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第1章 展示宇宙船キララ号

「眩しくて、よく見えないよ」

 タツヤは右手をかざし、陽の光が行き渡った青空を見上げた。

 西暦3035年、5月のある晴れた日曜日、タツヤは父親タツノシンに連れられ、東京郊外にやって来た。そこは、普段なら原っぱが延々と続くだけの何もない地域だが、今日ばかりは、様子が違っている。

 原っぱは、人で埋め尽くされ、地面を這う蟻の群れのように、長い行列ができていた。行列は、簡素な造りの白い建物を目指している。その列に並んでいるのは、子ども連れの家族や、友人同士、恋人同士、あるいはふらり立ち寄った観光客など、実に様々だ。皆、興奮気味に騒ぎながら、その建物の遥か上空を指さしている。

 あれが、東京宇宙空港だよ、と。

 明るい空には、白い綿雲に混じって、巨大な銀色の塊が宙に浮いていた。異様な光景ではあるが、よく見ると、それは階段型の銀色の建物だった。段がきれいに整えられているので、てっぺんが平らなピラミッドのようだ。

「地上から見ても、こんなにでかいのか。いったいどれくらいあるんだろう」

 タツヤはため息混じりにつぶやいた。すると、タツノシンは少し面倒くさそうに、空を仰いだ。太陽が眩しいので、思わず顔をしかめていた。

 タツノシンは、がっしりとした体格だが、頭には白髪がちらほら見え隠れしている。顔つきは堀が深く、精悍そうで、どこか近寄り難い。タツノシンのことを知らない人は、きっと気難しい特別な役人か、世俗を離れた偏屈な芸術家としか思えなかっただろう。実際タツノシンは見かけどおり、気難しく頑固で無口だった。

 一方、息子のタツヤは父親とは反対に、いたって軽やかで、人好きのする性格だ。顔かたちも父親と似ているところがなく、二人が親子であるとは、一目見ただけではわからない。母親の方に、似たのだろうか。きっと、みんな、そう思うだろう。

 タツヤは先日、13歳になったばかりだった。どこにでもいる、ごく普通の少年だが、今日は、明らかに元気がなかった。

 タツノシンはかざした太い手指の間から、銀色の塊を覗き見た。

「先月、建て増ししたので、空港はとうとう100階建てになったらしい。ひとつの街が丸ごと、あの中に収まるそうだ。だが、そんなものをわざわざ宙に浮かべる必要があるのか、疑問だな」父タツノシンは、皮肉めいた笑いを浮かべた。「まあ、三百年前に辺境の星アデロで偶然発見された輝眼石(きがんせき)がこんな風に使われるとは、ご先祖様も考えていなかっただろう」

「でもそのおかげで、どの国も宇宙空港や都市を宙に浮かせて、いろんな問題が解決したんでしょ?騒音とか、土地の問題とか、環境問題とか…」

 タツヤは、学校で習った教科書どおりの答えを父親にぶつけた。

 輝眼石と呼ばれる緑の石は、特殊な加工をほどこすと、自然と宙に浮く。その惑星の持つ重力を無効にし、しかも、非常に安定して半永久的に浮かんでいられる。その性質を応用し、今では世界各国が宇宙空港や都市を次々宙に浮かせている。

「ああ、人間が欲さえ出さなければ、うまくいっていたんだろうな。惑星アデロからありがたく頂戴した貴重な輝眼石を、地球はもっと大切に利用したはずだ。しかし輝眼石を知った欲深い人間は、こぞって野蛮な開拓船を宇宙に送り出し、たまたま行った先で宝の石を見つけると、根こそぎ奪ってきたのだ。輝眼石だけではないぞ。使えそうなものは、ここぞとばかり、可能な限り地球へ持ち帰ったのだ。輝眼石をぜいたくに使ったあの宇宙空港だって、そのおかげで悠々と宙に浮いていられるのさ」

 タツノシンは、額にかいた汗を手でぬぐった。燦々と大地を照らす太陽と、大勢の人の熱気で、まだ5月なのに、あたりは異様に暑苦しい。白い建物の前には、うんざりするほど長い行列が続いている。行列に並んでいる人々はみな、上空の空港へ上る昇降カーを待っているのだ。その行列の前方に、タツヤたちは並んでいた。タツヤもたまらなくなり、黄色い厚手の上着を脱いだ。

「父さんはいつも、宇宙や科学技術に不満たっぷりだよね。それなのに、ずっと宇宙管理局に勤めている。どうしてなの?」

 日頃思っていたことを、つい口にしたタツヤは、言ってからしまったと思った。宇宙の話になると、たいてい、この頑固親父は機嫌が悪くなるのだ。しかしタツノシンは、別段怒り出すこともなく、タツヤをちらり見ると、冷ややかな口調で返した。

「単純な理由だよ。あそこでの仕事は、地上を離れることが一切ないからさ。だから、安心して、どうでもいい宇宙なんかに関わっていられる。暴走する違法な宇宙船についての報告書を書いたり、外宇宙からやって来る人々の書類を作ったりするだけだ。まあ、宇宙に出て行くのは、人それぞれで勝手だが、生きて戻れる可能性は確実に小さくなる。戻って来なかった奴は、五万といる。それを知っているからこそ、まだ子どもの一人息子を、ゆくゆく危険な宇宙へ行かせたりはしないだろう。少なくても、大人になるまでは、許さないつもりだ」

 タツノシンの静かだが重く含みのある言葉に、タツヤはゲッソリした。これは、自分に向けられた言葉だ。自分は、いつまでたっても子ども扱いされる。確かに、まだ未成年だが、自分の人生は自分自身で決めたい。タツヤは、つい先日の出来事を思い出した。

 それは、タツヤがずっと抱いていた夢を泣く泣く手放した日でもあった。

 タツヤがずっと目標にしていた宇宙技術専門学校への入学を、父タツノシンに強く反対され、断念せざるを得なくなったのだ。その上、タツノシンは、法律学校への入学を勝手に決めてしまった。これは、タツヤの側にも落ち度があった。宇宙技術専門学校以外、どこにも行かないと、頑なに宣言していたからだ。

 だが、それにしても、法律学校はないだろう。タツヤは思い出すたびに、腹の中が煮えくり返った。当然、猛烈に抗議したが、他校への願書申請期限も過ぎてしまい、結局、タツヤの言い分は何一つ認められなかった。こんなことなら、宇宙技術専門学校以外の選択肢を無理やりでも、あげておくべきだったのだ。

 タツヤはひどく絶望し、数日間は自室に閉じこもっていた。自分の未熟さに憤り、何一つ決められない未成年の自分を呪った。

 それでも、タツノシンから、法律学校を卒業し、最低でも法律事務官の資格を取得したなら、後は自由にしてよいと提案された。納得はしていないが、タツヤは渋々妥協した。後3年は、法律学校に縛られるが、3年後の自由を夢見て、頑張るしかないと諦めたのだ。

