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ニールは神出鬼没

「えっと、、、


 生徒会室に侵入 1名

 生徒会に入れてくれと泣き落とし 2名

 人選を間違えていると主張 1名

 サファイア様に苛められたと主張 2名

 生徒会室入口でわざと転倒 1名


かな。残りの4名は、特に何も行動を起こさなかったよ。」


 雑用係に応募して、不採用となった面々の、その後の行動の報告である。

 不採用への不満はあるだろうが、それを、訴えて来るのは珍しい。しかもこの人数だ。違和感を覚えずにはいられない。


「どうしちゃったんでしょうかね、彼女たち。」


 シモンが首を傾げる。やはりそう思うか!


「色々と思うところはあるが、、気になるのは、サファイアについてだな。苛めているのは本当なのか?」


 そもそも、必要なこと以外しゃべらないサファイアが、他人を苛めるようなことに労力を注ぐだろうか。


「サファイア様とその2名の女生徒は、クラスメイトみたいだけど、ベリーちゃんに聞いてみた限りでは、話をしたこともないみたいだよ。」


「そうか、、いじめは良くない。念のため、サファイアとその二人の女生徒を監視しておこう。」


「りょーかい。ニールに依頼しておくよ。」


「それには及ばない。」


 くぐもった小さな声が、私の耳元でした。心臓がキュッと音を立て、一瞬、息が止まる。


「既に、それぞれにつけてある。」


「ニールか、、ひっそり忍び寄るのはやめろと言っただろう!」


 私は大きな息を吐き出すと同時に、ニールを睨みつけた。

 こいつは毎回毎回!隠密行動は大事だが、こちらは肝が冷えるぞ!ショック死したらとうしてくれるのか。


「今のところ、動きはない。また報告する。では。」


 長い前髪から覗く金色の瞳を、キラリと光らせて、ニールは目を閉じた。


 あ、まずい、、、


 次の瞬間、ニールは跡形もなく、姿を消した。


「なんであいつ、いつもああなの?」


 シモンが、ポツリと呟いた。


「なんでだろうな、、、普通に登場していたのは10歳の私の誕生日までだったかな、、」


 公式の皇子様お誕生パーティとは別に、仲のいい友人だけで行われた、小さなティーパーティー。その席に、小さな花束を持って現れたときのニールは、普通にお供を連れて、馬車に揺られてやってきて、子爵令息然としていた。


 しかしあれ以来、子爵家の馬車は見ていない。お供も見ない。我が家は一応、セキュリティばっちりの王宮である。しかし、どのようにしてか侵入しているのか分からないが、自室、庭園、風呂場、、あらゆるところに、前触れもなく出没する。


 実際は、少なくとも3日に1回は、フラリと姿を表して、小声でボソボソとなにか伝え、パチリと目を閉じて消えてしまう。シモンの方も同様らしい。

 極、極々稀に、引き止めに成功すると、しばらくご歓談となるが、情報通のニールはなんでも知っていて、


『前回のサファイア様とのお散歩は、ちょっといい雰囲気だったな。もうちょい、押せよ。(ニマリ)』


などと突然言い出すので、いつどこで何を見られているのか、、恐ろしい。


『さ、サファイアとのことは、あまり覗き見するなよ。』


とだけ、釘を差しておいた。


 こんな調子なので、私とニールが話している姿を見るものは、ほぼいない。だから、私とニールとの交友関係は終わったと考えている者が多いのではないかと思う。

 しかし、やや一方的な繋がりに、淋しく思うときもあるが、今も変わらず敬語抜きでズバズバと物を言ってくれるニールは、私のかけがえのない友人であると思っている。


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