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第21話 『襲撃』

皆さんこんにちは、ライダー超信者です。

お待たせしました21話です。


仮面ライダーガヴ面白いですね~、すごく〝仮面ライダー〟してて現状ここ数年の作品で一番ハマってます。

推しゴチゾウはポッピングミとブルキャンです。


地下鉄構内 PM16:05


「虚空蔵くん大丈夫かなぁ」


街中に遊びに来ていた私達は、謎の怪人達が現れたことを受けて他の大勢の人達と共に地下鉄構内に避難していた。

怪人達はエヴォリオルではないらしく、さっきから上で戦っている虚空蔵くんの心配ばかりしている。


「虚空蔵なら大丈夫だよ、その内連絡来るって」

「そうそう、先輩なら直ぐ帰ってきますよ」

「心配なのは、わかります……信じて待ちましょう。虚空蔵くんなら、きっと大丈夫です」

「……みんなありがとう。そうだよね、虚空蔵くんなら大丈夫だよね」

「信じて待つのが私達の役目ってところね。

んーいいわねぇ、ヒーローの仲間って感じ」


虚空蔵くんならいつものように勝って、いつものように迎えに来てくれる。そう気持ちを切り替えた時、突然悲鳴が上がった。


「ん~~とぉ、どこだろなぁ?」


振り返ると手に刃物を持った金髪の男性が倒れている女の人を踏みつけて何かを探している。女の人の背中からは大量の血が流れていて、流石の私でも何があったか直ぐに分かってしまった。

構内は逃げ惑う人達の悲鳴と混乱で溢れ、階段に人が殺到する。しかし━━━


「おい!!なんだこれぇっ!!?」

「なんなんだよこれ!!なんで出口が塞がってるんだよ!?」

「何よこの壁っ!!?誰かっ、誰かぁっ!!」


「塞がってる……?」

「僕達、閉じ込められたってことですか!?」

「…………本当だ、出口が塞がってる……岩壁みたいなのが出入り口を塞いでるぞ、あれじゃ出れねぇ……!」


階段の近くにいた夢芽ちゃんは出入り口を覗き込み、顔を歪ませた。


「くそっ、どうなってんだよこれぇっ!!」

「誰か!!誰かぁ!!」

「あー無駄無駄、ここに繋がってる出入り口はぜーんぶ塞がれてるよ。さーてお楽しみだー♪」


男性は軽い口調で言うと持っていた刃物━━刃渡り二十cmほどのナイフで近くにいる人達を無差別に襲い始めた。

悲鳴はより多く、大きく響き、構内は見る見る内に凄惨極まりない光景に変わっていく。


「フゥ~~~~ッ!これだよこれっ!!

あ、そうだ。えーっと……美弥ちゃんって子どこだぁ?第二号がいるなら近くにいる筈って伽怜良が言ってたけどなぁ……」

(! あの人、私を探してる?それに伽怜良くんってどういうこと……?…………!)


