第16話 『距離』
みなさんこんにちは、ライダー超信者です。
pixivに立ち絵メーカーで作ったメインキャラ達のイメージ画を上げたので、もし良ければどうぞ!
https://www.pixiv.net/artworks/113485784
3/23 ×スマッシャーフォーム→○クラッシャーフォームに修正しました。何故間違えるんだ…………
「おぉぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉあぁっっ!!!」
「ぬぅぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅあぁっっ!!!」
刃がかち合い、衝撃波が周囲を薙ぎ払う。周囲の木や電柱、コンクリートは衝撃で少しずつ削り取られるように破壊されていく。斬撃の応酬はあっという間に数十を超えて百に届きそうだ。
鍔迫り合いの瞬間力ずくで押し切るとファントムはおよそ十mほど滑るように吹っ飛ぶが、体勢は崩さず直ぐに反撃に転じ、鋭い音と火花が何度も何度も生まれては消えていった。
「なんつぅ迫力だよ…………」
「遠慮なく戦うために人通りがないこの場所を選んだんでしょうね。仙台も街中外れたら人気のない場所なんていくらでもありますから」
「虚空蔵くん…………恵里ちゃん………………」
一進一退、互角の勝負が続く。未だに俺もファントムも有効な一手を打てておらず埒が明かない。いっそ仕掛けるのも手かと思った時、ファントムが一足早く動いた。
「付いてこれんなら付いてこい」
挑発の言葉を残して高速で俺の周りを移動し始め、速度を落とすことなく突っ込んでくるとリヴォルトブレイカーでの斬撃を四方八方から浴びせてくる。
「やっぱ硬いなぁ!!」
イラついた時に思わず出てくるような笑みを浮かべるファントム。攻撃の手は苛烈で緩まない。
(目で追えないほどじゃねぇな、速さに慣れさえすればカウンターも回避も可能…………なんならストリームフォームだったら速さも機動力も完全に上回れるな)
デストラクションフォームの頑強な装甲で矢継ぎ早に繰り出される攻撃を受けながら冷静に判断する。やっぱカウンターで決めるのが手っ取り早いか。
攻撃をひたすら受けながらチャンスを待つ。
「ーーーーーーーッッ!!」
背後から飛んできていたファントムの気配に合わせ、振り向き様にDソードを逆袈裟斬りに放った。
刃はファントム・クラッシャーフォームの装甲を深々と斬り裂き、吹き出した鮮血が顔に飛び散る。
「お姉ちゃんっ!!」
「マ、ジかよっ…………!!」
ファントムは吹っ飛んでいき倒れる。達成感も何もない空虚な勝利だった。
「安心しろ死にゃあしねぇ。間合いはある程度調整した」
かかった血を拭いながら倒れているファントムに歩み寄る。起こそうと手を差し出した時、リヴォルトブレイカーが押し当てるように腹に当てられた。
「…………………………もう止めろ恵里、勝負は着いた。これ以上は無意味だろ」
俺を見ているのかいないのか、話を聞いているのかいないのか、ファントムは一言だけ呟いた。
「解放炸裂」
ゾッとする寒気が背中を走り、腰を落としてリヴォルトブレイカーの先端を腹から装甲にずらした瞬間、凄まじい衝撃にぶち抜かれて吹き飛んだ。
何が起きたか分からないままDソードを地面に突き刺して踏ん張り、五十mほど飛んでようやく止まった。
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これがクラッシャーフォームの能力、解放炸裂。
クラッシャーフォーム及びクラッシャーフォームが使用している武器に受けた攻撃や衝撃を破壊エネルギーに変換し蓄積、それを任意のタイミングで強烈な一撃として解き放つ。
特性上ある程度の〝溜め〟が必要で連発も出来ないがその分威力は強烈。当然戦闘が激しくなればなるほどチャージ量も増えていき、特に自分が直接受けたダメージは変換率が高い。
重装甲で高い耐性を持つデストラクションフォームにも有効だろう…………しかし。
「咄嗟にずらして装甲で受けやがった…………!!
普通あの間合いじゃ間に合わないだろなんで間に合うんだよ……!」
ダメージが0というわけではない。今放ったのはウチ史上最高威力の解放炸裂だ、現にスペクターは口から血を吐いている。程度はともかく、内臓にまでダメージがいってるのは間違いない。
(予定よりダメージが遥かに少ねぇ!これでダウンさせて美弥達んところに行くはずだったのに……!)
