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第9話 『水面』

こんにちは、ライダー超信者です。

お待たせしました第9話です。


前回新たな力を得た虚空蔵くん。そして今回も新たなる力を…………?



仙台市 某所



「……………………今週に入ってもう四十三件目……」


現場入りした〝僕〟はブルーシートを掛けられた被害者に黙祷を捧げる。今週に入ってから幾度となく誰かの冥福を祈っているこの状況に内心うんざりしていると、鑑識の人がやってきた。


「氷川さん!」

「お疲れ様です。どうでしたか?」

「やっぱり同じです、弾も銃も見つかりません。被害者の左胸の傷から、今回も〝この川の中から射たれた〟ようです」

「そう、ですか…………」


今週に入り、またしても未確認の犯行と思わしき事件が起きていた。

水辺や川辺で人が射殺される、しかも検証の結果被害者は全て近くの水辺から射たれたことが判明しており、更に肝心の弾や銃は一切見つかっておらず、銃声らしき音を聞いた人も不審な人影を見た人もいない。

普通の人間には到底出来ない所業だった。


「これも未確認の仕業…………ですよね?」

「えぇ、恐らく。水中から人を狙撃するなんて特殊な訓練を受けた軍人でもなければ絶対に不可能です。

水中銃というものもあるにはありますが、被害者の方達が受けた傷と水中銃の弾丸では大きさが全く合いません。水中銃の弾は矢のように細長い物が多いんです」

「…………一体どんな手口を使っているんですかね」


鑑識の人が呟く。僕はそれに答える術を持たず、ただ立ち尽くすことしか出来なかった。




「ククク……精々翻弄されてろ人間が」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


七ヶ浜家 AM10:42


「こっこー、私の靴下…………」

「………………………………」

「あ、お姉ちゃん」


みんなお休み土曜日。茶の間に入ると、こっこがあずーに背中からあすなろ抱きの如く抱き付いていた。


「こっこ~癒されてるところ悪いんだけど、私の靴下知らなーい?ほら、お気に入りのやつ」

「あぁ、それならそこにあるよ」

「あ、本当だ。ありがとー」

「………………虚空蔵ちゃん、大丈夫?」

「…………うん」


この子がこうやってあずーや私に引っ付く時は大なり小なり疲れていたり嫌なことがあった時だ。学校で何かあったのかな?美弥ちゃんと夢芽ちゃんと何かあった…………はないか、あの二人に限って。それに昨日は普通だったしなぁ…………


「こっこ~~私もハグハグしてあげようか~?今だけ特別だよー?」


ちょっとしたからかいも含めて手を広げてスタンバイする。するとこっこはおもむろに立ち上がり、こっちにくるとそのまま私に抱き付いてきた。


「………………ありがとう」

「おぉ、素直でちょっとびっくり。どしたの?なんかあった?」

「ん…………」


やっぱり何かあったのは確定らしい。まぁ本人が言わないなら聞くつもりはないし素直な弟もこれはこれでいいか、とこっこを抱きしめる……相変わらずゴッツいなぁ。


「はぁ~~弟抱きしめるの癒し~~。ど~お~?お姉ちゃんも結構柔らかいでしょ~?」

「………………………………まぁ、ふわふわしてる?流石だな月姉」

「ふっふっふっ、よろしい。何があったか知らないけどさ、あんまり無理しちゃダメだからね」

「うん」

「虚空蔵ちゃんさえ良ければ、いつでも甘えていいんだよぉ。遠慮しないでね」

「うん、ありがとう」


こっこは申し訳なさそうに笑うと私から離れ、パシパシとほっぺたを叩く。


「シケた面しててもしゃーねぇかぁ。二人ともありがとう」

「どーいたまして~」

「ふふっ、元気になったみたいで良かった。お姉ちゃん流石だねっ」

「まぁ?何てったってお姉ちゃんだからね~弟を元気にするのは得意中の得意なわけですよ~」

「はいはいありがとう、愛してるよ」

「む~テキト~~」

「ははっ、愛してるのは本当だよ」


イケメンなこと(実際めっちゃカッコいいけど。声もいいし)を言うとこっこは茶の間を出て二階に上がっていく。あずーと二人きりになり、隣に腰を下ろす。


「…………久しぶりだったね、あんなこっこ」

「うん……何かあったのかな。心配……」

「もしかするとお父さんとお母さんが死んでからは初めてかもね、あんなナーバスになってるこっこ」


ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーーー


今から七年前、私達の両親は死んだ。


夜に二人きりでドライブに行って、そこで事故に遭ってしまったという。

私もあずーも泣きに泣いてしばらく学校どころか外に出ることも出来ないくらい参っていた。

でもそれ以上に大変だったのはこっこだった。

当時温厚でおっとりとした女の子のような性格だったあの子は毎日泣き続けて、あれだけ仲のいい美弥ちゃんと夢芽ちゃん、大好きなおじいちゃんおばあちゃんの励ましや慰めも意味を為さない程だった。