「ここです!ここにいます!!」


咄嗟に声を張り上げ、大きく手を振る。男性はこちらに気付くと写真と私を見比べる。


「おぉいたっ!すっげぇホントにかわいー!」


男性がこっちに来るのを確認して急いで奥に向かって走り出した。みんなも何が何だか分からないままに付いてくる。


「おいおいおい美弥姉ぇ何してんだよ!!?」

「あの人、私を探してた!理由は分からないけどこのまま逃げれば他の人達からあの人を引き離せると思って!」

「そりゃそうだけど!!どうすんだよあの金髪男追って来てんぞ!?」

「夢芽ちゃん達は逃げて、私が目的ならみんなは見逃してもらえると思うからっ!」

「それが出来れば苦労しないっての!!」


「もぉ~~待ってよぉ~~」


逃げる私達を追ってくる男性はピクニックでもしているかのように楽しげで、言いようのない恐怖を感じた。捕まってしまえばどうなるか、考えないように走る。


「いやぁ楽しいなぁっ……と!」 


広い連絡通路に出ると、男性は手に持っていたナイフを投げつけてくる。ナイフは周囲の壁や柱を手当たり次第に斬りつけながら私達の周りを飛び回る。


「なんでコンクリの壁があんなスパスパ切れるんですかっ!?こんなのに斬られたらヤバいどころじゃ済みませんよ!!」

「しかもこの感じ、敢えて私達に当たらないようにしてるわね……斬ろうと思ったらいくらでも出来る状態なのにっ!」

「十中八九我々をなぶるつもりでござろう、正気ではござらんっ!!」

「虚空蔵くんが来てくれるまで頑張ろうっ!

虚空蔵くんが来てくれた絶対大丈夫だから!」


恐怖に負けないように、自分にもみんなにも大丈夫だと言い聞かせるように声を張った時、楽人くんの足にナイフが突き刺さった。


「がっ…………!!!?」

「楽人くんっ!!」

「いぃぃぃやっほぉぉぉう!!!!」


転倒した楽人くんはサッカーボールのように蹴り飛ばされ、足を止めてしまった私達を巻き込んで倒れる。


「……!楽人くん大丈夫!?」

「面目ない…………っ」

「くそっ!大の男を軽々蹴り飛ばすって普通じゃねーぞ!」

「鬼ごっこおしまーい。まぁまぁ楽しかったよ」


私達を見下ろしながらニヤニヤと笑う男性はそのまま楽人くんに刺さったナイフを勢いよく引き抜いた。


「楽人先輩!!」

「あなたは、あなたは誰なんですかっ?

私が目的なら私だけを狙ってください!!なんでこんなこと…………!」

「俺?俺春樹。なんでって言われてもな~~楽しいからとしか言いようがないよぉ」


あまりにも軽すぎる発言に耳を疑う。人を傷付けることが楽しい……?


「昔からそうなんだよねぇ、誰かに暴力を振るったりムカついた奴を殺すのが楽しくてしょうがないんだ!

ムカついた奴をぶっ殺すとスカッとしてすげー気持ちいいから殺す、おまけにストレスと自尊心にもいい。よくない?」

「……何、を…………」

「わかんないかー、まぁ理解してもらえないなんていつものことか!とりあえず美弥ちゃんは無傷で連れてこいって伽怜良から言われてるから他の子達は…………」


男性━━春樹さんがゾッとする笑みを浮かべた時、楽人くんが春樹さんに飛びかかって押し倒した。


「みんな逃げて!!早くっ!!」

「楽人くん!!」

「ねぇ~ちょっとキモいんだけどぉ?」

「…………みんな行きましょう!さぁ早くっ!」

「楓さんでもっ!」

「文句なら後で聞くから早く!!」


楓さんに促され、葛藤の末に楽人くんを置いて走り出す。


「うわぁ~薄情だなぁあの子達。キミ置いて逃げちゃったよ」

(みんな逃げるでござる……出来るだけ遠く、虚空蔵殿が間に合うように……!!)


━━━━━━━━━━━

━━━━━━━

━━━━━


「みんな無事でいろよ……!!」


俺は全力で地下鉄への入り口を目指す。間もなく入り口が見えてくるが、分厚い壁のような物で塞がれていた。それがあのエヴォリオルの仕業であることは直ぐに察し、壁を粉砕して飛び込む。


「なんだこりゃ……!?」


階段にはたくさんの人間が無残な状態で倒れており、生きている人間も皆酷く怯えている。構内に降り立つと更に酷い状況が広がっており、至る所に人が倒れ、血飛沫が飛び散っている地獄絵図が広がっていた。


