第20話 『騒乱』
皆さんこんにちは、ライダー超信者です。
皆さんのおかげで20話に到達しました、ありがとうございます。
現在アクセス約2300、ユニーク約960と正直「こんなにたくさんの人にこんなに見られてるの……?」となってます。本当にありがとうございます。
これからも何卒よろしくお願いいたします。
「はぁっ!!」
「やぁっ!!」
「撃てぇぇぇ!!!」
謹慎が解けた土曜日。
俺は百鬼夜行の如き様相を呈した街中で謎の怪人達と戦っていた。
「ア、アァ……ヴゥ……」
「ギギ……ギ……」
「ブペ、ブペ、ブペ…………」
エヴォリオルともエヴォフェイリャーとも違う謎の怪人達は超大群で人々に襲いかかり、俺とモカで片っ端から叩き潰していた。
後から駆け付けた警察も一般人を救出しながら怪人の迎撃に当たる。
「なんなんだこいつらっ、どっから出てきやがった……!」
「倒しても倒してもキリがない!それにこいつら、今までのやつらとは臭いが違う……」
「じゃあ少なくともエヴォリオルじゃねぇんだな……ワケわかんねぇっ!!」
知性や理性を感じないこの怪人達は数こそいるが動きは緩慢で鈍い。一体一体はさした脅威ではなく、倒すのは容易かった。更にはどういうわけか全く不明だが警察の銃撃が通用している。
本来なら奈緒が言っていたようにエヴォリオルやエヴォフェイリャーに人間の攻撃や兵器が通用することは絶対にあり得ないのだが、何故かこいつらには効いている。
もっとも、数十発単位でバカスカ撃たれてようやく倒せる耐久力が脅威であることに違いはない。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「嫌ぁぁぁ!!」
「! くそっ……」
『ジャンパー!』
『Jump Over Rise!
Stream Form!!』
ストリームフォームにフォームチェンジし、高速移動からのキックで一般人に襲いかかろうとしていた怪人を倒す。
「逃げろ!死ぬぞ!!」
「ひぃぃぃぃぃっっ」
一般人を逃がすと街路樹の枝をへし折ってストリームロッドに変化させ、怪人達を薙ぎ倒していく。モカも全身のブレードや爪を武器に、アクロバティックな動きで次々に怪人を切り裂く。
「ったく何がどうなってやがんだぁ!?こいつら未確認じゃねーのか!?」
「僕にも分かりません、ですが武器の類いが有効ならば我々でも対処が出来ます!未確認二号と十三号はこの際放っておきましょう!」
刃さんと氷川さんは他の警察官と共に弾幕で怪人達を寄せ付けない戦法を取り、上手く立ち回っている。突破して襲いかかる怪人は俺とモカが蹴散らし、その間に警察は体勢を立て直して救助も平行して行う。
奇しくも警察と共同戦線を張る形になっていた。
『ストリームインパクト!!』
超高速移動しながらモカや警察の合間をすり抜け、連続キックで怪人達を次々に撃破する。
モカもそれに続き高速回転によって斬撃の竜巻となり、怪人達をまとめて貫いた。
「だいぶ減ったね。何とかなりそうだ」
「気ぃ抜くなよ、雑魚でも足元掬われんぞ」
「わかった━━━ハァ!!」
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「ただいまー」
「ただいま」
「お帰り!二人とも大丈夫だった!?」
「虚空蔵ちゃんもモカちゃんも怪我はない?」
怪人の大群を全て倒した俺達は帰宅。心配しながら三人が出迎えてくれた。
「大丈夫、大した敵じゃなかった。つうかエヴォリオルでもなかった」
「違うの?」
「警察の銃が効いてた、エヴォリオルなら有り得ない。なぁ奈緒」
「間違いありません、元の世界でも散々見ましたから。でもどういうことだ?エヴォリオルに人間が作った武器兵器如きが効くわけがないのに…………」
奈緒は考え込む。
「でも、にぃにとモカが無事なら良かった」
「まぁそうねー。二人が無事なら私達的にはオールオッケーだし」