私達も大概だったけど、あの時のこっこはそのまま衰弱して後を追ってしまうのではないか、とおじいちゃんとおばあちゃんが酷く心配していたことを思い出した。


そんな状態だったあの子が変わったのは二人が亡くなってから一ヶ月ほど経った頃だった。



『これからは 僕がお姉ちゃん達を守るからっ!』



そう言ったあの子は、私達の面倒を見るために泊まりに来てくれていたおばあちゃんから料理を始めとした家事全般を習い、おじいちゃんからも色んな知識や技術を学んだ。

家事の全てを一手に担当するようになり、同時に体も鍛え始めた。お父さんのトレーニング器具も使い、何度も怪我や疲労骨折をして治ったらまた繰り返すという異常とも言えるトレーニングをこなし、今の屈強な肉体と人並み外れた強さを手に入れた。


それからあの子は変わった。あれだけ大人しかった性格も良く言えば男らしい頼りがいのあるものに変わり、今に至るまでお父さんとお母さんの代わりを十分過ぎるほどに務めている。

でも、その一方で良くも悪くも物怖じしない荒っぽい性格になり、自分のことより私達のことを優先させるようになっていった。友達もどんどん減っていき、三年前に起きた暴走族壊滅の時点で既に友達と呼べるのは美弥ちゃんと夢芽ちゃんだけになってしまった。


私もあずーも後悔している。もっと、あの子の負担を減らしてあげられなかったのか。弟があんな修羅のようになってしまった原因の一旦は、知らず知らずこっこに甘えていた私達にもあるのではないか。

嫌な思考に陥りそうになり、思わずため息をつくのであった。


ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーーー


自室でふて寝の如く寝そべる俺。気分が優れないのはここ数日起きている事件のせいだ。

当然というべきか、犯人はエヴォリオルだ。しかし今回のエヴォリオルはあちこちで犯行を重ねている上、犯行後は直ぐに現場から撤退しており、現場に向かった時には既に姿を消していた……というパターンを何回も繰り返している。そのせいで犠牲になった人を救えないばかりか犠牲者の数を止めることも出来ていない。


「くそっ、なんてザマだ……」

「あんまり自分を責めないで、虚空蔵くんは頑張ってるよ……」


美弥ちゃんは慰めてくれるが却って美弥ちゃんへの申し訳なさと自分の不甲斐なさへの怒りが沸いてくる。本当になんてザマだ。


「未だに敵の面すらまともに拝めてねぇ……早く何とかしなきゃなんねぇのにクソっ腹立つなクソがっ……!」


行き場のない怒りを吐き出す。すると、そんな俺を見かねてか美弥ちゃんの手が頭に添えられた。


「虚空蔵くん、頭失礼するね」


美弥ちゃんはそのまま俺の頭を持ち上げ自分の膝の上に乗せた。所謂膝枕だ。

ふわふわしていて柔らかい極上の感触で後頭部が包み込まれると頭を優しく撫でられる。


「大丈夫、虚空蔵くんはたくさん頑張ってるよ。焦る気持ちは分かるけど少し落ち着いて、ね?」

「………………うん……」

「最近ね、虚空蔵くんすごいなぁって思うことが増えたんだ。あ、元々虚空蔵くんはすごいけどねっ?

お家のことも学校のことも頑張って、スペクターとしてたくさんの人を守るために戦って…………本当にすごいよ。虚空蔵くんは自分のことヒーローじゃないって言ってたけど、私は虚空蔵くんが世界で一番すごくてかっこいいヒーローだと思ってるよ」

「………………………………」

「私に出来ることがあったらお手伝いするから、一緒に頑張ろう?何かあって、菜月ちゃんや杏ちゃんに言いづらかったらお話も聞くから、いつでも頼ってね。遠慮はナシナシ!だよ?えへへ」



           す   き  


 

