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第10章 二つの策略

 アズミ率いる地球正義軍の船団は、地球に向けて、土星の輪の横を静かに通り過ぎて行った。

 45隻の宇宙船は、超大型の旗艦を除き、最新型の機種にも関わらず、どれもこれも損傷が酷かった。船体は、歪にひん曲がり、塗装はボロボロに剥がれ落ち、鈍く光る金属がそこら中、剥き出しになっている。どこかしら、欠けたり歪んだり、突き出したりして、まともな形の宇宙船はほとんど見当たらない。それでも、45隻の宇宙船は、かろうじて態勢を保ち、航行を続けていた。

 先頭を行くアズミの巨大旗艦の中では、7人の少年少女が深い眠りについていた。

 カプセルに納まっていた7人の目はしっかり閉じられ、皮膚は青白く、まるで死んでいるようだった。7つのカプセルは、狭い医務室に行儀よく並んでいる。

 アズミの指令を受け、カプセルのスイッチが切り替えられると、赤いランプがゆっくり点滅し始め、やがて黄色に変わった。それからしばらくして、青い光が点滅する頃には、7人の頬には薄っすらと赤みが差してきた。

「みんなの調子はどうだ?」

 アズミが心配そうな顔をして医務室にやって来た。7人が目覚めつつあるのを知り、いち早く様子を見にきたのだ。軍医は、パネルを操作しながら、問題ないですよとあっさり答えた。

 部屋に入ったアズミは、真っ先に、ボルとバルの顔を覗いた。二人はちょうど目が覚めたところで、寝ぼけ眼のまま、訳のわからないことをぶつぶつとつぶやいている。アズミはそれを見て小さく笑った。それから全員に向けて、大声で言った。

「みんな、今は無理して動いちゃダメだよ。自然に、動けるようになるからね。後、二、三時間は横になっていた方がいい。冷凍は体に負担をかけるけれど、解凍はそれ以上に負担だからね。もちろん、互いに話すのはかまわないが」

 7人は仰向けになったまま、見開いた目だけを億劫そうに、アズミの方へ向けた。

「ふう、気分は最悪だ。頭がズキズキ痛む。キララ号でワープした時と同じだ。ワープも冷凍睡眠も、おれは二度とごめんだ」

 アキラはベッドに横たわったまま、ようやく右手を頭に持っていくと、呻き声をあげた。

 アズミは顎に手を当てて首を傾げた。「ワープでひどい頭痛?そんな話は初耳だ。冷凍睡眠はともかく、ワープでは何ともないはずだが」

 すると、別のカプセルから声が上がった。

「アキラは辛抱が足りないのよ。これくらいで、弱音を吐くなんて、ほんとに情けないわね。私なんてつい先日、凍っていたのを解かれたばかりなのに、また凍って、それでまた解かれたんだから。体も頭もバラバラになって、おかしくなりそうよ」

 そう言うマナミも顔をしかめている。

 アキラは大声を出して反撃する力もなく、仰向けのまま、小声で文句を言った。

「キンキン声でわめくなよ。おまえは、もうとっくにおかしいから、それ以上はおかしくならないだけさ」

 それが聞こえたのは、隣にいるタツヤだけだった。

 すると軍医が、苦笑しながら全員に声をかけた。

「安心したまえ。みんな若いから、回復も早いだろうし、後遺症も残らないよ。そもそも、そうならないよう、私がつきっきりで見張っていたのだからね」

 アズミが軍医に同意し、二人はしばし雑談を交わした。

 一時、医務室の中は静まり返った。

「ああ、これって夢もみないんだな。死ぬよりはいいけれど」とタツヤ。

「僕は夢を見たよ。月の預言者が何十年ぶりに目覚める夢だったな」とカイ。

「それが、正夢だったらいいのに。そしたら真っ先に、預言者から助言をもらうのになあ」ツクヨミは、力なくぼやいた。

 少年たちが仰向けのままで会話する姿を、アズミはおかしそうに眺めていた。

「アズミ指揮官、念のために聞きたいのですが、作戦は成功したの?」

 かすれたタツヤの声を、アズミは聞き逃さなかった。

「もちろんだとも。そうでなきゃ、今頃私がここでのんびりしているわけがない。無事に月正規軍の中を通過して、今はもう、太陽系の内側、小惑星帯に着く頃さ」

 それを聞いた少年たちの顔には、さっと血が巡り、顔色が良くなった。キララ号が漂流していた時は、地球帰還を目指して、あれほど四苦八苦していたのに、アズミに拾われたとたん、あっという間に地球の傍まで近づいている。

 本当なら大歓声をあげたい気分だが、誰一人、そんな元気を回復していない。アキラが口笛を吹きかけたが、それも力なく、息が抜けただけで、口笛にはならなかった。それでも、心の中では全員が、はしゃぎたいほど嬉しかった。これで本当に、長い恐怖から解放されたのだ。

「ねえ、どういうことなの?作戦ってなに?さっきは時間がないからって説明が途中で打ち切られちゃったけど、誰か詳しく説明してよ」

 マナミが仰向けのまま、不服そうに訴えた。

「そうだね、マナミ。君は2回も冷凍睡眠されたのだから、説明を聞く権利が一番あるね」

 アズミは、全員に聞こえるよう大声で説明を始めた。

 アズミ率いる地球正義軍の船団は、キララ号をこの巨大旗艦に格納した後、奇岩諸島から脱出した。そこへ何千隻と思われる濃紺の船団が立ちはだかった。等間隔にきっちり配置された船団は、威圧するようにアズミの船団を見下ろしている。それこそ奇岩諸島の外で待ち受けていた月正規軍の船団だった。

 月正規軍の総司令官は、トフラという名の若い軍人だ。目が異様に細く、吊り上がっており、短い顎鬚がなければまるで狐のようだ。細身の体に白い戦闘スーツをびっしり着込み、油断のない目つきで画面の向こうからアズミを睨みつけていた。

 月の権力を握る大臣の忠実な部下であり、大臣の強い後押しで、その若さにも関わらず、司令官に抜擢されたという話だ。非常に頭の切れるエリートで、侵略こそが、小さな月が生き残れる最良の道だと、以前から訴え続けている。高慢で、冷酷で、人間味のないこの男を、アズミは以前から嫌っていた。

「トフラ率いる月正規軍は、海賊と連絡を取り合っていたようだ。トフラが奇岩諸島にやって来たのは、海賊から通報があったからだろう。我々が奇岩諸島を抜けると、トフラの奴は、案の定、ツクヨミを捕らえたのかとしつこく迫ってきた。それで、我々が追っていたのは凶悪犯ツクヨミではなく、海賊一角鷹団の首領、白頭だと言ってやったのさ。しかも、奇岩諸島の中で我々は奇襲攻撃をかけられ、死に物狂いで脱出したのだともね」