「だっ、第二号だぁぁ!!」

「ひいぃぃぃっ」

「ば、化物っ……化物ぉ!!」

「やかましい!!!出口なら開けた、さっさと逃げろ邪魔だっ!!」


俺が叫ぶと生き残りは我先に外へ飛び出していった。みんなを探しながら奥へ奥へと進み、角を曲がって広い連絡通路に出る。

そこで見つけたのは、血溜まりの中に倒れる楽人だった。


「楽人っっっ!!!!」


急いで助け起こす。変身によって生物を遥かに超越した聴力が心音を捉えるが、その音はかなり弱い。

全身には無数の刺し傷があり、傷や出血量から相当な回数滅多刺しにされたことが分かる。


「虚空蔵、殿…………」

「楽人!」

「良かった……間に合ったでござるか……体を張ったかいがあると言うもの…………」

「喋んな!すぐ治す!」


手から治癒回復エネルギーを放ち、傷を覆って怪我を治していく。奈緒から教わった方法で小さな怪我を治したことはあるが、当然ながらここまで重傷の人間を治したことはなく、不安を覚えながらも必死に傷を治す。


「無茶しやがってバカ野郎……!」

「虚空蔵殿に……頼まれたでござるからな……」


『楽人、みんなに何かあった時は頼む』

『小生がでござるか?小生ただのしがないオタクでござるぞ、役に立てるでござるか?』

『戦えとか時間稼げなんて無茶言わねぇよ。何かあったらみんな連れて安全なとこまで逃げろ、そん時に先導してくれりゃいい。

…………お前が信用できるし信頼できるのはこの一年で分かってる。お前なら心頼できる、だから頼みたいんだ』

『…………友達からそこまで言われたら引き受けないわけにはいかないでざるなぁ。あいわかった、引き受けたでござる!』

『ありがとう、頼む』


「俺ぁ無茶しろって言った覚えはねぇぞ……!!」

「ははは……やむを得なかったでござるよ、少しは役に立てたでござろう……?」

「お前のおかげで間に合ったんだ、十分過ぎんだよバカ……!!」

「虚空蔵さん!!」


ここに来る途中で俺が呼んでいた奈緒が到着し、驚く奈緒に楽人を託す。


「楽人さん、もう大丈夫です。直ぐに治すので安心してください」

「かたじけない…………虚空蔵殿、小生達を襲った男は恐らく今回のエヴォリオルの仲間……人間とは思えぬ膂力でこざった……十分気をつけるでござる……」

「分かった、ありがとう」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「分かった、ありがとう」


そう言った次の瞬間、虚空蔵さんが消えた。

そして気付いた時には既に百m以上先を走っており、二回瞬きしたら姿が見えなくなってしまった。

消える直前、虚空蔵さんが小さく呟いた一言は脳に直接響いたかのように鮮明に聞こえた。



「舐めんじゃねぇぞクソが」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ねぇねぇ~もう鬼ごっこはいいでしょ~?

流石に飽きたよぉ」


へらへらしながら追ってくる金髪男から必死に逃げ続ける。しかしそろそろオレ以外は体力の限界であり、追い付かれるのも時間の問題だ。

そう思った次の瞬間、男はオレ達の頭上を軽々飛び越えて目の前に着地する。


「ビックリした?俺強化人間でさぁ、エヴォリオルじゃないけどめっちゃ強いんだ。あ、でもさっきの眼鏡の子はそれ関係なくショボかったなぁ」

「楽人……!」

「で、もういいでしょ。美弥ちゃんは回収しろって伽怜良に頼まれてるからしょーがないとして、他の子達は殺しちゃっていいよねぇ?

可愛い女の子をたくさんイジメられるなんてラッキーだなぁ」

「…………もう、もうやめてくださいっ!ひどいことをするなら私だけ、みんなには手を出さないでください!!」


美弥姉ぇが前に出てオレ達を庇う。男は特に何も感じてないような、興味なさそうな顔をしながらナイフで遊ぶ。


「別に俺的にはキミも殺したっていいんだけどね、伽怜良がうるさいんだよ。『美弥ちゃんは何があっても絶対に無傷で連れてこい、かすり傷一つでも付けたら殺す』って念入りに脅されててさぁ」