         す       き  



いやちょっと可愛すぎるだろ俺の幼馴染み。

何だこの……天使?女神?やばいな内なるキモさが止めどなく溢れてくる。抱きしめたい、だがそんな根性俺にはない。くそが。

冷静を装い内なるキモさを爆発させていると、奈緒が部屋が入ってきた。


「あ、奈緒ちゃん」

「美弥さんおはようございます…………お楽しみ中でしたかね」

「うるせぇ、そんなんじゃねぇ」

「???」

「そうですか。それはそうと虚空蔵さん、お渡ししたい物があるんですが」

「? 渡したい物?」


そう言って奈緒が取り出したのは〝緑色〟のスペクターオーブ。

俺は起き上がり、奈緒からオーブを受け取る。


「射撃、及び索敵に長けた超感覚形態〝ブラストフォーム〟に変身するブラストスペクターオーブです。次はこのオーブを使ってみてください」

「…………分かった。で、このオーブにはなんかデメリットはあるのか?」

「感覚の超鋭敏化に伴って痛覚が増します。攻撃は掠らせることなく全て躱してください」

「ってことは聴覚や視覚も上がってるか」

「よく分かりますねぇ…………」


また近い内に練習しねぇとな…………緑のオーブを眺めながらそんな風に考えるのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


異世界 


「………………………………」


私は荒廃した世界を見ながらスペクターのことを考えていた。今まであの世界に赴いたエヴォリオルは尽くスペクターに倒されてしまい、更にはファントムなる新たな邪魔者まで現れた。全くもって腹立たしい。


「〝オーバーロード〟さえあればっ……!」


忌々しさともどかしさを吐き出すが苛立ちは増すばかりで気持ちは晴れない。死んでいった者達を思うと無念で仕方がない。


「オーバーロードは、進展率五十%ほどだそうだ」

「! ガドール殿…………」


振り向くとガドール殿が此方にゆっくりと歩いてきた。そして私の隣に立ち、顔をこちらに向けることなく話しかけてくる。


「スペクターのことか」

「はい……既に六人ものエヴォリオルが奴の手にかかってしまいました。彼らの仇は必ず取ります……!!」

「そうか…………だが忘れるな。こちらが人間の命を奪うのであれば、人間にもまた、我々を討ち取る権利がある」

「そんなっ!我々エヴォリオルと人間が同列だと言いたいのですか!!?いくらガドール殿とはいえ承服しかねます!!」

「戦いとは不平等なもの。だがこれはゲームだ。最低限は平等であるべきだろう」

「しかし……」

「こちらは良いが相手は許可しない……子供ではないんだ、通らないだろうそんな理屈は。何より、ある程度抵抗してもらわなければ張り合いがない」


ガドール殿の言葉は正論だ。反論の余地などない。

だが正論だからといって納得できるとは限らないのもまた事実だ。


「………………仇は取ります。必ず」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



杜都町 PM13:22


気分転換に家族で出かけることになった俺はお姉ちゃんの運転する車に揺られていた。

窓から流れる景色を見ていると、俺達とは反対側の上りの道路をパトカーが走っていった。サイレンは鳴らさず赤色回転灯も回っていないため何か事件があったのでなく見回りをしているようだ。

というのも、連日のようにエヴォリオルが起こす事件から警察も巡回を強化しており、今ではどこに行っても走るパトカーを目撃する。特に学校がある方なんて周りをグルグル回っているんじゃないかと思うほど暇なし目にする。

更にはエヴォリオルを恐れて外出を控える人間も出始めているようで早くも社会への影響が懸念されている。

しかし一方で、見回りの強化やエヴォリオルの存在からここ最近の宮城の犯罪件数は以前とは比べ物にならないほど減少しており、取り締まりや交通ルール違反者等の摘発も凄まじく上手くいってるらしく、治安はむしろ上がっているらしい。なんとも皮肉な話だ。


「最近パトカーやお巡りさん、よく見るね……」

「本当にな。物騒になったもんだよ」

「警察は大変だね~まさか生きてる内にこんな超大事件に直面するなんて思ってもみなかっただろうなぁ」

「お出かけしてもよかったのかなぁ?」

「大丈夫ですよ、いざとなれば虚空蔵さんが何とかしてくれます」

「勝手言うな。するけど」


そうこうしていると、車は大きな住宅地を分けるように流れる河川の横に出た。静かな住宅地の直ぐ側で、そう言えば今回のエヴォリオルはこういう場所に出るんだったよな…………と、何気なく眺めた時。


(!! 虚空蔵さんっ!)

(あ?)

(この川います!今回のエヴォリオル(クソ野郎)が!!)