「そんな説明で、トフラは納得したんですか?」カイが目を丸くした。

「まさか」アズミが大笑いする。「奴らがそれだけで引き下がるわけがない。思っていたとおり、生命反応走査機を使ってきたよ」

「生命反応走査機?」マナミが、素っ頓狂な声をあげた。

「それを使うと、どんなに頑丈な金属でも透過できるんだ。だから、宇宙船に密航者が隠れていても、すぐにばれてしまう。それほど優れものなんだよ。反応があった場合、それが誰であるかまでは判別できないが、エネルギー分布の違いにより、出生星系や男女の別、大まかな年齢などは検出できる。子どもの場合、エネルギーが活発なわりには体が小さいので、大人との区別は容易なんだ」

 それぞれのカプセルから、感心したような呻き声が響いた。

「だが、このとおり、奴らは冷凍睡眠中の君たちを見つけ出せなかった。冷凍睡眠、すなわち仮死状態である人間は、探知できない。そして、奴らを出し抜いた我々は、君たちとキララ号をこの旗艦に乗せたまま、ワープを行い、目立たないようわざと遠回りをしながら小惑星帯に到着したんだよ」

 アキラが再び口笛を試みる。今度はちゃんと口笛になっていた。それに気をよくしたのか、アズミが力強く宣言した。

「最後にトフラに言ってやったのさ。凶暴なツクヨミは海賊と手を組んで、奇岩諸島の中に立て籠っているとね。あいつが丸々信じたとは思えないが、これでしばらくは、あそこに足止めできるだろう」

 アズミは、からからと笑った。ひとしきり笑うと、ふとタツヤの入っているカプセルの上から顔を覗かせた。

「タツヤ、それにしても、よくまあこんな策略を思いついたものだ。君は、天才だよ。軍の参謀長に任命したいくらいだ。こうして指揮官をやっている私でさえ、すぐには思いつかなかったアイデアだ。まさか、君たち子どもと大勢の兵士を冷凍睡眠させて、月正規軍の生命反応走査を出し抜くとはね」

 アズミは、本当に感心している様子だった。まだ13歳の少年が、冷凍睡眠を使い、月正規軍を突破する作戦を立てるとは考えてもみなかったのだ。

 冷凍睡眠中の人間は、極端に生命活動が抑制される。もちろん死んではいないが、極端に代謝が抑えられた仮死状態のため、生命反応走査機の精度を最高度に上げないと見つからない。

 だが、装置の精度を上げると、今度は、食料にしている栽培中の植物や種、空気中のカビや細菌にも反応してしまうため、余程でない限り、規定以上に精度はあげられない。タツヤは、そこを突いたのだ。

「時間稼ぎのためにも、ツクヨミ王子がまだ奇岩諸島の中にいるって、そう思わせたかったんだ」とタツヤ。

「でも、大勢いた兵士は?冷凍睡眠させられた兵士がいるとは聞いていたけれど、宇宙船は誰が操縦していたの?それに、どこか不自然よね」

 詳しい事情を知らないマナミが、横から疑問を投げかけた。タツヤは、低い天井を見つめたまま、答えた。

「もちろん、それも予め計算に入れておいたよ。宇宙船はなるべく、この旗艦や大型母船に詰め込んで、それ以外の宇宙船は三隻を一隻に合体させたんだ。だから200隻あった宇宙船は、全部で45隻になったのさ。いかにも海賊たちにやられて数が減ったように見せかけてね。その工作がばれないように、奇岩諸島に浮かんでいた廃材を、合体した宇宙船の外殻にくっつけたんだよ。だけど合体した宇宙船内に、3隻分の人間がいちゃまずいだろう?それで人数を釣り合わせるため、余分な兵士たちにも、僕らと同じように眠ってもらったのさ。それは、走査時に、僕らを発見しにくくするためでもあるけど」

 感嘆の声が、あちらこちらから上がった。アキラは痛む頭を押さえながら、景気よく口笛を吹いた。今度は、心地よい音色が室内に響き渡った。手がもっと自由に動かせるのなら、皆はきっと拍手をしていただろう。

「タツヤ、君ってすごいな。地球に戻ったら、本当に法律学校なんかに行くのかい?この才能を使わないなんて、もったいないよ。宇宙船の操縦もせっかく覚えたのに」

 カイが隣のカプセルから、からかうように言った。

「僕だって法律学校なんて行きたくないさ。だけど、宇宙技術専門学校へ行きたいっていくら訴えても、父が頑として許してくれないんだ。父は、宇宙が死ぬほど嫌いで、宇宙旅行でさえとんでもないと考えている、カチカチの頑固親父だよ。今の僕らの状況を知ったら、きっと卒倒するだろうね。まあ、そういうわけで、地球に帰れても、僕は気が重いんだ」

「でも君の父親って確か、宇宙管理局に勤めているって言わなかったっけ?」

 アキラが、疑問の声を投げかけた。

「そうだよ。地球基地局の管理官をやっている。でも、机の前に座りっきりの仕事で、宇宙には一切出ないんだってさ。だからこそ、宇宙管理局に勤めていられるんだろうけどね」

 それを聞いた少年たちは、口々に同情の言葉を寄せた。こんなに、意欲も才能のあるタツヤが、宇宙技術専門学校に通えないなんて、気の毒でもったいないと思ったのだ。

 しかしアズミだけは、何か腑に落ちない様子だった。

「待てよ、タツヤ。君の名字は確かアマミだったね。まさか君の父親の名前、タツノシンじゃないだろうね?右腕に奇妙な青白い傷跡のある…」

 いぶかしげなアズミの顔が、上からタツヤをひょいと覗いた。

「アズミ指揮官は、僕の父を知っているの?」

 タツヤは、思わず大声を上げた。するとアズミの顔は不審から、驚きへ、そしてすぐに喜びの表情へと変わった。

「そうか、君はタツノシンの息子だったのか。どうりで優秀なわけだ。これは明らかに遺伝だね。私は、もちろん君の父上を知っているとも。彼はとても優秀な宇宙パイロットで、宇宙に名を轟かせた有名人だ。彼の名前を知らない者は、軍にはいないよ。公然の秘密だが、昔、一緒に外宇宙の旧地球軍で働いていた時期もある」

 いたずらっぽく笑うアズミに、カプセルで寝たきりのタツヤは、思い切り眉を吊り上げた。何もかもが初耳だ。とたんに、頭の中が燃えるように熱くなった。

「父が旧地球軍の宇宙パイロットだった?外宇宙に行っていた?そんな話、今まで一言も聞いてないよ。アズミ指揮官、教えてください、父は軍でいったい何をしていたんですか?」

 タツヤは、必死に訴えた。体が動きさえすれば、きっと起き上がってアズミに詰め寄ったに違いない。息子である自分ですら、父タツノシンの過去については、ほとんど何も知らないのだ。

 しかし、アズミはタツヤの反応にえらく驚き、少しだけ顔をしかめると、いつもの思慮深い、聡明な指揮官に戻った。

「いや、止めておくよ。タツヤ、君には悪いが、直接、親父さんに聞きたまえ。親父さんが、息子の君に話していないのに、私があれこれ話すべきではないからね。ただ、これだけは断言できるよ。君の親父さんは真の勇者であり、永遠に地球軍の誇りでもある」

