表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【イチャラブ編開始】同棲しているあざとかわいい後輩が俺を退学させようとしてくるのでわからせる。  作者: 松竹梅竹松
第4章 その先の未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/76

第4章 第3話 習性

〇瑠奈




 せんぱいがいなくなってから約2週間が過ぎた。と言っても実質的にいないと感じたのは1週間だけ。元々ゴールデンウィークは大学生で一人暮らしをしている今井さんの家に立花さんと一緒に行くことになっていたからだ。



 わたしは帰省する予定だったけど、警察の人に色々呼ばれてずっと1人ぼっちになった部屋にいる。念願の一人暮らし。初めの内はせんぱいがいないことに違和感があったけど、最近ではそれもあまり感じなくなってきた。



 せんぱいのベッドにはわたしの匂いが染み付いてしまったし、ソファーは散らかった衣服とゴミで汚れ、勉強机もせんぱいのところは物置と化している。元々せんぱいの私物は少なかったし、せんぱいのいた痕跡はほとんど消えてしまったと言える。



 当初の予定ではさっさとせんぱいを退学させてどっか適当なイケメンとイチャイチャする計画だったけど、こんな部屋に誰かを呼ぶことはできない。そもそもせんぱいの過干渉のせいで男はあんまり寄ってこなかったし。中学では毎週のように誰かに告白されてたけど、高校生になってからはあのデブが初めてだった。



 だから本当に1人ぼっち。寝過ごして朝ごはんを食べる余裕なんてないし、クラスでもなんだか人と話す気になれなくて最近は嫌な授業はサボるようになってしまった。なんだかんだまだ部活も入ってないし、放課後は1人でSNSか動画を漁るだけ。見てる時はずっと暇だなと思っているのに、いざ夜になったら眠ることができず夜更かししてしまう。



 どんどん自分が駄目人間になっているのがわかる。それでも止めることはできない。止めてくれる人がいないから。



「金銅、少しいいか?」



 また退屈で空虚な放課後を部屋で過ごしていると、誰かが部屋の扉を叩いた。誰かが来たら来たでめんどくさい。下のベッドからおりて扉を開ける。



「有栖ちゃんと……」

「緒歳だ。少し邪魔させてもらうぞ」

「はぁ……」



 なんか泣きじゃくっている停学中の有栖ちゃんと、せんぱいとよく一緒にいる先生を部屋に入れ、ソファーから物を床に下ろして椅子に座る。そういえばわたしジャージだしメガネかけたまんまだな。真面目な話だったら少し嫌だ。



「それで、どうしました?」

「久司の面会が解禁された。明日にでも連れて行きたいんだけどいいか?」


「わたしは別にいいですけど……せんぱいは嫌がると思いますよ」

「そんなことありません……。師匠はあなたが来たら喜びますよ。アリスなんかよりもずっと」



 うーん……いつも元気な有栖ちゃんが暗い。さっき面会に行ってきたのだろうか。



「それについてはわからないけど、わたしより立花さんの方がいいんじゃないですか?」

「立花か……。実はあいつ、今井……久司の2個上の先輩のところに行ったまま帰ってきてないんだ。今井から逐一報告を受けているからそこまで心配はしてないんだが……精神状態的に伝えられないと言われた」


「面会解禁ってことは元気になったってことですよね? 立花さんは死ぬほど喜ぶと思いますけど」

「あぁ……それはな……。ショックを受けないで聞いてほしいんだが……。久司が2度、自殺を図った」



 自殺……ねぇ……。だから有栖ちゃんはこんなに泣いてるのか。確かにそんな話立花さんには言えないな。せんぱいが刺されてから安定するまでだいぶ死にそうだったし。



「呆然とする気持ちはわかるが……」

「あぁいや、別に大丈夫です。せんぱいならしそうだとは思っていましたから」



 そう答えると、有栖ちゃんが大きく物音を立てて立ち上がった。



「どういう……ことですか……?」

「せんぱい事ある事に退学したがってたからさ。まぁ自殺してもそんな不思議ではないよね」


「それがわかってて! なんで放っておいたんですかっ!」

「それがわたしの知ってるせんぱいだったし。わたしができることなんてないでしょ」



 有栖ちゃんがすごい剣幕で詰め寄ってくるけど、怒られても困る。それに。



「死にたいんなら死なせてあげればいいんじゃない? それがせんぱいの望みなんでしょ」

「あぁっ!?」



 有栖ちゃんが胸ぐらを掴み上げてくる。でも不思議と怖くない。せんぱいが怒った時に比べれば全然マシだ。



「アリスでは……師匠に言葉は届かなかった……。悔しいけど、あなたに頼るしかないんですよ……!」

「地板、落ち着け。久司はな、元々は明るくて感情の起伏が激しい奴だったんだそうだ。今は薬で元の状態に近づけようとしているが、それだけではたりない。久司の苦しみに気づけなかった私たちが久司を助けてあげるしかないんだ」



 先生が有栖ちゃんをソファーに引き戻す。わたしも椅子に座り直し、答える。



「わたしの知っているせんぱいもなんだかんだ明るくてすごい感情の起伏が激しい人でしたけどね」

「そう……なのか……?」


「なんだかんだ、ですよ。せんぱいは感情が顔に出ますから。暗い顔が記憶に残りますけどよく思い返してみれば何度も笑顔を見たことはあるし、顔見れば感情の起伏が激しいなんてわかるでしょ」

「でも……アリスには……そんな姿は……!」


「そうかな。そうは思えないけど、とにかく。性格を元に戻すなんてわたしにはできません。過去は消せないんだから。わたしにできるのは、よわよわメンタルの上からわたしを塗り固めることくらいですよ」

「金銅……なんで服を脱ぎだしたんだ……?」



 なんでって、ジャージなんてかわいくない格好じゃわたしのかわいさを引き出せないからに決まってる。メガネを外し、かわいい服に身を包み、髪を整えて言う。



「別にせんぱいが死のうが生きようがどっちでもいいですが、暇なんで。適当にせんぱいをわからせてあげますよ」



 有栖ちゃんが何を苦しんでいるのか知らないけど、せんぱいをわからせるなんてチョロすぎる。まぁ色々準備は必要だけど。



「……金銅。なんか、久司に似てきたな。あいつのことが本当に好きになったか?」

「あの人のことを好きになる奴なんてただの馬鹿ですよ」

「――! ……そういうとこさ、直した方がいいぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