第1章 第4話 はじまりの日
……というのが今朝の出来事。あれから半日が過ぎ、今に至る。
俺の目的は一つ。瑠奈を育て上げ、わからせること。
そしてその結果、3つのパターンに行き届かせる。
1つ目は改心させること。これが一番いい。お互い我慢しながらも、1年間を同じ部屋で暮らす。これが最良だ。
2つ目は成長させること。このまま俺の退学を狙い続けてもいい。ただあんな馬鹿なやり方じゃなく、頭、身体、精神。全てを使って俺を潰せるように育てる。俺的には一番めんどくさいが、これも充分ありだ。
3つ目は……考えなくていいか。
とにかく最悪なのが現状維持。あんな馬鹿なやり方を続けさせたら、いつか酷い目に遭うだろう。個人的にはそれでもいいが……そういうわけにもいかないか。
だから俺は瑠奈を徹底的にわからせる。あらゆる手段を使ってだ。
「ただいま」
買い物を終えて部屋に帰ったが、返事は返ってこない。まぁそれはいいが……。
「くる……しい……!」
「…………」
瑠奈が床に転がっていた。仰向けで胸を抑えながら。……角度的には机か。
「胸が……苦しいです……! 心臓マッサージ……してください……」
「わかった」
「あぁぁぁぁっ!?」
勉強机に立てかけてあったスマホを倒し、倒れてる瑠奈の上にまたがる。
「治りました治りました! なのでどいてくださいっ!」
「わかんないだろ。一応心臓マッサージやってみる」
「あぁぁぁぁもうへんぱいへんぱいっ! ごめんなさいぃっ!」
瑠奈が真っ赤になって本気で抵抗してきたのでどいてあげる。やっぱやり方がしょぼいんだよなぁ……。
「もう! どうして効かないんですかぁっ! せんぱいなんてクソキモゴミカス陰キャだって聞いてたのにぃっ!」
「お前が小悪魔なら俺の先輩は悪魔だったからだ」
「はぁ? キモキモ! ほんとうざいですきもいですぅっ!」
「我慢しろ。これあげるから」
俺はエコバッグからコンビニで買ってきたものを取り出し渡す。
「うっざ! いい先輩でも気取ってるんですかぁ? なにをもらったって……ケーキだぁっ」
「下着見ちゃったのは事実だしな。食いたかったみたいだったから買ってきた。この部屋冷蔵庫ないから食うなら早くしろよ」
「わーい! せんぱいありがとうございますっ」
ちょっと待ったチョロすぎないか……? 少し心配になってきたぞ……。
「あむっ。ん~~~~おいしいですっ。あれ? せんぱいの分はないんですか?」
「金な……お詫びの品って感じだからな」
「そうですか。じゃあ、はいっ」
「!?」
突然プラスチックのフォークとふわふわとしたものが口の中に入れられる。同時に広がる仄かな甘味。なんだかとても、なつかしい。
「お詫び返し、です。一口だけですけどね」
してやったりと笑う璃奈の顔は今まで見た顔の中で一番、自然で……。
「…………」
「あれー? せんぱい顔真っ赤ですよー? もしかして照れてます? 照れちゃいましたかぁ!?」
くっそやられた……! 油断してた余裕ぶってた……! こんな展開、予想してなかった……! 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……!
「ちょっっっっっっっっろ! せんぱいクソザコじゃないですかぁ~。ざーこざーこ! たかが間接キスくらいで……。間接……キス……」
「お前も照れんなよ……」
「あっ! またお前って言った! 謝ってください! ケーキもう一つ! それかさっきの一口返してください! ……あっ! ちがっ、ちがいますよ!? 口の中のもの返さないでくださいね!?」
「しないよそんなこと……」
「ですよねぇ~。たかだか間接キスで照れてるせんぱいじゃあそんなこと無理ですよね~」
「お前……さぁ……!」
「ちょっ、近寄らないで! カメラ! カメラぁ!」
「冗談だよ馬鹿」
こんな感じで新たな1年が。いや、まだ1年間続くかはわからないが、少なくとも。
久司八雲と金銅瑠奈の先輩後輩関係は始まった。
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