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【イチャラブ編開始】同棲しているあざとかわいい後輩が俺を退学させようとしてくるのでわからせる。  作者: 松竹梅竹松
第1章 はじまりの4日間

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第1章 第22話 別れの再会

〇瑠奈




 この光景を見た時、あの清楚系ビッチ、やりやがったなと思った。



 当然だ。せんぱいが後輩の女子に無理矢理……だなんてありえない。そんな人じゃないことくらい、わかっていた。



 だから単純に、ちょっとからかってやろうと思った。いつもよりきついわがままを言って、でも半分本気で。せんぱいとの同棲生活を楽しくしようと思った。



 それなのに。せんぱいは。



「俺を退学にしろ」

「――え?」



 あっさりと、その未来を否定した。



「完全に油断した。冷静に考えれば瑠奈と珠緒は繋がってるはずなのにな。やられたよ」

「……ぇ? え……? え?」



 せんぱいが何を言っているのかわからない。退学? なんで? だってせんぱいは、悪くないのに。



「これはお願いなんだけどさ、珠緒は被害者ってことにしてくれないか? 友だちなんだろうしいいだろ?」

「ちょっ……、まっ……」


「鎌木とかには色々言われるかもしれないけど気にすんな。瑠奈は悪くないから」

「ちょっと……まってくださいよ……」


「困ったことがあったら先輩……花音先輩を頼れ。俺の先輩だけど、別に俺に情があるわけじゃない。力になってくれるはずだ」

「だから……待ってって……」


「でも一つ……先輩には……」

「だから待ってくださいって言ってるでしょっ!?」



 思わず叫んでしまうと、せんぱいのきょとんとした顔と目が合った。



「瑠奈は俺を退学にしたいんだろ?」

「っ――!」



 そう、だよ……。でも、そうじゃないでしょ……?



「わたしは……あなたと……」

「……瑠奈。一つだけ謝っておきたいことがある」



 わたしがまだしゃべっているのに、せんぱいは構わずに言う。



「冷蔵庫とかは先輩が持ってったって言ったろ? あれ、ほんとは嘘なんだ」

「そんなの……どうでも……」


「全部生徒会の倉庫に置いてある。先輩に言えば運ぶの手伝ってくれるはずだ」

「わたしの……話を……」


「置いておきたくなかったんだよ。先輩との思い出を。先輩さ、冷蔵庫によくわかんない調味料たくさんしまってたんだよ。全然使わないのに。テレビをセッティングするのに徹夜したりしてさ。あぁそうそう。先輩電子レンジに卵入れて爆発させてたなぁ……。狭いのにさぁ……一つのソファーでよく一緒に寝ていた」

「だから! わたしはっ!」


「瑠奈」

「っ……!」



 気がつけばせんぱいは。



「もう、辛いんだ。この学校には、先輩との思い出がありすぎる」



 わたしに初めて、笑顔を見せていた。



 とても自然で、とても儚げなその笑みを見て、わたしは悟った。



 せんぱいは辞めたかったんだ。この学校を。



 でも後輩が困るから残ってくれていた。わたしのために、辛いはずの場所にいてくれた。



 でもそれももう、終わり。



 わたしが、終わらせてしまった。



「そう、ですか……。わかりました。このデータは、わたしの好きにさせてもらいます」

「ああ。頼む」



 せんぱいに背を向ける。もうせんぱいの顔を見れる自信がなかった。



「……瑠奈」

「……なんですか」



 後ろから声がする。振り返らず、わたしはドアノブを握る。



「短い間だったけど、楽しかった。ありがとう」



 満足気なその声に何も返さず、わたしは部屋を出た。




〇八雲




「珠緒、起きてくれ」

「……ん、んぅぅ……」



 珠緒が目を覚ました。もうこんなことをしている場合じゃない。記憶も飛んでるだろうし、逃がさないと。



「せん、ぱい……?」

「悪いけど急用ができた。出て行ってくれないか?」



 珠緒が手錠を外し、制服を着直す。珠緒と話すのもこれで最後か。気に病まなければいいんだけど……。



「珠緒、鎌木はいい奴だから。あいつについていけば大丈夫だ」

「……? はい……」



 何が何やらわからなそうな様子の珠緒が部屋を出ていく。これで残ったのは、俺1人。



「終わった、な……」



 いや、正確にはもう終わっていた。先輩に別れを告げた瞬間、俺の高校生活は終わっていたんだ。



 楽しい1年間だった。この思い出だけで、俺は一生を過ごせる。それほどまでに濃密で、愛おしい1年間だった。



「ふぅ……」



 なぜだかさっきまで俺の身体を蝕んでいた痛みを感じなくなり、荷造りはすぐに終わった。



 スーツケース半分ちょい。これが俺に残された全てだ。



「……ん」



 ドアが叩かれ、開かれる。お迎えといったところか。



 心残りはない。俺にできることは全てやった。もう、瑠奈も1人で……。



「……せんぱい、なにか勘違いしてませんか?」

「瑠奈……?」



 なぜか戻ってきた瑠奈は、半分だけ開けた扉に隠れながら俺を見上げる。



「わたしはせんぱいと違って性格よくないので。心残りはあるんですよ」



 強い瞳で、言う。



「だから、ごめんなさい」



 そして扉が完全に開かれ。瑠奈の横にいた人の姿が目に入った。



「ひさしぶりだね、やっくん」



 その人の顔を見た瞬間。



「先輩――」



 俺の意識は、遠くへと消えた。

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