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ピクニックバスケット(2名様用)

 ダンスパーティから早一か月。媚薬を盛った女生徒には多少のペナルティを課したが、他はお咎めなしとし、平穏な日々を送っている。

 

 穏やかな風の吹く、気持ちの良い陽気。芝生の上にブランケットを拡げ、バスケットを置く。


 聖クリスタル学園のランチルームには、特別メニューがある。


『ピクニックバスケット(2名様用)』

  〜ブランケット、日傘のレンタル付き


というもので、なんと1日限定1組のみ!中庭の芝生でのんびりランチを楽しめるというものだ。


 なぜこのようなメニューが存在するのかというと、古く恥ずかしい話になるが、、、私の父と母が在学中(二人はすでに婚約中であったのだが)、『中庭でピクニックしたい(ハート)』とせがんだ母の願いを叶えるために、当時、生徒会長であった父が学園へ提案、採用されたものらしい。


 提案などと言うが、王族の横暴だったんじゃないか?とも思うが、実は大人気メニューで、予約はいつもギッチリ埋っている。

 婚約者と、恋人と、友人同士で、、といった感じで、在学中に一度は利用してみたいものの一つになっている。


 さて、、その長い予約待ちの末手に入れた『ピクニックバスケット(2名様用)』を私は今、中庭の芝生にセッティングしたというわけだ。


「お待たせいたしました、、」


 中庭に面した渡り廊下の出入り口から、サファイアが顔を覗かせた。走ってきたのだろうか、頬が上気して赤い。


「お誘いありがとうございます。」


「いや、たまには2人でランチも良いかなと思ってね。さあ、座って。」


 もう、慣れすぎて奇妙だと感じることさえなくなってきた、ホンワカもやもやが強くなる。まあいいや、と無視できるようになってきているのは、感覚が麻痺してきているのか。そんなことより、サファイアとの親睦を深めなくては。彼女は私の“最有力婚約者候補”なのだから。


 ブランケットは、中庭の中央にある桜の木の下に敷いた。木陰になっているので、日傘は不要かな。


「失礼いたします。」


 サファイアは、優雅な仕草でブランケットに腰を下ろした。私も少し間を空けて腰を下ろし、間にバスケットを置く。

 バスケットを開くと、綺麗に盛り付けられたオープンサンドやデザートがキラキラと輝いている。これは、想像以上に美味しそうだ。


「美味しそうですわね、、、」


 ほうっ、、と、サファイアが可愛らしくため息をつくのが聞こえた。ため息まで可愛いとは!


「水筒に、特別にブレンドしたハーブティが煎れてあるそうだ。ええと、、今日のブレンドは、、『恋人達のゆらめき』」


 こっ、こっ、、、恋人!!


「素敵な名前ですわね。」


「そ、そうだな、恋人とは、ちょっとあれだが、、」


 まだ恋人ではないからな。最有力婚約者候補だ。


「そうですわね。ジーニアス様も私とではあれですわよね。」


「いや、、そんなことは、、」


 あれですわよ、って、どうアレなんだ?


 少しギクシャクした私達に追い打ちをかけるように、聞き慣れた声が飛んできた。


「あっ!!ジーニアス様!サファイア様!お庭でピクニックですか〜!!わ〜!私も混ぜてくださーい!!」


 フェイリーだ。


 これは、何ヶ月も前から予約して手に入れた特別メニュー『ピクニックバスケット(2名様用)』だぞ!定員2名なんだぞ!


「うわ〜、素敵なピクニックセットですね!サファイア様がご用意されたのですか?」


 フェイリーはもう、ブランケットに座る体制に入っている。


「いえ、ジーニアス様にお誘いいただきましたの。」


 そういいながら、フェイリーの座る場所を作るため、サッと移動するサファイア。


 あああ、フェイリー、ど真ん中に座ってるではないか!!しかし、ここで追い出すのも狭量。皇子たるもの、常に寛大でなくては。


 『ピクニックバスケット(2名様用)』を、私はこうして、3名で楽しんだのだった。



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