 タツヤは、仰向けのままアズミを穴の開くほど見つめた。

 アズミは、それ以上何も教えてはくれなかった。アズミの話は、たぶん本当なのだろう。アズミが嘘をつくはずがないし、嘘をつく理由もない。

 父タツノシンは、自分の過去をタツヤにはほとんど話さなかった。それは、自分の息子に対してだけではない。おそらくは、周囲の誰にも、話していないのだろう。周囲の人々が知っていれば、必ずどこからか話が漏れて、タツヤの耳にも届くはずだ。父の本当の姿を誰も知らない。いや、知っている人がいたとしても、厳重に口留めされているのかもしれない。

 父は何かをひた隠していると、タツヤは常々感じていた。右腕にある、奇妙な青白い傷跡もずっと気になっていた。思い起こせば、宇宙に対する異常なほどの嫌悪も、逆に、宇宙をひどく意識していたからかもしれない。宇宙に対する嫌悪は、タツヤの母親とその生まれたばかりの娘が、宇宙で亡くなったのが原因だと聞いていた。そうだとしても、父の説明はどことなくぎこちなかった。

 それに、今思えば、航空ショーを見に空港に行った時、まるでよく知っているかのように空港内を歩き廻っていたではないか。

(あの大ウソつきの頑固親父め。いったい何を隠しているのだろう。そして、何故、隠しているのだろう。息子の僕にさえ隠していたなんて、どうにも腹の虫が収まらない)

 タツヤは狭いカプセル内で、独り憤然としていた。地球に戻ったら、まっさきに親父を問い詰めてやる。心の中で、そう固く決心した。その怒りと悔しさのせいか、体中がかっと熱くなった。すると、血の巡りがとたんによくなり、タツヤが一番早く体を動かせるようになった。

「地球に無事帰っても、君の家ではひと波乱ありそうだな」

 アキラが、珍しく同情たっぷりな言葉をタツヤに送った。

 それから2時間もすると、キララ号の少年少女たちは全員、何不自由なく動けるようになっていた。同じように、冷凍睡眠で眠っていた兵士たちも次々動き出し、宇宙船の大がかりな復元作業が開始された。

 小惑星帯は、作業を行うのに、好都合な場所だ。地球や月に近いが、ごつごつした無数の岩は、光の当たらない陰を作り、監視の目が届かない。もちろん、無人偵察機が小惑星帯を始終パトロールしているが、アズミたちの船団が停泊している区域は、一時的に、監視対象から外されていた。

 これは、地球正義軍が、銀河連邦という途方もなく巨大な組織に属しているおかげだ。この点は、中立を掲げ、独自路線を進む月正規軍には受けられない恩恵でもある。

 鉄くずの山だった宇宙船は、3隻の小型宇宙船にすっきりと分けられた。外殻に張り付いた鉄片や廃材も丁寧に剥がされ、宇宙船は銀光りする、美しい姿に甦った。僅か45隻だったボロボロの宇宙船は、数時間もすると、2百隻の最新型宇宙船に生まれ変わり、後は地球への帰還を待つばかりとなった。

 体を動かせるようになった少年少女たちは、軍医の簡単な診察の後、いったん予備室で待機し、体調をしっかり回復させるのに専念した。その間、ツクヨミとカイだけは、アズミに別室へ呼ばれて行った。

 二人が予備室に戻ってくると、5人は話し合い、いったんキララ号に戻ろうと言う結論になった。アズミの許可がすんなり下りて、5人は、ぞろぞろとキララ号へ戻っていった。キララ号は、巨大旗艦の格納庫に収納されていた。改めてキララ号を見た5人は、ぎょっとした。キララ号は、ひどく小さく、まるで遊園地の乗物のようにしか見えない。

「おれたち、よくこんな小さな宇宙船で、外宇宙を漂流できたな」

 アキラが、しみじみと言った。全員が、それに続いて、静かにうなずいた。

 すると、タツヤはその時初めてある事に気がつき、ドキリとした。

 キララ号でずっと一緒だった仲間は、ここで別れ、それぞれの道を歩むのだ。タツヤは、この事実に愕然としながら、みんなに続いて、キララ号の中に入った。

 ツクヨミとカイは、当然月へ直行し、生死を賭けた熾烈な戦いに突入していく。自分とアキラは、地球に連れ戻され、平穏だけど退屈な日常生活に舞い戻る。ボルとバルは、アズミと共に地球に帰還し、失われた家族の時間を取り戻すだろう。マナミは、とりあえず地球に向い、銀河連邦の助けを借りて、両親のいるカシオペア号の行方を捜す流れになる。アズミ指揮官が、既に地球正義軍を通じて、カシオペア号の捜索を銀河連邦に依頼済みだ。

 もちろん、この事実に気づいたのは、タツヤだけではなかった。そこにいた誰もが、口にこそ出さないが、別れの瞬間が刻一刻と迫っているのをよくわかっていた。だからこそ、余計な会話をしないように、それぞれが自分の荷物を意味もなく、黙々と整理していたのだ。

「みなさん、お帰りなさい。首を長くして、お待ちしていました。途中の記憶が欠落していたようですが、この艦船のシステムから、データをおすそ分けしてもらい、事情は把握しました。みなさん、ご無事で何よりです」

 ケンゾーが復活し、陽気な声を上げた。奇岩諸島の穴倉で、キララ号の電源を切って以来、ケンゾーとのやり取りは途絶えていた。キララ号の修理は完了し、キララ号の電源と共に、ケンゾーもまた復活していた。

「ごめん、ケンゾー。みんな、今、そんな気分じゃないんだ」タツヤが申し訳なさそうに謝った。

 今一つ乗りの悪い少年少女に、ケンゾーの声はトーンダウンした。

「わかりますよ、わかりますとも。みなさんとも、もうすぐお別れですね」

 ケンゾーの言葉に、タツヤたちはギクッとして、手を止め、思わず顔をあげた。ケンゾーの、まるで心中を察したような発言も原因だが、それよりも、ケンゾーとの別れをすっかり忘れていたのが痛手だった。複雑な思いに、全員が、押し黙ってしまった。

「別れは、いつでも誰にとっても悲しいものです。でも、私にとって、今回の旅の経験は、貴重な宝物です。この味わい深い沈黙もまた、いつかいい思い出になるでしょう」

「ケンゾー、別れの言葉は、まだ早すぎるぞ」アキラが、憂鬱そうにぼやいた。ケンゾーは黙り込み、何とも説明しがたい空気が司令室に流れた。

 そこへ、アズミがひょっこり姿を現した。

「ツクヨミ王子。たった今、いい知らせと悪い知らせが届いたよ」

 全員が再び手を止め、いっせいに振り向いた。

「まずは、悪い知らせの方からだ。月の大臣が、とうとう月正規軍の最高司令官に就任した。正規軍だけは、銀王直属の部門として長い間守られてきたが、勢いをつけた大臣一派に、主導権を乗っ取られたようだ。これをきっかけに、今後は堂々と、トリトンに攻撃を仕かけるだろう。一部の住人たちがそれに反対し抗議しているが、大臣は強硬に侵略を進める意向だ。軍の最高司令官になった大臣は、今後は、地球や銀河連邦の目も気にせず、堂々と悪事をやってのけそうだな」アズミは一息ついた。

