『婚約破棄』が趣味の国王よ!喰らえ!婚約破棄返し!
「キミとの婚約は解消する!婚約破棄だ!」
若き国王、ギルバートはビッと私を指差し、高らかに宣言した。
私は突然の言葉に戸惑っていた。
「ど、どういう事でしょうか……?」
するとギルバート国王は、
「ノーラ、やはりキミと私とでは釣り合いが取れていなかったようだ。」
と、うっすら笑みを浮かべながら言った。
「釣り合いって……」
私がさらに戸惑っていると、ギルバート国王は、
「キミは私には相応しくないという事だ。それだけだ。ハッハッハッ!」
と、笑みは『うっすら』から『しっかり』に変わっていた。
「だからノーラ、キミとの婚約は解消だ!婚約破棄だ!ハーッハッハッハッハッ!」
ギルバート国王は腕組みをして、背中を反り返しながら高笑いしていた。
「わ、分かりました……」
…私は一旦部屋を後にした。
◇◇◇
私はノーラ。
演劇小屋を営む両親の元、今では私が『座長』として、劇団員の指導から運営まで、私が一手に担っていた。
そんな私がギルバート国王から突然『求婚』されたのは、今から1ヶ月前の事だった。
それ以降、ギルバート国王はしきりに『婚約中』という言葉を使っていたが、それから特に進展らしい進展はなかった。そして今日、突然の『婚約破棄』を告げられたのである。
しかしこの婚約破棄は、実は私の『想定内』であった。
〜 1ヶ月前 〜
「おお、アナタはノーラとおっしゃるのか。ノーラよ。私と『婚約』してくれ」
私とギルバートは初対面だった。
わたしがキョトンとしていると、
「これで、私達は『婚約中』だ。では……」
ギルバート国王はそう言い残すと、そのまますぐに去っていった。
私が事態を飲み込めないで居ると、一人の女性が声を掛けてきた。
『あ、あの!もしかして今、ギルバート国王から『求婚』されましたか?』
わたしがうなづくと、その女性は
『やっぱり……』
と、苦々しい表情で去っていくギルバート国王をにらんでいた。
「どうしたの?」
と私が尋ねると、
『実は私、『元•婚約者』なんです!』
「えっ!?」
…よくよく話を聞くと、彼女も以前にギルバートから求婚されたという。
『そしたら1ヶ月後、急に婚約破棄されたんです!』
「どういうこと?」
私がさらに尋ねると、
『この求婚、単にギルバート国王が『婚約破棄』をしたいだけなんです!調べてみたら、私の他にも被害者が7人も居たんです!』
私は驚いた。
「でも、何のために……」
すると女性は
『ただの趣味なんです!婚約破棄が!きっと優越感に浸れるのが気持ちいいだけなんです…!なのに当時の私ったら間に受けちゃって…!』
女性は涙ぐんでいた。
すると後ろから、他の7人の女性達も出てきた。
『私達も同じ被害者なんです!ノーラさんとおっしゃいましたよね?ノーラさんはなんだか頼りになりそうな気がします!私達のカタキを取ってもらえませんか!?』
私はギルバート国王の事はほとんど知らなかったが、話を聞く限り、女の敵である事は間違いなかった。
ただ、急にカタキを取れと言われても荷が重いなと思っていたら、
『お願いします!お願いします!』
と、女性達全員、目に涙を浮かべながら懇願してきた。
これは私が彼女達のカタキを取ってやらないと、という妙な使命感も芽生え、
「分かったわ。私に任せといて。」
と、親指を立てながら約束してしまっていたのである。
◇◇◇
〜 次の日 〜
私はまだ、ギルバートの城に居た。
するとギルバートがやってきた。
「おや?ノーラ。まだ居たのか。キミとの婚約は解消したはずだがな!」
ギルバートはまた、私をビッと指差した。
「なんせ、『婚約破棄』したのだからな!ハーッハッハッハッハッ!」
ギルバートは後ろに120度反り返りながら歩いて行った。
すると、周りに居た使用人の方々が小声で話し始めているのが聞こえてきた。
『えっ?あのノーラ様と婚約解消したのか!?』
