第1章 第15話 理不尽
〇八雲
なんか瑠奈……怒ってたな……。俺が余計なこと言い過ぎた……。あいつのこと全然考えてやれなかった……。
ちゃんと部活探せてるかなー……あいつ。この学校無茶な勧誘多いから、人の目を気にして本音で話せない瑠奈が心配だ。
できれば遠目で見守ってあげたかったんだけど、見失ってしまった。あぁー……くそ……。
「こんにちは、久司先輩」
さりげなく瑠奈を探しながら体育館を歩いていると、昨日生徒会室で会った清楚そうな1年生に出くわした。
「えーと……」
「羽撃珠緒です。珠緒って呼んでください。苗字は少し厳ついので」
最近の女子はそんなこと気にするのか……? いや最近の女子って……。1歳しか変わってないんだぞ。先輩って言うよりおっさんくさくなってきた。
「えーと珠緒さんは……」
「呼び捨てでいいですよ、先輩」
「じゃあ……珠緒はこんなところで何してるんだ? 生徒会に入りたいって話じゃなかったっけ」
「はい。私剣道もやっていまして。剣道部の方も掛け持ちできたらと思っているんです」
剣道部……。まぁ女子の方だし、俺じゃないんだから大丈夫か。
「そっか。がんばれ」
「はい。ありがとうございます」
珠緒が深々と頭を下げたので、俺も早々と立ち去る。知らない人と話すの嫌だ怖い。
「剣道部って言ってなかった!? 言ってたよね!? 君かわいいねどう男子剣道部のマネージャーに!」
「いえ……私は選手として……」
後ろの方から声がする。聞き覚えのある声だ。名前はもう覚えていないが、怒鳴られたその声は一生耳から離れない。
「いいじゃんいいじゃん! マネージャーやろうよほらこっち!」
「いえその……やめてください……」
あー……嫌だなぁ……。ほんとに嫌だ……。でもやらなきゃいけないよなぁ……一応先輩ではあるんだし……。
「あのー……やめてあげた方が……」
「てめぇ……久司ぃっ!」
「ひぇ……ごめんなさい……」
振り返って声をかけると、珠緒の腕を掴んでいた剣道部の3年が俺の胸ぐらを掴みあげてきた。こわい……。
「何の用だてめぇ舐めてんのか!? あぁっ!?」
「ごめんなさい……すいません……」
3年に見えないように手を振り、珠緒を追い払う。あとは俺が逃げれば終わりだ。
「てめぇのせいで逃げられたじゃねぇかよっ!」
「いやそれは……自分のせいだと……」
「あぁっ!?」
「いや……すいません……」
「もういいお前こっち来い」
「あの……すいませんでした……」
3年に腕を引っ張られ、体育館の外に連れ出される。まじで嫌だ……。先輩助けて……。
「おらっ! なぁっ! おいっ! 調子乗ってんじゃねぇぞっ!」
「うぐ……! ぐっ! あぁっ!」
そして殴る蹴るの暴行。ひっさしぶりだなぁ……この感じ……。ほんといや……痛い……。
「イキんなや雑魚がっ!」
「……ははっ」
「なに笑ってんだおい……舐めてんのかっ!?」
「いやだって俺よりあんたの方が雑魚だしイキってるし……いたいっ!」
「もう無理だお前徹底的に殺す。部室来い」
「っす……」
なんで俺が……こんな目に……。




