無い本
小説を書いている。その時私は次の文を思い出す。…
それは今、舞台で筆を踊らせる。その筆は少し踊ると休憩し、また踊る。その踊りは、拙くとても優雅ではないが、少し、少しと成長しているように思えた。しかし、それはその成長に納得していないようだった。それはその筆に期待をしていたのだ。今度こそ、今度こそ筆は踊りを終われると。しかしそれは無謀•••••としか思えない期待だった。なぜなら、その筆は踊ることを覚えてから1ヶ月ほどしか経っていない。それなのにそれは大きな期待を、その筆にしていた。その期待はその筆に宿っている魂からだった。その魂はそれが今まで見たことがないほど、それと相性が良かったのだ。それが思ったことをその魂はすぐに実行できた。しかし、魂がその筆に宿った時だけ、その魂は思ったように動かなくなる。だからだろう、それはその筆のことにとても嫌気がさしていた。だからだろう、それがその筆から離れた瞬間、その筆は踊りを止めた。まるで、魂が抜けたかのように。だが、それはその筆を見ても、もう何も思わなくなったようだ______________
それが少しでもその筆の将来性を信じたのなら、その筆は舞台の主役になれたのかもしれない。
「筆とそのそれ」より一部抜粋
私はこれを読むといつも1つ思うことがある。それは損をしていると。それは筆から魂を抜けば良かったのに筆ごと魂の失うのはもったいないと思ったからだ。だから、私は一時的な感情に任せては小説は書けないと思う。