『うそー!もったいない!あんなに羨ましい人…!』
『あんな素敵な女性、滅多に居ないのに…!』
『ヒソヒソヒソ……、』
…私を持ち上げるような言葉のオンパレードだった。
だが、これは私の作戦だった。
【まずは私と『婚約破棄』した事を後悔させる】
これが私が考えた最初の作戦だった。
私はこの日のために、1ヶ月前からウチの劇団員を数名、使用人として忍ばせていた。
…案の定、ギルバートは使用人の話が気になっている様子で、耳の大きさが3倍になっていた。
〜〜〜
そして午後。
ギルバートのもとに来客者が来た。遠くの国の伯爵が表敬訪問に来たとのことだった。
『ギルバート国王、初めまして。お会いできて光栄です。』
「いやいや客人よ、くるしゅうない、そのまま頭を下げとけ。」
ギルバートは応対していた。ギルバートは『国王>伯爵』と認識したのだろう。偉そうに振る舞えるという、大好きなシチュエーションだった。
『ギルバート国王、ご婚約されたそうで、おめでとうございます。』
客人が言うと、ギルバートは待ってましたとばかりに、
『ああ!確かに婚約はした!だが私はなんと!婚約破棄……!』
ギルバートが反り返りそうになったその時!
『いやー!しかも、お相手はあのノーラ様だとの事で!本当にすごいですね!ギルバート国王!』
客人は私の事を持ち上げ出した。
…もちろんこれも、作戦の一環だった。
この伯爵も、ウチの劇団員だったのである。
『ノーラ様の事は遠く我が国にも知れ渡っています!美しくて聡明で……!』
「お、おぉ、そうか……」
反り返ろうとしていたギルバートの背中は、そのままの体勢で固まっていた。
『また、お祝いの花を贈らせていただこうと思います!それでは……』
伯爵の客人は帰っていった。
するとギルバートは私の方をチラッと見て、
「……キミってすごかったのか……?」
と、聞こえないくらいの小声で言ってきた。
なので私は、
「ギルバート国王、私の事、全く知らないですよね?」
と言った。
そうこうしているうちに、
『初めまして!ギルバート国王!ご婚約、おめでとうございます!遠くの国の辺境伯でございます!』
と、すぐさま次の劇団員がやってきた。
『しかもお相手はあのノーラ様!凄すぎです!』
ノーラの凄さを次々に思い知らされる。
『お相手がノーラ様だなんて!アナタ、何者ですか!?』
次。
『お相手がノーラ様!?ブルブルガクガク…!』
次
『お相手がノーラ様!?アナタは神ですか?』
次。
『ノ、ノーラさま〜〜〜〜〜!』
そんな感じで、この日はエキストラを含む300名の客人が城の前に並び、ギルバートのもとへ表敬訪問した。
来客者全員から『ノーラ様の凄さ』を聞かされたギルバートは、最後はモヤシのようになっていた。
「へ、へえ〜〜、ノ、ノーラ、キミ、けっこうやるんだねえ……ち、ちなみにキミ、しばらくこの城に残ってみないか……?」
ギルバートは私と婚約破棄した事を少しは後悔している様子だった。
◇◇◇
〜 1週間後 〜
私が引き続き、ギルバートの城でのんびりしていると、再び来客が来た。
『ノーラ様!いらっしゃいますか!?』
…そこには結婚適齢期の、容姿端麗な男性が立っていた。
「はい…私ですが、何か……」
『実は、ノーラ様はギルバート国王との婚約を解消されているとお聞きしました!なので、私が『求婚』に参った所存であります!』
私が両手を口に当て、目を丸くしていると、後ろからギルバートが現れた。
『ど、どこで聞いたのだ!そんな事!』
うろたえるギルバートに、客人は答えた。
『それはもう、世界中に知れ渡ってます!何せ、凄すぎるノーラ様の話ですから!』
……もちろん、彼も『劇団員』である。
次なるステップは、
【婚約破棄を言い渡したノーラに、求婚者がやってくる】
これだった。
ギルバートの後悔を加速させるのが狙いだった。
『ギルバート国王!ノーラ様との婚約は解消されたのですよね!?』
「ぐ、ぐぬう……」