「二人ともお疲れ様。ゆっくり休んでね」
「うん、昼ご飯の時間になったら下りてくるよ」
自室に戻って布団に寝転がる。疲れた。
「数ばっかいやがって……ったく……」
「お疲れ様です。しかしその怪人はなんなんですかね……?私も思い当たる節がありません」
「お前が分からないならマジでなんなんだよあいつら……恵里の野郎もこねぇし」
「…………本人も悩んでるんでしょう。待つしかありませんよ」
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「あーあ、やられちゃったかぁ。
ま、〝アートマン〟じゃ無理だよなぁ~~」
「おい、大丈夫なんだろうな」
「大丈夫大丈夫。そう睨むなよ伽怜良~」
「カラー、俺も楽しめるんだよねぇ?」
「大丈夫だって、俺達のゲームはまだまだ始まったばかりなんだから。
楽しく余裕を持って行こう。エヴォリオルらしく、ね」
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「確かに受け取った。内容も問題ないし、これで謹慎は完全に解けたものとしよう」
休み明けの月曜日。
謝罪と反省文の提出のために学園長室を訪れていた。反省文は無事に受け取ってもらえ、頭を深く下げる。
「ありがとうございます。大変ご迷惑をおかけしました」
「いや、七ヶ浜君も大変だったね」
「いえ……もうこういったことはないようにします。本当にすいませんでした」
「確かに、暴力沙汰はこれっきりにしてくれると私も助かるかな。きみがいなくなったら娘が悲しむ」
「娘さんが、ですか?」
正直あまり想像出来ない。
そりゃあ残念がってはくれるだろうが…………
「きみ達と出会ってからというもの、随分と楽しそうにしていてね。よく家でも話してくれるよ。
七ヶ浜君も知っているそうだが、あの子は生まれつき病弱でね。小学校も中学校も半分かそこらしか通えていない。
だからあまり付き合いの深い友達も作れなかったんだ。友達の家に遊びに行くというのもどれほどあったか…………」
「…………………………………………」
「だからこそ、七ヶ浜君達と出会ってから毎日とても楽しそうに過ごしているあの子の姿は何より喜ばしい。しばしばお家にもお邪魔していると聞いたよ。
今までのことを思うと考えられないことだ、だから個人的にお礼を言いたかった。
ありがとう、娘と友達になってくれて」
学園長は穏やかな笑みを浮かべる。
子供の成長を喜ぶ父親の笑み、というのだろうか。
「僕の方こそ楓さんにはお世話になっています。
ただ、僕のような人間が楓さんと一緒にいてもいいのでしょうか。僕といることで余計な風評被害やイメージダウンになる可能性は十分あると思いますが……」
「楓は自分の意思できみといることを選んだ。ならば私が口を挟むことはない、その心配が出来る人間なら大丈夫だ。
良ければ、今後も娘と仲良くしてあげてほしい」
「は、はいっ」
頭を下げ、礼を言って学園長室を後にした。
既に一時間目が始まっている教室に戻り、教師に事情を説明して席に着く。
「虚空蔵くん大丈夫だった?」
「問題なし。なんならこれからも娘と仲良くしてほしいって言われたよ」
「そっかそっか、良かった~」
その後は真面目に授業を受け、みんなと昼飯を食べ、何事もなく平和に過ごしたのだった。
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杜都警察署
「…………結局一昨日の怪物達は何だったんでしょうか」
氷川の言葉に刃野は眉間をポリポリと搔く。
「銃が効いたってことは未確認ではないんだろうな、今はそれしか言えん。椿の解剖が終わるまではなんともなぁ……」
刃野はそう言って茶をすする。
謎の怪人事件から二日経った現在、警察は回収した怪物達の死体を解剖に回して正体の究明を急いでいた。今はその結果を待っているところである。