 そして、法律学校への入学が決まった祝いにと、宇宙嫌いの父がこうして重い腰をあげ、航空ショーが行われる宇宙空港へタツヤを連れて来たのだ。宇宙空港へは、友人たちと何度か遊びに来たが、一般用の展示室を見学し、空港の外側に並ぶ売店を見て廻るのがせいぜいだ。

 原則、14歳にならないと、保護者の許可なしに、宇宙空港内には入れない。ましてや、宇宙空港としての肝心な部分は、正式な乗客か、特別な許可を併せ持っていないと立ち入れない。広大な空港内部は、ガラス越しにチラリとしか、その姿を見せてくれないのだ。

 その日宇宙空港では、年に一度の派手な航空ショーが開催される。東京上空の、空と宇宙の境目を最新式の宇宙戦闘機が乱舞し、日頃の腕前を惜しみなく披露する壮大なショーだ。タツノシンは、その航空ショーを見るため、特別席を予約していた。

 大勢の人々が、その人気の航空ショー目当てで、朝早くから、地上基地に詰めかけている。上空に浮かぶ空港へのシャトル便を待つため、こうして辛抱強く並んでいるのだ。上空に浮かぶ空港へは、昇降カーでしか行けない。昇降カーはそのおかげで、はしゃいでいる家族連れや興奮した子どもたちを、ひっきりなしに上空へと運んでいた。

 タツヤたちも昇降カーの一つにようやく乗り込んだ。中は、思ったとおり、蒸し暑く騒がしかった。すし詰めになった昇降カーは、すぐに上昇を始めた。透明な昇降かーからの眺めにすっかり興奮した子どもたちが、しきりに大声で騒いでいる。

 そんな浮かれた人々や雄大な景色を目にしても、タツヤの心は晴れなかった。もともと、タツヤにとって、航空ショーはどうでもよかった。華麗ではあるが、一般人に見せるための飛行には、興味が湧かないのだ。

 見せるための飛行や操縦ではなく、人や物を乗せた宇宙船の操縦に、タツヤは昔からとても憧れていた。そうだ、自分は宇宙船を自由に操り、宇宙の大海原に繰り出したいのだ。それなのに。

 来週から始まる法律学校のことを考えると、憂鬱で気分が悪く、思いっきり自分がみじめに感じた。3年間は、地上の奴隷となり、天を見上げる代わりに、分厚い法律書に向かってひたすら首を垂れる。そんな自分を想像すると、吐き気がする。

 それにしても、何故、法律学校なのか。タツヤは父親に尋ねてみたが、タツノシンの回答は曖昧だった。タツヤは幼い頃から、宇宙での大冒険や大活躍を夢見て、ふわふわと過ごしている。夢は大事だが、あまりに夢を見過ぎていると、現実社会の中では生き残れない。だから、バランスを取るため、宇宙とは正反対の法律を学び、地上の世界で実践する経験が必要だと、タツノシンは言う。

 つまり、タツヤには、地に足をつける経験が必要だと、勝手にそう思っているらしい。

 頭上の宇宙空港は、まるで、決して叶えられない夢のように、上からタツヤを見下ろし、タツヤの運命を嘲笑っている。どうにも動かせない特大の漬物石のようだ。タツヤは、憂鬱なため息をついた。

 宇宙空港でただ一つ、タツヤが心引かれたのは、空港に展示されている小型宇宙船だ。この展示宇宙船がなければ、タツヤはこの宇宙空港に、来なかったかもしれない。

『皆さま、本日はご搭乗ありがとうございます』昇降カーの人工音声が響いてきた。『この臨時シャトル便は、上空5キロメートルに仮静止中の東京宇宙空港にまいります。当空港は、銀河連邦地球政府所属の空中空港で、100階建て、最大の直径は約3kmになります。地上5kmから100kmの間の上空を、自由に行き来できる移動型の空港でもあります。外宇宙への発着施設、東京宇宙ステーションにおいでの方は、こちらでお乗り換えください。東京宇宙ステーションは、宇宙空港のさらに上空、地上400km地点に静止しております。なお、本日は航空ショー開催のため、臨時増発している昇降カーの運行が終了しましたら、当空港は上空100kmの熱圏まで、すみやかに移動する予定です』

 昇降カーはいよいよ速度をあげ、地上は模型にしか見えなくなった。霞んでいく地平線を昇っていた白い月が、いつの間にかタツヤの視線と同じ高さになっている。もう宇宙空港は目の前だ。見上げると、豆粒ほどの昇降カーが数珠繋ぎになって、巨大な円盤の底に吸い込まれたり、吐き出されたりしている。

 やがて昇降カーの速度がぐんと落ちて、暗く狭いトンネルを通過した。と思ったとたんに、オレンジ色の照明が四方から差し込んできた。空港に着いたのだ。昇降カーの六方に張られた特殊ガラスが一気に開くと、待ち焦がれた乗客が、オレンジ光のシャワーの中にどっと繰り出して行った。

 タツヤたちは、宇宙空港の中に足を踏み入れた。

 信じられないほど巨大だ。ガラス越しではなく、自分が実際にそのとんでもない世界の中にいる。タツヤは、思わず立ち止まり、目を見張った。

 建物の真ん中は壮大な吹き抜けで、外壁に沿って半円を描くように、三日月型の各フロアが段違いに張り巡らされている。1階にある搭乗口のフロアは、1周すると、9km以上の距離になるらしい。

 丸い天井は気が遠くなるほど高く、まさに天そのものだ。人工の太陽や月、大きな星々が水晶でできた天井面をゆっくりと横切っていった。その下には、段違いになった半透明のフロアが折り重なったまま天空に浮かんでいる。目を凝らしてみると、大勢の人がフロアの中で、蟻のようにうごめいている。

 空港の外側には、四方八方に枝分かれした連結通路が、各々の宇宙船につながり、ぶどうの房のように、張り巡らせられている。宇宙船たちは、空港から伸びた鋼鉄製の腕にがっしり掴まれ、空港から簡単に離脱しないよう固定されていた。

 そこには、月と地球を往復する大きな貨物船、地球の裏側へひと飛びの真っ黒な高速艇、宇宙ステーション往きの定期便、やたら、テカテカ光る個人所有の小型宇宙船など、どれもこれもが太陽の光を反射して、ピカピカに輝き、発進するのを今かと待ち構えている。

 何よりも、もの凄い人混みにタツヤは驚いた。有名なイベントである航空ショーのおかげには違いないが、それにしても、人が多過ぎる。興奮のあまり、ついあたりをキョロキョロしていたタツヤは、そのせいで歩いている人に何度もぶつかりそうになった。

 一方、タツノシンは、わき目もふらず、空港内をほとんどまっすぐに突っ切ると、エスカレータにさっさと乗り込んだ。そして昇っていくエスカレータから、睨みつけるようにあたりを見廻した。

「まさか、こんなに混んでいるとは思わなかったな。これは早めに、会場に入った方がよさそうだ」

 その口調から、早くも、父の上機嫌が崩れかけているのを、タツヤは見逃さなかった。

 そもそも宇宙嫌いの父が、航空ショーのチケットを買い、宇宙空港にタツヤを連れてきたのは、奇跡に等しい。タツヤが渋々であれ、自分の薦めた法律学校へ入学したのがよほど嬉しかったのだろう。そうでなければ、目の敵にしている宇宙空港になぞ、一生足を運ばなかったに違いない。