案の定、ギルバートは何も言えず、悔しそうな表情を浮かべていた。
するとさらに
『ノーラ様!求婚を申し上げます!』
新たなる客人が私に求婚してきた。
『ノーラ様!結婚してください!』
『いや、私と結婚を!』
『ラブミー!ノーラ!』
先日と同様、ガヤガヤと求婚者が押し寄せ、城には500人の求婚者でごった返していた。
もちろん、みんなエキストラである。
「……どうしますか?ギルバート国王…?」
私は、ギルバートの方をチラッと見た。
するとギルバートは、
「す、好きにすれば良かろう!だ、だが少なくとも、私を超える人物で無ければ格好がつかないだろう!……そうだろ!?」
精一杯強がった表情でこういった。
「ギルバート国王を超える人物、ですか……。」
そこで、私は拡声器を持って、500名の求婚者に向かって叫んだ。
「皆様!お集まりいただきありがとうございます!それでは、婚約に先立ちまして、一つだけ条件を出させていただきます!それは……」
そして、
「元•婚約者であるギルバート国王を超える人物である事!これが条件です!」
『ウオォォォォォォォオ!!』
500人の歓声が、地響きのように鳴り響いた!
私はチラッとギルバートの方に目をやった。
ギルバートは、目も鼻も口も、点になっていた。
『でもどうやって決めるんですか!?』
求婚者の一人が叫んだ。
そこで私は、
「では、こうしていただきます!ギルバート国王を超えているかどうか判断する為に、『知力』『体力』『政治力』を競い合っていただきます!」
『ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!』
地響きがうなる!
さらに、
「もちろん、そこにはギルバート国王にもご参加いただきます!」
『わああぁぁぉぁぁぁぁああ!!』
歓声がこだまする!
すると、
「な…!ば、ばかなっ……!」
ギルバート国王は、うろたえた表情で叫んだ。
そこで私は、
「ギルバート国王、先ほど、『少なくとも、私を超える人物で無ければ格好がつかないだろう』とおっしゃいましたよね?」
私はギルバートに尋ねた。
「そ、それはそうだが、何故、私が参加しなければいけないのだ!?」
ギルバートは参加を渋っている。
そこで私は、
「ギルバート国王にご参加いただかないと、国王を超える人物かどうか分からないではないですか。そうしなければ格好がつかないのでしょう?」
こう問い返すと、
「ぐ、ぐぬうぅ……」
…ギルバート国王はその場にへたり込んだ。
こうして、『知力』『体力』『政治力』を競い合う大会が始まった…。
◇◇◇
〜 大会当日 〜
「それではまずは『知力』を競い合っていただきます!みなさん!目の前の答案用紙は裏返したままにしておいてください!」
私は500人を前に、拡声器で叫んだ。
長机の端っこで、受験ナンバー501番の席にギルバートも座っていた。
「それでは……はじめ!!」
皆、一斉に答案用紙を表に向け、知力試験に取り掛かった。内容は、文系•理系•一般教養と多岐にわたる。
試験の結果はどうあれ、そもそもの目的は、
【婚約破棄した事を後悔させる】
だったので、今まさにギルバートが頭をかきながら試験に参加しているという状態、これこそが意味のある事だった。
二人の力関係でいうと、すでに若干、私の方が優位に立っていた。
なので、試験は一旦全員ガチで挑んでもらった。
「ここまでー!」
…試験が終わり、早速答え合わせをした。
ちなみにギルバートは501人中で389位。偏差値43ほどだった。
〜〜〜
「では次は体力試験です!向こうの山まで走っていって、そこでスタンプを押して、ここへ帰ってきてもらいます!」
知力試験に引き続き、ギルバートはゼッケン501番を付け、体操服を着てスタート地点に立っていた。
「それでは位置について!よーい……パアン!」
私のピストルの音に合わせ、501名が一斉にスタートした!砂ぼこりが激しく舞う!