「姿の特徴も今までの未確認とは異なっていました。それに、未確認のような知性、言語能力もなかった。明らかに未確認とは違うナニカです」
「まぁその辺は椿が解明してくれるだろうよ」
「刃野さん氷川さん、椿さんがお呼びです!」
「噂をすれば、か。潤行くぞ」
「はいっ!」
二人が案内されたのは回収された怪物達の死体が納められた死体安置所。中に入ると白衣を着た男が一人。
椿薫、東北大学病院に勤める医師であり、エヴォリオル関連の事件で解剖を任されている。刃野とは同級生の間柄だ。
「来たか。忙しいとこ悪いな」
「いいよ。それより何か分かったのか」
「まぁな、俺も正直信じられないでいるが…………とりあえず聞いてくれ」
椿は一呼吸置いてから話し始めた。
「単刀直入に結論から言うと、この化け物共の正体は〝人間〟だ。
かなり変形変質してはいるがあちこちに面影が残っている。血液から出たDNAも人間と同じだった。
…………つまりこいつらは、何らかの方法でこんな姿に変えられてしまった人間ということになる」
衝撃的な事実に絶句し固まる二人。怪物達の姿は禍々しく、とても元が人間だったとは思えない。
それこそ人型であることしか人間との共通点など見当たらないのだ。
「これが人間…………冗談だろ……」
「残念だが本当だ。回収された死体は全部見たが例外は無かった。
未確認絡みなのは間違いないだろうが、如何せん奴らは死体が欠片も残らん。解剖して関連性や違いを判別することが出来ない。
銃が効いて、こうやって死体が残る以上異なる存在なのは違いないんだろうが…………」
「じゃあ僕達は、人を殺したんですか……?」
「…………暴れていた時にどれだけ自我や意識があったのかは分からん、脳にも変異変質した痕があったからな。
これほど姿形を大きく変えられたら普通はショック死するが、そうでなくとも姿を変えられた時点で既に人間としては死んでしまったと考えた方がいい。あんまり気に病むな」
そう言って、椿は氷川の肩を優しく叩いた。
「ちくしょうふざけやがって……」
「……!刃野さん、まさかここ二、三週間行方不明者が相次いでいたのって……!」
「! おいおい嘘だろ…………!?」
氷川の言う通り、ここ二週間ほど日本の各地で行方不明者が急増しており、その数は二百人近くになる。
当初から未確認の仕業だと思われていたが、今までと違い宮城県以外でも報告があったこと、遺体が見つからないことから捜査が難航していた。このタイミングでこの怪物達が現れたのは、偶然ではないと二人は察した。
その時、一人の警官が駆け込んでくる。
「刃野さん氷川さん!!またあの怪物達が出ました!!既に第二号が交戦中ですっ!!」
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杜都町 PM16:05
再び街中に現れた怪人達を蹴散らす俺。
楓さんに引っ張られてみんなと共に街中に来ていたのだが、怪人共のせいでおじゃんになってしまった。今は全員離れた所に避難している。
(前ほどじゃねぇが多いな……)
一撃一殺で葬っていき、スペクターキックで吹き飛ばした怪人で周囲の怪人達を巻き込んで纏めて撃破する。
そうして十数匹ほどにまで数を減らした時、突如頭上から殺気を感じ飛び退く。次の瞬間空から降ってきたそれは、何本もの手が寄り集まって人型になったような異形の怪人。
「エヴォリオルか……!」
「ははははっ!!」
邪悪な笑い声を上げながら襲い掛かってくるエヴォリオル。突き出された腕を払うと肘に逆関節のパンチを当て、二連続ボディブローから肘鉄を肋骨に叩き込み、ストレートで殴り飛ばした。
ぶっ飛んだエヴォリオルは歩道橋にぶち当たって落下、瓦礫の中に倒れる。
「うわぁ、思っていたより強いや☆あ、俺はカラー。アートエヴォリオルのガラッッ」
