第14話 『鎧装』
皆さんお久しぶりです、ライダー超信者です。
……………………書くことがねぇ!!
12/4 文章をちょこちょこ修正しました。
「ファントムの正体は恵里…………七年前に姿を消した、俺達の幼馴染みだ」
衝撃的な言葉を聞いた美弥ちゃんと夢芽は目を大きく見開いたまま固まる。当たり前ぇだ、死んだはずの旧友が生きていたってだけでも信じられねぇのにその上怪人退治の専門家になってたなんて誰が信じるか。
俺なら信じねぇし、今だって半信半疑だ。
「虚空蔵くん、でも恵里ちゃんは……」
「うん、七年前に行方不明になった。少なくとも昨日まではね」
「で、でもファントムの奴、恵里の面影なんて全然無かったじゃねーか!罠の可能性だってあるだろ!?」
『否定してほしい、嘘だと言ってほしい』という思いを隠せずに声を荒げる夢芽。
俺達の中でも特に恵里と仲が良かったのが他ならぬ夢芽であり、その心中を考えれば無理もない話だ。
確かに罠の可能性も無くはない。が、あいつが恵里だとすれば俺を知ってる素振りを見せたのも、俺達を毎回助けたのも、正体の話になると足早に立ち去ろうとしたのも合点がいく。
「あれからもう七年も経ってる、面影が無くてもおかしくねぇだろ。んなことよりあいつが今まで何処で何やってたかの方が問題だ。
生きてたならなんで姿を現さなかった?どうやって生きてきた?おじさんとおばさんは?正体を隠す理由は?聞きてぇことばっかりだ畜生め……!」
「何がどうなってんだよ…………ワケ分かんねぇ……」
「……………………でも、生きてて良かった」
困惑の色を残しながらも、美弥ちゃんは微笑む。
俺だって本当なら喜びたいのが本音だが状況が状況故にどうしても喜ぶことが出来ないのが現状でショックや動揺の方が遥かに大きい。
重い空気が部屋中に満ち、黙りこくっていると静かにドアが開き、奈緒とモカがひょっこり顔を覗かせた。
「皆さん大丈夫で……じゃなさそうですね」
「主、お話は終わったかい?ボクお腹が減ったよ、ご飯が欲しいな」
「……………………言われてみりゃまだ飯食ってなかったな。とりあえずなんか食うか……」
「私達も一旦帰ろっか」
「……おう…………」
重い腰を上げて下に降りると、同じく学校が休みになった優衣の頭を撫でて調理を始める。月姉とお姉ちゃんは急いで用意したおにぎりを食べて弁当も持っていったが大丈夫だったかな…………?
「優衣ー、炒飯作っけど食べる?」
「うん、食べる。にぃにありがとう」
まぁ適当でいいかと各種材料を揃えて炒飯を作る。具は卵を除けばネギだけで味付けもシンプルだがそれが美味い。優衣はネギが苦手だからネギは抜いてキムチをぶっこみキムチ炒飯にする。そうして十分もしない内に四人分の炒飯が出来上がった。
「ねぇ主、ボクのご飯は?あのカリカリしたの」
「お前のだよ、これ」
「ボクも食べていいの?人間のご飯だよね?」
「今のお前にドックフード食わせらんねぇよ警察沙汰んなるわ。今は仮にも人間なんだからちゃんと人間と同じモン食ってくれ」
「虚空蔵さーん私のありますー?」
「ちゃんとあるから食え」
席についてみんなで遅めの朝飯を食べ始める。モカも小っちゃい子供のような持ち方でスプーンを持つと炒飯をすくい、匂いを嗅いだ後に口へと運んだ。
「…………!美味しい……これが人間のご飯……」
モカは目をキラキラさせ、一心不乱にがっつく……どころかスプーンなどどこへやら、皿に顔を突っ込んで読んで字の如く『犬食い』になって食べている。
気に入ってくれたのは良いが、食べ方はきちんと教えないと駄目みたいだな。いくら元々犬とはいえ、今のモカの姿ではまるで野生児だ。
「モカ、その食べ方は行儀悪いからダメだ。ちゃんとスプーン使え」
「あ、ごめん。美味しかったからつい…………でもこの方が食べやすいんだよ。スプーンだっけ?これだと少しずつしか食べられないもん」
「使い方だの人間のマナーだのは俺達が教えるからゆっくり覚えてきゃいい。お前が人前で恥かかねぇためにもな」
「分かった、頑張って覚えるよ。どうすればいい?」
「まずはこうやって持てこうやって…………」
自分が手本となってモカに食器を使った食べ方を教えていく。
「そう、それでいい。そのまま口に運べ」
「ん~~…………難しいよ……」
「大丈夫だ少しずつ慣れればいい。練習すればすぐ上達する」
「ふふっ、にぃにお父さんみたい」
「パパみ~~」
お父さんか…………確かに今やってることは育児っぽいかもしれない。まぁこんなデケェ娘なんていたらたまったもんじゃないけどな。
「美味しい、でも少ししか食べられない……悩むね」
「悪いな、慣れてくれ」