…ちなみに、これも先ほどと同じく、
【婚約破棄した事を後悔させる】
これが目的だったため、実際の順位はどうでもよかった。
ちなみにギルバートは501名中474位。9時間45分08秒でフィニッシュした。
〜〜〜
「それでは最後に『政治力』を競い合っていただきます!みなさん、街へ出て国民の方々の悩みを解決してください!」
ギルバートも参加させるのだが、いかんせん国王だという事を国民に悟られる訳にはいかない。
そこで、丸メガネに大きな鼻、その下にもじゃもじゃのヒゲがついた、いわゆるパーティーグッズを顔に着けさせ、街へ出した。
500名の求婚者が国民に声をかける。
『何か困ってる事はないですか?』
…だが、ここで私には作戦があった。
それは、ギルバートが街に出てきた時である。
その時、先日の『元•婚約者』達に集まってもらい、『ギルバート国王からこんなひどい事をされた!』と、婚約破棄が趣味だという事を国民の前で知らしめさせる事、これが狙いだった。
私が街の奥に目をやると、彼女達はすでにスタンバイしていた。
そんな中…
『何か困ってる事はないですか?』
エキストラの求婚者達が国民に質問していく中で、少し想定外の事が起きていた。
『税金が高すぎて困ってる!』
『なんか臭いし、街が不衛生だ!』
『学校に通えない子もたくさんいる!』
『ほんと!今の国王にはホトホト困っている!』
…政治に対するガチの不満が、国民の声として上がってきたのである。
スタンバイ中の彼女達が出る幕もなく、ガチの国民達がガチの不満を次々に口にし始めた。
そして、その勢いは止まる事を知らなかった。
そんな中、チラッと横に目をやると、変なおじさんマスクを付けたギルバートが、生の国民の声を耳にしてブルブルと震えていた。
すでにギルバートはこの場に来ていたが、もはや彼女達が出てこられる雰囲気ではなかった。
そんな、不満が次々と出てくる中、一人の国民が、
『治安が悪くて困ってる!武器もないから戦えない!』
と言った。
すると、隣で変なおじさんマスクを付けたギルバートの頭の上に、『ひらめいた!』とばかりに電球のマークが浮かんだ。
「そ、その悩みならすぐに解決できる!」
変なおじさんは急にしゃしゃり出てきた。
「この国の倉庫にある、兵士用の武器を全ての国民に配ればいい!そうすれば解決だ!」
ギルバートは人差し指を高らかに真上に向けていた。
『そんな事ができるのかーー!?』
当然、国民から疑問の声が飛ぶ。
「出来るとも!優秀な国王であればな!」
そう叫ぶとギルバートは、城へ帰っていった。
私は想定外の展開に困惑した。
そして、『元•婚約者』達のフォローをした後、一旦城へ戻った。
「作戦、練り直さなくっちゃ…。」
◇◇◇
〜 翌朝 〜
…なんだか朝から街が騒がしい。
街へ出てみると…
『うおー!なんか知らんが、朝起きたら枕元に槍があったぞ!』
『私は斧よ!』
『僕はブーメランだ!』
…昨日の夜、謎のサンタさんが国民の枕元に武器を置いてまわったらしい。
私は驚いて城へ戻った。すると、玄関のところでギルバートが待っていた。
「ギ、ギルバート国王…」
すると、
「ハーッハッハッハッハッ!だから言っただろう!国民の悩みを解決する事なんて、文字通り朝飯前なのだ!優秀な国王ならばな!」
背中は150度反り返り、元のギルバート国王に戻っていた。
「…………すごい行動力ですね。」
私が言うと、
「ま!結局!私を超える人物は居なかったって事だな!ハーッハッハッハッハッ!」
ギルバートの背中は270度反り返っていた。
するとギルバートはピタッと笑いを止め、背中の角度も0度地点に戻ってから、私を指差して言った。
「ノーラ、キミなかなかやるようだね。婚約、もう一度してあげてもいいよ?」
……まさかの再求婚だった。
「じゃあ、私とキミは再び『婚約』状態だ。それじゃあ。」
そう言うと、再び140度くらいになって、部屋へ戻っていった。
「こ、この展開は……!」
…私は予想外の展開に頭が少し混乱していたが、すぐさまこれからの作戦について、頭の中でパズルを組み立てていった!そして、一つの作戦が仕上がった!