「ねえ、パパ、無重力まんじゅうを買ってよ」

 小さな子どもが30階にある売店の前で、親にねだっている。空港名物の宙に浮く無重力まんじゅうや色とりどりのリング・ソーセージが楽しげに、軒先に浮いている。しかしタツヤたちは、賑やかな30階もさっさと通り過ぎ、上へと運ばれていった。

 35階に達したエスカレータは、先端の方から、透明な壁で囲われたエレベーターとなり、乗客を乗せたまま、ちぎれるようにして真上に昇っていった。75階に到着すると、また階段状のエスカレータに戻り、さらに上へと続いていた。

 受付のある80階でエスカレータを降りた後も、タツノシンは、案内板に目もくれず、人ごみの中を一人、足早に進んで行った。タツヤは父親を見失わないよう、ついていくのが精一杯だった。

 宇宙空港の中腹部分である、80階から83階フロアには、ぐるりと1周、観覧席が設けられていた。普段は展望台だが、航空ショーのため、臨時に座席が準備されたのだ。各フロア約4万人が収容できるので、総合席数は、16万席にもなる。

 ショーが始まるのは1時間以上も先なのに、観覧席への出入り口は、早くも人で溢れていた。それを目にしたタツノシンは、一瞬立ち止まり、苦笑いをした。それから、おもむろにチケットを取り出すと、設置されたセンサーに押しあて、壁の電光掲示板で緑色に点滅する席を苛立たしそうに目で追った。

「ええと、J2458…81階の反対側か」

 ふとタツヤは、右側の柱の陰にいる男たちに気づいた。黒いスーツをぎっしり着こみ、色の濃いサングラスをかけ、小型無線機のようなものを、右耳と口もとにあてがっている。航空ショー見学には、およそふさわしくない格好だ。見るからに怪しい。

 空港警備員なら、灰色の布地に青の縞模様の制服を着用しているはずだ。この制服は、銀河連邦の職員を意味している。男たちは、外部スタッフの腕章も、身分証明カードもつけていない。それだけでも十分うさん臭いのに、人目を避け、こそこそしながら、フロア反対側に通じている廊下のあたりを、妙に気にかけている。

 その時、通りかかった少年が、黒服男の一人にぶつかった。見たところ、タツヤと同じくらいの年齢の少年だ。擦り切れたジーパンをはき、大きな灰色のリュックサックを背負っている。歩き方やしぐさはやや粗雑で、年齢の割に目つきがやたら鋭い。あたりをキョロキョロしながら歩いていたので、この少年も前方をよく見ていなかったのだ。

「気をつけろ、このガキ!」

 黒服の男がよろめきながら、わめいた。しかし、怒鳴られた少年はたいして驚きもせず、さっと身をかわし、脇に避けた。そのすばやい動作に、タツヤは目を見張った。スポーツか武術でもやっているのだろうか。相当鍛えられた身のこなしだ。その少年は言い返そうと、男の方に毅然と向き直ったが、一瞬睨みつけただけで、何も言わず、さっさとその場を立ち去ろうとした。

 黒服男が大声を張り上げたせいで、人々の目がいっせいに、そちらへと向けられた。すると黒服の男たちは、きまりが悪そうに、反対側のフロアの方へ引っ込んで行った。

 タツノシンは、黒服の男たちの後ろ姿を胡散臭そうに目で追った。

「まったく、人が集まるとすぐ揉め事が起きる。この分じゃ、ショーが始まる前に、あと三つ四つ、いざこざがあってもおかしくないな。こんなところで、スパイごっこでもやっているのか?まあ、わざわざ、あんな目立つ格好をしているようじゃ、たいした悪党ではないだろうが。どれ、席はあっちの入口から入るようだ」

 タツヤは、ふうと大きく息をついた。タツノシンは、こんな騒ぎもたいして気に止めず、二つ先にある入口、Jゲートへ歩いて行った。

 そのJゲートには、航空ショーの巨大な電子ポスターが、壁いっぱいに広がっていた。そこには、美しい7色の煙で空中に線を描く、最新型の戦闘用宇宙船7機と、緑の軍服を着た、勇ましい指揮官の映像が映し出されている。

 航空ショー指揮官の名前は、アズミ大佐。銀河連邦、地球正義軍の宇宙航空第二部隊所属と表示されている。どうやら、このアズミ大佐が、今回の航空ショーを取り仕切っているらしい。

 ポスターを目にしたタツノシンは、顔が曇った。少なくとも、タツヤにはそう見えた。宇宙が大嫌いな父親は、同時に、戦争とか軍隊の類も大嫌いだった。だから、きっとそんなことに関わる人間も、まとめて嫌いなのだろう。

「父さん、先に展示宇宙船を見に行ってくるよ。ショーが始まるまで、たっぷり一時間はあるからね。観覧席の入口も確認できたし、このチケットがあれば問題ないよ」

 タツヤは、先ほど父親から手渡された青いチケットを、ひらひらさせて見せた。

「そうだな。ショーが終わった後じゃ、展示コーナーもひどく混みそうだ。今のうちに見に行った方が無難だな。ただし、ショーが始まるまでには、必ず戻って来るんだぞ。この特別チケットは、えらい苦労をして手に入れたのだから」

「わかっているさ。始まる前にはちゃんとここに戻って来るよ」

 まだ言い終わらない前に、タツヤの足は早くも廊下の方へと飛び出していた。

 展示宇宙船は、1階下の80階、今いる場所から、ちょうど反対側に位置している。タツヤは嬉しさのあまり、いつの間にか小走りになっていた。ふと気がつくと、フロアの展望ガラスから見える景色は、濃紺色に染まっていた。航空ショーの開始に合わせ、空港が徐々に高度を上げていたのだ。

「よし、いいぞ」

 タツヤは、思わず声をあげた。

 展示コーナーは見物客がまばらで、ひっそりしていた。展示コーナーを先に見物しようなんて客は、ほとんどいないのだ。たいていの客は、長い行列に並んで時間を浪費し、空港内に入れば、荘厳な構造物や煌びやかな売店に、心も時間も奪われる。

 それに展示コーナーは、地味なうえ、たいした宣伝もしていない。特別な空港展示会が、時たま開催されるが、その場合は下層の広大なフロアをふんだんに使い、大々的な宣伝も行われる。それとは異なり、いわば航空ショーのおまけとして添えられた展示コーナーは、空港を訪れた客に気づかれず、そのまま素通りされるのがほとんどだった。

 展示室は、予想どおり、面白みのない展示物が、ただ並んでいただけだった。宇宙空港の錆びた標識や、とっくに使われなくなった古い宇宙船のエンジン、空港を宙に持ち上げている輝眼石の模型など、過去の遺物ばかりを陳列していた。