「どうしたぁ!これで終わりかぁ!!」
「………………なわけないだろこの野郎……!」
急いで傷を治癒して立ち上がる。なんで内臓にダメージあって叫べるんだよこいつ……
「お前さぁ、空気読んで喰らっとけよ……なんで倒れないかなぁ」
「言っただろうが、手出しはさせねぇ。どうしても行きたいなら俺を殺してから…………」
「あ?なんだよ」
黙って視線を逸らしたと思った次の瞬間、スペクターは逆手に構えた剣をウチの背後目掛けて思い切りぶん投げた。
剣はウチの斜め後方に生えた木々を粉砕し、そのまま更に先のコンクリートの壁すらブチ抜いて消えていった。
「お前何して……」
「エヴォリオルのアランとかいう金髪の奴がいた。こっち見てやがったから咄嗟にな……」
振り返るが当然そこには何もない。ただ破壊の跡があるだけだ。
「………………はぁ~~~あ、なんかどっと疲れたわ。
しゃーないから今日は止めだ止め」
疲れた原因、八割方精神的疲労だし虚空蔵のせいだけどな。
愛機『ミラージュバッシャー』を呼び、隠れていた瞳をサイドカーに乗せてハンドルを握る。
「おいこら、何逃げようとしてんだお前」
「言ったしょ疲れたの。じゃあね」
「勝手ほざくな……………………恵里!!」
ターンして走り出そうとした時、スペクターに呼び止められる。変身は解かれていた。
「生きててよかった」
虚空蔵はそれだけ、温もりのある一言だけ告げた。
形容しがたい気持ちを抱いたウチは、逃げるようにその場を走り去ったのだった。
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「…………ったくバカタレが、もうちょい相談とかあるだろうが……痛ぇなクソが」
「主っ!」
「虚空蔵さん!」
四人が駆け寄ってくる。心配そうな顔をする四人に軽く手を振った。
「虚空蔵くん大丈夫っ?さっきの血……」
「大丈夫、内臓がやられてたっぽいけどもう治った」
「スペクターの力が凄いのがお前が凄いのか分かんないな…………お前人間だよな」
「さぁな」
「よかった……ひとまず無事なら安心だね」
モカの頭を、夢芽の頬を撫でながら一言返してその場を後にする。美弥ちゃんと夢芽も来た時と同じ方法で帰っていった。
「スペクター…………まさか感づくとはな。人間の分際で忌々しい。まぁいい、データは取れた。オーバーロードに利用させてもらうぞ」
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「それじゃあ虚空蔵ちゃん、お買い物行ってくるね」
「うん。気をつけてね」
「行ってきー。ちゃんと大人しくしときなよー」
「行ってきます。ゆっくり休んでね」
「三人はボクが守るから、主は安心して休んでね」
昨日の戦いの疲労からか俺は体調を崩した。体調を崩すこと自体はしばしばあるため、なんとなく嫌な予感はしていたが案の定だ。
お姉ちゃん達を見送り、自室に戻って布団に入った時LINEに通知が来る。相手は夢芽だった。
『今から美弥姉ぇとそっち行っていいか?
