生徒会の雑用係
ホンワカもやもやは、その後も度々発生した。ありがたいことに、授業中や生徒会の仕事中に発生することはなく、私の学園生活はそこそこ正常に保たれていた。
問題は、ランチタイムだ。ほぼ毎回、ホンワカもやもや、生暖かい時間がやってくる。そしてたくさんの視線を感じる。非常に、居心地が悪い。
「やっぱり、新入生に何か紛れ込んでるんだろうな~。」
「やはり、そう思うか。」
「まちがいないっしょ。」
1週間ほど経ったあと、私とシモンはそのように結論付けた。上級生たちには大きな変化は見られない。新入生の中に、ホンワカもやもやを引き起こしている何かがあるのだろう。
「授業態度とかは、おかしくないみたいだよ。普通。至って普通。」
「人間関係は?」
「新入生同士の人間関係も、至って良好。サファイア様だけ孤立してるけど、そこは想定の範囲内だよね。」
「まあ、そうだな。」
そうか、、、普通なのか、、、しかし、相変わらず、私の周りでは奇行が多々発生している。
「はっきり言っちゃうと、ジーニアスがいなければ、普通なんだよ。」
「ターゲットは私で間違いないということか、、」
私とシモンは、小声で会話をしながら、足早に生徒会室への廊下を進む。
この学園の生徒会は、新入生を含まない2年次、3年次の学生で構成するのだが、生徒会を知ってもらうため、新入生から『雑用係』という名の手伝い要因を数名所属させるのが通例だ。
今年も募集をかけており、本日これから、雑用係の選定を行う予定だ。
まあ、本来は身分に関係なく採用されるべきではあるが、生徒会はほぼ上位貴族で占められているので、下位貴族や平民は遠慮して、ほぼ応募してこない。選ぶほど人数が集まらないのが実情である。
私の力不足でこのような状態のままで運営しているが、この辺のことは・・・もう少し改善していけたら良いなと思っている。
「失礼します。」
シモンが生徒会室のドアを軽くノックして、中に入る。
「ごきげんよう。ジーニアス様、シモン様。」
一番乗りかと思ったら、すでに副会長のアンナ・ガルシア伯爵令嬢が居た。
「早いね、アンナ。雑用係の選定は、今日行えそうかな?」
「今、ジャック様とマーガレット様が、整理してくださっているところです。もうすぐ行えますわ。」
「それはよかった。ありがとう。」
私は、生徒会室をゆっくりと横切って、生徒会長の机に座る。
「今年は何人来たかな・・・」
ふと、奇行令嬢が含まれていないといいな・・・と頭をよぎった。ニールが調べたところによると、奇行令嬢のほとんどは伯爵家以下、つまり子爵、男爵、平民(もちろん、優秀な人材であることを認められた特待生ではあるが)、ということだ。
生徒会に立候補するタイプの身分ではない・・・身分で選ぶのは良くはないが、だがしかし、奇行は困る。
「今年は13名、応募が来ています。」
アンナが静かに言った。
「13名!?」
私とシモンが同時に叫ぶ。
「ずいぶん、、、多くないか?」
嫌な予感がする・・・。入学式の日の奇行令嬢も確か13人。なんという不吉な数!
「全部、女生徒と聞いております。詳細について、今、ジャック様とマーガレット様が・・・あら、戻ってらしたかしら?」
バタバタと足音が聞こえ、ドアがさっと開いた。
「お待たせしました!雑用係の立候補者を調査してまいりました!」
マーガレットが私に一枚の紙を持ってきた。
「どうぞ、ご覧になってください。今年は平民からも応募が!ジーニアス様の目指す、身分を問わない生徒会が実現するかもしれませんね!!」
なるほど、、、ざっと資料に目を通す。
シモンも手渡された資料を見ている。
残念なことに、見覚えのある名前がずらずらと並んでいる。予感的中。奇行令嬢達が応募してきている。さて、どうしたものか・・・。
いや!しかしここは冷静に、私情なく、応募者の能力を見極めなければ。
「とりあず、資料を見せてくれ。さあ、、皆、席について、雑用係の選定を始めよう!!」
私たちは、頭を抱えながら、会議を始め、ほどなくして2名の雑用係を採用した。
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