 悪い知らせにも関わらず、ツクヨミもカイも冷静にアズミの話を聞いていた。

「最悪ではあるけれど、予想どおりかな。仕方ない。むしろ、遅いくらいだ」ツクヨミは、肩をすくめてみせると、カイも同意した。

「ああ、これであいつは、公然とやりたい放題やるだろうな。まあ、その分、わかりやすくなるのは、有難い」

 二人とも、十分に想定していたため、悪いニュースではあるが、それほど落ち込んではいなかった。それより、いい知らせの方を早く聞きたそうだ。

「いい知らせは、君らにとっても幸先のいい話だ。月の預言者が25年ぶりに目覚めたそうだ。預言者はまだ起き上がれず、回復を待って、地下で待機中らしい。早速、噂を聞きつけた大臣が強引に面会を求めたが、神殿の神官たちは断固として面会を拒否したそうだ。神殿は今、厳重に警備され、何人であれ、部外者は一切立入禁止だと聞いている」

 ツクヨミとカイの顔はぱっと輝き、互いに目を合わせた。予言者の目覚めがどんな意味を持つのか、タツヤたちにはわからなかったが、ツクヨミたちは希望の光を見て取ったようだ。

 アズミもまた二人の様子を見て安心したのか、ぐっと親しげな表情になった。

「それと月は今、銀王生誕祭で大変なお祭り騒ぎになっている。トリトン侵略は計画倒れに終わったが、月住人の目を逸らすため、わざとこの時期を狙ったのかもしれないな。しかしこれは君たちにとっても、またとないチャンスだ。太陽系外の招待客も、大勢月に詰めかけ、警備が手薄になっているからね。今ならどさくさに紛れて月に戻れるぞ」

 ツクヨミの顔が、喜びに輝いた。

「アズミ指揮官、情報に感謝します。実は私たちも、銀王生誕祭の最中に、月へ戻ろうと計画を立てていたのです。この時期なら、おっしゃるとおり、うまく紛れ込んで月へ戻れるでしょう。そして、生誕祭の最終日である明日の晩、月宮殿で盛大な晩餐会が開かれます。私たちが宮殿へ潜り込めるチャンスは、その時しかないと考えています。そこで、一つお願いがあるのですが」ツクヨミは遠慮がちに目を伏せたが、次の瞬間には燃えるような目で訴えた。「月へは馴染みの、このキララ号で帰りたいのです。もうしばらく貸して頂けませんか?」

 ほんの一瞬、アズミは面食らったように見えた。おそらくは立場上、キララ号はすぐに持ち主へ引き渡さなければならないのだろう。それでもアズミは、自分が取る行動は初めから決まっていたかのように断言した。

「キララ号は、まだ返してもらっていないよ。引き続き、行方不明のままだ。燃料を補給し、故障した通信機器等は、飛行に差し支えない程度に応急処置をしておくよ。あと5、6時間もあれば、出発の準備は整うだろう」

 二人は、深い安堵のため息と共に、満面の笑顔をみせた。

「重ねて感謝します、アズミ指揮官。キララ号は、事が片づいたら、必ずお返しすると約束します」

 アズミは軽くうなずくと、早速キララ号出発の手配をするため、司令室を出て行った。

 アズミを見送ったカイは、ツクヨミの方に向き直った。

「これで、ようやく月に帰れる目途がついたな。しかも、預言者が目を覚ますとは、僕らはついている。きっと、運が味方してくれたんだ」

「ああ、銀の精霊も私たちを祝福しているんだ。そう言えば、君はさっき医務室で、預言者が目覚めた夢を見たと言っていたね。この頃やけに勘が鋭いな。幼い頃から共に過ごした仲だけど、今まで君は、むしろ鈍感な方だと思っていたよ」

「いくらなんでも鈍感はひどいなあ。ツクヨミが繊細なだけだよ。でも、自分でも不思議なんだ。ツクヨミの言うとおり、このところ勘がすごく冴えている。いや、これは、勘なのだろうか」

 確かに、カイの勘は鋭いが、約1ヶ月前、初めてカイに会ったタツヤたちは、カイが元から勘が鋭い性格だと思っていた。

「それで、あなたの勘ではこの先どうなの?」

 マナミが心配そうに尋ねた。

「どうなるかなんて、そんなのわからないさ」カイは半分投げやりに答えた。「でも、勘じゃなくたって、これから大変なのは確実だよ。月へ戻ったら、まず支援者集めから始めないと」

「君たちを支援してくれる大人たちは、どれくらいいるの?」とタツヤ。

「私を支援してくれる貴族の一派が何十人かはいるはずだけれど、月へ戻ってみないと、実際のところはわからない。もっと増えているかもしれないし、逆に、一人もいないかもしれない。いずれにしても、できるだけ大勢集めて、6千隻の戦闘軍団が戻ってくる前に、片をつけなくてはならない」

 ツクヨミの、どこか諦めともとれる表情に、タツヤたちは、彼らの大きな不安を読み取った。6千隻の戦闘軍団が戻って来ると想像しただけで、タツヤは心底身震いした。

「ふう、6千隻の戦闘軍団相手か」アキラはリュックの紐をぐいと引っ張った。「さっきの話だと、大臣は、軍を思いのまま動かせる最高司令官になったから、相当手ごわいな。でも大臣さえ倒せば、王子の汚名をはらし、月はもと通り平和になるんだろう?」

 アキラは、どうも物事を単純に考える癖があるようだ。

「そう簡単にはいかないよ」カイは顔をしかめた。「大臣の後ろには、もっと強力な奴が潜んでいるんだ。一向に姿を見せない、黒幕の人物。おそらくは呪術師だ。弟王子が目を覚まさず、銀王が操り人形のようになっているのは、邪悪な呪術のせいだと、僕らは考えている。証拠はないけどね。証拠がないし、正体がわからないから、僕らはそいつとまだ戦うことさえできないんだ」

「見えない敵と戦うのか」アキラが真顔でつぶやいた。

 アキラの不吉な言葉に、タツヤたちはますます不安になった。姿を見せない相手と戦うなんて、並大抵ではない。当たり前だが、カイは明らかに、その謎の呪術師を恐れている。

「黒幕らしき呪術師は、もうずい分前から宮殿に入り込み、言いなりの大臣を使って、銀王を動かしている。それはよくわかっているのに、肝心の正体がわからない。尻尾をつかめないんだ。せめて戦う相手の正体がはっきりすれば、手の打ちようもあるんだけど」

 ツクヨミはやるかたなく、司令室の丸窓の方に目を向けた。

「呪術師なんて、地球じゃとっくの昔に消えてなくなっている。でも月では、今も怪しげな魔術師や魔女、占い師や巫女がうじゃうじゃいるから、そいつらが特別な能力を使って、宮殿を乗っ取っても全然おかしくないな」とアキラ。

 タツヤは、ふと何かが頭の中に見えたような気がした。それが何なのかはわからないが、月王国や王族に関するものではないかと、タツヤは何となく感じ取っていた。その何かに押し出されるように、タツヤは言った。