「!?………………まさか……!!」

「? 虚空蔵ちゃんどうかした?」

「にぃに?」

「お姉ちゃんストップ!全員しゃがめっ!!」


車が急停止し、俺がお姉ちゃんを、奈緒が月姉と優衣を庇った次の瞬間、俺の座る助手席の窓が砕け散った。


「きゃあぁっ!!」

「あずー!!こっこ!!」

「な、なに……!?」

「っ…………!みんなはこのまま逃げろっ!!奈緒頼んだぞ!!」

「はいっ!」


急いで車から出て河川を覗き込む。取り出したオーブを起動し、ベルトに装填して飛び降りた。


『The Blue&Black Soldier

SPECTER is born!!』


「虚空蔵ちゃん!」

「こ、こっこ何してんのあの子!?」

「皆さん早くここから逃げましょう!虚空蔵さんなら大丈夫ですから!」


走り去る車を確認し、細心の注意を払って周囲を警戒する。用水路の水位はせいぜい俺の膝下程度、潜って隠れられるような場所ではない。


「…………………………………………っっっ!!」


水中から飛んできた〝何か〟を躱す。

背後のコンクリートの壁に綺麗な穴が空き、それが車の窓ガラスを破壊した攻撃であること、さっきのはかなり威力を絞ったものであることを理解する。

そして次の瞬間、水中から何かが飛び出してきた。


「へぇ、スペクターが乗ってたのか……ツイてるな」

「ようやく面ぁ拝めたな……!」

「アーチャーフィッシュエヴォリオルのアルクス。まだ規定の数に達してないんだけどな、まぁいいか」


アーチャーフィッシュ…………〝テッポウウオ〟か……!ということはさっきの攻撃は…………


「……っ!」


敵が放った攻撃を躱す。

エヴォリオルが口から発射したもの。それはビームの如き超高圧水流だった。


「これが今回のトリックか!」

「余所見すんなよスペクター!」


エヴォリオルが放つ高圧水流を、出来るだけ最小限の動きで躱しながら距離を詰めていく。

躱されると思わなかったのか、それともこんなコソコソしたやり方をするだけあって小心者なのか、攻撃を掠らせることなく近づいてくる俺にあからさまに焦りながら次弾を発射しようとするエヴォリオル。その口を強引に閉じさせるように顎にアッパーを叩き込み、そこからパンチのラッシュで叩きのめす。反撃として繰り出してきた打撃には真っ向から拳をぶつけ、敵の腕をへし折った。


「ぎぃぃぃ!?」

「死にさらせおらぁ!!」


頬をぶち抜き、下顎を千切り飛ばさんばかりに殴り飛ばし、エヴォリオルをふっ飛ばす。

するとエヴォリオルはひしゃげた腕を押さえながら水中へ飛び込む。当然隠れたり泳いだりできるような深さはないのだが、敵の姿はおろか影すら見えなくなる。目をこらしても何も見えず、辺りを見渡す。


(どこだ、どこにいる…………)


一瞬逃げたかとも思ったが、肌で感じる雰囲気や敵意からこの場にいることは確かだ。問題はあの魚野郎をどうやって見つけるか……………………


「! そうだ、緑のオーブ……!」


新しいオーブの存在、そしてその能力を思い出し、取り出して起動する。水中からの高圧水流を躱し、オーブをベルトに装填する。


『スナイパー!』


『チェンジ!ブラスト!!』


『With Soul blow!

      Blast Form!!』



青いカラーリングが緑に変わる。右肩アーマーが消失し、代わりに左肩アーマーが大型化。胴体の装甲は弓道の胸当てに似た形状になり、全体的に弓使いを思わせる姿になった。


「今度は緑かっ……!?」


変身が完了した直後、突如として膨大な情報が俺の中に流れ込んできた。



『~~~~~~~~~~!』

『ーーーーーー?ーーーーー!』

『!!!ーーー!!??』

『~~!~~○○✕✕~~』

『△△△△△□□□□□~~』



四方八方から直接無理矢理頭に叩き込まれているかのような音の暴力。無数の声、会話、車の走行音、クラクション、果ては飛行機のジェット音……ありとあらゆる音が俺を蝕む。それだけではなく視界も望遠鏡の如く遠くを見通し、星空や宇宙が見えたと思えば直ぐに引き戻される。


「なん……な……なん、だよ、これ…………」


突然の事態に完全に脳がフリーズし、その場に立ち尽くして身動きが取れなくなってしまう。そして無防備になった俺に、敵の高圧水流がクリーンヒットした。

全身の神経や痛覚が剥き出しになり、そこに刺激性の劇物を塗りたくられたかのような激痛と衝撃で吹き飛ばされ、初めてスペクターになったあの日に味わった痛みですらちっぽけなものに錯覚してしまうほどの激痛に悶え苦しむ。


