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1.死神との出会い

 そうして僕は死ぬことにした。


 思えば昔から常に心のどこかで死にたいと願っていた。

 酷く心の弱い人間だなと思う。普通の人から見たら少し変なのかもしれない。

 でもそれが僕の普通で、生きるための術だった。


 人はなんで生きているんだろう。学校に行っていつか働いて、老いて、死んでいく。そのためにみんな頑張っているのが不思議で仕方なかった。


 幼稚園の頃、祖母に「あんたは立派になりそうだね」と言われたことがあったが、立派になると何がいいのだろう?


 例えば、来栖君はかなり立派な幼稚園児だった。僕の幼なじみだ。

 ひとしきり公園で遊んだ後、鳥がなんで飛べるのか、飛行機を作ったのは誰か、飛行機雲の原理とか色々教えてくれたことがある。


 頭がいいんだなぁくらいにしか思わなかったが、本当に頭が良かった彼は中学受験をして県内一番の私立高校に行ったらしい。

 僕はそれをよく知らず、後から人伝に聞いた。

 というのも、僕は小学校高学年にもなると来栖君とは疎遠になってしまったのだ。


 聡明で、かっこよく、走るのも早い男の子だった。僕とは大違いだ。

 住む世界が違っても仲良くなれるのが友達とか、漫画や歌で見ることがあるけれど、実際は周りの環境による。

 来栖君はモテる男の子で、クラスの女の子はみんな好きだった。

 きっかけはそんなものだったが、僕はなんとなく近寄れなくなってしまって、そこからは1回も遊ばなくなった。


 立派な来栖君は立派な中学生になったが、1年もすると不良になって警察のお世話になっていた。訳が分からなかった。

 風の噂では、勉強についていけなくなり、悪い先輩とつるみ出したのが最初で、そのままずるずるといってしまったんだって。


 人生何が起こるか分からないし、楽しいことばかりでもない。いつか事故で死ぬかもしれない。

 それならいつ死んでも同じだし、嫌々死ぬんじゃなく「死にたい時に死のう」が僕を構成する一部分だった。それが生きるということだった。


 そんなわけで、色々辛いことが重なった挙句、好きな子に振られるという追い討ちを受けた僕は、地元で一番高いマンションの屋上から身を投げることにした。


 高校一年生の冬、雨寺鳴海16歳。最後の会話は母とのたわいもない挨拶だった。


 そのはずだった。


「ボケっとせんと早く死にたがりを助けてこいや、鳴海。」


 あーもうなんでこいつは。口が悪いのがかっこいいとか思ってるんかな。


「死神の台詞じゃないだろ。普通にうざいから口閉じとけ。」


 僕は結局こいつのせいで生きるハメになって、死ねない身体になってしまったのだった。


 最悪だ。

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