「それでも、その連中が未だに月王国を乗っ取れないのには、大きな理由があるんでしょ?そうでなければ、もうとっくに、月は大臣や呪術師のものになっているはずだから」

 ツクヨミは少しギクリとして、息を大きく吸い込んだ。

「驚いたよ。タツヤは本当に鋭いな。そのとおりだよ。月王族には大きな秘密があるんだ。むしろ秘密によって、月は守られているんだよ。その秘密のおかげで、私たちにもまだ最後のチャンスが残されているんだ。そのチャンスを逃さないためにも、私たちは危険を承知で、月に戻るのさ」

 ツクヨミの顔が変わった。まるで、今まで雲に隠れていた月が姿を現し、夜空に煌々と輝くようだった。その大きな決意と覚悟が、月の王子としての誇りと威厳を取り戻したのだ。一瞬にして近寄りがたい雰囲気となったツクヨミに、タツヤは妙にどぎまぎした。

 ツクヨミが、自分たちとは違う世界の人間であることを、改めて思い知らされた瞬間でもあった。そして、これ以上、月の秘密に立ち入ってはいけない気配を肌で感じて、少年たちは口をつぐんだ。しばし沈黙が訪れ、話はそこで打ち切られた。

 それに、ツクヨミとカイの二人は、出発の準備に追われ、みんなとのんびり談笑をする暇はない。手荷物一つで、アズミたちの宇宙船で帰還するタツヤたちとは異なり、二人だけでキララ号を操縦し、危険な故郷月に潜入するのだ。二人はケンゾーと話し合いながら、操縦室や船底、アズミの旗艦の間を、何度もせわしそうに往復している。

 タツヤとアキラとマナミの3人は、キララ号の司令室に取り残された。やがて、アキラとマナミは、それぞれどこかへ出かけて行ったが、タツヤは、ソファで独り、ぼんやり考え事をしていた。ツクヨミたちは、アズミの旗艦へ詰めたまま、しばらく戻ってこない。

 ツクヨミたちは、どうなってしまうのだろう。あれこれ考えると、どうにもやるせない気分になる。タツヤが考えたところで、何一つ変わるわけでもないのに、何故か、2人の行く末が気になって仕方ないのだ。タツヤは、ここで、自分が地球へ帰るのをすっかり忘れていたのに気づき、我ながら驚いた。

 本当は早く帰って、父親を安心させてあげなければならない。自分だっていい加減、地球に帰りたがっていたはずだ。宇宙も、危険な冒険も、もうこりごりだと思っていたはずだ。

 それなのに、いざ帰れるとなると、どういうわけか全然気乗りがしない。嬉しいとも感じない。むしろ、大事な仕事をやり残したような、そんな気分で、落ち着かないのだ。こんな自分は、異常なのだろうか。

 タツヤはもやもやした気持ちを振り払うかのように、お茶を流し込んだ。

 しばらくすると、アキラが、まだ右足を多少引きずりながら、キララ号に戻ってきた。カップにお茶を注ぐと、タツヤのいるソファへと近づきながら言った。

「タツヤ、君は地球に帰るのか?」

「もちろんさ。地球に帰って父さんを安心させなきゃね。アキラ、君だって地球に帰るんだろう?まさか、海賊のところへ戻るんじゃないよね?」

 タツヤは、無意識に声をひそめた。

 アキラはカップを手にしたまま、タツヤの隣にドカッと座った。

「誓ったとおり、奴隷船を襲うような海賊には、もう二度と関わらないよ」するとアキラもまた、更に声を潜めた。「それよりおれ、君に聞いて欲しいことがあるんだ。バカげているって思われるだろうけど、信頼している君だからこそ、話しておきたいんだよ」

 アキラの真剣なもの言いに、タツヤは顔を上げた。アキラは、一瞬周囲を見渡し、誰もいないのを確かめると、話を続けた。

「おれは、たいして役に立たない人間だけど、ツクヨミやカイの手助けをしたいんだ」

 タツヤは目を見張った。アキラは、そんなタツヤの反応に構わず、続けた。

「さっきの話だと、ツクヨミたちは相当旗色が悪そうじゃないか。月に戻っても、支援者ゼロの可能性だってあるみたいだし。あの二人、今度しくじって捕まったら、この年で死刑だぜ?とても放っておけないよ。だから、こんなおれでも何か手伝えないかなって考えているんだ。でも、おれも一緒に月へ行くなんて言ったら、当然断られるし止められるだろうな。危険すぎるとかなんとか、理由をつけられてさ」

 アキラは変なため息を一つつくと、厳しい顔をしたまま、お茶をすすった。

「それで、何かいいアイデアはないものかと、君に相談したってわけだ」

 タツヤは当惑し、すぐにソファの真ん中でしばし考え込んだ。そして10秒も経たないうちに、自分の両膝を景気よく手でポンと叩くと立ち上がった。

「これだ!実は僕もずっと、もやもやしていたんだ。でも、君のおかげで、今はっきりしたよ。アキラ、僕も行くよ!」

 突拍子もない返答に、アキラは戸惑ったが、タツヤは、意気揚々と宣言した。

「僕も、月へ行く。僕らは月へ乗り込んで、ツクヨミたちと一緒に戦おう。どのくらい役に立つかはわからないけど、今までだって、多少でも役に立ったのだから、きっと何かできるはずだ。このまま二人を放って、地球へは帰れないよ」

 思わぬ賛同に、アキラの目も爛々と輝き、膝の痛みも忘れて勢いよく立ち上がった。

「よし、これで決まった。おれたちも参戦するぞ。月へ乗り込むんだ。ああ、だけどどうしよう、あと3時間ちょっとで、カイたちは出発してしまう。おれたちがいくら頼み込んでも、二人は絶対に聞き入れないだろうし、当然アズミに止められるだろうな。何かいい手を考えなくちゃ。いや、だから、策略は君の方が得意だろう?」

 アキラは、にやりと笑った。

 タツヤは再び座り込んで腕を組み、何かいい案はないものかと真剣に考え始めた。アキラもソファに腰を降ろし、再びお茶を飲もうとカップに手を伸ばした。

「それでどうするつもり?参謀長」

 背後から突然声をかけられた二人は、ぎょっとして振り向いた。マナミは騒がないよう小声でささやくと、両手を大きく広げ、隣同士に座っている二人を背後からまとめて、力強く抱きしめた。マナミの大胆な行動に、二人は慌てふためき、顔を赤く染めた。マナミは満足そうな笑みを浮かべると、二人を上から見下ろした。

