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【イチャラブ編開始】同棲しているあざとかわいい後輩が俺を退学させようとしてくるのでわからせる。  作者: 松竹梅竹松
第2章 再会

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第2章 第7話 先中

〇花音




 久司八雲という人間は、正義の塊だ。



 正義感ではない。正義。自分が自分で定めたルールに則るだけで、他人に強要することはない。



 わかりやすいエピソードといえば、剣道部の事件だろう。やっくんは誰よりも剣道が上手かった。たとえ喧嘩になってもそう簡単に負けることはない。



 でもやっくんは、決してやり返さなかった。理不尽な目に遭っても、いじめられても、骨を折られても、病院に行くことが許されなくても。それを受け入れ、許容していた。やっくんの正義では、いかなる場面でも暴力を振るうことは許されないものだから。自分がされる分には認められるものだったから。



 そしてやっくんが暴走したのは、私の裸を撮ってこいと言われたから。ただそれでも暴力を振るうことはなく、ゴールデンウィーク中永続的に稽古をし続けるというものだった。



 なにより恐ろしいのは、決断力と行動力。そして執念だ。思いついてもできるものじゃない。継続できるものじゃない。どう考えても一番辛いのは自分なんだから。



 でもその報せを聞いて初めて。立花花音は久司八雲の面倒を見ようと思った。



「はぁ……はぁ……」



 金銅さんを終点に届けて一度コテージまで戻ってきた私は、やっくんのいる私の部屋の前から扉を少し開き、中の様子を窺っていた。



 行く直前、私はやっくんに「まて」と言った。本当にいい子。ちゃんと、「まて」ができていた。



 布団、タイツ、荷物。私に関するもの全てから距離をとり、荒い息を吐きながらじっと耐えている。



 やっくんは私のことが大好きだ。大好きで大好きでたまらない。誰もいないこの空間でやりたいこともたくさんあっただろうし、実際できただろう。



 それでもやっくんは耐えていた。私に「まて」と言われたから。本当に、かわいい。



「ただいま~」



 表情を作り、花音ちゃんは部屋に入る。



「……おかえりなさい」



 返ってきたのは、ダウナーな声と輝く瞳。やっくんは表情のコントロールが苦手だ。こうしよう、と思ったらできるけど、何も思っていないと感情がそのまま表情になってしまう。かわいすぎる。



「あ~つかれた~」



 パーカーを脱ぎ、ノースリーブになると布団の上に仰向けになる。横を見てみると、飢えた獣のような瞳がこちらを見ており、うれしすぎて笑いそうになってしまう。



「あの……瑠奈は……」

「やっくん」



 先輩の立場なんて、つかれるだけでしょ? 今楽にしてあげるからね。



「よし」



 一言そう告げると。



「先輩っ!」



 一心不乱に一目散に。やっくんが花音ちゃんの横に跳び込んできた。



「先輩……先輩ぃ……」



 そして花音ちゃんの身体をがっしりと抱きしめる。その手はどんどん下に落ち、ふとももの部分で止まる。



「先輩……はぁっ……あぁっ……」



 顔を胸にうずめながら、やっくんは愛おしそうにふとももの感触を味わっていく。長い時間をかけたわからせの成果だ。



 久司八雲は正義の塊だ。でも人間を形作る成分に正義なんて概念は存在しない。



 金銅さんは本当にわかっていない。こうやって生物としての本能を発散させてあげないと、人間は人間と呼べなくなってしまう。あの子にそんな甲斐性はないでしょう?



「やっくん、キスするよ」

「せん……ぱいぃ……」



 そしてやっくんもわかっていない。我慢してたのはやっくんだけじゃない。花音ちゃんだってずっと、さびしかったんだよ?



「ん……むぅ……」

「はっ……んぅ……」



 きっと金銅さんは花音ちゃんの姿を見て犬みたいだと思ったことだろう。でも実際は逆。久司八雲が立花花音の犬なのだ。



 立花花音が帰ってくるとうれしそうに目を輝かせ、部屋にいる間はずっと隣に寄り添っていて、一緒に眠って、別れる時は死ぬほど悲しそうにしょぼくれる、かわいいワンちゃん。



 本質は狂犬。周りの目からは番犬。立花花音には忠犬であり、何よりも愛玩犬だ。



 そう。ペットなんだ。だから、付き合えない。



 こんなに……。やっくんとまたこうやって会えて、涙が出るほどうれしいのに。こんなにも、愛しているのに。どうしても男としては見られない。家族以上に大好きなのに、どうしても一線を超えることができない。



 異性として見られたらどれだけ楽だったか。無理矢理襲ってきてくれたらどれだけ楽だったか。立花花音の心を折るくらいにわからせてくれたら、どれだけ楽だったか。



 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる。誰にも渡したくない。独占したい。つい2週間前までは、立花花音だけのものだったのに。今は花音ちゃんを、飼い主だと認めてくれない。



「やっくん……。後輩さえいなくなってくれれば、今までと同じ関係を続けられたのにね」

「瑠奈は……先輩より大切な人です。先輩が俺にしてくれたことを全部瑠奈に返してあげたい」



 悪いのはやっくんの正義だ。絶対に手を出してこないし、脚を触る以上のことは自分からできないし、こんな状態でも頭にはあの後輩が残っている。



 でもそんなの許せない。認められるわけがない。久司八雲は、立花花音だけのものだ。



 後輩とか他のことなんて、何も考えなくていい。ただ傍にいてくれるだけでいい。それ以外のものは、何もいらない。



「さっきその金銅さんと話したんだけど……少し、上下関係がわかってないよね」



 ごめんね、金銅さん。君には恨みも興味もないけれど。



「こんなことは言いたくないけど……今のままじゃ全然駄目だよ。だからさ、」



 花音ちゃんとやっくんの部屋からあなたさえ消えてくれれば、また花音ちゃんはあの部屋に行くことができる。同棲することができる。だから。



「ちゃぁ~んと、わからせてあげて?」



 金銅瑠奈さん。あなたには退学してもらう。

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― 新着の感想 ―
[一言] わからせものかと思ったけど主人公がすでにわからされてる(ペットとして調教済み) 時間を無駄にしました。 タグに「わからせられ済み」などもう主人公が調教されていることを書いてください
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