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限界女医、『まもの使い』になる〜プロローグ〜  作者: wag


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3/3

3

「あ~~、寝る」


「おやすみなさいませ、キラーヤ様」


ちょうど寝ようとしていたところに急患が飛び込んできた女性、ことキラーヤは改めて寝る宣言をする。


が、すっかり覚醒してしまってちょっとすぐには眠れそうにない。



カウチに寝そべり、どうしたもんかとゴロゴロしていると、

ふわりと銀の蝶が飛んできてカウチに止まった。


「とうとう伝説になったか」


と蝶から笑う声が響く。若く張りのある男性の声だ。


「見てたの?」

「ああ」


銀の蝶はゆったりと羽根を羽ばたかせ、また笑う。

そして穏やかな、労るような声色で語りかける。


「感慨深いな。

 お前がこの世界に渡ってきた頃を思い出すよ。

 『まもの使い』の宿命に怯みきっていた、

 あのへっぴり腰が懐かしいな」


「やめてよ、こっちは必死だったのよ」


「はは、そうだろうな。

 ・・・なあキラーヤ、明日一緒に昼食はどうだ?


 お前の顔が見たくなった」


「いいね、明日はちょっとのんびりするつもりなんだ」


「では明日。迎えに行くよ」



そう言って銀の蝶は舞い上がり、少しの鱗粉を撒いてふわりと消えた。



『すっかりこっちの世界に馴染んだもんだな』



軽く目を閉じ、キラーヤは以前の世界を思い出す。



響く救急サイレン、

呼び出し電話のベル、

『先生』と自分を呼ぶ声。



そう、自分はかつての世界でも医師だった。


『吉良 綾』が『キラーヤ』になり、

『医師』が『まもの使い』になり、


色々あって、色々あってまた『医師』になった。



「まだ眠れないの?」


ふさふさとした九つの尾を揺らめかせ、大きな狐が現れる。


「いいや、なんか眠れそうな気がしてきた」


「部屋に行く?」


「うーん」


九尾の狐はキラーヤの足下に丸まり、またしっぽをゆらゆらさせる。


「キラーヤ、お疲れさま」


「ありがと」




色々あった、のだ。

世界を渡ってきて、『まもの使い』だと分かって旅に出て、

仲間を増やして、やりたいことを見つけた。


そして、恋だってした。

大切な人ができたのだ。



『もしあっちの世界に帰れると言われたら、

 今の自分はどうするかな』



足下に暖かい毛並みを感じながら、

キラーヤは目を閉じた。





ーこれは長い長いお話である。


愛すべき魔物たちの穏やかな寝息のような、


長い長い、話である。



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