第5章 第4話 くだらない武勇伝
「はぁぁぁぁっ!? いった……」
予想外の事態過ぎて叫んでしまった。そのせいで腹の痛みが再燃する。いや今はそれよりも……。
「人を殺したことがばれた……!?」
なんで、そんなことが……! このことは去年の生徒会メンバーと瑠奈に雑木、先生しか知らないはずなのに……。
「まさか鍬形さん……!?」
「いくら私でもそこまで空気読めなくはないですよ」
「自覚してるなら直してよ……。じゃなくて、よくあるじゃん。地元で事件が起きたらニュースになってるかなーってネットで調べてみるの。まぁ大きなニュースにはなってなかったんだけどさ、久司八雲で調べたら出るわけよ。中学の時のネット掲示板が」
あの事実に尾ひれ背びれがついた噂か……。今の主流では俺がとんでもないヤンキーってことになってるんだったか。それが漏れたとしたらかなりやばいな……。
「それで噂になってるわけよ。地元のヤンキーを締め上げてるとか、一声かければやばい組織の人たちが出てくるとか。今剣道部の人たちガクブルだよ」
「いやそれは事実だけどさ……。ほとんど有栖の力だぞ。俺ついていっただけだし……」
「今のは聞かなかったことにした方がいいと思うのですがどうでしょうか」
中3の時。俺と有栖は教師に言われて問題解決に奔走していた。先生は学校の問題児を何とかしてほしいという意味だったのだろうが、有栖の拡大解釈によって地元の不良。果てには大人にまで喧嘩を売った結果、俺が一番上になってしまったというのが事実。もっと言えば上についた有栖が俺にその座を献上したというのが正しい。当然だからと言って何か悪いことを指示したとかいうことはない。だからあまり意味のない過去だ。
「まぁあんまり詮索しないししたくないから聞かないけどさ、とにかくもう八雲をいじめるような人はいないと思うよ。なんか最近では八雲が根本を殺したってことになってるし」
「……まぁどうでもいい奴にそう思われたところでだけどさ……やっぱ気に入らない人とかいるよな……。珠緒とか真面目だし……」
「……先輩?」
生徒会室の扉が開く音がし、直後鈴のような綺麗でか細い声が届く。
「珠緒……!」
「……さようなら!」
珠緒は俺の顔を一目見て一瞬瞳を潤ませると、走って立ち去っていく。
「珠緒!」
追いかけたが、この足では追いつけるはずもない。廊下の遥か先を行く珠緒の姿がどんどん遠ざかっていく。……先輩としてそれは、ありえないことだ。
「ぐあぁっ!」
わざとらしい悲鳴を上げ、廊下に倒れる。
「先輩っ!」
するとその声に気づいた珠緒が遠ざかるよりも速いスピードで俺の元に駆け寄ってくる。
珠緒は優しいな……。瑠奈ですらもう通用しないだろうにな。
「……え?」
珠緒が近づいてきたその瞬間に俺は立ち上がり、ちょうど横にあった空き教室に連れ込んだ。
「瑠奈以外に言うなんてな。チョロすぎるよ珠緒」
そして壁に追い込み、呆然としているその顔の横に右腕を当て、股の間に右膝を入れる。かなり左脚に悪い体勢だが、まぁいい。
「いきなり逃げるなよ。傷ついて自殺しちゃうぞ」
俺のことを先輩と呼んでくれる後輩と話せるのだから。




