新入生達の奇行
「はあああぁぁぁ」
体の奥の奥の奥から、大量の空気を吐き出した。
「お疲れ様。」
生徒会室の机に両肘をつきためいきをつく私に、シモンがさっと、香りの良い紅茶を出した。本当に気の利く男だ。
「ありがとう。」
「疲れているようなら、砂糖も入れるか?」
「いや、このままで良い。」
カップを手に取り、一口。紅茶の温かさが体に染みる。
「それにしても、、なんだったんだ、、あれは」
入学式での挨拶は、上手く行った。特に問題ない。新入生達も静かに聞いてくれていたし。
しかし、それから生徒会室までの道のりが酷かった。なんだあれは?
「シモン、状況を整理してくれるか。」
「ああ、ニールからも報告が上がってきているぞ。」
ニールも、シモン同様、私の学園生活を支えてくれている頼れる友人だ。隠密活動を得意とするハッチェン子爵家の次男であるせいか、陰で動くことを好み、姿を見せない日もある。
今日もホンワカもやもやを察知し、陰で動いていたのだろう。
「えーと、、講堂から生徒会室までの移動中で、遭遇したのは、、
ジーニアスの前でハンカチを落とす 3名
ジーニアスにペンを投げつける 1名
転んでジーニアスに抱きつく(未遂) 2名
鳥と戯れている 1名
犬と相撲をとっている 1名
ジーニアスに道を尋ねる 1名
だな。ニールが対応したのは、
講堂近くの木に登って動けない 1名
木から落ちて医務室に連行 2名
生徒会室の窓から見える噴水で水浴び 1名
以上。」
「随分多いな。全て新入生女子か?」
「そうなるな。変人が多いのか?今年の新入生は。」
「うーん、、まだみんな社交界デビュー前だし、あまり情報がないんだよな。でも、特に問題があるような噂はないと思うよ。あるとしたら、『氷の女』くらいだよ。」
「サファイアか。」
「そうそう。入学前から、すっかり敬遠されちゃってるよ。」
私はため息を付いた。今朝も、サファイアが現れると周りの空気が張り詰めたようになった。こんな状態で、サファイアに新しい友人は出来るのだろうか。
まあ、それより、新入生達の奇行について考えなくては。
「その、、新入生達に関しては、もう少し調査を進めておいてくれ。なにか分かったら報告を。」
「おう。そう思って、ニールにも依頼済みだ。」
シモンは得意げに笑ってみせた。