「……伽怜良くんとはどういう関係なんですか?今伽怜良くんは行方不明になってる筈です、なんであなたと一緒にいるんですか?」

「美弥ちゃんがそこ退いてくれるなら話すけど?」

「退きません」


美弥姉ぇが言い切ると金髪男はオレ目掛けてナイフを投げてきた。ナイフはオレの肩を掠め、鋭い痛みと共に出血する。


「いっ…………!!」

「夢芽ちゃん!!」

「ほらほらぁ、早く言うこと聞かないとお友達が傷だらけになっちゃうよぉ?」

「美弥姉ぇ大丈夫!こんなヤツの言うこと聞かなくていい!」


オレが叫ぶと空中でナイフが方向転換し、背中に突き刺さった。衝撃を感じた直後激痛が走り、倒れる。


「夢芽ちゃんっ!!」

「…………!……ぃっ……あ゛……!!」

「夢芽先輩!どうしよう、こういう時どうしたらいいんですかこれ!?」

「泉ちゃん落ち着いて……!」

「まず止血しないと!」


ナイフはひとりでに抜かれ、再びオレ達の周りを飛び回る。


「夢芽、ちゃん…………」

「余計なこと言うからそうなるんだよ。でもやっぱ自分より弱い奴いじめるのっていいよな~優越感あるわぁ」

「美弥姉ぇ気にすんな……着いてこうとか、馬鹿なこと考えるなよ……!」

「まーた刺されたいの~~?口は災いの元って知ってる?」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


瑠夏が鞄を手に殴りかかるがあしらわれ、小石か何かのように投げ飛ばされた。


「るーくん!!」

「無理だってば、いい加減理解しなよ」


男は呆れた顔をすると手元にナイフを呼び戻す。


「まぁいいや、誰から殺そっかなぁ~~♪

そこの陰キャっぽい女の子はキレイな声してそうだなぁ……♪でもキミもいいなぁ……♪」


男がニヤつきながら一歩踏み出したその時だった。

オレ達の後ろから超高速で飛んできたマンホールの蓋が男の顔面にブチ当たり、盛大にふっ飛ばした。


「みんなっっっ!!!!」


突然の出来事に理解が追い付かない中、聞き馴染んだ声に振り向くと虚空蔵が必死の形相で走ってきていた。


「やっと来てくれたか、ヒーローが…………」

「夢芽っ!夢芽っ!!大丈夫かおい!!!!」

「はっ、なーに泣きそうになってんだよ……一応死んじゃいないから大丈夫だって……」


泣きそうな顔でひたすら謝りながら虚空蔵は傷を治してくれた。

……何時ぶりだろうな、こいつがこんなに取り乱してんの。


「痛っっ……たいなぁもう!!誰だよせっかくのお楽しみなのにぃ!!邪魔すんなよぉ!!?」


多量の鼻血を吹き出しながら喚く男を、虚空蔵は鬼か悪魔のような人間とは思えない恐ろしい形相で睨み付ける。

オレの傷を治癒し終えるとゆっくりと立ち上がって男に近付いていく。


「━━━━楽人と夢芽をやったのは お前か」

「誰ぇ?知らないよそんなヤツ!」


男はナイフで虚空蔵の腹を刺そうとした。

しかし刺さらなかった。


「……!?は……!!?」


着ているシャツが裂けはしたものの、ナイフは全く刺さっていない。血も一滴すら出てない。

明らかな異常事態に男も焦った様子でナイフを突き立てようと足掻くがやはり虚空蔵の体には傷一つ付けることは出来ない。

咄嗟に男は虚空蔵を蹴り飛ばすがビクもせず、逆に反動で男の方が転ぶ始末だった。


「楽人と」


「夢芽を」


「やったのはテメェかって聞いてんだよ」


凄まじい剣幕に圧倒され引きつった笑みを浮かべた瞬間、男は虚空蔵に顎を蹴り上げられ天井に叩き付けられた。衝撃で地震が起きたように周囲が揺れる。

