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【イチャラブ編開始】同棲しているあざとかわいい後輩が俺を退学させようとしてくるのでわからせる。  作者: 松竹梅竹松
第3章 積み重ねた過去

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第3章 第22話 ストーキング

「瑠奈ちゃん……僕と付き合ってよ……いいでしょ……?」



 荒い息を吐き、根本とかいうデブが迫ってくる。普段なら適当に愛想振りまいて逃げるところだけど、今のわたしにそれはできなかった。



「はぁ……っ、はぁ……っ」



 根本の右手に収まっている銀色に輝く鋭利なもの。偽物なんかじゃない。間違いなく本物の、包丁だ。



「いや……来ないで……っ」



 突然差し迫った命の危機に、口と身体が勝手に動いてしまう。逆上させないようにしなきゃいけないのに。暴言を吐かないので精いっぱいだった。



「康太くんっ。前にも言ったよねっ、康太くんにはもっとやるべきことがあるって」

「たち、ば……」



 怯えることしかできないわたしの前に、立花さんが立ちふさがる。顔は見えないけど、声はとても甘い。こんな状況でこの人は冷静に対処できてるというのか。



「声優になりたいんだったよね。だから今は恋愛より特訓すべきだと思うな」



 そういえば前に生徒会室でこの人の対処は立花さんがやるって言ってた。わたしを守るために話をしてくれてたんだ。でも、



「瑠奈ちゃんが付き合ってくれるなら……そのとってもかわいい顔とおっきな胸を僕のものにできるなら……夢なんてどうでもいい……。瑠奈ちゃんもそう思うよね……?」

「ひぃっ」



 この人、話が通じてない……! 気持ち悪いっ!



「せんぱい……せんぱいぃ……!」

「あれ? その顔何かな……。それに先輩って、久司のことだよね……。なんで僕がいるのに別の男のこと考えてるの……? 仕方ないなぁ……お仕置きしないとねぇ……!」



 根本が近づいてくる……。もう、無理……。耐えられない……!



「せんぱ……!」

「死ねオラァァァァっ!」

「ぶへっ!?」



 耐えきれずに叫びそうになったその瞬間。立花さんが椅子を持ち上げて根本にぶん投げた。



「人の多いメイン通りに逃げるよっ!」



 そしてわたしの手を掴むと、根本の横を通り抜けて教室から飛び出した。



「たちっ……!?」

「さっきのは嘘。裏門の方の守衛室に逃げ込むよ」



 わたしから手を離し、階段をおりながら立花さんが指示を出す。



「でも人が多いところの方が逃げやすいんじゃ……!」

「わたしたちがいると、下手したら他の人にも危害が及ぶ。何より本部にはやっくんがいるからね。わたしたちを守るとか言わせないようにしないと」


「せんぱいならあの人にも勝てるって前に……!」

「暴力を振るえるなら。そしてわたしやあなたがいなければ、だよ」


「どういうことですか……?」

「やっくんは正義のヒーローじゃなくて正義そのものだってこと」


「だからどういうっ!?」

「暴力を振るって解決、なんてやっくんはできない。暴力は悪いことだって思ってるから。たとえ身を守るためでもね」


「でも……立花さんを守るためなら……!」

「そう。わたしやあなたを守るためなら、やっくんは死ねるんだよ。大切な人を守って死ぬことは正義だからね。だからやっくんに大義名分を与えちゃいけないの。やっくんはわたしが守らなきゃいけないんだよ」



 ……ああ、くそ。勝てない。



「……せんぱいと付き合ってるっていうのは嘘です。ごめんなさい」

「……なに、どうしたの急に」


「せんぱいにはあなたが必要です。なので退学にしてやるってのはナシです。せんぱいが、悲しむ」

「……それはあなたもでしょ。後輩が退学になんてなったらやっくんは死ぬほど後悔する。だから見逃してあげるよ。ひとまずはね」


「かちーんなんですかその上から目線はっ! 言っときますけどあなたが嫌いなのはほんとですからねっ!」

「安心して。わたしもあなたが大嫌いだから」



 助けてくれたことにお礼言わなきゃって思ってたけど! やっぱわたしこの人苦手だっ!



「外……。いい? わたしが先導するからついてきて。はぐれたら探さないからね!」

「はいっ!」



 教室棟を出て、裏から人のいない場所へと走り続ける。とりあえず逃げ切ればわたしたちの勝ちだ。そして相手はデブだし、いくらわたしたちが女子だからといって、これだけ差をつければ追いつかれないだろう。だから、わたしたちの勝



「みぃつけた」



 目の前に、現れた。撒いたはずの、根本が……。



「な、んで……」



 立花さんが嘘の情報を流したはずなのに……まさか看過した……!?



 いや……たぶん。根本は反対側の階段を使ったんだ。そして何を思ったか、教室棟の裏に来た。たまたま、運悪く、ぶつかってしまったんだ。



「ぼ……僕から逃げるなんて……許せない……! そんな生意気な女は僕がわからせてっ……!」

「二度目だ」



 根本の手から包丁が放り抜ける。杖で手元を打たれたせいで。



「せん……ぱぁい……!」

「俺の女に手出してんじゃねぇよ」



 せんぱいが、わたしを助けに来てくれた。

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