想像してそれを振り払った。
私には到底無理な事である。
家でも学校でも虐められてしまう弱虫な私に、そんな事をするのは認められない。
彼に聞こえないように小さくため息をついた。
彼はまだ大切な人を忘れられないでいる。
誰も入り込む隙間もないくらいに大切な人が彼の中に溢れている。
だから、私は、
こうしてホームで彼を見つめるだけでいいのだ。
いつだって私は虐められっこだった。
頭も悪くて、親にさえ飽きれられて、私はいつも孤独の中に居た。
「まったく、なんでこんな子になっちまったんだか…」
「もうちょっとがんばったら?ブスなんだから頭ぐらいよくないと…」
「きもっ、まじ近づくんじゃねぇし」
「死ね」
頭の中でいつもそんな言葉が流れていて、何度死のうと思った事か。
私の世界は死だけが広がっていた。
希望を見る事さえやめようって思って。
そしたら彼に出会った。
彼の存在だけはただ一つの大切な希望のカケラ。
彼の姿を見つけるだけでその一日を苦しくても乗り越えていく事ができる。
「ねぇ、君…」
初めて誰かに声をかけられて、肩をつかまれて、振り向くとそこには彼が立っていました。
驚きのあまり砕けてしまいそうな腰を気力で保ちます。
「…な…んですか?」
声が裏返った…。
「失礼かも知れないんだけどさ…いつも僕の事、見てない?」
「…ごめんなさい!」
思いっきり謝りました。
大声で。
初めてこんなに大きな声を出しました。
まわりの人の視線がキツイです。
「別にいいんだ…ただ、嬉しいというか…君に見ててもらえると安心するような気がして。死んでしまいたくなる僕をただ無言で引き止めて、励ましてくれてる感じでさ」
感動で涙が出そうです。
「こ、ここで誰か亡くなられたんですか?」
彼の顔が一瞬青ざめました。
それから少し苦笑いをして言いました。
「うん、僕の恋人がね」
「二番線、各駅停車、東京行きがまいります、黄色い線の内側までお下がり下さい。」
駅に響くアナウンス。
二人で並んで電車が来るほうを見つめます。
ゴウン、ゴウン。
だんだん電車の音が近付いて来ると彼は線路に向かって歩き始めます。
「今日は、死ぬために来たんだ。ごめんね、出会ったばかりなのに、もう君とお別れだ」
彼は黄色い線の内側で、一度振り向き言いました。
そして体が線路に向けて落ちていきます。
私は必死で彼に駆け寄ってその腕をつかみ、内側へと引き込みます。
もちろん反動で私は線路の上に落ちました。
私はとっさに鞄を彼の足元…といっても見えませんが、とりあえず彼へ向けて鞄を投げます。
あの中には私の命より大切な彼への手紙が入っているのです。
私を見ている彼に笑顔を向けます。
「手紙を!!」
「!!」
ドンッ。
激しい痛みが一瞬訪れ、消えました。
また目が覚めた時は駅のホームでした。
騒がしい声がホームに響いています。
彼の周りには私が投げた鞄の中身が広がっていて、運よく彼の足元に手紙がありました。
彼はその手紙を手に取り広げました。
私は彼が口を開くのと同時に、一緒にその手紙を読み始めました。
「…いつも涙を流している貴方へ。私は貴方の事が好きです。とまず言わせてもらいます…」
----このホームで貴方を見つけてから、死にたい心を貴方を見ているだけで抑えられました。
同時に、もし貴方が死にたくなっていたら、生きて下さいと願いました。
この手紙をもし貴方が読んでいるとしたら、それは私が死んだ時か、どちらかが話しかけられた時だと思います。
けして貴方が先に死んでこの手紙を読むことがないなんてことがないと、私は信じてます。
だから死なないで下さい。
私が死んでしまったとしても、貴方に生きていてもらいたいのです。
親にも学校にも嫌われてる私にとってただ一つの希望だったのは貴方です。
大切な人の事を忘れられなくたっていい。
私に気付いてくれただけで嬉しいです。
ありがとうございます、そしてごめんなさい。感情を押し付けるみたいで…。
最後に、もし私が生きていたら。ほんの少しだけ夢を下さい。
ずっと貴方をホームで見つめるだけの夢を、見させて下さい。
…臆病者より…
----私は彼と同時に読み終えた。
「…僕が、死のうなんて考えなければ…」
私の手紙をくしゃくしゃに握りしめて彼は涙を流します。
そろそろ私は行かなくてはなりません。
私はそっと彼に口づけをしました。
「さようなら。近いうち、また会いに行きます。」
もう聞こえないだろうけれど伝えました。
私はそして消えたのです。
時折、ホームに立つ私は、
そこに彼の姿を見つけます。
「いつも大切な人を僕は失う…」
そうして彼は美麗しい涙を流し、空を見上げます。
こうして彼の顔を見上げてるだけで今日だって私は幸せです。
声をかける事は出来ないけれど…。
****END****
読んで頂きありがとうございます。
短編集の一部ですが、
これは高校の時に書いて以来
結構気に入ってるお話です。
みなさんにも感動を伝えられるといいのですが・・・。