「当然、私も仲間に入れてくれるでしょ?友だちなんだから」

「放してくれよ」

 タツヤが赤い顔をしたまま、マナミの腕から逃れようともがいたが、マナミは少女とは思えないほどの力で、ますます二人をきつく抱きしめた。

「ダメよ。ちゃんと答えてくれるまでは」

「呆れた奴だなあ、おれたちの話を全部聞いていたのか。でも君は、海賊にさらわれた両親を探すんじゃないのか?」アキラが不満顔で文句を言った。

「もちろんよ。でも、友だちを助けた後でね。考えていることは、あなたたちと同じよ。助けは少ないより多い方がいいでしょ?で、どうするの?もう時間がないわよ」

 さすがに奴隷船で逞しく育った少女だ。ちょっとやそっとでは、諦めない。二人はついに降参した。

「ああ、わかったよ。今すぐ考えるから、この手を放してくれよ」

 マナミは、ようやく二人を解放した。タツヤは、ほっとすると腕を組み直して、ひとしきり考えた。すると早くも、あるアイデアが閃いた。

「そうだ、ケンゾーを巻き込もう」

「私をお呼びですか?」暇を持て余したケンゾーが、間髪を入れず、即答した。

 三人は、あまりに素早い返答に苦笑した。

「ケンゾー、今の話を初めから聞いていたよね?」タツヤがそう問いかけても、ケンゾーは否定しなかった。「じゃあ、複雑な事情の説明は省くよ。今回は、ケンゾーにもぜひ参加してもらいたいんだ。いや、ケンゾーの助けが必要なんだ」

 タツヤは早速、自分が考えた計画を小声で二人とケンゾーに伝えた。

 その頃キララ号の整備は、アズミの指示により急ピッチで進められていた。奇岩諸島で海賊に追われ、爆発のあおりを受けたキララ号は、本格的な修理が何ヵ所も必要な状態だった。

 とりわけ、外部との連絡に必要な通信機器は問題だったが、残り時間も少ないため、アズミ軍が所有している汎用通信機器を臨時で取り付けた。とりあえず通常の通信はできるように応急措置を行い、午後には出発の準備を整えた。

 タツヤたち3人は最後の挨拶を交したいと、ツクヨミたちの元を訪れた。ツクヨミたちの出発までは、まだ相当時間がある。しかし、出発間際の時間帯は、ツクヨミたちも忙しいだろうから、その邪魔をしたくないと言う理由で、3人は早めにやって来たのだ。

 ツクヨミたちは、アズミと共に、船底で機械類の最終確認をしているところだった。

 二人は、思っていたより早い別れに戸惑いながらも、タツヤたち3人と固い握手を交わした。

「みんな、いろいろありがとう。本当にいい経験になったよ。ここで別れるのは寂しいけれど、どうか僕たちの成功を祈ってほしい。いつか君たちを月に招待するよ。もちろん、月が平和を取り戻してからだけどね。ぜひ、月へ来てくれ。歓迎するよ。僕らも、君たちそれぞれの活躍を祈っている。ただ、一つだけ、伝えなきゃならないことがあるんだ。その、何て言うか、ちょっと言いにくいけれど、実は君たちの人生に関して、僕らは、少しばかり…」カイは何かを言いかけたが、アズミが素早く制止した。

「その件については、時期が来たら、私からじっくり説明するよ。今後の対応も含め、複雑な問題だからね。もちろん悪いようにはしないよ。私に一任させてくれないか」

 カイはほんの一瞬迷ったが、ツクヨミと視線を合わせると、首を小さく縦に振った。

「わかりました、あなたにお任せします。アズミ指揮官、ありがとう。何から何まで」

 カイは、すんなりと引き下がった。カイが何を話そうとしていたのか、タツヤたちには見当もつかなかったが、大変言いにくい内容らしい。どのみち、後ほどアズミが教えてくれるだろう。3人とも、多少心に引っかかったが、今はもっと別の件で頭がいっぱいだった。

「僕たちは、出発の邪魔にならないよう、アズミ指揮官の旗艦から君たち二人の門出を見送るよ。これからは二人だけで大変だと思うけど、君たちならきっとやれるさ。今までだって、何とかなったんだから。じゃあ、元気でね。いつかまた、会おう」

 タツヤたち三人は、口をそろえて別れの言葉を告げると、手を振りながら、足早に去って行った。

 残されたツクヨミとカイは、あまりにそっけない別れに、ただ呆然と、手を振るばかりだった。全く知らない者同士が偶然乗り合わせたとはいえ、一ヶ月間苦楽を共にしてきた仲間だ。それが、地球へ帰れるとわかったとたん、まるで自分たちを見捨てるように、あっさり離れてしまったのだから。

 だが、二人はそれについて考えている暇も、感傷に浸っている暇もない。これから始まる真剣勝負を前に、作業に集中しなければならない。ここから先は、14歳の少年たちではなく、反逆者として行動しなければならないからだ。

 3時間後、二人の出発を直接キララ号まで見送りに来たのは、アズミとその息子たち、ボルとバルだけだった。タツヤたち3人は言葉どおり、キララ号には姿を現さなかった。ツクヨミとカイは、何ともやりきれない気持ちでいっぱいだったが、アズミたちの手前、努めて元気に見せようと気を張っていた。

 ボルとバルは、ツクヨミたちと一緒に行きたいと父親にせがんでいたが、さすがにそれは許されなかった。

「ボル、バル、いろいろありがとう。君たちはきっと素晴らしい大人になれるよ」ツクヨミとカイは、双子の小さな手を取った。「さようなら。元気でね。またいつか会おう」

「さようなら。僕らを助けてくれて、ありがとう。もう少し大人になったら、カイとツクヨミのところへ遊びに行くよ。だから、悪い奴らには、絶対に負けないでね」

 ツクヨミとカイは、はっとした。双子は詳しい事情を知らないはずなのに、戦うために二人は月へ戻ると気づいていたのだ。

「知っていたの?」

「うん、ずっと前から何となく。カイとアリオンには、戦うべき相手がいるってね。敵は海賊より手強い連中なんでしょ?」

「ああ、そうだね。海賊より強いのは確かだ。だけど、大丈夫。私たちは決して負けはしないさ。今までだって、そうだったようにね。だから、大きくなった君たちと、ぜひまた会おう。約束するよ」

 双子はにっこり笑うと、約束だよと元気に叫んだ。

 今度はアズミがツクヨミの手をとった。アズミの手はがっしりと大きく、暖かい。ツクヨミたちにとって、アズミは、父親のような存在だった。

「敵は、恐ろしく危険な連中だ。いいかい、くれぐれも君たちだけで行動を起こさず、有力な支援者の力を借りるんだぞ。君たちが何を計画しているのかは知らないが、必ずやりとげて平和な月を取り戻せると、私は信じているよ」

 アズミは、ツクヨミの手を離すと、カイの方に向き直った。

「青銀の騎士は、たとえ少年であれ、大人とみなされている。君は立派な青銀の騎士だ。王子を守り、王子と共に、ぜひとも月に平和をもたらしてほしい。陰ながら、君たちの無事と成功を祈っているよ」

 それからアズミは、二人に向き合い、言葉に力を込めて言った。

「ボルとバルから、おおかた、キララ号での出来事は聞いたよ。とんでもない状況の連続だったのに、みんなをまとめ上げ、こうして全員無事に帰してくれた。そして、何より、私の小さな息子たちを守ってくれた。どんなに感謝しても足りないくらいだ。この恩は、決して忘れないよ。いつかまた、平和に会える日が来るのを楽しみにしている」

 ツクヨミとカイは、後ろ髪を引かれながらも再びキララ号に乗って小惑星を飛び出した。ここから月は、もう目と鼻の先だ。

 東京宇宙空港から宇宙に旅立って以来、キララ号の司令室は、すっかり少年たちの馴染みになっていた。変わったのは、約一ヶ月間一緒にいた、仲間たちの姿が見当たらないことだ。