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「ぐっ……くそ…………」
「お、シャープが帰ってきた」
「随分早かったな。これを読み終えるくらいは持つかと思ったんだが」
「うるせぇ……!」
「はにゃにゃ?タスクは一緒じゃないのかにゃ?」
「…………!あいつ、どこ行った!?」
「考えるに、帰るふりをしてそのままあっちの世界に残ったみたいね。出し抜かれたってことよ」
「ふざけやがってぇ!!今すぐぶっ殺してやる!!」
「まぁ待つんだシャープ。ここはタスクに任せてみようじゃないか。魔皇石は持たせてあるし、何か面白いものを見せてくれるかもしれないからね」
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「お母さん、行ってくるね」
未確認に襲われて数日経った月曜日、身支度を終えた僕は鞄を手に玄関に立っていた。あの後、謎の女の人に助けられた僕達は駆け付けた警察官に保護され、精神状態に問題がないと判断された後に保護者に引き取られた。
そんなことがあったからかここ数日、お母さんは何かと僕のことを心配している。
「琉夏、気をつけてね。何かあったら電話してね?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。行ってきます」
「気をつけてね~!」
見送ってくれたお母さんに手を振り、家を出る。そして自転車を漕いでいると十分ほどで泉ちゃんと出会った。
「泉ちゃんおはよう!」
「おはよー。るーくん大丈夫だった?」
「うん、僕は大丈夫だよ。泉ちゃんも大丈夫だった?」
「私も大丈夫。なんか色々ありすぎて怖いって気持ち飛んじゃったよね。第二号の実物見ちゃったしあの女の人謎すぎるし」
泉ちゃんの言葉に頷く。今や世間の話題の中心となっている未確認と第二号をこの目で見た。それだけでもスゴいことなんだけど、更には第二号にどこか似た新たな未確認まで現れ、第二号と共闘していたかと思ったら今度は突然戦い出した。
もう何が何やらさっぱりでいつの間にか恐怖感はどこかに消えてしまっていた。
「富美花先輩は大丈夫だったかな……?」
「大丈夫だって。起きてからLINEしたけど『ひとまず大丈夫なので登校します』って返ってきたよ」
「そっか……それなら良かった」
「そういえば、あのめっちゃ綺麗な女の人もどこ行っちゃったんだろ?私達助けたら姿消しちゃったし」
「う~~ん…………わからないことだらけだね……」
そんな話をしている内に学校に到着し、駐輪場に自転車を停めて教室に向かおうとした時、一台のバイクが校門から入ってくるのが見えた。
バイクはちょうど駐輪場の入り口で立ち止まっていた僕と泉ちゃんの前に止まるとヘルメットのバイザーを上げた。
「琉夏くん泉ちゃんおはよう!」
「おぉ、おはよう」
「多賀城先輩!七ヶ浜先輩!」
「お、琉夏と泉じゃねーか。よっ!」
「夢芽先輩!……へー先輩達バイク通学なんですね」
「あぁ。つーかお前ら仲良いな、一緒に来てんのか」
「はい、途中で会うのでよく一緒に来てるんです」
先輩達と一緒に教室に向かおうとした時、校門から富美花先輩が来たのが見えて手を振る。
泉ちゃんも手を振ると富美花先輩も気付いて手を振りながら気持ち早めな早足でこちらにやって来た。
「富美花先輩おはようございます!大丈夫です?無理してませんっ?」
「う、うん……一応大丈夫……」
「……なにかあったんですか?」
一瞬躊躇ったけれど七ヶ浜先輩達ならきっと大丈夫なはず。思い切ってこの間あったことを話す。先輩達はその間黙って話を聞いてくれた。
「そうか…………大変だったな。怪我はねぇのか?」
「なんとか怪我はしなかったんですよぉ、よくわかんない女の人が助けてくれたおかげですね。あと…………未確認第二号?」
「「「………………………………………………」」」
「確かに助けてくれたような感じはしたよね、見間違いかもしれないけど……」
「私も……そこまで悪い気は感じませんでした……見た目は、怖かったですが…………」
よく見ていたわけじゃないけど第二号は僕達が無事に避難出来たか見送っているような挙動を見せていた。僕達を襲った未確認二体とは明らかに様子や雰囲気が違っていて異質な感じがしたんだ。確かに見た目はちょっと怖かったけど…………
「……第二号って、本当に未確認なのかなぁ」
「…………どういう意味だ?」
「えっと、何ていうか僕が見た限りだと第二号と他の未確認って結構別物って印象が強いんです。似ているけど違うというか…………」
「あ、分かる!」
「そうなのか……まぁ、無事で何よりだったな」