ボトリと落ちてきた男はなんとか立ち上がって逃げようとするが虚空蔵は直ぐに捕まえ、髪を掴むと無理矢理に視線を合わせる。


「楽人と!!夢芽を!!あんなにしたのはテメェかって聞いてンだ答えろぉッッッ!!!!!」

「だ、だがらっ、誰だよぞれ━━━」


男の言葉を遮るようにボディブローが炸裂し、その衝撃で男の背後にあったコンクリートのぶっとい柱が木っ端微塵に砕け散った。

白目をむいて倒れそうになった男の首根っこを掴んだ虚空蔵は、そのまま軽々と片手で持ち上げる。男は蹴ったり殴ったりと抵抗するが効果は全く無い。


「ここに来るまでにたくさんの人が死んでた。男も、女も、年寄りも、子供も…………幼稚園児になるかならないかくらいの小さい子までいた……」



「 お 前 だ な 」



その場にいる全員が死を連想するほどの怒りと殺意。脳と魂の奥底にある根源的かつ絶対的恐怖を力ずくで一気に引きずり出されたような感覚。

男は最早抵抗は無駄だと悟ったのかピタリと大人しくなった。


「なんでみんなを狙った」

「みっ、美弥ちゃんを連れてくためですっ……!」

「なんのためにだ!!」

「か、かっ、伽怜良から連れてこいって言われたんですっ!知ってますよねぇっ!?」


一瞬驚いた虚空蔵は美弥姉ぇと目を合わせ確認する。


「…………なんであの馬鹿が出てくんだ。あいつは今行方不明になってる……まさか、テメェらが拐ったのか」

「会ったのは偶々ですっ!偶々家を飛び出した伽怜良と会ったんです!俺達についてきたのも自分の意思ですほんとですぅっ!!」


虚空蔵は表情を一切変えないまま男を乱暴に放り捨て、オレ達の所まで戻ってくると情報交換や現状の把握等話し合いが始まる。

そんな中、男は静かに取り出した銃を虚空蔵に向けた。オレ達が気付いて叫ぶのとほぼ同時、乾いた銃声が響く。


「━━━流石にそれなりに衝撃は来るな。素手でやるもんじゃねぇか」


………………しかし、虚空蔵はあろうことか鬱陶しい羽虫を握り潰すかのように〝素手で〟弾丸を受け止めてしまい、開いた手から潰れた弾丸が落ちた。


「ひっ……!?」

「━━━━悪かったな、そんなに死にたきゃそう言えよ」

「じょ、冗談!冗談だって!た、助……「命乞いならテメェが殺した人達に言ったらどうだ」」


次の瞬間、虚空蔵のパンチが男の顔面に炸裂する。

硬い金属音のような、まるで大型トラック同士が衝突したかのような異音と共に男の顔面は陥没し、オレ達が逃げてきた通路をとんでもない速度でぶっ飛んでいった。そして勢いは全く衰えないまま遥か先の突き当たりの壁に激突し、赤い花が咲いた。恐らく勢いからして壁が無ければ更に飛んでいっただろう。

その現実離れした光景に全員唖然として言葉が出せなかった。


「…………みんなは早く脱出してくれ、東西地下自由通路は通れるようにしたからそこから出ろ」

「虚空蔵くんは?」

「まだ上で恵里が戦ってるから戻るよ。まぁ、あいつなら心配いらないだろうけどね」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ギ、イィ……イ……」


「どうした、自信満々だったクセにその程度か」


瓦礫の中でぶっ倒れているエヴォリオルを見下ろす。既にあの気色悪い結界は崩壊済みだ。

結界内で所狭しと蠢いていた腕や指には全てヤツの能力が付与されており、360度全方位から実質即死攻撃が飛んでくるというクソ空間だったが、こういう〝触れられたらアウト〟系の能力はエネルギーフィールドなりバリアーなりを常に張り続けて相手が直接触れないようにすれば恐れるに足りない。