 この展示室の奥から、細いキューブ状の連絡通路が伸びている。金属でできたその通路だけが真新しく、やけに目につく。おそらく、今回の宇宙船展示のため、臨時に設置されたものだろう。目的の宇宙船は、その先にあるようだ。空港から外側に、ちょうど突き出したような形で、宇宙船は固定されているのだ。

 通路入口の手前にある受付には、灰色の、穏やかな目をした老婆が座っていた。展示宇宙船を見学するには、通常であれば、別途料金が必要なようだ。タツヤは、航空ショーのチケットで展示宇宙船も見学できると聞いてはいたが、少々不安になった。航空ショーの青いチケットを遠慮がちに差し出すと、老婆は眼鏡をかけ直し、チケットを確認した。タツヤの気持ちを察したのか、にっこり微笑むと、チケットをすぐに返してよこした。

「ええ、もちろん、このチケットで見学できますとも。ここはいわば航空ショーのおまけだからね。でも、おまけといっても、こっちが目あての人も結構いるんだよ」

 それを聞いたタツヤは、急に嬉しくなった。自分と同じような人間が、いるらしい。

「この宇宙船、ずい分と人気があるんですね」

 タツヤのその言葉に、老婆はいっそう笑顔を輝かせた。

「そうそう、熱心な人は二度も三度もやって来るんだよ。展示期間が、たった2週間しかないせいもあるんだろうけどね。ほら、あそこにいる品のいい二人組なんかも、この一週間ずっと通い詰めだよ」

 老婆は眼鏡をずらし、通路へ入ったばかりの二人の少年を視線で示した。一人は青いチェックのシャツを着た、体格のいい、頭の良さそうな少年だ。タツヤよりは、少しだけ年上に見える。

 もう一人の、緑のシャツを着た少年は、栗毛色の長い髪が肩まで伸び、細身で華奢な印象だ。二人とも体格に比べ、不自然なほど大きな荷物を抱えている。

「なんでも、宇宙船の撮影をしているらしいよ。この船が相当気に入ったみたいだねえ。引退後もこんなに愛されるなんて、キララ号だって嬉しいだろうよ。もっとも、うさん臭い連中もウロウロしているみたいだから、気をつけなくちゃいけないね。この暑いのに、妙な黒服を着た男たちが、ここ二、三日、この辺をずっとうろついているんだよ。きっと、何か良からぬことを企んでいるに違いない。なあに、少しでも怪しい素振りをみせたら、この私が、ただじゃおかないからね。さあ、坊ちゃんも気をつけて見学しておいで。残念ながら、展示は今日でおしまいだからね」

 老婆は、機嫌よく、タツヤを通路の方へ追い払った。

 黒服を着た男たちとは、さっき観覧席の廊下にいた怪しい連中だろうか。多少、心に引っかかったが、本当のところ、どうでもよかった。それよりも宇宙船だ。展示物とはいえ、本物の宇宙を飛び廻っていた、正真正銘の宇宙船に乗れるのだ。宇宙船の名前はキララ号と言っていた。キララとは、雲母のことだ。タツヤは、歩きながらその名を何度も口ずさんだ。

 早速、金属張りの連絡通路に踏み出し、軽快な音を立てて駆け抜けた。その先の、宇宙船に通じる最後のドアを、タツヤは開けた。

 するとそこはもう、宇宙船の中だった。頑丈なハッチは見学者のために開け放たれ、目の前には、椅子が並べられていた。エアロックは、見学者のための、休憩用ロビーとなっていた。

 タツヤは、緊張の面持ちで、奥に続く通路へと足を踏み入れた。とたんに、タツヤの心臓は喜びに高鳴った。通路間のドアが全て開放されていたので、憧れの司令室の中まで見渡せたのだ。

 父に気兼ねしながらも、ずっと夢見ていた宇宙。その宇宙が、この宇宙船を通して、今、ほんの少しだけ自分に近づいてきた。しかも幸運なことに、航空ショーのおかげで、見物人はまばらだ。はしゃぎまわる子どものグループが二つばかりと、小さな子どもの手を引くうんざり顔の親たち。それに単独で立ち寄った旅行者が数名いるだけだ。

 航空ショーが始まる時間になれば、見物人はもっと減るだろう。そうなったら、ひょっとして、キララ号は自分だけのものになるかもしれない。勝手に妄想を膨らませたタツヤは、嬉しさが込み上げ、一人でにやにやしながら、見学の標識に従って歩き出した。

 至るところに黄色いロープが張られ、見栄えのいい見学路が設けられている。だが、見学路を外れた廊下の片隅には、機械の部品やパイプ、金属性のチューブなどの機材が無造作に投げ出され、埃をかぶっていた。現役を退いた後も、機材はそのまま残されたらしい。それがかえって、本当に宇宙空間を旅しているような気分にさせてくれる。

 見学路は入口から司令室へと続いていた。広い司令室の前方には、大画面が据え付けられ、それと向かい合わせに、乗員の座る固定シートが並んでいた。

 大画面の周囲を、スイッチやランプのぎっしり詰まったコントロール・パネルが、取り囲んでいる。このコントロール・パネルで、船内コンピュータを始め、宇宙船の様々な機能を確認し操作する。

 キララ号は旧型の小型宇宙船ではあるものの、実に精巧で、使い勝手のいい造りをしている。さっきの受付には、民間宇宙船と表示されていたが、明らかに普通の民間宇宙船ではない。

 ただ客人を乗せて運ぶには構造や内装が粗雑過ぎるし、貨物船としては小さすぎる。軍用とまではいかないが、特別な指令を帯びた宇宙船なのかもしれない。司令室が船体の割には大き過ぎるし、操縦席と区切られている造りも特殊だ。もっとも、持ち主の趣味で、単に軍用宇宙船をまねただけかもしれないが。

 司令室にある大画面の向こう側は、憧れの操縦室だ。巨大な、サンルームのような窓からは、遥か彼方に煌めく青い水平線が見える。そのぼやけた水平線の上には、濃紺色の宇宙がどっしりと横たわっていた。かなり下方には、白い雲が撒き散らされた地上が、別世界のように、よそよそしく広がっていた。

 タツヤは操縦席に座り、動かない操縦かんを握ってみた。

 冷たく、重い。タツヤを引き付けて離さないのに、同時にタツヤを強く拒絶する。自分が本物の操縦かんを握ることは、一生ないかもしれない。少なくとも法律学校を卒業して、大人になるまではないだろう。宇宙に思いを馳せながら、タツヤは動かない操縦かんをぐっと握りしめ、長い間、感触を味わっていた。

 しばらく操縦席で感慨に浸った後、タツヤは階下に降りてみた。

 一階には、乗組員の生活する場が設けられている。船員室は何部屋かあり、それぞれの部屋には、複数の二段ベッドが並んでいた。そのベッドの数から、このキララ号は、悠に、30名の乗員は乗せられる、と推測した。

 船員室の先には、小さな調理場と食堂、野菜の温室栽培室、そして浴室が続いていた。それらの部屋から少し距離をおいた中二階には、船長室が設けられている。船長室は、まるでそこだけが宙に浮いているように、吹き抜けの空間に張り出し、独立していた。そこから、指令室全般を見下ろせる構造だ。