お前具合悪いんだろ?面倒見てやるよ』
『ありがとう』
返信するが早いか窓がノックされ、返事をすると二人が部屋に入ってきた。
「虚空蔵くんおはよー。具合はどう?」
「よぉ、いつも通りかぁ?」
「あぁいつも通りだ。昨日の一件で疲れたせいだな。
あの野郎次会ったらはっ倒す」
「………………わがままだけど、また恵里ちゃんと一緒にいられるようになりたいね」
美弥ちゃんの言葉に俺も夢芽も頷く。こうなりゃ意地でもこっちに引っ張り戻してやる。
「…………で、お前熱とかないのか?」
「ひとまずはな。シンプルに体調不良だ」
「なら良かった。お前すぐ熱出すもんな」
「平熱三十五度五分の人間舐めんなよ、気温の変化とかモロに受けるからな」
「季節の変わり目だとほぼ確実に体調崩すもんな。金剛力士像みたいな体しといて」
「鍛えて治るんなら苦労しねぇよ」
「じゃあお熱はないんだね、でも念のためにお熱ピッピしとこっか。体温計持ってきていい?」
「いいよ」
美弥ちゃんが下へ降りていくと夢芽がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「お熱ピッピって、虚空蔵お前すげぇ子供扱いされたなぁ。ま、美弥姉ぇにはそんなつもりないけどよ」
「うるせぇ笑うな。かわいいだろうが」
「……赤ちゃんプレイ」
「やめろ」
夢芽が吹き出した時、タイミング良く美弥ちゃんが戻ってきた。隣に腰を下ろすと手に持った体温計を俺の腋に入れてくれる。
「ちょっと待ってねー」
「ありがとう」
「はははっ、介護だ介護」
そうして間もなく体温計が鳴り、美弥ちゃんに見てもらう。結果は三十六度二分、そこまで心配しなくていいラインだ。
「お熱は大丈夫そうだね、良かったぁ」
「ゆっくりしとけば治るだろ。ほーら虚空蔵、おねんねしましょーねー」
「この野郎半笑いじゃねーか」
夢芽の額をぺちんとはたく。
「一緒に寝るのは……えへへ、恥ずかしいなぁ…………でも、久しぶりに一緒に寝よっか……?」
「………………………………………………………………」
「真面目に悩むなお前。美弥姉ぇもなんで一緒に寝るのが前提なんだよ」
「???」
「なんで心の底から『え?違うの?』って顔が出来るかなぁ。恥ずかしがるクセにそこは揺るがないのかよ」
そんなじゃれあいをみんなが帰ってくるまで続けたのだった。
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ーーーーー
同時刻 泉区
「…………………………………………色々あったな……」
本を棚に仕舞いながらぽつりと呟く。事実は小説より奇なり、最近の出来事はまさにこれだった。
まるで物語の登場人物になったような非現実な感覚と、あの時の恐怖も驚きもつい数秒前のように思い出せるという現実。そして何より未確認第二号の正体……まさか人間、しかも同じ学校に通う人だったなんて…………
(未確認……エヴォリオルだっけ、それと第二号は違うらしいけど……あ、第二号じゃなくてスペクター、だっけ)
七ヶ浜さんや仙台さん曰くエヴォリオルとスペクターは似て非なる存在らしい。確かに姿形の系統が第二号と他の未確認では違うとは思っていたけど、気のせいじゃなかったんだ…………
「フミちゃ~ん、どうしたのぉ?」
「あっ……何でもないよおばあちゃん、ごめんね」
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無事体調が回復した翌日、俺達は食堂に集まって昼飯を食べていた。一昨日にあったファントムの一件を楽人達に話す。
「そっか……なんて言ったらいいかなこういうの……」
楓さんが困ったような複雑な顔で頭に手をやる。
「先輩の幼馴染みがもう一人のスペクターかぁ…………その人は現状敵、なんですかね……?」
「…………どうだろうな。連れ戻す気ではいるが」
「紫のエヴォリオルっていうのも気になりますね。奈緒さんは何か知ってるんですか?」
「聞いてみたんだけど知らねぇらしい。
何にせよ、次は白黒つけてやる。このまま終わんのは癪だ」
食べ終わって一息つく。ふと備えられたデカいテレビに移すと、そこに映っていたワイドショーでスペクターに関するニュースが流れていたのが目に入った。
『今流れているのは、複数の警察官によって撮影された映像です。映像には青い体の他黄色と緑の色をした第二号が映っています。警察の発表によりますと、これらは姿形の似た別個体ではなく全て同じ第二号とのことだそうで…………』
『いやぁ~怖いですねぇ~~みなさんはどうですかこの第二号、ネットだと賛否両論って感じになってるみたいですけども』
『俺はやっぱり怖いね~、人間を守ってるっていってもあくまでそう見えるってだけで確証も何もないわけだし』
『私もおんなじですかね~』
『僕は結構本気で人間の味方なんじゃないかな~って思ってますよ!』
『あらま、それはどうして?』
『色々考えたんですけど、第二号がわざわざ人を助けるフリをする理由が思いつかないんですよね。