「……これだっ……!」
◇◇◇
〜 翌日 〜
私はギルバートの部屋へ行った。
『コンコンコンッ』
「誰だ?」
「私です。ノーラです。」
「おお、ノーラか、くるしゅうない、入ってくるがよい。苦しみながら入ってきてもよいぞ。」
…すっかり元のギルバートに戻っていた。
「ギルバート国王、婚約の話ですが…」
「おお、どうした?」
ギルバートは耳くそをほじくりながら応対している。
「また再び、私への求婚者がお城に押し寄せてくるか分かりません。出来れば国民の前でしっかりと『婚約中』である事を表明してほしいのですが…。」
私がそう言うと、
「うーむ。それもそうだな。また、試験や競技をさせられるのもアレだしな……」
知力•体力試験は、あれはあれで懲りている様子だった。
「よし分かった!1週間後、城の前に国民を集め、宣言しよう。私とノーラは婚約中であるとな。」
ギルバートにも、利があると感じたのだろう。私からの提案はすぐに採用された。
「……よし!」
そして、私は最後の作戦の準備に取り掛かった!
作戦名は……
【喰らえ!婚約破棄返し!】
◇◇◇
〜 1週間後 〜
ガチの国民達が、城の周りに集まっていた。
数日前に、全国民の家庭にチラシが入れられていたのだ。
[ 国王が婚約者を披露するから、お城に集まるように。来なければ死刑 ]
城の周りはぎゅうぎゅうの状態だった。
…そんな中、ギルバートと私は国民の前に登場した。
「おお、国民の皆よ、ご苦労だな。今日集まってもらったのは他でもない。」
そして、
「皆に知っといてもらいたい事があるのだ。私の婚約者の事だ。」
ギルバートは私の事をビッと指差した。
「このノーラは私の婚約者である!よって今後、ノーラには間違っても、誰も求婚をしないように!」
国民はシーンと静まり返っている。
「このノーラは凄いらしいのだ!そして、そのノーラを婚約者とした私は、さらに凄いのだ!ハーッハッハッハッハッ!」
ギルバートがいつもの高笑いをしていた。
…国民は変わらず、静まり返っている。
そこで私は、
「ギルバート国王、私も一言だけ、国民の皆様にごあいさつしてもよろしいでしょうか?」
と尋ねた。
ギルバートは背中の角度が180度に反り返っている状態で、
「別にいいよ。」
と言った。余裕の表情だった。
そこで私は、国民の前で演説を始めた。
「皆様、先ほどギルバート国王は私と婚約をしているとおっしゃいました!なので、引き続き、私があいさつをします!皆様、しっかりと見ていてください!」
私は、ギルバートのほうを向いて、それからビッとギルバートに指を差した!
そして!
「ギルバート!アンタとの婚約は解消する!婚約破棄だ!」
「なっ………!!」
ギルバートは180度反り返ったまま固まっている!
すると!
『うおおおおおおおおおお!!』
今までシーンとしていた国民達から、地鳴りのような歓声が沸き起こった!
「の、ノーラ!……なにを……!!」
ギルバートは180度で反り固まりながら、私をにらんでいる!
そしてギルバートは……
「ぶ、無礼者ーーーー!!」
なんと!反り固まったまま私に襲いかかってきた!
『きゃーーーーーーーーー!!』
国民から悲鳴があがる!
そこで私は!
「無礼者?……無礼なのはキサマだーーーー!!」
そして!
私は反り返ったギルバートの背中を思いっきり蹴り上げた!
『ドゴオォォォォオ!!』
『ぎやあぁぁぁぁぁぁあ!!』
ギルバートは苦悶の表情を浮かべる…!
ギルバートは突然の出来事と痛みに震えながら、
「な、なにをするのだ!」
と叫び、再びこちらをにらみつけた!
そこで私は!
「なんだ……?……なんだ!その目はーーーー!!」
そして!私は、両手を組み握り、そのままギルバートの頭上に思いっきり振り下げた!
