第4章 第7話 後輩の手紙
「よく顔出せたよね、五色さん。あたし知ってるんだからね。あんたが侍らせてる男たちに八雲を貶める発言してたってこと。それがこれと全く関係ないとは言わせないから」
「それは……ごめんなさい……。まさかこんなことになるなんて……」
鎌木が五色さんに詰め寄ってるけど、今はどうでもいい。
「瑠奈からの手紙って……どういうことだよ……」
「あたしもただ渡されただけなので詳しくは知りません。あ、それとお見舞いのフルーツバスケットです」
「流行ってんの? いやそれよりもくれ……や、手縛られてて読めないか。悪いけど読み上げてくれないか?」
心臓が痛い。自分が異常に緊張していることがわかる。忘れてきた腹まで痛みが押し寄せてきた。
なんで、手紙なんだ。直接言えなかった? 会いたくなかったのか? 俺に。なんで……なんで……!
「では読みます。『せんぱい、お元気ですか? なんて、元気なわけないですよね。わたしもそうです。せんぱいがいないととっても寂しいです」
「うっ……」
だめだ、きもちわるくなってきた……。
「せんぱいが死にたいという話を聞きました。その話を聞いた時、わたしは思わず泣いちゃいました。死んでほしくない。もっと一緒にいたいって思ったからです」
「う、ぅう……」
「でもせんぱいがそうしたいのなら仕方ありません。わたしは受け止めたいと思います」
「る、な……?」
溢れようとしていた涙がスッと戻っていく感覚がした。なぜかはわからない。でもその一言が、死ぬほどショックだった。
「せんぱいのことだから誰かのために死を選んでるんですよね? だとしたらわたしには止められません。わたしが見てきたせんぱいはそういう人で、そういうせんぱいを尊敬していたからです」
「ま……って……」
「実はですね、わたしゴールデンウィークの間にビデオカメラ買ったんです。去年みたいに……ううん。去年よりもっともっとたくさんの思い出をせんぱいと残したかったから。無駄な買い物になっちゃいましたね。ちゃんと遺産残しておいてくださいよ? なんて、冗談です。せんぱいとは付き合ってたけどまだ結婚してないですもんね。せんぱいとの思い出がいっぱいの物もわたしの元から離れていっちゃうのかと思うとやっぱりすごい辛いです」
「る……な……るなぁ……!」
気づけばさっき引っ込んだ涙がとめどなく溢れていた。拭けないのがすごい辛い。こんな姿、誰にも見られたくないのに。
「もっと一緒にいたかった。もっとたくさんの思い出をせんぱいと刻みたかった。せんぱいに今までありがとうって言いたかった。せんぱいに卒業おめでとうございますって泣きたかった。せんぱいに育ててもらったわたしの姿を見ていてほしかった。ずっと、ずっと。これから成長していくわたしを見ていてほしかった」
もう、だめだ……。
「なんて、わがままばっかり言っちゃってごめんなさい。まだダメダメですね。でも最後だけわがままを許してください」
想いが、溢れて止まらない……。
「ほんとはせんぱいに会いたいけど、ごめんなさい。今せんぱいの姿を見ちゃったらわたしは泣いて止めちゃうと思うんです。最期に見るわたしの姿がそんなんじゃ嫌でしょ? わたしもそんな情けない姿見せたくない。だからこのお手紙で、お別れです」
「るな……瑠奈……!」
「最後にですが、早く生まれ変わってくださいね? 今度はわたしが先輩としてせんぱいを育ててあげちゃいますから。……それが無理なら、生まれ変わるのは少し待っていてください。またわたしはあなたをせんぱいって呼びたいから」
「瑠奈、瑠奈、瑠奈……!」
瑠奈瑠奈瑠奈瑠奈瑠奈――!
「それじゃあさようなら、せんぱい。今まで本当に、ありがとうございました』。……これで、終わりです。久司さん、あなたはこの金銅さんの想いを聞いて、どう思いましたか?」
そんなこと、決まっている。
「瑠奈に、会いたい――!」