する意味がないっていうか、その気になれば簡単に攻めてこれるはずなのにそれをしないのはなんでだろうなぁって考えると、やっぱり人間の味方をしてくれてるって考えるのがしっくりくるというか』
『その考えは一理ありますよ、第二号からは他の未確認とは違った知性や理性を感じるという話が多いんです。警察の方々でも同じように考えている人は少なくないんですね。人と同じ言葉を話せることは既に分かっていますが………………』
「ここ最近のニュースやワイドショーはこんなのばっかりでござるなぁ。スペクターを好意的に見る人間がいてくれるのは良いことではござるが……」
「もっと増えたらいいんですけどね~~先輩良い人なのに」
「そうか…………?良い人ってのは美弥ちゃんみたいな人間だろ、正真正銘善人だ」
「えー?」
正直世間体がどうこうなんてどうでもいい。俺は俺の周りにいる人達のために、そしてエヴォリオルが気に食わねぇから戦ってるだけだ。
世間からどう思われるかなんて大した問題ではないし、そもそも最初から問題にしていない。好きに評価すればいい。
「ま、オレは良いヤツだと思うよ。ていうかお前はお前で結構お人好しだしな」
「あぁ?どこが」
「つい人助けするとこ。昔っからそうだろ、困ってる奴見るとなんだかんだ言いつつ助けんの。ツンデレだツンデレ」
「あぁー!確かに先輩って見るからにツンデレな感じしますよね!」
「やめてくれ、リアルの男のツンデレなんぞ需要ねぇよ。二次元だから許されてんだよアレは」
そんな話をしていた時、こっちに来るアホの姿が見えて思わずウンザリしてしまった。風間だ。
美弥ちゃんがいることを見たからだろう、迷いなくずんずんこっちにやって来る。
「やぁ美弥ちゃん」
「伽怜良くんやっほ~」
「ごめんね、少しいいかな?」
いいわけねぇだろうがボケ……と言いたいが、楓さん達がいる手前あまり面倒事を起こすのも気が引ける。ひとまず俺が耐えればいい。
「うん。どうしたの?」
「ちょっとね。それにしても、まさか生徒会長とお昼を食べるくらい親しかったとはね。流石だよ」
(何がだよ)
「初めまして、定禅寺楓です。君は……」
「初めまして、美弥ちゃんと同じクラスの風間伽怜良といいます」
如何にもな好青年フェイスで笑う風間に無性に腹が立つ。ちらりと泉を見ると、その笑顔に胡散臭さを感じ取ったのか味噌を食うのを渋るアシリパみたいな顔で風間を見ていた。気持ちは分かるがお前それでいいのか。
「い、泉ちゃん?すごい顔になってるよ?」
「あ、ごめん」
「ありがたく思えよ七ヶ浜、今日はお前に話があってわざわざ来てやったんだ」
「んだ気色悪ぃ、テメェが俺に何の用だ」
俺の質問に風間は得意げに言った。
「お前が、未確認第二号なんだよなぁ?」
全員の顔が強ばる。幸い俺を避けてか周りの席には誰も座っておらず、風間の声量も周囲に聞こえるほどのものではないため他には聞かれていない。
対応は、当然すっとぼける一択だ。
「何を言うかと思えば……いよいよイカれたかお前。因縁ふっかけてくるにしてももう少しまともな文句あるだろボケナス」
「とぼけんな。生憎俺は昨日、第二号と第二号Bが戦う現場に居合わせてるんだよ。第二号がお前になるところもこの目で見た、証拠だってあるんだよ」
そう言って勝ち誇ったような笑みを浮かべながら風間はスマホを取り出す。
「流石に驚いたし恐怖もあったが、お前の姿を見た瞬間勝利が確定したような気分になったよ。これでようやくお前から美弥ちゃんを解放することが出来る」
「解放……?どういう意味でござるか……?」
「どうなんでしょう……?」
「なんか先輩をやたら目の敵にしてるし言いがかりか妄想じゃないですかね……?」
「やだきょわ~い…………」
「み、皆さん……」
完全に蚊帳の外なみんなはひそひそと呟く。聞こえてはいるはずだが、風間は相手にしない。
「…………一応聞いてやるが証拠ってのはなんぼほどのもんだ。大したもんじゃなかったぶっ殺すぞ」
「いいから黙ってろ、今見せてやる。しかし本当に驚いたよ、まさかお前が正真正銘の化け物だったとはな。まぁクズの正体としては相応し…………!?」
風間の顔から余裕が消え、一転して必死な表情でスマホをスクロールし始めた。
「ない………!!なんでないんだっ…………!?」
「伽怜良くんどうしたの?」
「撮ったはずの動画と写真が消えてるんだ!確かに撮ったのになんで……!?」
何があったかは知らないが、どうやら証拠とやらは消えてなくなったらしい。内心ホッとしたが態度には出さない。
「あっっっっほくせぇ。殴る気も失せた」
「っっ…………!」
「用はそれだけだろ、とっとと消えろ」
「!…………そうか、お前が何かしたんだな……!?」
「バカかおめぇ。寝言言いてぇんなら寝かしつけてやんぞタァコ」
風間は悔しそうにギリギリと歯噛みする。
よほど悔しいのか肩が上下するほど息が荒く、美弥ちゃんがいるにも拘わらず取り繕う余裕が無くなっている。このザマが見れたのだけはラッキーかもな。
「…………っ………………っ………………!!いい気になるなよ化け物がっ…………!!