『グシャァァァァァァン!!』
「ぐわあぁぁぁぁぁぁあ!!」
ギルバートは地面に崩れ落ちた!
「ノ、ノーラ……!……くぅっ!」
ギルバートは頭を押さえながらその場でうずくまっている。
「ば、ばかなっ……!私を誰だと思ってるんだっ……!」
ギルバートは立ちあがろうとした。
その時!
「私を誰だとおもってる?……知らねえよおーーーー!!」
『バキィィィィィィィィイ!!』
「ぐはあぁぁぁぉぁぁぁあ!!」
私は後ろ回し蹴りでギルバートを吹っ飛ばした!
『ドシャアァァァァァァア!!』
ギルバートの体が鈍い音で地面を跳ね滑っていく!
「知力389位、体力474位の男に、私が負ける訳ないでしょう?」
私は地面でピクピクしているギルバートの前で、シャドウボクシングを始めていた。
…すると、ギルバートは口を開いた。
「わ、私は国王だぞ…。こんな事をして、タダで済む訳ないだろう……」
そこで、私はギルバートを見下ろしながら言った。
「国王?…あなたが国王なのは『今日』までよ。」
「ど……どういう事だ……?」
「アナタの『政治力』の順位、教えてあげましょうか?」
「…………な…何位だ…?」
そこで私は答えた。
「501位!最下位よ!」
「ど…どういう事だ…!?」
ギルバートは困惑の表情を浮かべている。なので私は説明した。
「国民に『武器』を配るって事が、どういう意味だか分かる?」
「だ、だからそれは、治安維持のためだろう!」
「……アナタって、ほんとにダメ国王ね。そんな訳ないじゃない。」
「じ、じゃあどういう意味だ!?」
「国民が武器を持つ、それは、国民が『革命を起こすチカラを持つ』って意味なの!武力的な意味でね!」
ギルバート国王は『ハッ』とした!
しかし!時すでに遅し!
私は国民のみんなに叫んだ!
「みんな!配られた武器は持ってきた!?今こそ!打倒ギルバートの時よ!」
『うおおおおおおおおおおおおお!!』
『ドドドドドドドドドドドドドド!!』
集まった国民は皆、先日配られた武器を持っていた!
そして一斉に、ギルバート国王へ襲いかかったのである!
「へ、兵士よ!応戦だ!」
ギルバートは叫んだ!
しかし、城の武器庫はすでに空っぽだった!
『ギルバートをとっ捕まえろ!!』
『わあああああああああああ!!』
国民が城壁を登ってくる!
そして!
ギルバートはあっさりと国民の手に吊し上げられた!
『こいつめ!今まで散々国民を苦しめやがって!』
『ボコスカ!ボコスカ!』
ギルバートは国民達から袋叩きにあっていた。
そして私は、『元•婚約者』達をギルバートの目の前へ連れていった。
「みなさん、少しは『カタキ』を取れたかしら?」
『元•婚約者』達は、
『ありがとうございます!ありがとうございます!』
と、ハンカチで涙をぬぐっていた。
そして、
「あとは好きにしていいわよ。」
と伝えた。
すると、彼女たちは泣くのをピタッとやめ、ギルバートの方を向いた。
それぞれ、手には鉄球やハンマー、パイプ棒を持っていた。
……これにて一件落着!……といきたいところだが、このままでは私に利があまりないと思った。
そこでまた、私はある作戦を思いついた。
【ギルバートを劇団に入れて、今回の事を題材にした、実話ベースの舞台をやる】
これはきっと儲かる!
「みなさーん!ギルバートの息の根は止めないでくださいねー!これからギルバートには、ひと稼ぎしてもらわないといけないんですから!」
……国民の耳には、すでに私の声は届いていないようだった。
「まあいいか。よし!私も舞台本番に向けて、より一層キックの練習しなくっちゃ!」
〜おわり〜
読んでいただきありがとうございます(^-^)
下にある☆☆☆☆☆から、作品への評価をタップいただけるとすごく嬉しいです!
[ブックマーク]もタップいただけると本当に嬉しいです!
どんな評価でも作品作りの参考にしますので、何卒よろしくお願いいたします(*^▽^*)