まぁエネルギーを出しっぱにするから多少疲れるが、後は本体に触れられないようにすればいいだけ。実に容易い。この程度のエヴォリオルなら今までにも狩ってきた。


「こんな……ありえないっ……!!」

「見苦しい…………おん?」


「本部!!新たな未確認と第二号Bです!!」

「どちらも動くなっ!!」


ようやくお出ましになった警察に周囲を取り囲まれる。面倒くせぇとウンザリしていると、エヴォリオルは警官達に突っ込んでいった。

大方アートマンを作って時間稼ぎだろう、リヴォルトブレイカーを取り出して撃とうとした時、警官達を飛び越えて現れたスペクター・ストリームフォームのキックが炸裂した。


「こ……スペクター」

「悪い遅れた……つってもほぼ終わりか」


「ほ、本部!第二号も現れました!至急応援を!!」


「お帰り。どうだったんよ」

「……間に合ったとは言い難ぇ、人が大勢死んでた。

みんなは結果的に無事だったけど、夢芽と楽人もあと少し遅れりゃ死んでた……」

「あんま自分責めてもしゃーねーよ。悪いのは連中だ、まとめて殺して責任取らせりゃそれで済む」

「まずは━━━あいつをブッ潰す!!」


並び立ち、敵を睨む。まさかまた虚空蔵と並ぶ日が来るとは思わなかったな。


「春樹の野郎ぉ……使えねぇなゴミが……!!」

「テメェも今からそのゴミのところに逝くんだよクソカス」

「二対一だけど、まさか卑怯汚いなんて言わないよな?なぁ芸術家(アーティスト)


走り出すと同時にエヴォリオルの腕を吹き飛ばし、能力の発動を封じて徹底的に叩きのめす。既にウチがたっぷりぶちのめしてやったことに加え、単純なパワーならウチを超えるスペクターのコンビネーションに為す術なく一方的に追い詰められるエヴォリオル。

スペクターがアッパーカットで打ち上げてウチが強烈なボレーキックをぶち込み、倒れたところにリヴォルトブレイカーを連射して追い討ち、更にスペクターも釘バット……ブットブレイカーのフルスイングでエヴォリオルを吹き飛ばした。

人間如きに地面を転がされたのがよほど屈辱だったのか、エヴォリオルは半狂乱になって飛びかかってくる。


「行くぞ!」

「おう!」


オーブを押し込んで同時に飛ぶ。


「「ダブルキック!!!!」」


必殺キックがカウンターで炸裂し、頭から真っ逆さまに落ちたエヴォリオルは短い断末魔と共に爆散、砕け散った欠片が降り注ぐ。


「芸術的に散れたんだ━━本望だろ、アーティスト」

「よし撤収するよ。お巡りの相手なんかメンドっちくてやってらんないし」


そう促して虚空蔵と共にその場から撤退しようとした時だった。


「みんなっ!!」

「美弥姉ぇっ!!」


変身によって強化された聴力が美弥と夢芽、他の連中の悲鳴を捉えた。スペクターはストリームフォームになって一瞬の内に消え、ウチもクラッシャーフォームになって後を追う。

十秒もしない内に到着したが、その時には既に美弥の姿は無かった。


「虚空蔵!!恵里……!」

「全員無事か!?」

「先輩、美弥先輩が……!」

「まだエヴォリオルがいたんだ!いきなり現れて美弥姉ぇ連れてきやがった!」


夢芽曰く、虚空蔵に助けられた後は安全な場所まで避難して虚空蔵を待っていたが、突然新たなエヴォリオルが現れて美弥を連れ去ったらしい。


(さっきの芸術家気取りは囮で美弥を拐ったヤツが本命……?てかそもそも拐った理由はなんだ?

邪魔者(スペクター)の仲間なら拐うより殺した方がいいだろ、殺す以上に生かす意味がねぇ)


「虚空蔵さんすみません、私がいたのに……」

「気にすんな、奈緒は悪くねぇ。直ぐに追い付いて取り戻す……!!」


閲覧ありがとうございました。

強化人間の春樹、本当はもうちょっと強く書く予定だったんですけど書いていく内にそこまででもなくなってしまった…………本当はもっと強いです(身体能力は常人の十五倍くらい)

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