必ず化けの皮を剥がしてやるからな!!」
「お前は剥がれた面の皮ぁ張り直せボケ。一年もいるんだ、ビビらせんな」
「格好つけて先輩面してんじゃねぇよクズが……!
本当に……一体どんな親がどんな教育すりゃあこんなカスが生まれるのか知りてぇよ。まぁ、こんなろくでなしのクズを生んで放置してるような親だ。お前と似たり寄ったりのバカであることは間違いないだろうけどよぉ」
「 あ゛ ぁ゛ ? 」
美弥ちゃんと夢芽の顔から血の気が引いていく。
他のみんなも猛獣に睨まれたかのように冷や汗をかきながら固まっていた。唯一、風間だけは俺が反応したことで『してやったり』といった表情を浮かべている。
「なに睨んでんだよクズ、本当のことだろ。お前みたいな存在を野放しにしてるような親や家族がまともな人間なわけないだろ常識的に考えろよ低脳。
真っ当な親ならお前みたいなドロップアウトは生まれないし、生んだならとっくの昔に腹を切るか首を吊るかしてお前みたいなクズを生んだ罪を償ってるんだよ、その程度の責任も取れない親なら『ろくでもないバカ』が妥当だろ。
バカな親からはバカな子供しか生まれないってよく言ったもんだよな、お前が何よりの証拠だ。本当、どの程度のレベルの親なのか見てみ…………」
「虚空蔵くん待って!!」
美弥ちゃんが止めようとした時にはもう遅かった。
立ち上がると同時、振り向き様に固く握った拳を風間の顔面にブチ込む。
風間は食堂の扉をぶち破ってなお止まらず、ミサイルの如く校庭のど真ん中まで吹っ飛んでいってようやく止まったのだった。
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「良かったですね。喧嘩両成敗、反省文に四日間の謹慎で済んで」
「あぁ、学園長が話しの分かる人で助かった。
他の教師だと余計な偏見だのバイアスだのであそこまですんなりとは行かねぇからな」
家に帰ってきた奈緒とそんな会話をする。
たった今、学校から帰ってきたところだった。
「後は月姉とお姉ちゃんに謝り倒すだけだなぁ……」
「ま、しょうがないでしょ。一応傷害事件ですし」
「わーってる言うな…………」
あの後、当然ながら俺と風間は学園長室に呼ばれ、事情聴取を受ける羽目になった。そこには駆け付けた教師だけでなく学園長……楓さんの父親もいた。
黒いスーツに身を包み、髪を軽くオールバックのようにセットした姿は昭和の男前といった顔立ちもあって実に渋くキマっている。
百五十m以上ぶっ飛んで気絶し、手当ての終わった風間を叩き起こして尋問が始まったが、教師から質問されるや否や『いきなり殴りかかってきた』だの『常日頃から因縁をつけられイジメられている』だのあることないことを捲し立て始めた。
『何もしてないのに絡まれたり殴られたりしたことは何回もありましたが、今回は特に酷い!正直堪えられません、危険な怪物のような奴です、学園でこれ以上問題を起こす前に追い出した方がいい!!』
あまりに迫真な被害者面に苦笑いしてしまうが美弥ちゃん達が直ぐ側で会話を聞いていてそんな嘘が通るわけもなく、証人として一緒に来ていたみんなが証言してくれたことに加えてこの間の図書室での一件も夢芽と泉がバラし、風間の立場は一気に悪くなる。
『七ヶ浜君、大変失礼だがきみのご両親は確か……』
『はい。七年前に亡くなってます』
学園長への回答に美弥ちゃんと夢芽、そして不貞腐れている風間以外はギョッとした顔になる。前に楓さんに聞かれて答えそびれた『喧嘩するようになった理由』にも繋がる話だ。
『なんのことはありません。僕は自分の親をコケにされて黙ってるほど腰抜けじゃないし、それを許せるほどアマくも寛大でもないだけです。
自分をどうこう言うのは大概のものなら許しますが、身内をバカにするなら話が違ってきます。死者を愚弄するようなことを言ったのなら尚更でしょう』
