まだ僕達はその世界を知らない
「おい! トオル!」
教室の隅でつっぷしていた俺は呼ばれて身を起こした。
この声はハヤトか……。
「なんだ? ハヤト」
「ゲーセン行こーぜ。いつものとこ」
またいつものコースかと思いながらも
二つ返事で了承した。
他にべつになにもすることがないので
断る理由がなかった。
俺たちの放課後のいつもの楽しみは
ゲーセンでアクションゲームをすることだった。
侵略してきた敵を倒すヒーローとして戦うゲームで
ありきたりだが映像がきれいでハマってしまった。
放課後になるとハヤトがニヤニヤしながら
こちらを見ていた。
「なんだ?」
「ゲーセンまで競争しようぜ!」
またこいつはなんでも競争したがる……。
「いいぜ……負けた方がジュースおごりな!」
俺は更に条件をのっけた。
「いいぜ!」
そういうとハヤトはそそくさと教室をでていった。
俺はそれを追いかける。
いつもの光景だった。
途中までは。
自転車を全力で漕ぎながらいつもながらの接戦だった。
信号待ちにひっかかったとき、それは起きた。
猛烈な爆発音と目を開けられないほどの光に包まれた。
「なんだこれ……ハヤト大丈夫か?」
なにも聞こえない。
そのまま気を失った。
ドームのような大きな広場で目が覚めた。
上は吹き抜けになっている。
なぜか空がとても赤い。
周りにはたくさんの人が倒れていた。
目が覚めたのか
それぞれ起き上がりながら周りを見渡していた。
ザザザとノイズが走り、大きなスクリーンが目にはいる。
「あなた達には死ぬまで戦ってもらうーーー」
仮面をかぶり機械の体をした男が突然話し出した。
「なにいってんだ? あいつ」
「わかんねぇ」
その言葉を聞いてそれぞれ口々に話し出した。