 見慣れた大画面や固定シートのある司令室、そこから続く操縦室。それらは今までと同じように、そこにあるのに、今はやけにがらんとして、まるで別の宇宙船のようだ。カイとツクヨミは操縦席に座り、最後の調整を終えるところだった。

「ケンゾー、月へのコースを再確認してくれないか?特別な検問とか、途中で月正規軍が待ち構えていたりしないかどうかをね。問題なければ、予定どおり、貨物船専用の定期航路B41で行きたいんだ。警戒されないよう、監視システムへの応答も、通常通りで。それと、船体重量が入力値と微妙に食い違っているので、もう一度船内の様子の確認を」カイは、てきぱきと指示を出した。

「どちらの件も、今のところ全く問題ありません。全システム、正常に作動中。キララ号は現在、地球方面へ向かう、小惑星帯の通常ルートBa2を通って飛行していますが、どこにも、検問や軍隊の集中は検知されません。まもなく本流のB41ルートに合流します」

「ありがとう。船体重量の微妙な食い違いは、きっと表示のエラーだろうな。じゃあ月に近づいたら、手動に切り替えるから、その手前で教えてくれ」

「わかりました。航行はお任せ下さい。それまではごゆっくり、おくつろぎを」

 カイとツクヨミはシートの背もたれを倒し、どっと身を投げ出した。二人は、少々疲れていた。いくらケンゾーがいるとはいえ、太陽系内をキララ号で飛行させるのは予想以上に大変だった。

 だだっ広い外宇宙と違って、太陽系内は狭く、様々な宇宙船で混みあい、各惑星への飛行ルートは銀河連邦によって厳重に管理されている。通過する監視システムの関所も多い。だからキララ号が狭いルートを外れたり、途中で妙な疑いを持たれたりしないよう、細かいルールを守り神経を使いながら、月に向わなければならない。

 その上、キララ号は古いタイプの宇宙船なので、新航行ルートの自動プログラムが組み込まれておらず、ひと手間もふた手間もかかるのだ。

 アズミ軍の専門家が、新しい自動プログラムを入れようと試みたが、何故か、中途半端にしか入らない。おそらく、キララ号のコンピュータ自体が古すぎるので、うまくかみ合わないのだろう。そのため、代わりに、太陽系内の航行地図や細かいルールのデータのみを組み込んだ。

「それにしても、今日はやけに静かですね」

 ケンゾーの声が突然、がらんとした船内に響き渡った。

 カイは、ほとんど上の空で答えた。「入力を訂正したとおり、キララ号に乗っているのは、とうとう僕ら二人だけになったんだ…」

 カイは自分でそう言いながら、背もたれに深く寄りかかったまま、目を閉じた。しばらくそのままでまどろみを楽しみ、それからそっと目を開けてみた。点滅する無機質なパネルボタンが、頭上に整然と連なっている。まるで星々の瞬きのようだ。カイは、その小さな星空に向かってつぶやいた。

「ああ、アズミ指揮官が僕らの味方だったら、怖いものなしなのに。あんなに優秀で、格好良くって、月を熟知している人間なんて、そうそういないよ」

「同感だね。地球正義軍でなければ、あるいは、もうちょっと別の関係になっていたかもしれないな」ツクヨミも上を見ながら言った。

「あんな父親がいたらなあ。ボルとバルが羨ましいよ。僕なんて、親の顔を知らないから、尚更だ」

 ツクヨミは何も言わなかったが、何も言わないことで、何十回もそうだと言うより、もっと深くカイの気持ちを受け入れていた。そして、自分の父である銀王を思い出した。父親ではあるが、ツクヨミにとっては、ずっと銀王であった。幼い頃より、父と遊んだ記憶はなく、ある意味、他人よりずっと他人だった。

 それでも、銀王が自分や弟王子を気にかけているのは、よくわかっていた。そう、いつだって、自分たちを気にかけている。だが、王妃と妹を失った日から、銀王は変わってしまったのだ。

「ねえツクヨミ、本音を言ってもいいかな。僕は、キララ号のみんなと一緒にいるのが楽しかった。この1か月間いろいろあったけれど、こうして離れてみてわかったよ。僕らには、大人の支援者も必要だけど、彼らのような仲間がもっと必要だったのかもしれない。今更ながら気づいたよ」

 意外なカイの告白に、ツクヨミがすぐ隣から答えた。

「私も本音を言ってもいいかな?全く同感だね。当初はどうなるかと心配したけれど、結局は、彼らにいろいろ助けられたね。私たち二人だけだったら、途中でくじけたり、諦めたりしていたかもしれない。それに、宮殿からほとんど出られない私は、いろんな意味で楽しかったよ。彼らの自由な人生を羨ましいとさえ思った」

「こんな危険な状況でなかったら、キララ号での漂流も、もっと純粋に楽しめたのになあ」カイは残念そうに肩をすくめたが、すぐに慌てて言い直した。「ツクヨミ、ごめん、君を責めているわけじゃないんだ」

 ツクヨミは、穏やかに微笑んだ。

「わかっているさ。こんな状況じゃなかったら、私だって、みんなとは本当の友だちになれたと思うよ。だけど、彼らには彼らの人生があるし、これ以上、危険な旅に彼らをつき合わせるわけにはいかないからね。もちろん初めから、私と危険を分かち合っている君には感謝しているよ」

 カイは同じ思いに、大きくうなずいた。

「しかし、今のところ、確実な味方が僕だけっていうのも、一国の王子としてはちょっと寂しいな」

「こればかりは仕方ないよ。月に戻ったら、味方をうんと増やせばいいだけさ」

「そのとおりです。味方は多ければ多いほど、有利になります」とケンゾー。

 ケンゾーの妙な言い廻しに、二人は首を傾げた。ケンゾーは二人を無視するように、一方的にしゃべり始めた。

「残念ながら、今回は二人ばかり減りましたが、3人いれば心強いかと思われます。いえ、私も入れて4人ですね」

「ケンゾー、いったい何の話だ?」

 二人は、ついにシートから身を起こした。

「お二人が今、一番必要としているものについてです。さあ、司令室の大画面へどうぞ」

 二人はケンゾーに促されるまま、司令室へと足を運んだ。

 先ほどまでは暗かった大画面に、何人かの人物が映し出されていた。タツヤとアキラとマナミだ。3人は大きく手を振って、やけに楽しそうに笑っている。おそらくは、アズミの旗艦からの映像だろう。カイは、最後の見送りにも来なかった3人に文句を言ってやりたかったが、たとえ画面越しでも、会えた嬉しさの方が勝り、思わず笑顔を向けてしまった。