『………………………………』
『ただ、暴力を振るった僕にも非はあります。これ以上の言い訳はしません』
学園長は暫し静かに考え込み、周りが見守る中こう告げた。
『…………………………わかった。七ヶ浜虚空蔵君、きみは反省文三枚と謹慎四日とする』
『が、学園長!お言葉ですがいくら何でもそれは些か軽すぎるのでは……!?停学が妥当かと……!』
『そうです納得出来ません!!俺は殴られて怪我をしたのに……!!』
『本当に、その程度の罰でいいんですか?』
想定していたより遥かに軽い罰に驚きながら問うと、学園長は話を続ける。
『確かに暴力を振るうのは良くないことだ。それに対する処罰は与える。しかし今回の経緯と事情を考慮した結果、七ヶ浜君には一定の納得や理解の出来る理由があると判断した。
少なくとも、さっき風間君が話していたような理不尽で悪質な件ではない。初犯で停学は酷だろう』
『でもっ!!こいつが俺を殴ったのは事実ですよ!?
鼻だって間違いなく折れてる…………!!』
『元を辿れば、きみが七ヶ浜君のご両親や家族を侮辱する発言をしたからだろう。殴られる原因を作ったのはきみ自身ではないのかね?
現に今まで七ヶ浜君は風間君から何を言われても暴力に訴えたことはなかった。そうだね?』
学園長の言葉に頷く。そこに美弥ちゃんと夢芽が乗っかる形で弁護してくれる。
『はい、虚空蔵は確かに喧嘩っ早いところはありますが理由も意味もなく暴力を振るうようなろくでなしじゃありません。付き合いの長いオレと姉が断言出来ます。
そもそも直前まで呆れて取り合おうとしてなかったので風間が余計なことを言わなければ今回みたいなことはなかったと思います。自業自得かと』
『…………暴力はいけないことだし、虚空蔵くんの暴力を肯定するわけじゃありません。でも、今回は流石に伽怜良くんの言い過ぎだと思います』
『美弥ちゃんまで!?嘘だろ…………!?』
『………………風間伽怜良君、きみは反省文五枚と謹慎五日とする。保護者の方には私から連絡を入れておこう、双方よく反省するように』
そうして謹慎処分に落ち着いた俺は姉二人の帰宅を待ちながら反省文と睨み合いを続け、帰ってきた二人に今日のことを説明、弁明する。
「うーん……学園長先生から説明はあったけど…………そう言えば前にも絡んでくる子がいるっていってたね」
「ごめん。でも黙ってられなかった」
「にぃには悪くないよ、家族を馬鹿にされたら誰だって怒るもん」
「そうね~~殴って怪我させたのは良くないけど、そりゃあ殴られるよねっていうか…………」
「ぶっちゃけ九割方風間さんが悪いですよねこれ。
まぁ立場上虚空蔵さんを無罪にするわけにもいかないんでしょうけど」
「ああいう人馬鹿にしたようないんぴんかだりはな、けつめどから手ぇ突っ込んで鼻ぶっちゃいでやるぐらいが丁度いいんだ」
「日本語によく似た言語ですね」
「日本語だよれっきとした」
すっとぼけた奈緒にツッコむ。月姉とお姉ちゃんはそれがツボったらしく、我慢出来ずに吹き出した。
「……………………まぁ、向こうがどう出てくるかだな」
「ですね。ちなみにぃ、その風間さんって人のスマホからデータ消したの私なんですよね~」
「は?」
唐突な発言に面食らう。確かに動画やら画像やらが消えたとは言っていたが…………
「居たのも撮ってるのも分かってたんで、誰かに見せるか送ろうとした瞬間にデータが全部抹消されるようにしといたんです。こう、摩訶不思議パワーをピロピロ~っと送って」
「お前なんなんだよ…………」
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あぁ、俺はなんて可哀想なんだ。
「伽怜良、学園長先生から連絡があったぞ」
俺は被害者だ。何故説教されなければならない?
