【ハッチェン子爵家による聴き取り調査の記録—K嬢】
〈対象者〉K嬢
〈所属〉1年D組
〈身分〉子爵令嬢
〈発生事案〉
入学式の日に、校内の木に登り、バランスを崩して落下。右足骨折。
入学式を執り行ったホールから、生徒会室へ抜ける道の途中の植え込みにて発生。
〈記録〉
—なぜ、木に登っていたのですか?
ジーニアス様が通るかな〜、と思って。
—上から見物したいということですか?
いえ、、、
—まさか、暗殺など、、
め、め、め、滅相もない!!
—確かに、暗器の類はお持ちでなかったですね。ではなぜ?
『木登りしてる令嬢って、新鮮』みたいな感じで、見初められたりとか、落ちちゃっところを抱きとめてもらったりとか〜、、
—ジーニアス様と恋愛関係になることを狙っていたということですね。ジーニアス様にはサファイア様という花嫁候補がいらっしゃいますが、、
えー、だってまだ『候補』ですよね。しかも『氷の女』と聞いてますし。まだ可能性あるかなと、、あっ、でもでも、もうやりませんから!
—諦めたということですか?
ええ、まあ、元々そこまで狙ってたわけでもなくてですね、、もしかしたら、私がヒロ、、いえ、もしかしてお眼鏡にかなったら嬉しいなーみたいな。ジーニアス様は皆の憧れですから!!
—ヒロ?
なんでもありません。忘れてください。
—わかりました。木から落ちた時、まだジーニアス様は通りかかっていませんでしたね。なぜ落ちたのですか?
隣の木に、別の子が登っているのに気がついたんです。L様です。私と一緒に医務室に担ぎ込まれましたよね。彼女と目があっちゃって、私も彼女もびっくりして、、、
—L嬢とは、あれ以来親睦を深めていると聞きましたが。
はい。私は右足、L様は左足を骨折してしまって、しばらく入院してたんですが、たまたま?同室で。お話してたら、意気投合しちゃって!
木から落ちたときに医務室に運んでくださったハッチェン子爵令息のニール様!!素敵でした!推せ、、いえ、すっかりファンになってしまいまして。ええ、ええ、もう今はジーニアス様よりニール様!です。ご安心ください!!
〈注意事項〉
L嬢に関する記録は、ハッチェン子爵家内に留め、ジーニアス様への報告は不要とする。