「やあ。ついさっき別れたばかりなのに、ずい分とまた早い再会だなあ」

 すると、画面のアキラが妙にニヤニヤし始めた。

「まさか、おれたちのことをそんなに思ってくれていたとはね。いやあ、嬉しいね。お返しに抱きしめたいくらいだ」

 どうやらアキラたちは、カイとツクヨミの会話を聞いていたらしい。それを知った二人はその場で頬を染め、視線を少し下げた。画面のアキラは、大胆にカラカラと笑った。

「まあ、おれたちも、ちょっと無理した甲斐はあったかな」

 カイとツクヨミが再び視線を戻すと、何故か画面の3人はふっと消えていた。その代わりに、司令室の入口から本物の3人が現れた。カイとツクヨミは呆気にとられ、その場で固まった。

 そんな二人を尻目に、アキラがカイたちにずいと歩み寄った。

「おいおい。また会えて嬉しいよ、なんて気持ち悪いセリフ、言わないでくれよ。おれたちは最初から、君らと別れるつもりなんて、これっぽっちもなかったんだから。一緒に行って、一緒に戦うよ。危険なのは、もちろん覚悟の上さ。このまま何もせず、故郷に帰る方が、よっぽど無理難題だってわかったからね。これが、おれたち3人の出した最終結論さ」

 アキラは自信満々に宣言すると、持っていた灰色のリュックサックをどさっと床に置いた。それから、鼻息荒く、両腕を固く組んでみせた。

「右に同じさ」とタツヤ。

「左に同じよ」とマナミ。

 アキラの両隣に並んだタツヤとマナミも荷物を置くと、両腕を組んで、3人して同じポーズをとった。勝ち誇った笑みの顏が、二人の目の前に3つ並んだ。

「君たちには、いや、その、参ったな…」

 カイとツクヨミは何か言おうとしたが、言葉にはならなかった。一見、困った風な表情を見せたが、心の底では喜んでいるのが、3人にはよくわかっていた。

「この判断に問題はありませんよ。アリオン、いや失礼、ツクヨミ王子」ケンゾーが画面から呼びかけてきた。「票決を採った場合、反対があったとしても、反対はあなたとカイ、それにカイのリーダー分を合わせても3票。賛成はタツヤ、アキラ、マナミ、そして私を合わせた4票。友だちを助けるという行為は、重要事項ですから、当然多数決で決めるべきでしょう」

 ケンゾーは当たり前のように、すらすらと言ってのけた。

 ものの5分としないうちに、キララ号の司令室は、以前のような、賑やかな部屋に戻った。小さな双子の兄弟はいないものの、なごやかな空気に、ツクヨミもカイも心底嬉しそうだった。

 その談笑は、外から入った通信で中断された。司令室の大画面には、アズミ指揮官の姿が映し出された。タツヤたち3人は、慌ててカメラに映らない死角に身を隠した。

「アズミだ。ツクヨミ王子、カイ、飛行は順調かね?」

「ありがとうございます、今のところ問題はないようです」カイが卒なく答えた。

「ところで月正規軍は、君たちが奇岩諸島にいないと、早くも気づいたようだ。もうちょっと時間が稼げると思っていたが、残念だ。6千隻の戦闘宇宙船が全速力でそっちへ向うぞ。気をつけてくれ。あいつらを騙せるとは思えないが、この小惑星帯に君たちがいると思わせぶりの演出をしてみるよ。計画の第2弾だ。我々は、怪しい素振りを見せながら、半日遅れでここを出発する。それから」とアズミはわざとらしい咳払いを一つした。

「タツヤの父親には、私からタツヤの無事を知らせておくよ。もちろん月に向っていることもね。マナミの両親については、現在、銀河連邦が捜索中だ。何か情報をつかんだら、キララ号経由で知らせるよ。アキラの家には連絡がつかないので、とりあえず地区の方に無事を知らせておいた」

 アズミは、タツヤたち3人がキララ号に乗っているのを知っていたのだ。息を殺して聞いていたタツヤが、複雑な思いでカメラの前に立ち、マイクに向った。

「アズミ指揮官、僕たちがキララ号にいるって、気が付いていたんですね?」

 すると画面のアズミは、豪快に笑った。

「とっくにね。君らの行動は十分怪しかったよ。地球に帰る話を全くしなかったり、内緒でケンゾーと打ち合わせをしてプログラムを変更したり、王子たちの見送りにも来ないで早々と引っ込んだり。どれをとっても、君らは何とかして、王子たちと一緒に月へ行くだろうと思っていたよ」

 タツヤは、悔しそうに顔を歪めた。やはりアズミ指揮官はただものではなかった。タツヤの立てた計画をすっかり見抜いていたのだ。

「そうか。アズミ指揮官にばれていたんじゃ、僕の策略は失敗だったんですね。でも、そうすると、あなたは僕らを、わざと見逃してくれたのですか?」

 アズミの大きなため息が、画面越しに見て取れた。

「見逃したんじゃないよ。私は、君たちを信頼しているんだ。子どもながらに君たちは、全員素晴らしい才能を持っている。友だち思いで、よく考えよく判断して、危険なことは決してしない、とね。それに私が引き留めても、どうせ君たちはおとなしく引き下がらないだろう?さらに危険な手段を使ってでも、月に乗り込もうとするだろう?だから私は、あえて、君たちを強引に連れ戻さなかったのだ。でも、君たちの両親や保護者からは、きっと訴えられるだろうな。子どもたちを危険な目に遭わせたとね。そこで、君たちを月へ行かせた私の顔を潰さないためにも、決して無茶はせず、元気な姿で地球へ戻ってくると、今ここで約束したまえ。そうしたら、最終試験は合格だ」

 アズミの力強い口調に、タツヤたち3人はしぶしぶ画面に姿を現し、口々に約束した。それを見届けたアズミは、厳しさを含んだ笑顔を3人に向けた。

「よろしい。とりあえず合格としよう。私との約束を決して忘れないように。無事で戻ってくることが、君たちの任務だからね。カイ、重い使命の上に、上乗せして悪いが、みんなの面倒を引き続き頼むよ。さあ、そろそろ地球・月の軌道圏に入る頃だろう。これからが本番だ。互いのためにも、この辺で通信を切った方が良さそうだ。ツクヨミ王子、カイ、何度も言うが、十分警戒しろ。健闘を祈っている」

 アズミの顔が画面から消えた。アズミはやはり地球正義軍の指揮官だけあって、一枚も二枚も上手だ。タツヤたちは、改めてアズミの実力を思い知った。アズミがもし敵だったら、自分たちはとっくに捕まっていただろう。5人の少年少女は、アズミに尊敬の念を感じると共に、自分も将来はアズミのような指揮官になりたいと、密かに憧れるようになっていた。

「ねえ、見て」

 アズミとの通信が切れて間もなくすると、マナミが全員に呼びかけた。

 一同は、司令室の小さな丸窓に集まった。そこからは青く輝く美しい地球が見えてきた。5人全員が感動のあまり、しばらくの間、黙ったままじっと見とれていた。たった1ヶ月、地球から離れていただけなのに、タツヤは地球の青さがやけに目に染みた。特にマナミはまるで、目を逸らしたら消えると言わんばかりに、地球から目を離さなかった。

 すると、小さな窓を占領していた青い星の向こう側から、控えめに輝く白い月がひょっこり姿を現した。

「あれが、月なのね」

 マナミは、不可解なものでも見るような目で、月を見つめた。


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