1-2 来世は当て馬希望
「2人とも来世に行ったか」
「ええ、ストーカーを1人残してね」
「誰がストーカーだ」
ストーカーなんかじゃない。私は滅亡した王国の王だったんだ。
「死んでからもこっそり見てるだけなんて、なさけない。ちゃんと話せば良かったのに」
「今更だろう」
彼女と結婚して王の座についた時には、未来はもう決まっていた。
長年の他国との戦、それに伴う膨大な出費、国も国民も疲弊しきっていて、立て直すことは不可能だった。
伝説になるような英雄ならばどうにか出来たかもしれないが、あいにく私は王になる教育だけ施された凡人だったから。
「良かったよ、2人とも安らかに微笑んで来世に行ってくれた。もう心残りはないな」
「あなたと私のことは恨んでいたでしょうけどね。……ねえ、もっと早く王家から切り離して助けることは出来なかったの?離婚するとか」
「離婚なんてしたら、クーデターの上層部に臓器まで売られて利用されてたんじゃないかな……とにかく酷い状況だったから」
だから彼女を、森の奥の離宮に閉じ込めておくことしか出来なかった。
「君はよく知ってるだろう?クーデター軍の一員だったんだから」
「そうね、王へのハニートラップを任されるぐらいには重用されてたけど。……でもハニトラ要員は敵陣に入り込む役目だから重大な情報はあまり渡されないの。正体がバレて拷問されたり、稀にだけどトラップの相手に情が移って裏切ったりするから」
「君は全然僕に情が移ったりはしてなかったのに、土壇場で味方に切り捨てられて殺されて、かわいそうだったね」
「最低限の優しさぐらいなかったら情も移りようがないわ。何その言い方。人の心無いの?」
「無いかもね」
人の心がないから、彼女にも酷いことが出来たんだ。きっと。
遠ざけておけば、他の女が実質王妃だと思われれば、彼女だけは助かるかもしれないと考えたけれど、結局彼女も殺されてしまった。
彼女のそばにいたのは飼っていた犬だけだった。
「人の心が無いなら、来世は犬に生まれたら?彼女の飼い犬に。そうすれば死ぬまで一緒にいられるかも」
「それは少し魅力的だけど、元飼い犬の彼と出会って恋に落ちるのを間近で見ることになってしまう。それならばいっそ当て馬になりたいな」
「ええっ?当て馬?」
「そう、彼女が彼と、気持ちがすれ違った時にそっと寄り添うんだ。それなら彼女に思い切り優しくできる」
「なーんか、せこいなぁ……。ま、前世で国をめちゃくちゃにして殺された王様の思い通りには生まれ変われないだろうけど」
「そうでもないよ。僕の死は国を変えたわけだから。国や歴史に大きい影響がある死に方した人にはちょっと融通きかせてあげるって。ここで最初に話した神様っぽい男が言ってた」
「え、自分だけずるい」
「君もある程度希望が通るんじゃないかな?何に生まれかわりたいの?」
「うーん……、来世は男に生まれたい……かな」
「男、いいね。同性だったら友人になれそうな気がするよ」
「いや、あなたと友人になるのは遠慮したいけど。……ハニトラじゃなくてさ、剣持って城に乗り込みたかったんだよ、私」
「ああ、似合いそうだな」
そう言って、初めて僕たちは笑い合った。




