第3章 第2話 新生生徒会
「おつかれさまです」
授業終わり、放課後。俺は約半月ぶりに、生徒会のメンバーとして生徒会室に足を運んだ。
「やっほ~やっくん」
「席は前と同じですか?」
「うん。となりおいで~」
入口から一番近い席に座る花音先輩の隣の席に座る。なんだか懐かしい……いや完全に先輩の物置化してるんだけど。
「先輩の……私物……」
「久司くん、そんなことより言うことがあるのでは?」
「まぁいいじゃん妙ちゃん先輩! せっかく戻ってきてくれたんだからさ! 真面目組1人で大変だったでしょ?」
先輩の前の席に座る鍬形さんの苦言を、俺の前の鎌木が止める。確かにこの2人を鍬形さんに任せっきりにしたのはひどいことをしたかもしれない。
「珠緒ちゃんもうれしいよね?」
「はい。先輩と一緒に仕事できるなんて光栄です」
俺と鎌木の机に隣接する形のお誕生日席に座る珠緒がにこりと微笑む。とりあえずこの5人が桜豆学園の生徒会メンバーということらしい。
「そんなことより席替えをしませんか? 1年の私が上座というのは落ち着きません。立花さん、席を交換しましょう」
「うちは年功序列禁止だから。気にしないでその席にいな?」
なぜか先輩と珠緒の視線がバチバチとぶつかり合う。年功序列禁止というより、席を移動するのが面倒なだけだろう。去年からずっとこの形だし。
「さて。じゃあ全員揃ったことだし、歓迎会の話でもしようか」
先輩が軽い調子で会議の始まりを告げる。歓迎会、と言っても珠緒の歓迎会の話ではない。それはそれで後々やるのだろうが、これは4月末に行われる1年生全体の歓迎会の話だ。
「珠緒ちゃんもいるから改めて説明するけど、歓迎会っていうのは1年生にようこそ桜豆学園へー、ってする簡単な文化祭みたいなやつ。と言っても実際は最後の部活動勧誘のチャンスって感じかな。各部活が出店とか出したりして中々盛り上がるんだよ」
桜豆学園の生徒は必ず部活動か委員会に所属しなくてはならない。元々部活動目当てで入学する生徒も多いので全く決まっていないという生徒は少ないのだが、それでも0ではない。そのための措置、という感じなのだが、実態的には上級生の息抜きと1年生が馴染みやすくなるためのイベントという意味合いが大きい。
「生徒会は見回りとか案内担当。珠緒ちゃんは1年だし今回は生徒会に参加しないでめいっぱい遊んでいいからね」
「久司先輩が生徒会に戻ってきてくれたので生徒会以外に入るつもりはありません。私も協力しますよ」
「いやいや当日って意外とやることないんだよ。見回りって言っても普通に出店回ったりするからね。その分それまでが忙しいから、そこではバリバリ働いてもらうよ? だから珠緒ちゃんはおやすみ! これは決定事項です!」
「そうですか……。ではお言葉に甘えさせていただきます」
先輩はそう言ったが、おおまかなところは3月中に決めてある。だからあとは最後の大詰め。たいした忙しさはない。
だから俺がやるべきは生徒会のことではなく、瑠奈のこと。まだ部活は決めてないみたいだし、何かいい部活を紹介できたらいいが……。
「せんぱいっ、どうしましょうっ!?」
瑠奈のことを考えていると、それに引き寄せられたように生徒会室に瑠奈が飛び込んできた。
「なんか部活決めなきゃいけないらしいんですけど入りたい部活ありませんっ!」
「会議中ですよ。勝手に入らないように」
頭を抱える瑠奈に鍬形さんが厳しくそう言い放つ。だが事実だ。
「瑠奈、後で一緒に考えるから今は……」
「仕事と彼女、どちらが大事なんですかっ!?」
「彼女っ!?」
あぁ……しまった。鍬形さんに瑠奈のこと伝えてなかった……。もちろん面倒事を避けるためにあえて伝えなかったのだが、こうなると、まずい。この人の空気の読めなさだと……!
「久司くん、ずっと大好きで大好きでたまらない人がいると話していたではないですかっ! その人のことはもう忘れたんですかっ!?」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
鍬形妙。普段は非常に真面目だが、実は恋バナ好き。この人に、話してしまっている。誰かは伝えていないが、先輩への想いを!
「久司くん……私は応援していたんですよ。あなたのとてもとてもまっすぐな純愛をっ!」
「もうやめてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」