「だな。つーかそろそろ行こーぜ」
七ヶ浜先輩はそう言って校舎に歩いていく。
多賀城先輩達もそれに続き、僕らも校舎へと向かった。と、顎に手を当てて何かを考えているような富美花先輩に気付いた泉ちゃんが問いかける。
「富美花先輩どうしたんですか?」
「うん……さっき琉夏くんの話を聞いてる時の七ヶ浜さん達……なんというか、複雑な顔で……」
「そうでしたかねぇ?多賀城先輩達はともかく、先輩っていっつもあんな感じで後半のコウ・ウラキみたいな顔してる気がしますけど」
「それは流石に失礼じゃないかなぁ……」
そんな話をしながら先輩達の後を追ったのだった。
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「ふっ。シャープのヤツ、まさか俺が帰還せずに残っているとは思わないだろうな。邪魔がいなくなった以上、これで気分良くゲームが……」
『未確認…………!?』
『なんで、こんな所にも……!?』
『誰か、誰かいませんか!!誰かぁ!!』
「………………そういやあの人間共、殺し損ねていたな」
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城東学園 図書室 PM13:03
私達は、いつも通り図書室で作業をしていた。今日は図書室の先生である園崎先生がいらっしゃるので多賀城さんや七ヶ浜さんはいません。ですが…………代わりにあの方達がいないことに少し寂しさを感じている自分がいました。
皆さん良い人達ばかりでお仕事も丁寧でしたし、あれだけ周囲の人から怖がられていた七ヶ浜さんも怖かったのは第一印象と口論している時だけで基本的に礼儀正しい真面目な人でした。…………少し頼りすぎだったと反省しています。
「はぁ……………………」
それにしても、まさかあの未確認異形生命体をこの目で見てしまうなんて…………あの時の恐怖はほんの数秒前のことのように思い出せてしまい、体が震えてくる。
謎の女性に助けてもらい、なんとか警察官の人達に保護してもらえたのは運が良かったのでしょう。あともう少しで私達が犠牲者の一人として数えられていたかもしれないと思うと心から恐ろしく思います。
「富美花ちゃん大丈夫?なんか元気ないねぇ、何かあった?」
沈んだ顔の私を心配してか園崎先生から声をかけられた。スーツ姿に眼鏡と司書さんのような出で立ちの先生は私の数少ない学園での知り合いで人付き合いの苦手な私のことをよく気にかけてくれています。
「いえ……ちょっと……」
「無理しないでね。今年受験生なんだし、何かあったら私で良ければ相談に乗るからねっ」
「ふふっ…………ありがとうございます」
「あっ、富美花先輩富美花せんぱーい」
先生と入れ替わりで泉ちゃんがやって来た。
何かあったのかと思うと小さな声で耳打ちしてくる。
「さっきから見てたんですけど……大丈夫ですか?こないだの一件、響いてますよね?」
「えっ?えっと……」
「正直私もちょっと引きずってます。思い出そうとすると全身がキュッてなりますからね……でももう大丈夫ですよ、冷静に考えたら人生で熊に襲われるなんて一回もない人間の方が圧倒的多数じゃないですか?
それを考えたらあんな怪物に襲われるなんて二度もあるわけないじゃないですか!あと何ヵ月かしたら笑い話になっちゃいますって!」
泉ちゃんは鈴を転がしたようにコロコロと笑う。
「ありがとう泉ちゃん、少し楽になりました……」
「いえいえ!るーくんも心配してたから大丈夫ってちゃんとアピールしといた方がいいですよっ」
「ふふっ」
「へへっ」
二人でにこやかに笑い合った直後、窓ガラスが勢いよく割れて何かが飛び込んできた。
………………………………それは血まみれで、手足があらぬ方向に向いた人だった。既に生気のない虚ろな目は開かれたまま固まっている。
「ひっ……………………!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「人っ、ひ、ひとぉっ!!??」
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
穏やかな時間が流れていた図書室は一転しておぞましい空間に変わり、悲鳴で埋め尽くされる。そして破壊された窓から現れたのはーー
「ははははっ!人間は脆ぇなぁ!!ついついふっ飛ばし過ぎた……ん?」
「この前の、未確認……!!」
それは先日私達を襲った未確認の一体、イノシシに似た未確認だった。あまりに突然のことに頭も体も全く動かず、ただただ混乱していると未確認がふとこちらを見る。
「おぉ!この前殺し損ねた奴らじゃねーか!