呑気にくっちゃべってるエヴォリオルの顎を蹴り上げ、体が浮き上がったところへ首をねじ切らんばかりの後ろ回し蹴りをこめかみ目掛けて放った。
「悪ぃなぁ。余裕ぶっこいてたからつい」
「全く野蛮なサルだなぁ…………俺は人呼んで至高の芸術家カラー。俺が作ったアートマン達は気に入ってもらえたかなぁ?」
「アートマン…………やっぱりこいつらエヴォリオルじゃなかったのか」
「こいつらは俺が人間を使って作り上げた芸術、作品達だ。素敵だろう?」
「人間を使ってだぁ?どういう意味だ」
意味深な言葉に引っ掛かる。エヴォリオルが醜悪に笑ったような気がした。
「俺は有機物無機物を問わず、この手で触れたあらゆるものを形状、質量を無視し思うがままに変形変質させることが出来る。アートマンはこの神の手で俺が人間共を芸術的に作り変えた存在さ。
魔皇石の力で変えてはいるが力そのものを有しているわけじゃない、だからエヴォリオルでもエヴォフェイリャーでもない。人間如きの武器が通用したのもそういう理由ってわけ」
アートマンの正体……『もしかしたら』程度には考えてはいたが、本当に合ってるとはな…………
『残念ですが、あの化物の正体が人間だったとして元に戻す方法はありません。
…………辛いでしょうが、一思いに楽にしてあげてください』
一昨日の戦いの後に奈緒から聞いた言葉を思い出した。これ以上、こんなカスに人としての尊厳を踏みにじらせるわけにはいかない。
「ここ最近、あちこちで行方不明者が出ていたのはてめぇの仕業か」
「もちろん。ほら人間ってマジで掃いて捨てるほどいるじゃん?アートの材料としてはいくらでも調達出来るから便利なんだよね~。
ゴミを有効活用してるだけだよぉ~~、リサイクルリサイクルゥ♪」
「てめぇ…………」
「あ、ちなみに二日前に放ったアートマンはここより前に行った世界でストックしたヤツの方が多かったんだけど、あれはあれで良かった「分かったもういい━━━死ね」
地面を蹴り、ブットブレイカーをベルトから引き抜いて殴り掛かる。
「なんだよお怒りかぁぁ~~!?随分と青臭ぇなスペクター!!」
エヴォリオルは攻撃を躱しながら俺に触れようと手を伸ばし、俺もそれを躱しながらブットブレイカーを振り回し打撃を叩き込む。
距離を取ったエヴォリオルが右手で地面、左手で電柱に触れるとアスファルトと電柱が鋭く変化して襲い掛かってくる。
「邪魔くせぇっっ!!」
一振りで粉砕、一気に距離を詰める。
「わざわざ間合いに入ってくれてありがとよぉ!!」
突き出されたエヴォリオルの手がブットブレイカーに触れようとした瞬間、ヘッド部分のトゲを伸ばして串刺しにする。
「ガッ…………!?」
「ありがとよ、引っかかりやすい馬鹿で」
滅多打ちからの頭部フルスイング、立て直す暇を与えず徹底的に殴り倒す。
更に追撃しようとした時、エヴォリオルはどこからともなくアートマンを召喚、けしかけてきた。
「正体が人間だとバラせば躊躇する、か?
甘ぇんだよボケ!!!」
「勿論それだけじゃないさ…………ほら」
パチン、とエヴォリオルが指が鳴らした。
それを合図にアートマン達に異変が起こる。
「だず、げて……助ゲテ……」
「痛゛ぃ……痛゛いぃぃぃぃぃ」
「怖いヨォォ……苦シいヨォォ……」
「お父ざぁん……お母゛ぁざぁぁん」
それまでゾンビ同然だったアートマン達が突如一斉に言葉を口にし始めた。苦悶と苦痛、絶望に満ちた声を上げて苦しむ地獄の光景に戸惑う俺を見てエヴォリオルは得意げに話し始める。
「素敵なオルゴールだろ?素材の良さを活かして敢えて自我は残しておいたんだ。
人間の悲鳴ってインスピレーションが湧いてくるから好きなんだよなぁ~~~~!?」
「て、めぇっ……!!!!」
「スペクター、お前に今のアートマンを殺せるかぁ?今のそいつらには人間だった頃の意識がある、見た目はともかく中身は間違いなく人間だぜ?
