前向きな妾妃
お読み頂き有難う御座います。本日2話目投稿しております。何方から読まれてもあまり大差はありませんが、ご注意ください。
田舎で生まれたあたしべべは、家族とは離れて暮らしていたわ。
なんでもあたしは胸が悪いとかで、田舎の空気がいいんだって。確かにあの頃は、笑っても走っても胸が苦しくなかった。
あれ? でも今はお友達に貰ったお香? があるから胸は良くなったんだっけ?
でも、よく咳が出る。何でかな。
目の前には、意地悪そうな人達ばかり。何言ってるのかよく分からない。
周りの椅子には知ってる人も何人かいるけど、知らんぷりしてる。
此処は寒いよ。何で助けてくれないのかな。
あたしには、父さんと母さんとねえさんがいる。
初めて会ったのは……いつだったかな。子供の頃?
母さんとねえさんは変な歩き方してたから笑ったら、棒で叩かれた。怖くて痛かった。
何で?
だって、周りの人達は同じような歩き方の村人を笑ってた。悪いこと?
誰も教えてくれない。勉強? だってよく分からない。つまらないもの。
遊び相手は沢山いた。男の子ばかり。
女の子はあたしを嫌うの。ちょっと髪の毛を汚いとか、顔が醜いとか注意してあげただけなのに。
直せばあたしのように可愛くなるって、言っただけ。他の女の子って難しいのね。
そういえば、男の子達と寝台の上で寝てたら怒られたこともあったな。
子供が取っ組み合いしてただけよ。男の子なら、誰でもやるわ。何処でもやってたわ。
でもあたしは純潔じゃないとかで、医者に酷く痛めつけられた。
あたしが不適切な行為したって言ってたけど、きっと医者に乱暴されたんだわ。
そのうち男の子の1人と結婚式もやったっけ? 楽しかった。
でも、なんでか田舎から引き離されて……大きな建物に放り込まれたんだっけ。
そこでは偉そうな女の人があたしを叱るの。寄って集っていじめるの。
泣いてたら、ピピがあたしに優しくしてくれた。
キレイなドレスと、カワイイ首飾りをくれたの。
ツルツルの手触りで、夢のようにピカピカしてた。
難しいこと分からないの。そうピピに相談したら、偉そうな女の人達から遠ざけてくれた。
運命のヒトだわ。
昔、ちょっとだけ女の子が話してたのを聞いたの。
運命のヒトは、あたしを大事に甘やかせてくれて、嫌なことから遠ざけてくれて、欲しいもの沢山くれて、何にも怖いことも痛いこともさせないで、楽で優しくて素敵な生活をずうーっと送らせてくれるの。
怖い人達には運命のヒトがいないのね、かわいそう。
あたしがカワイイから、運命のヒトが見つかるの。
ピピはこの国でとっても偉くて、あたしを偉い王妃様にしてくれるのよ。
でも、ピピがこの頃冷たいの。
あたし、子供を産めないって。
え、産んだよ? 忘れたの?
でも、直ぐに何処かに連れて行かれた。あたしの赤ちゃん。
あたしでは育てられないからって、取り上げられた。
……子供なんて怖いから、遊べないし良かったけど。
でもピピはそれから他の女の人を連れてて、お部屋に来てくれなくなった。
だから、来てくれる人を呼んだだけ。素敵な詩を読んでくれたり、歌を聴かせてくれるお友達よ。
ちょっとお菓子をあげたこともあるし、贈り物のいい匂いのお香が面白くて、ちょっとだけ大騒ぎしただけじゃない。
男の人に囲まれてたって、昔と同じで不貞じゃないわ。
ピピだって、あたしじゃない女の人とベタベタしてたじゃない。
ちょっとした行き違いってやつよ。あたしたち、楽しいのが好きって前向きな考え方が似てるから。お友達ともね。
ピピが運命のヒト。他は楽しめるお友達。
そうやって、前を向いて嫌なこと忘れて楽しく暮らしていきましょうよ。血が繋がった嫌な人達より、本当の家族みたいなものだよ。
……それなのに。
寒くて狭いお部屋、意地悪な人達、よく分からないお話。
「ドンデ侯爵家は、元妾妃べベリー、平民ベベへと減刑を望みますか?」
「ドンデ侯爵家は元妾妃べベリー様が後宮へお入りになった際、陛下の勧めにより離縁しております」
……今の声ってお父さん、だよね?
しばらく会ってないけど、顔があたしに似てる。何であたしを見てくれないの。
助けてよ。
「おとうさ……」
「平民ベベ、静粛に。静かにしなさい」
口の中にゴワゴワした布を噛まされて、あたしは何も言えなくなった。
苦しい。
しんどいよ。
「では、収監後に斬首を……日程は」
「愛人達は身分を返上させ収監後聴取の上、即絞首……」
「妾妃も身分返上させた方が……」
待って。
お友達まで殺されるの?
違う女の人と、廊下で、お部屋で、お庭でいやらしいことをしてたピピは何もされないのに?
あたしとお友達が殺されるの!?
「……!!」
「おい、暴れるな!」
首を振り回して周りを見渡したら、何処かで見たことのある、姿勢の悪い女の人が見えた。
ねえさん。
顔色の悪い横の男は、旦那さん? 結婚したんだ……。
あたしをお式に呼んでくれなかったの? でも、ピピとの結婚式は誰も来てくれなかった……。
呼んでないから、おあいこかあ。
足が悪くても、幸せなんだね。いいなあ。
幸せなら、あたしを助けて。
よく物事を忘れるようです。