 船長室には立入り禁止の札が立っていたが、見学者のため、ガラス窓を通して室内を見られるようになっていた。使い勝手のいい他の部屋とは違い、船長室はえらく古風な造りだ。

 床には赤い絨毯が敷き詰められ、その上には、マホガニー製の重厚な家具が並び、木星チューリップをあしらった立派な壁かけや、見るからに高級そうな絵画が、古宇宙時計と共に壁を覆っている。薄暗いが、静かで荘厳な空間だ。

 ところが、部屋の奥の光景が目に入ったとたん、タツヤは異様な印象を受けた。

 そこには、最新式の治療用医療カプセルや薬品棚、医療用器具が整然と並んでいる。驚いたことに、船長室の奥には、医療専用の部屋が設けられている。

 いや、よく見ると、船長室は、医務室とドア一枚で繋がっていたのだ。間のドアが開放されたままなので、わかりにくかったが、船長室と医務室がドア一枚で繋がっている。医務室専用の出入口も別にあるようだが、そこは閉じられたままになっていた。それにしても、この部屋の配置は、あまりに奇妙だ。

 一体、この宇宙船の船長は、どんな人物だったのだろうか。興味を覚えたタツヤは、あたりに誰もいないのを確かめると、立入禁止の黄色いロープを軽くまたぎ、廊下を回りこんで、薄暗い船長室へ入っていった。

 中は薄暗く、少しかび臭かったが、それがまた、かえって船長室らしさを醸し出している。部屋の中央にあるテーブルには、写真たてがポツンと置かれてあった。その写真には、初老の紳士と愛情深そうな目をした、中年の婦人が寄り添って写っている。

 おそらく二人は夫婦なのだろう。初老の紳士が、この船の船長なのだろうか。もっとよく見ようと、タツヤは写真たてを手に取った。

 その時、どこからか静かな寝息が聞こえてくるのに、タツヤは気がついた。誰かがこの近くで寝ている。タツヤは、顔を上げて、慎重に音の源を探した。

 寝息は、ドアのない、ひと続きの奥まった小部屋から聞こえてきた。船長の寝室のようだ。タツヤは、その部屋をそっと覗いてみた。驚いたことに、六、七歳くらいの男の子が二人、絹ばりの大きなベッドで、ぐっすり眠っているではないか。

 その二人を間近で見たタツヤは、思わず笑い声を漏らしてしまった。全く同じ寝顔が二つ、幸せそうに寄りそって、寝息をたてている。おそらく、双子なのだろう。薄茶色の柔らかい巻き毛が小さな照明に照らされ、輝いている。タツヤがそばまで寄っても、二人は一向に目を覚まさなかった。きっと空港の人ごみに疲れたのだろう。

(帰りがけに、覗いてみるか。それでもまだ寝ているようなら、その時に起こせばいい。それまでは、寝かせてあげよう)

 タツヤは物音を立てないように船長室を立ち去り、さらに階下へ降りていった。

 船底には、コンピュータや動力装置、燃料タンクや燃料管理システム、各種の検出器や通信機器、その他諸々の精巧な機器類が詰め込まれているはずだ。宇宙船にとって、ここは、いわば心臓部にあたるため、当然のように、立ち入り禁止の札が立てられていた。

 しかしここまで来た以上、どうしても宇宙船の心臓部を覗かずにはいられない。タツヤは、迷うことなく立入禁止区域の黄色いロープを再びまたいだ。

 幸い、航空ショーの開始時刻が迫っているためか、あたりに見学客はいないようだ。ふと、ショー開始前には必ず戻ると父に約束したのを思い出し、少しだけタツヤの心が痛んだ。だが、父に怒られても後悔しても、やはり、ショーよりこの宇宙船の方が自分にとっては重要だ。航空ショーは毎年開催されるが、宇宙船の展示は今日で最後なのだから。

 上部の明るくきれいな内装と異なり、船底の作りはひどく粗雑で暗かった。天井は低く、剥き出しになった金属パイプとケーブルたちで賑やかだ。それらは、まさかと思うところで方向を変えながら、頭上を絡み合い、這いずり廻って延びている。

 通路はやたらひねくれ曲がり、狭い上に、両脇には埃まみれの荷物が積み上がっている。人ひとりがやっと通れる難所さえ、幾つもあった。

 その先に、ようやく機関室が見えてきた。何に使うのかわからない装置や機械が両脇の壁にびっしりと並んでいる。そこからはみ出した、色とりどりのケーブルが、互いに絡みながらあちらこちらへ伸びていた。

 宇宙船は展示されているのだから、当然、機械類の電源は入っていないとタツヤは考えていた。連絡通路を通じて、空港側が展示宇宙船を管理しているからだ。しかし、どうやらそれは間違いらしい。ほとんどの機械は、電源が入っていることを示す青いランプが点灯し、低い作動音が何重にも響いている。

 確かに、室温や気圧管理は、空港側が連絡通路を通じて、一括して行うが、照明や扉の開閉、船内の細かい空調は、宇宙船側で行なう必要がある。そのため、いくつかの機械が作動しているのだろう。

 機関室の半階下には、貨物室が続いている。貨物室と言うより、貨物スペースと呼んだ方が正確だ。それほど狭く薄暗い空間で、おまけに宇宙船の外殻によって、妙に入り組んだ形になっている。中はほとんど空で暗かったが、ふと、そこに誰かがいるように感じた。

 タツヤは、貨物室の中へ足を踏み入れてみた。すると、貨物室の奥にある小さな窓の前に、少年が一人、たたずんでいるではないか。

「や、やあ…」

 その少年は、慌てた様子で振り向きながら、タツヤに声をかけた。タツヤが目を凝らして見ると、その少年は、先ほど黒服の男に怒鳴られた、目つきの鋭い少年だ。

 タツヤは、愛想よく返答した。

「やあ。もしかして、君も宇宙船が好きなの?僕は航空ショーなんかより、こっちの方がずっと好きだね」

 すると、相手の少年からは、ほっとしたような笑みがこぼれた。

「おれもさ。お子さま向けの航空ショーなんて、つきあってられないよ」

 タツヤはにやりとしながら、小さな丸窓に目を向けた。窓の外では最新型の戦闘機がビュンビュン元気よく飛び廻っている。

「同感だね。どうやら航空ショーが始まったようだよ。そのおかげで、僕らは気兼ねなくこの宇宙船を見学できそうだ」

「ああ、みんな航空ショーの方に行ったみたいだな」少年は、照れながら頭をかいて、嬉しそうに言った。「おれはアキラって言うんだ。キダ・アキラ。よろしくな」

 アキラの着ている上着の右胸には、頭から角が一本突き出た鷹のバッジがついていた。とても風格のある鷹で、誇らしげに輝いている。足もとの床には、大きな灰色のリュックが置いてあり、そのリュックにも、同じ鷹のバッジがつけられていた。