甘ぇってんなら、そいつらぶっ殺してみせろやスペクタァァァァァァハハハハハ!!!!」
ゲラゲラと哄笑するエヴォリオル。
纏わりついてくるアートマン達を押し退けて進もうとするがアートマンは何度も何度も縋ってくる。
握った拳を振り上げるが、アートマン達の目を見ると振り下ろすことが出来なかった。
涙を浮かべた目は、間違いなく人間のものだった。
「クソッ……!」
「おいおい興ざめだなぁ~~ほんの少し人間の部分を見せただけでこうも容易く手が止まるなんて…………脆弱な心、スペクターといっても所詮人間か。つまんねぇな」
「ブロロロロロロロ!!」
「グ、ギギギギギ……!」
エヴォリオルが合図を出すと、残りのアートマン達が一斉に襲い掛かってくる。
仕方なく乱暴に縋るアートマン達をはね飛ばして迎撃しようとしたその時、ファントムの必殺キックがアートマンを薙ぎ払った。
「恵里……!」
「話は後っ!!!お前は群がってるそいつら片付けろ!」
ファントムの言う通り、アートマン達は救いを求めるかのように尚も縋ってくる。
まずはこいつらを何とかしねぇと…………!
「へぇ、お前がファントムか。お前もゲームのターゲットになってるんだよな、高得点キャラが二体も来てくれるなんてツイてるなぁ」
「いいや、むしろアンラッキーだよお前」
「恵里!そいつの手ぇ触れんなよ!!」
「分かってるよ。お前が戦ってるの見てたんだ、能力は大体把握してる」
それだけ言うとファントムはエヴォリオルを連れて場所を移した。残された俺はアートマンを振り払い、パンチ、キックで蹴散らす。
「ギッ、イィィィィ…………!!」
「痛゛ァァァァイィィィ!!!」
「ヒ、ヒィィィィ」
「………………!」
苦しむアートマン達に手が止まった。その隙に後ろから飛びかかられ、押し倒される。
「ちっ…………!」
拘束から逃れようとした時、アートマンの目から涙が零れた。
「コロシテ……オ願い、コロシテ……」
「━━━━━━━━━━」
「苦シイ、痛イ、怖ィ……コロシテ……お願い……」
「俺モ……俺モ……」
「楽ニさせテ……救ッて……」
「お父さ、お母さ、ごメんネ…………」
アートマン達は静かに涙を流しながら俺の周りに集まってくる。
まるで死の救済を待つかのように。
「━━━━━━━ごめんなさい」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「なぁ、お前はどっちだと思う!?」
戦いの最中、エヴォリオルの唐突で意味の分からない問いを投げかけてくる。
「主語も無しに質問してんじゃねーよバァカ。
テスト0点だマヌケ」
「スペクターのことだよ!あいつがアートマン達を殺せると思うかって話さ!!
アートマンの〝人間らしさ〟を少し見せただけで腑抜けて情けねぇよなぁ、ほんと傑作だよ。そう思うだろ?」
ケラケラ笑うエヴォリオルを鼻で笑う。
「あ、そう。その腑抜けに散々叩きのめされてた奴が何言ったところで負け惜しみにしか聞こえないけど?
