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真夏の雪ごおり  作者: アルヤン
7/8

マシンガントークの主

「ふふ、凄いね、氷作れるんだね」


「えぇ、凄いですね……しかし、不思議ですね」


「馴染みすぎじゃねぇかなぁ……?」



 俺達はタライに張った氷の上をグルグルと駆け回るセツを見ながら、それぞれアイスを頬張っていた。


 すると、玄関の方から蝉の鳴き声よりも騒がしい声が聞こえた。


 と言うよりうるさい声だろうか。


 チャイムを鳴らした後、



「すいませーん!藤原でーす!」



 と、うるさい先生がやってきた。


 仕方がなしに玄関まで行くと、先生は嬉しそうに目を輝かせた。


 その輝きと太陽の光で目を窄めていると、



「おぉ!マサキ君!聞いたで!昨日海底洞窟で祭壇とよー分からん生き物見つけたんやって!」


 

 と、元気よく続けた。


 島なだけあって噂というか、情報が広がるのは早いものだ。



「はい、そこで少し地震に遭ってしまいまして……」


「え、大丈夫やったん?」


「はい、別に何事もなく生きて帰ってこれました」


「あらぁ、そらよきで……んで、その噂のちびっ子ちゃんはどこに?」



 すると、俺の後ろからユキを抱いてしぐれが歩いて来た。



「おはようございます、藤原先生」


「あーら、あらあらあらあら、かわええのねぇ!」



 ユキは藤原先生を見るとビシッと体を固めた。


 そんなことはつゆ知らずか、藤原先生はそんなユキをしぐれから抱っこして受け取ると、ユキのお腹の部分を片手でコチョコチョとくすぐった。



「エ"エ"エ"エ"エ"〜」



 と、何を訴えたいのかよく分からない泣き声を出しながらユキは藤原先生の腕の中で手脚をバタバタとさせた。



「あら、嫌やったか!すまんすまん……」



 先生がお腹から手を退けると、ユキはじっと先生の顔を見つめて、先生の空いている片方の手に頭をポスッと入れて、撫でてくれと言わんばかりに先生を見つめた。



「あら、あらあらあらあらあらあらあらあら、コイツかわえぇなぁ〜」


 

 ニマニマとした顔で先生は笑いながらも、ユキの体に目を通していた。


 

「ふぅん……見た目は狐っぽいけど、何か丸いなぁ」


 

 頭を撫でてやりながら、そう呟くと満足げに頷いて地面にユキを下ろした。



「はえー……なぁ、この子に何か特別なパワー的ななんか無い?」


「えっ?」



 先生がそうやって唐突に聞いて来た事に俺は戸惑った。


 

「あ、一応ここらの文献でな何かその子っぽい記述があったからさ、念のために……な?」



 まるで人の心を読んでいるかの様な事を言い出して、少し胸が締め付けられて肌寒くなった様な気がした。


 そんな事はしぐれは知ってか知らずか、先生に朗らかに、ユキに水を凍らせる能力がある事を話した。



「へぇ……やっぱり記述通り……うーん……よし、もし良かったら俺もそこの祠に案内してくれへん?」


「えっ、うーん……」



 俺は一応大丈夫かどうかと悩んでいると、おじいちゃん達がまた黒い油まみれの服を持って帰って来た。



「や、藤原先生、今日はどうされたんですか?」


「あ、おはようございますぅ、えやぁ、マサキ君が昨日見つけた祭壇に興味がありましてね、もし良かったら場所だけでもお聞き出来へんかなと……勿論こちらの神社の方にもお話は既に通させて頂いておりますので……」


「おぉ、そうでしたか……マサキ連れてけるか?」


「うん、わかった」



 おじいちゃんは俺に目配せをすると、俺は一度頷いてしぐれ達の方を向いた。



「どうする?また一緒に来るか?」



 二人は顔を見合わせて同時に頷いた。



「おーし!なら出発や!熱中症にならん様に帽子、被ってきぃや」



 俺たち三人は一度自分達の家に戻ると帽子を持って、レンタカーを借りたのか車に乗って待っていた藤原先生と合流した。



「先生!車止める場所は向こうの奴に聞いてもろたらええですわ!ほなたのんます!」


「任せてくださいな!それじゃあ出発!」


「「おおー!」」


 

 助手席に座るけーすけと俺の隣に座るしぐれは元気に腕を上げた。


 そんな二人に俺は少し陽気さを当てられて、苦笑いした。
















 車は直ぐに目的の場所に着いて、俺達は車を降りた。


 その場所にはもう何台か車が停まっていて先生は少し眉をひそめた。



「もう来たのか……?事前に察知していたのかそれとも……」


「先生?」


「おし、他にも人来てるみたいやし、邪魔にならん様にな、特にマサキはユキちゃんから目を離さんようにな?」


「了解です」


「うっし!じゃあ、探検隊前進!」


「「「おー!!」」」



 今度は外れなかった掛け声に俺たち三人は笑っていると、洞窟から何人か人がいろいろな機材を持って出て来た。


 そして、出てきたうちの女の人の一人がこちらに……正確には藤原先生に気がつくと、すっ飛んで来た。



「あなっ………!何でここにいるんですか!?」


「はっはー、これで10回目、久しぶりだな?」


「何でこう貴方はタイミングが……!ちょっとコッチに来て!」



 先生は元カノか誰かに引っ張って洞窟とは少し離れた物陰に連れて行かれた。


 暫く物陰の向こうから怒鳴り声……主に女性の声だが、が聞こえてきて、声が止むと、少しスッキリした様な表情をした女の人と、やれやれと言った様な素振りをする藤原先生が出て来た。



「君達が……初めまして、私は藤原先生の考古学仲間の藤崎結衣フジサキ ユイです……その子が、この祭壇で見つけた?」



 ユイ先生はユキをじっと見つめて頭を撫でた。


 ユキは俺の腕の中でされるがままに頭を撫でさせ、一度大きな欠伸をしてまた眠ってしまった。



「……それじゃあ行きましょう?藤原先生の詳しい話も、私聞きたいですからね?」


「おいおい、そんな怖い顔しなさんな、子供達が怖がるでしょ?別に分かれた彼氏彼女の関係じゃ無いんやからなぁ、今日ちゃんと最後まで話するからやぁ」


「嘘だったら……私達の総力を上げて、貴方を擦り切れるまで……」


「だ!か!ら!怖い顔無し言うとるでしょうが」


「……はぁ、御免なさい、君達、この人とは昔に深い……深ーい因縁があって……別に悪い因縁じゃないけど……」



 と何やらブツブツと言い始めたところで、藤原先生が仕方なしと言った具合に首を横に振ると、俺たちを手招きして呼び集めた。



「アイツがああなってんのは、主に俺の不出来のせいやねんけど……多分今日以降は直ると思うから勘弁してな?」


「「「は、はぁ……」」」



 俺達は未だに一人で腕を組んでブツブツと何かをつぶやく黒髪の残念美人を振り返って、



「「「えぇ……」」」



 と、ほぼ同時につぶやいた。

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