「僕は、アマミ・タツヤ。よろしく。そのバッジ、格好いいね」

「ありがとう、オリオン鷹だよ。おれの自慢の一つなんだ。それにしても、やけに静かだけど、ひょっとして、この宇宙船には、おれたち二人しか残ってないのかな」

「いや、船長室で…」

 タツヤが、船長室のベッドで寝ている双子の話をしようとした瞬間、もの凄い爆発音と突き上げるような衝撃が起こった。

 二人の少年は、貨物室の壁にしこたま打ちつけられ、大きく跳ね返って床に投げ出された。とたんに、壁に備えつけられた警報が、ここぞとばかり大音量で鳴り出し、あたりは、めまぐるしく点滅する赤い光に埋め尽くされた。

 床に投げ出されたタツヤとアキラは、一瞬互いに顔を見合わせると跳ね起き、全力で船底の階段を駆け昇った。タツヤは腰を壁に強く打ちつけていたが、恐怖のため、痛みを全く感じない。幸い、船底は狭く、危険な物もなかったため、二人は致命傷を負わずに済んだらしい。

 二人は交互に、後になり先になり、狭い通路を全速力で駆け抜けた。何が起こったのかはわからないが、とんでもない事態であることは、明白だ。こうなったら、一刻も早く、出入口にたどり着かなくてはならない。途中で、足もとをすくわれるような振動がいく度となく起こり、走っていた二人はそのたび、通路の壁や天井に激突しそうになった。それでも二人は、上のデッキに必死で駆け上がった。

 しかし、上のデッキにも、人影は全くない。不気味な振動が、足もとから、壁から、そこら中から響き渡っている。サイレンは鳴り止むことなく、不吉な赤い光はあたりをせわしなく赤々と照らし続けていた。

 二人はやっとの思いで、出入口のあるエアロックの手前まで駆けつけた。空港へ戻る唯一の出口だ。このエアロックから続く連絡通路に行かなければならない。しかし、エアロックに踏み込んでみると、そこには恐るべき光景が待ち受けていた。

 向こう側に見える連絡通路は、真っ赤な炎が勢いよく燃え盛り、炎のトンネルと化していた。そればかりか、金属の連絡通路を食い荒した炎は、次々穴を開けながら、こちらに向って迫ってくるではないか。ものすごい熱気だ。顔や手の皮膚も痛いが、熱さで喉がピリピリして、普通に呼吸をするのも大変だ。

 空港へ戻るにはそこを通るしかないのに、連絡通路は炎の海と化し、どう見ても絶望的な状況だ。しかも、空港側の防護扉が炎を感知し、今まさに閉じようとしていた。

「危ない!」

 エアロックにいた見知らぬ二人の少年が、叫んだ。二人の少年は、勢いよく駆け込んで来たタツヤとアキラに、驚き、タツヤたちを全身で遮った。

「火の中に飛び込む気か!なんて無茶な…」

 二人の少年は、タツヤたちが勢い余って、炎の連絡通路に飛び込むのではないかと勘違いしたらしい。そのため、彼らは全力で、タツヤとアキラを制止した。

 タツヤとアキラは、何が何だかわからなくなり、その場でうろたえた。そこでタツヤは、彼らが、先ほど受付で見かけた二人の少年だと思い出した。撮影のため、連日宇宙船を訪れている少年たちだと老婆は言っていた。

 突然行く手を阻まれたタツヤとアキラは、二人の少年と共に、閉まりゆく防護扉の前で、なすすべもなく立ちすくんだ。

 すると、タツヤたちの後方から、幼い少年が二人、必死の形相で飛び込んできた。船長室で寝ていた、あの双子だった。幼い双子も、防護扉の前で、タツヤたち同様、どうしていいのかわからず、混乱していた。閉じられた防護扉を背に、二人の少年は、双子やタツヤたちと向かい合わせになった。

「なんてことだ。こんなに残っていたなんて…」

 二人の少年のうち、青いチェックのシャツを着た少年が、真っ青な顔でつぶやいた。あまりの出来事に、我を忘れて呆然としている様子だ。

 防護扉は閉じられたが、その上下左右から、早くも炎の舌がチロチロと顔を覗かせている。このままでは、火の手はこの宇宙船にも及ぶだろう。

「おい、いったい何が起こったんだ?火事か?爆発か?通報は?とにかく早く、ここから出ないと」

 興奮して顔を真っ赤にしたアキラが、立ちすくむ二人の少年に向って大声で怒鳴った。

 すると青いチェックのシャツの少年が、アキラの大声ではっと我に返り、叫び返した。

「わからない、よくわからないんだ!連絡通路が突然爆発して、気づいた時はもう火の海だった。あの扉は、おそらく、緊急時に自動で閉まる防護扉なんだ。だから、信じられないし信じたくはないけれど、僕らはこの宇宙船に取り残されたんだよ」

「何だって?」

 それを聞いたタツヤたちは、愕然とした。空港は、輝眼石の浮力と反重力ビームで安定して浮かんでいられる。しかし、自分たちが今いる宇宙船は、その空港に電磁固定フックで繋がれているだけなのだ。固定フックは、宇宙船が浮遊した場合、どこかへ行ってしまわないように、空港に繋ぎとめるだけの装置だ。

 宇宙船は、いわば空港から半分はみ出した形となるため、空港の浮力や反重力の影響は曖昧だ。連絡通路により、空港の浮力や反重力が安定して及んでいたが、その連絡通路が宇宙船から切り離されると、正直どうなるのかはわからない。運が良ければ、宙に浮かんだままかもしれないが、地上に落下する危険性の方が遥かに高い。

 何より、恐ろしいのは、ここが地上百キロメートルの上空だと言う事実だ。現に、燃え尽きた連絡通路の一部が、不吉な音を響かせ、落下していった。同様に、この宇宙船も落下する危険が迫っている。足の下には何もないのを、突如思い出した少年たちは、新たな恐怖に襲われた。

「早く連絡しないと…」

 タツヤがうわずった声で叫んだ。叫んだ瞬間、再び足もとが大きく揺れ、船体ががくんと下に落ち込んだ。とたんに、全員が悲鳴をあげながら床になぎ倒された。船体は右後部を下に、大きく傾いたまま、そこで不安定に止まった。

 もはや連絡する時間も、救助を待つ時間も残されていない。非常に危険な状況であることは、誰の目にも明らかだった。経験したことのない恐怖に、全員が死人のごとく青ざめている。

 すると、青いチェックのシャツの少年がいち早く起き上がり、皆の方に向って叫んだ。

「早く司令室へ!僕らが何とか船体を立て直すから、君たちは固定シートの電源を入れ、しっかり座って。さあ早く!」

 そう叫ぶと、その少年は全速力で操縦室へ駆けていった。連れらしき髪の長い少年も、後に続いて、斜めに傾いた通路を走っていった。

 残ったタツヤたち4人は、言われた通り、操縦室の手前にある広い司令室へ、あたふたと急いだ。操縦室と指令室は一つの大きな部屋の中にあるものの、大画面が衝立のように間を仕切っているため、指令室側からは操縦席が見えない。