つーかお前、その人間性とやらを盾にしなきゃあのままやられてたんじゃないの?悔しいの見え見えだぞ、傷口ペロペロでもしとけよ」
「…………オーケー、そんだけデカい口が叩けるなら楽しめそうだ」
「楽しめるよ。泣くくらいな」
動いたのはほぼ同時。エヴォリオルの手を躱しつつ上段蹴りを繰り出し、受け止められそうになった瞬間軌道を変えて右足を砕く。
体勢の崩れたところにマシンガンの如く連続蹴りを食らわせ、脳天にかかと落としをぶちかまして地面に叩き付けた。その衝撃で十五mほどのクレーターが発生し周囲が大きく揺れる。
「…………ちっ」
突如異形に変形し始めた右足。直ぐに膝から下を切断して逃れ、欠損も再生させる。
「おいおい…………この俺がアートにしてやったんだぞ、もっと喜べって……」
「知るか。乙女の足持ってたんだ、高く付くぞ」
「審美眼のない猿には分かんないかぁ~…………芸術を見る眼のない奴って可哀想だよなぁ、死んだ方がいいよな、俺の芸術を理解出来ない奴なんか存在する価値もないしなぁ」
「結局本音はそれか。くっだら……」
その時、ウチは見た。
一瞬の内にエヴォリオルの後ろに現れたスペクターが、拳を振り抜く瞬間を。
「━━━━━━━━━━!!!」
エヴォリオルが気付いた時には既に遅く、スペクターの拳が顎を思いっ切りブチ抜いた。
反撃も能力の発動も許さない苛烈な連撃は一発命中する度に周囲の空間を震わせ、エヴォリオルはさながら踊り狂っているかのように一方的に殴られ続ける。
(あの趣味の悪い化物は…………聞くのは野暮か。
……しかしまぁ、あんだけブチギレてても正確に弱点狙ってくるの、相手からすりゃ相当嫌だろうな)
スペクターの怒涛のラッシュはただ怒りに任せて我武者羅に殴っているのではなく、怒りによって更なる破壊力を引き出しつつも冷静さを失わず、顎、人中、溝尾等の急所を的確に突いている。
もっと分かりやすく言えば、殴られたくない所を正確に殴っている。
ウチと戦った時も戦車砲かミサイルみてーな威力のパンチではあったが、それを遥かに上回る破壊力の打撃をラッシュで食らいながら急所もブチ抜かれる……想像しただけで嫌だな。
「━━━━━━━━━━━」
エヴォリオルの頭を鷲掴みにして地面に叩き付ける。そこから足を踏みつけて頭を持ち上げ、弓のようにしならせると折るように腰を踏み砕いた。絶叫するエヴォリオルを何度も、何度も、地面に染み込ませるかのように踏みつける。
と、不意に地面が盛り上がり、巨体な拳形となって突き上げるようにスペクターを吹き飛ばす。更に鋭く尖った槍のように変化し、スペクターを貫く。
「虚空蔵!!」
「いちいちしゃらくせぇんだよ……!!」
力ずくで粉砕したスペクターは着地すると直ぐに後退し、腹に刺さった槍を乱暴に引き抜いて穴を塞ぐ。
「大丈夫か!」
「問題ねぇ腹に穴空いたぐれぇだ。もう治ったよ」
「なら大丈夫だな。あいつぶっ殺すぞ」
「当然」
ボロボロになりながらも立ち上がったエヴォリオルは大量の槍を放つ。
それぞれスピード形態にフォームチェンジしてすり抜け、一気に接近するとパワー形態にチェンジ。エヴォリオルは両腕をブレード状に変形させてこちらを迎え撃ち、切り結ぶ。
「アートマン達は殺してきたのかぁ!?ひっでぇなぁ哀れな犠牲者様なんだろ!!?」
「下衆野郎がどの口で……」
「てめぇに言うことは、もう何もねぇ。
お前はもう死ぬ、ここで死ぬ、俺が必ず殺す。
ここで無様にくたばる奴に言うことなんか何もねぇ。分かったか芸術家気取りのド下手くそが」
「あ゛?」
スペクターの言葉に、今までへらへらしていたエヴォリオルの雰囲気が一変した。
「芸術の何たるかも知らない暗愚迷妄の猿が…………俺の芸術を貶すだと…………」
「 身 の 程 を 知 れ !!!!! 」
激怒したエヴォリオルに強引にウチらを弾き飛ばし、両腕を針の如く鋭い無数の触手を変えて放ってきた。
周囲の物を無差別に刺し貫きながら迫ってくる触手を躱すために走り出す…………が、スペクターは違った。そのまま真っ直ぐに突っ込み、真っ正直から受けたのだ。
「ゥゥア゛ア゛ア゛ァァァァァァァァァァァ!!!」
「アっのバカ何やって…………!!?」
全身を切り刻まれ、貫かれるスペクター。
しかし突撃するスピードは全く落ちず、雄叫びを上げながらエヴォリオルに突っ込んでいく。
「異常者め……!!……!??」
触手はスペクターの体に刺さったまま抜けず、エヴォリオルは身動きを封じられる。
まさかこれが狙いか……?にしたって体張りすぎだろうにっ……!