普通は俺を心配して、あの馬鹿の家に殴り込むくらいはするだろう。それが親ってもんだろ?
「喧嘩したのはいい、だが相手のご両親……しかも亡くなっている人を侮辱するとは何事だ。知らなかったにしても言っていいことと悪いことがあるぞ」
「待ってくれよ父さん、悪いのはあいつなんだって!
俺は被害者なんだよ!」
「お前が嘘や出任せでその子を陥れようとしたことも聞いている!何を考えているんだお前はっ!
被害者だと言うなら、お前がその子から他に何をされたか言ってみろ!!」
「殴られて鼻が折れてるんだぞ!これ以外に何がいるっていうんだよ!?」
「自業自得だ馬鹿っ!本当にお前は…………」
父さんは額を押さえて黙り込む。
「明日にでも謝りに行かないとね…………」
「冗談だろ母さん!なんでこっちが…………」
「当たり前でしょ、喧嘩を売って原因を作ったのはあんたなんだから。確かに殴ったのはその子もやり過ぎたとは思うけど、それだけ怒らせるようなことをあんたは言ったの。謝るのは当然でしょ」
母さんまでもがあいつの肩を持ったことに眩暈と吐き気がした。自然と視線が下を向き、視界が滲んでいく。
「伽怜良聞いてるのか?……伽怜良!」
「なんで俺が、こんな惨めな思いしなきゃなんねぇんだよ…………」
「伽怜良……?」
「全部あいつのせいだ……あのドロップアウトのクズがふざけやがって……!!」
「おい、何をぶつぶつ言ってるんだ?おい伽怜良……」
「うるせぇんだよ!!
俺の惨めさも気持ちも知らねぇくせに偉そうに説教しやがってよぉ!子供より子供を殴った奴の肩を持つ人間なんて知るかっ!!」
吐き捨てた俺は家を飛び出した。味方も安息地もない家なんている価値も意味もない。
暗くなり始めている空の下をひたすら走り抜けた。
(クソッ、クソッ、クソッ、クソッッ……!!)
どれほど走ったかすっかり息が上がり、肺や脇腹が痛くなったところで足を止め、近くにあった公園に入る。
ベンチに腰掛け、改めて自分の不憫さ、周囲の不理解さに涙した。俺は正しい、それに間違いはない。
なのに周りはそれを理解出来ない馬鹿ばかり…………
「俺の味方はいないのかよ…………悪いのはあのバカじゃねぇか…………なんでどいつこいつもそんなこともわからねぇんだ……」
ため息を漏らしながら呟く。謹慎の身であることなどどうでもよかった。
「美弥ちゃん……どうしたらキミをあのクズから救えるんだ、どうしたらキミをモノに出来る…………」
今日の一件で確信した。あのクズは美弥ちゃんの側にいてはいけない存在だ、あんな奴と一緒にいては美弥ちゃんは必ず不幸になる。どうにかして俺が救わければならない。
しかし相手は暴力だけが取り柄のチンピラだ。悔しいがそのまま向かっても勝ち目はない。
「どうすればいいんだ…………!」
「きみ、何か困り事?」
突然の声に顔を上げると、そこには見知らぬ二人組の男が立っていた。
一人はおよそ二十代半ばから後半ほどの青年で、不気味な白い肌にボサボサのねずみ色の髪をうなじの辺りで結び、グレーのトレーナーに黒いスウェットのズボンを着用している。ラフな服装と本人のダルそうな雰囲気がマッチしていた。一番目を引いたのは身長で、おそらく180cm半ばほどある。
もう一人は俺とそこまで変わらないであろう金髪の青年で、雰囲気から立ち姿まで見るからにバカっぽそうだった。
「……………………誰ですか」
「うーんそうだなぁ……悩める人の味方、かな?」
閲覧ありがとうございました。今回は瞳ちゃんのプロフィールです。
《那智ヶ丘瞳》
年齢:14歳
誕生日3月24日
身長154cm
体重49kg
血液型AB型
星座・牡羊座
好きな食べ物:
グラタン、ドリア、ブラックコーヒー
苦手な食べ物:
特になし
趣味
姉とのツーリング、リーベリッヒ様との天体観測
好きな花
コブシ
座右の銘
一念天に通ず