 あの青いシャツの少年が何者なのか、本当に操縦ができるのかは、定かでないが、とにかく今は、ほんの少しの望みでも、あの少年に賭けるしかない。なんと言っても、ここにいる6人は、全員、未成年なのだ。宇宙船はおろか、リニアカーの運転免許さえ持てない年齢だ。それでもあの少年は、自分たちが船体を立て直すと、確かにそう断言した。

 タツヤとアキラは司令室にある立派なシートに座ると、固定用の電源を入れ、体を電磁シールドで固定させた。これで少々揺れても、体が、船内の端から端まで吹き飛ぶことはないはずだ。

 後ろに座った双子の少年たちは、固定シートの操作にまごついていたので、タツヤが振り向いて電源を入れた。双子は、恐怖のあまりぶるぶると震え、パネルの操作ができなかったのだ。

 双子をシートに固定して、正面に向き直ったとたん、タツヤも自分の右手が小刻みに震えているのに気づいた。隣のアキラが双子たちに声をかけたが、そのアキラの声もやはり震えている。

「大丈夫だよ。宇宙船はそう簡単に落ちたりしないさ。反重力ビームだって、使われているはずだし」

 双子を落ち着かせるため、アキラはそう言ったものの、タツヤは、疑わしいと思っていた。たかだか展示用宇宙船に、高価な反重力ビームなんて使われるだろうか。が、もちろん余計なことはいっさい言わなかった。いや、自分も反重力ビームが使われていると信じたかった。

 4人が固定シートに落ち着いてまもなくすると、騒がしかった警報音と赤いランプがぷっつり途絶え、続いて船内が真っ暗になった。と同時に、一切の音がかき消され、息も詰まるような時間が始まった。

 タツヤの心臓は爆発しそうなくらい高鳴っている。暗闇の中、船の外からは、パキパキと不気味な金属音が鳴り響いてきた。赤く不規則な閃光が時折、窓から船内を赤く染める。おそらく、連絡通路が燃え尽きて、徐々に落下しているのだろう。その不吉な音がするたびに、タツヤは気が遠くなりそうになった。

 背後のシートにいる双子は互いに抱き合い、小さな悲鳴をあげ続けていた。タツヤも、大きな振動が起こるたび、声を上げそうになったが、隣のアキラや背後の双子の手前、喉もとまで込み上げてくる悲鳴を必死になって、押し殺していた。

 いったいどれくらい、時間が経ったのだろうか。時間の経つのが、恐ろしいほど苦痛に感じられる。あまりの恐怖のため、タツヤは吐気と眩暈でおかしくなってきた。こんな苦痛をずっと味わうくらいなら、いっそのこと、地上に激突するか、空中で燃え尽きるかして、さっさと死んだ方がマシだとさえ、思うようになってきた。

 その時やっと、船内の照明がいっせいに復活し、それに合わせるように、足もとから、動力の力強いうなり声と振動が響いてきた。

 何と言う安心感だろう。タツヤは全身から力が抜け、大汗の中でぐったりとなった。どうやら、エンジン点火には成功した模様だ。

「なんとかなりそうだな」

 隣のアキラが、言葉とはちぐはぐな、もの凄い形相でつぶやいた。さっきはよくわからなかったが、アキラもまた恐怖のため、異様なほど顔が引きつっていたのだ。

 タツヤは力なく相槌を打ったものの、次なる不安がふつふつと沸いてきた。そもそも、展示用の宇宙船に、燃料は入っているのだろうか。かろうじてエンジン点火はできたものの、燃料タンクが空であれば、また振り出しの恐怖に戻ってしまう。タツヤの心臓はまたしても、大きく暴れだした。

 考えてみれば、エンジンに点火できたのすら、不可解だ。宇宙空港に展示する際、ロックはかけられていなかったのだろうか。それに、あの青シャツの少年は、どう見たって自分と同じか、一つ上くらいの年齢だ。宇宙船操縦のライセンスを持っているはずはないし、まして、操縦の経験があるとはとても思えない。

「アキラ、あの二人は何者なんだろう。本当に宇宙船の操縦なんてできるのかな」

 タツヤは、次々吹き出す汗を両手でぬぐった。

「わからない。けど、おれの勘じゃ、あの連中、ただ者じゃないのは確かだな。何か妙だぞ。妙だが、今は、あいつらに頼るしかない」

 アキラは正面を向いたまま、乱暴に言い放った。

 それでも、皆の心配をよそに、エンジン音は途切れず、どんどん力強さを増し、やがてパワー全開の、心地よい爆音と振動が船内を駆け巡った。

「みんな、何とか空港から離脱できそうだ。危険だから、絶対に固定シートから離れないように」

 船内通信の音声が響き渡った。青いチェックのシャツを着た、あの少年の声だ。

 宇宙船は後ろに引っ張られるように、一瞬ガクンと落ち込んだ。固定シートに座っている4人はいっせいに悲鳴を上げたが、次の瞬間、宇宙船は、爆音を轟かせ、ぐっと船体を持ち直すと、力強く上空へ飛び立った。

「うわ、ほんとに飛んだ!」

 タツヤは全身大汗でべったり濡れ、背中がシートに張りついたまま、叫んだ。背後の席にいる双子も、そろって歓声をあげた。

「飛んだ…」アキラは低い声でそう呻くと、気を失ったのかと思うくらい、固定シートの背にぐったりともたれかかった。アキラもひどい油汗をかいていた。

 宇宙船は安定した姿勢を保ったまま、ぐいぐい加速を始めた。司令室の小さな丸窓からは、何もない紺色の虚空が船内を覗いていた。

「ふう、本当に何とかなったな」アキラはやっと固定シートに座り直し、姿勢を戻した。「それにしても、燃料が残っていて幸運だったな。これで地上に激突する危険もなくなったし、後は楽勝だ。ごく僅かの燃料で空港に戻れるし、そもそも、助けに駆けつけた大人たちに操縦を交代すればわけないだろう」

 再び船内通信のスイッチ音が入り、それに続いて、先ほどの少年の声が響いてきた。少年の声は、さっきよりずっと落ち着き、そのせいか、大人びて聞こえる。

「…みんな、大丈夫かい?空港からの離脱に成功したよ。地上への墜落は避けられた。ひとまず安心して欲しい。だけど、あの爆発の衝撃で、船体が相当損傷を受けて、コントロール機能が不完全なんだ。上に向う分には問題なさそうだけど、地上へ向かおうとすると、コントロールが全く効かない。だから、当面は上に向うしかないんだ。でも、安心していいよ。このまま宇宙に飛び出してしまえば、完全な無重力圏内に入るから、少なくても落下の危険はなくなる。燃料は当分持ちこたえそうだし、酸素も十分ありそうだ。ただ、宇宙船プログラムが壊れて使えないんだ。それと、肝心の通信機器もいかれて、地上との連絡もとれていない。何かわかったら、すぐ知らせるよ」

