第3章 第14話 昔話 5
「別に俺の高校生活なんて普通だよ。4月にいじめられて、ゴールデンウィークに問題を起こして、5月中は入院して、その後は何もない。強いて言うなら先輩を好きになって振られただけだ」
せんぱいはわたしの隣に座ると、つまらなそうにそう吐き捨てた。3人掛けソファーの端と端。その距離は遠い。
「立花さんは振ってないって言ってましたけど」
「それ先輩の嘘だよ。あの人意味ないことでも嘘つくから」
「少なくともあれは嘘ではない、と思います」
「じゃあ嘘にしたかったんだろ。そっちの方が都合がいいから」
触れられたくない話なのか、せんぱいの態度はそっけない。でもそれで逃がすつもりはない。
「せんぱいはわたしの彼氏でしょ? 秘密とかはなしにしましょ。立花さんも言ってましたよ。人間は過去の積み重ねだって。……せんぱいのこと、もっと教えてくださいよ」
「だから。たいした話じゃないんだって」
「そうですか」
わたしはテレビをつけ、せんぱいのベッドから拝借したタブレットを見せつける。
「なら勝手に調べさせてもらいますね」
「おいマジでやめろっ!」
「1012。予想通りロックは立花さんの誕生日ですか。彼女でもないのに気持ち悪いですね」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
せんぱいが悶えている内に再生する。せんぱいと立花さんの、思い出を。
『先輩、俺と付き合ってください』
とりあえず適当に再生すると、いきなりせんぱいが立花さんに告白していた。この映像……見覚えがある。深夜見ていた立花さんの誕生日の動画の続き……。つまりあの後すぐに告白したんだ。
「ムード的にこのタイミングはナシじゃないですかー?」
「……先輩に喜んでもらえて舞い上がってたんだよ……。なんか流れで……言っちゃった」
言っちゃったじゃないでしょ……。……にしてもせんぱい、ほんとに告白してたんだ。それで、振られたと。
てっきり振られたのは立花さんが部屋を去る日だと思ってたけど……。それか3月は振られたけどワンチャン狙いのやつとかかな。
『そっか……そうだよね』
画面の中の立花さんの瞳が、揺れる。そして笑みを作ると。
『いいよ、付き合おう』
「……え?」
せんぱいの告白に、了承した。
『せん……花音……ぱい……!』
ずっと立花さんを映していた映像に、抱きつくせんぱいの姿が現れる。
「せんぱい……これは……」
立花さんに何度も愛を捧げるせんぱいをよそに、わたしはせんぱいの横顔を見る。とても悲しそうな顔で瞳を揺らすせんぱいの顔を。
「……見たまんまだよ。俺は昔、先輩と付き合ってた。18時間くらいな」