「虚空蔵もうちょいキバれっ!!!」
通常形態に戻って跳び、必殺キックをぶちかました。
両腕が千切れたエヴォリオルは乗り捨てられた車やバスをぶち抜きながら吹き飛んでいく。
(ちっ……!残ってた触手でガードしやがったなあのカス…………!)
蹴る瞬間、僅かに残っていた触手を集めてガードされてしまった。恐らくまだ死んではいない。
……尤も、体力ゲージが0になるところをギリ1残ったようなもんではあるけど。
それよりも今は━━━━━━━
「虚空蔵大丈夫か!」
「大丈夫だ、問題ねぇよ」
「大有りだ馬鹿!無茶すんな!」
「デストラクションフォームだからやったんだ。他のフォームじゃ出来ねぇしやってねぇ」
確かに紫の堅牢な装甲〝には〟傷は付いていないが、装甲のない場所は大小無数の裂傷に穴だらけの血まみれ状態になっている。おまけに体に刺さりっぱなしの触手を強引にまとめて引っこ抜いてしまった。
「それよりアイツは?」
「まだ生きてる、瀕死だろうけどな。
早いとこトドメ刺す…………」
「神の手 」
突如黒く禍々しい空間が広がっていき、辺り一帯を包む込む。
「「!!!」」
無数の手や腕、指が蠢く不気味でグロテスクな空間に警戒すると、蠢く腕と指の間からヤツが現れた。
「……趣味の悪ぃ空間だと思ったら案の定テメェか」
「猿に俺の芸術は理解できないか。嘆かわしいね。
でも、俺の凄さは理解できただろう?」
「凄さだぁ?寝言語ってんじゃねぇぞ三流未満が」
「……………………あぁ~~そうだ、スペクターに一つ言い忘れていたっけかなぁ」
エヴォリオルは小馬鹿にするようなわざとらしい口調で言う。その顔には、醜悪で腹立たしい笑みを浮かべているように見えた。
「お、な、か、ま━━側に着いてなくて大丈夫かぁ?きっと今頃大変だぞぉ?」
「恵里っっ!!!!」
「行けっ!!」
『Set&Charge Ready For delete!』
必殺の破壊エネルギー弾、bala.nadeを放つ。スペクターもそれに合わせてスペクターパンチを放ち、結界に穴を空けた。
穴は直ぐに塞がってしまうが何とかスペクターは脱出成功。美弥達を助けに向かった。
「……まさか神の手で作った結界を破るとはな。
だが直ぐに後悔する。スペクターはどうせ間に合わない、お前もここで死ぬ、せいぜい屈辱にまみれろ」
「勝手に決めてんじゃねーよ。ウチの運命もお前の運命も、決めるのはウチだ。お前じゃない」
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━━━━━━━
━━━━━
「虚空蔵くん大丈夫かなぁ…………」
駅前まで遊びに来ていた私たちは、他の人達と一緒に地下鉄構内に避難していた。
今頃虚空蔵くんはスペクターになって謎の怪人と戦っている筈……何事もないといいんだけど。
「虚空蔵なら大丈夫だよ、その内連絡来るって」
「そうそう、先輩なら直ぐ帰ってきますよ」
「心配なのは、わかります……信じて待ちましょう。虚空蔵くんなら、きっと大丈夫です」
私たちは知らなかった。
「さーて美弥ちゃんって子はどこかなぁ~~」
エヴォリオルとは違う脅威が迫っていることを。
閲覧ありがとうございました。
因みに「モカが13号って、警察に見つからないまま倒されたヤツも何体かいるし数合わなくない?」と思った方もいるかもしれませんが、物語の合間合間に何体かエヴォリオルが現れていてそれがカウントされています。クウガ方式ですね。
そういえば、ヤフーで蒼黒って入れると予想で「蒼黒のspecter」って出てくる(しかも一番上に)のを割りと最近知りました……ナンデ?