 ここで一旦通信が切れた。しかし間を置かずして、すぐにまたスイッチが入った。

「言うのが遅れたけど、僕の名前は、カイ・マクハント。月王立宇宙専門学校の予備学生で、十四歳だ。もちろん宇宙飛行士の免許はないけれど、何度もシミュレーション飛行をやっている。それがまさか、ここで役立つとは、考えてもみなかったよ。隣にいるのは、幼なじみで親友のアリオン。同じく十四歳で、月の楽器、リュナの演奏家だ。僕らは、この宇宙船の撮影に来たのに、まさか、こんな事態になるとは想像もしていなかった。それは、君たちも同じだと思う。でも、こうして最悪の事態を乗り切れたんだ。僕らは全員、無事に戻れるって信じているよ」

 宇宙船は、心地よい爆音を轟かせ、どんどん勢いづき、鉄砲玉のように上昇していった。落ち着いてきた4人は、横にある小さな窓から外を見た。濃紺色の空間はますます色が濃くなり、そのうちそれが暗闇の中に沈み、今度はそこから星々が浮き上がってきた。

「すごいや、宇宙だ。宇宙に来たんだね。僕、初めてなんだよ、宇宙に来たのは」

 タツヤはついさっきまで味わった恐怖も忘れ、身を乗り出して叫んだ。すると、背後から双子の笑い声が聞こえた。気がつくと、隣のアキラも笑っている。

「君、初めて宇宙に来たの?今じゃ、そういう奴の方が珍しいよ」

 アキラの言葉に、タツヤは少し顔を赤らめた。

「うん、僕の父さんは、昔から宇宙が大嫌いなんだ。目の敵にしている。宇宙空港に連れて来てくれたのも、今日が生まれて初めてなんだよ。うちは空港からそんなに遠くないから、本当はいつだって来れるはずなんだけど」

 タツヤが不満そうに漏らすと、アキラはヒューと短い口笛を吹いた。

「よりによって、今回が生まれて初めての宇宙体験とはね。そりゃあ、君に同情するよ。トラウマにならなきゃいいけどな。でも、今時、自分の子どもを、一度も宇宙に連れていかないなんて、君のお父さんはよっぽど何かがあったんだろうね」

 アキラの考えは、的を得ている。確かに、余程でない限り、ああまで宇宙を毛嫌いしないだろう。宇宙が嫌いなわけも含めて、父親は何かを隠しているのではないかと、タツヤは最近よく思うようになっていた。

「おそらく、そうなんだろうとは思うけど、父さんは、何も話したがらないので、わからないんだ。アキラ、それより、このまま行くと、僕たちは宇宙ステーションに到着するのかな?」

「ああ、たぶんね。今度こそ、大人たちがそこで何とかしてくれるだろうよ」

 すっかり緊張から解き放たれた4人は、先ほどの反動もあってなのか、興奮気味に宇宙や宇宙船の話題で盛り上がった。

 ところがキララ号は、いつまでたっても速度を落とす気配がない。それどころか、ますますスピードを上げているようだ。振動も、やたら激しくなってきている。

 司令室の窓からは、ドーナツ型をした、煌びやかな宇宙ステーションが見えてきた。が、ゆっくり観察する暇もなく、あっという間に後方へ流れ去った。それほどこの宇宙船は、もの凄いスピードで突っ走っているのだ。

 はしゃいでいた4人は、いつの間にかすっかり押し黙ってしまった。

「なんか、どんどん速くなっているみたい…」

 後ろから、双子の一人が蚊の鳴くような声でつぶやいた。宇宙船のエンジン音は荒れ狂ったままで、今にも爆発しそうな勢いだった。そんな爆音と振動の中、雑音まじりの船内通信が流れ始めた。

「みんな、落ち着いて聞いて欲しい。宇宙船のコントロールがうまくいかず、エンジンのフル稼働がどうしても止められないんだ。だから、このまま、もう少し飛び続けるしかなさそうだ。そうは言っても、燃料には限りがあるから、いつかは必ず止まるよ。最悪でも、自然に止まるのを待てばいいだけだ。ちなみに、危険回避装置は作動しているから、隕石や他の宇宙船に衝突の心配はないよ。安心して欲しい。ただ」雑音がひどくなり、カイと名乗った少年の声が、ますます聞き取りにくくなった。「このまま速度が上がると、ワープ機能が自動で作動しそうなんだ。この宇宙船は、いったい、どこに向っているんだろう。宇宙船プログラムが壊れているので、行き先が不明だけど…ああ、まずいな、あと20秒ほどで光速になってしまう。そしたらワープに突入だ。つまり、一気に長距離を飛び越えるんだよ。近ければ、銀河の外側、遠ければ、外宇宙に飛ばされる。とにかく、絶対に固定シートから離れないでくれ。シートから離れなければ安全だから。ワープから出たらまた…」

 突然、カイの声も、エンジンの轟音もかき消された。それと同時に、猛烈に眩い光が目の前からなだれ込み、キララ号全体を包み込んだ。

 固定シートに座っていた4人の少年も、全員が光に包まれた。光が頭や体の中にも入り込み、体中が光で溢れかえった。そればかりか、船内の至るところが発光し、光同士が混ざり合い、眩い光のスープと化していた。

 司令室の窓から見える景色は、光に溶けて、この世のものとは思えない光景になっている。少年たちは絶叫するため、大きく息を呑んだが、絶叫する前に全員気を失ってしまった。

 僕らは全員、死んでしまうんだろうか。消え行く意識の中で、渦巻く光と過去の思い出が、怒涛のように、タツヤの頭の中を駆け巡った。宇宙技術専門学校に入学した友人の嬉しそうな姿、壮大な宇宙空港の光景、黒服の怪しい男たち、アキラ、小さな双子の兄弟、カイと名乗った少年とその連れのアリオン、炎の海になった連絡通路、真っ暗な司令室の大きな画面。

 それから父親の姿が頭に浮かんだ。ショーが始まる前には必ず戻ると約束したのに、戻らなかった親不幸な息子。連絡通路の爆発で宇宙船に取り残され、そのままどこかへ消えたバカ息子。ああ、父がかわいそうだ。愛する妻と幼い娘を事故で亡くした上、たった一人残った息子まで亡くしてしまうなんて。それも、父があんなにも憎んでいた宇宙で。

 タツヤは心の中で父親に詫びた。

 すると、今度は、亡き母親の姿が青い幻影の中に浮かんできた。色白で細身の美しい母親は、父に内緒で何度も見たホログラム映像、そのままの姿だった。その母親は、生まれたばかりの赤ん坊を手渡されている。あれが、たぶん自分の妹なのだろう。タツヤはそう思った。だけど、それにしては様子がおかしい。母親は泣いているではないか。始めは、娘の誕生を喜ぶ涙だと思っていたが、あれは悲しみと苦痛と絶望の涙だ。

 それに、母親のそばには誰かがいる。ベッドに横たわっている誰かが、細い腕を母の方に伸ばし、懸命に何かを訴えている。暗くてぼやけて、よく見えない。記憶と幻がごちゃ混ぜになってきた。操縦室にいるはずの二人の少年、カイとアリオンまでもが、光の渦の中から登場してくる。いや、これはもう、自分は死んでいるのかもしれないな…

 タツヤは、誰かに強く腕を掴まれ、はっと目を覚ました。



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