「はっ……!!はっ……!!はっ……っ!!!」


過呼吸になりながらもなんとか正気を保つが、更に悪いことが起きた。

ブラストフォームの変身が勝手に解け、元の俺に戻ってしまったのだ。驚きながらもなんとかもう一度変身しようとするが、ブラストフォームはおろか基本フォームにも変身出来なくなっている。


「っ……なんでだ…………!?」

「俺の勝ちみたいだなスペクター」

「くそっ……………………!」

「あばよ、スペクタアッッ!!?」


得意げに俺にとどめを刺そうとしたエヴォリオルの体から火花が散り、後ろにふっ飛ぶ。

振り向くと、そこには銃型武器を構えたファントムがいた。


「ファントム……!」

「あーあー、ちょっと大丈夫?」

「なんとかな…………死ぬほど痛ぇだけだ」

「そう。そりゃ何よりじゃん」


ファントムは軽いノリで言うと隙を見て逃げようとしていたエヴォリオルを後ろから撃つ。背中から火花を散らし、つんのめるような間抜けな体勢で倒れたエヴォリオルに容赦のない銃撃の雨を浴びせるファントム。


「う、ぐおぉぉぉぉ!!」

「…………おい魚面、一つ聞きたいことがある。とりま答えろ」


銃口を向けたままファントムが尋ねる。


「お前、紫色のエヴォリオルって知ってるか?」

「む、紫色?それを知ってnガアァァ!!」

「こっちの質問答えろし。知ってるのか知らないのかどっちなんだよ、え?」

「し、知ってる!話してやるからやめろぉ!」

「じゃあ吐け!今すぐっ!洗いざらい全部だっっ!!」


鬼気迫る叫びを上げるファントム。そんなファントムにエヴォリオルは、


「わ、分かった……まずは……そうだなぁっ!!」


不意打ちの高圧水流を発射した。ファントムは咄嗟に攻撃を躱すが、エヴォリオルはその隙に突いて逃走してしまう。


「待ててめっ…………!!」


追おうとするものの体に力が入らず倒れてしまい、拳を水面に叩き付ける。


「ちょいちょい、ホントに大丈夫アンタ?」

「シンドい…………」

「良ければ上まで運ぼっか?」

「お願いします…………」


ファントムに担がれて上に戻る。と、少し離れたところに家の車が停まっているのが見えた。そして向こうも俺を見つけたようでものすごい速さで走ってきたかと思うとあっという間に車の後部座席に運び込まれ、車は一瞬で再発進した。


「おぉ、すっご」


「みんな…………」

「にぃに大丈夫!?」

「こっこ大丈夫!?何してたのいきなり飛び出して!?」

「このままお家帰るから、少し待っててね!」


(あぁ、どうやって説明しようかな…………)


俺は苦笑いしてそのまま眠りに落ちた。


ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーーー


七ヶ浜家 PM14:19


家に着いた俺は何とか自分の足で歩き、倒れるように座椅子に寄りかかる。無論、その後待っていたのは三人からの尋問だった。


「虚空蔵ちゃん、正直に教えて……あの姿は何……?」

「…………さっき逃げる時に後ろ見たらね、未確認の二号がいたんだ。でもにぃにはいなくて……その……」

「私もこんなこと言いたくないけど…………本当に、虚空蔵だよね?」


実の姉弟、家族から向けられる不安と恐怖の滲んだ目が心に突き刺さる。正直今までのエヴォリオル絡みの出来事で一番精神的にキツい。しかしこうなってしまった以上きちんと説明はしなければならない。つまらないすれ違いなど起きないよう説明と説得はしなければ。

三人なら一定の理解は示してくれる筈だ。


「俺は間違いなく俺だよ。紛れもなく、みんなが知ってる七ヶ浜虚空蔵だ。

にしてもいつかはバレると思ってはいたけどよぉ、流石に早ぇな……でも一ヶ月もったなら妥当か」

「虚空蔵ちゃん……?」



「俺がスペクター…………世間で言うところの、未確認異形生命体第二号だ」



閲覧ありがとうございました。

新たな力・ブラストフォームの能力に戸惑い、エヴォリオルを逃がしてしまった虚空蔵くん。更に家族にスペクターであることもバレてしまった彼の運命はいかに…………


今回のプロフィールは楓さんです。


定禅寺 楓

年齢:17歳

誕生日4月12日

身長166cm

体重51kg

血液型B型

星座・牡羊座

好きな食べ物:

チーズケーキ、紅茶

嫌いな食べ物:

特にないけど大盛りすぎるものが苦手

趣味

特撮番組を観賞する、特撮グッズの収集、宇宙船の特写を見る

好きな花

モモの花

座右の銘

特撮バンザイ!

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