こんな場所にいるとは思わなかったが探す手間が省けていい━━死ね」
「わ、わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
琉夏くんが椅子で殴りつけるも未確認は一切動じることなく睨み付け、そのまま軽々と投げ飛ばしてしまった。
「いっ……うぅ……!!」
「るーくん!!」
「そんなに焦るなちゃんと殺してやる。
まずはテメェらからだ」
ゆっくりと、私達の方に未確認が歩いてくる。
(せめて……せめて泉ちゃんと琉夏くんは逃がさないと……先輩の私が、やらないと……!)
なんとか立ち上がったその時、壊れた窓から再び何かが飛び込んできた。
青と黒の魔人、それは未確認第二号━━
「スペクター!!」
「人様の学校で……好き勝手してんじゃねぇぞコラァ!!」
雄叫びと共に第二号……スペクターと呼ばれた魔人は未確認に飛びかかり、戦いが始まってしまう。
圧倒的な強さで未確認を容赦なく叩きのめしていくスペクター。その迫力に圧倒されてしまうけれど、ふとあることに気付いた。
(…………周りに被害が出ないようにしている……?)
スペクターは周囲の本棚や生徒に極力被害が出ないように戦っているように見えた。
偶然そうなっているのではなく、本棚に攻撃が当たりそうになると既の所で攻撃を止め、未確認がこちらに来そうになった際には直ぐに引き戻すなど意図的にそう立ち回っていることが私でも分かった。
そのおかげで戦っている空間が最小限に抑えられている今なら、他の人達を逃がせる……!
「皆さん、早く逃げてくださいっ……!」
「! 皆さんこっちです!押さないで、慌てないでください!」
「怪我しますから押さないで!」
私の意図を察してくれた琉夏くんと泉ちゃんと共に避難誘導を行って生徒の皆さんを逃がす。
「貴様らぁ!!獲物を逃が「余所見してんなボケがぁぁ!!」
注意が一瞬こちらへと逸れた瞬間スペクターのキックが未確認に命中した。豪快な両足でのキックを受けた未確認はアクション映画のように大きく吹き飛び、壁に叩き付けられて崩れ落ちた。
「スペクター……ウォォォォォォォォォォォ!!!」
呻きながら立ち上がった未確認は姿勢を低くするとそのまま猛スピードでスペクターに突進する。
「ちっ…………!!」
本棚が障害物となって左右に避けることが出来ないスペクターは咄嗟に防ごうとする。しかし強烈な突進攻撃によって吹き飛ばされ、壊れた窓から外へと落ちていってしまった。
「来い!!」
「きゃ……!」
「わっ!?」
「泉ちゃん!富美花先輩!うわぁ!?」
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「あー痛ってぇクソ……」
エヴォリオルの突進で外まで吹っ飛ばされ、悪態をつきながら立ち上がろうとしたその時、図書室からエヴォリオルが飛び出してきた。
球体状の何かを持っていたがそれが何かは分からなかった
「っ!!野郎っ……!」
猛スピードで走り去っていったエヴォリオルを追うためにスペクタイフーンに跨がった時、奈緒からのテレパシーが届く。
『虚空蔵さん!聞こえます!?』
「奈緒か!?聞こえるなんだ!!」
『良かったっ!やっと繋がった!』
「今お喋りしてる暇ねぇぞさっさと言え!!」
『そっちにモカちゃんが行きました!!』
「あ゛ぁ!?」
突然の報告に戸惑う俺。ひとまず逃げたエヴォリオルを追うために走りながら交信する。
「んだそれぇ!!なんか言ってなかったのか!!」
『またあの嫌な臭いだって言ってましたよ!ていうか何でそんな切羽詰まってるんですか!?』
「学校がエヴォリオルに襲われたんだよ!!金曜に出たイノシシの野郎だ!」
『はぁぁ!!?』
「もう学校滅茶苦茶になってんだよ!マジでどうしてくれんだよクソッタレ!!」
『…………分かりました。そっちの証拠隠滅は私がなんとかしましょう、虚空蔵さんはそのエヴォリオルを必ずぶっ殺して地獄に送ってください』
「なんとかぁ?なんとかってどうすんだよオメェ!?」
『死体は?』
「一人ある!だったらなんだ!」
『了解です、死体がちょっと厄介ですけど他はどうとでもなります。とにかく頼みました!』
そう言って奈緒との交信が途切れた。よく分からないがあいつを信じるしかないだろう。今は奴を追うのが最優先だ。
飛ばしていくと直ぐにエヴォリオルの姿が見えてくる。イノシシだけあってスピードはなかなかのモンだが前に戦った黒豹型の奴ほどではない。加速して横並びになると後輪の一撃で撥ね飛ばし、ぶっ飛んだエヴォリオルの手から離れた球体状の物体が割れる。
その中から鈎取先輩、名取、南光台が飛び出てきた。
「あぁ…………!?」
「やった!出れたァァァァァ!!??」
「第二号……!!」
「っ…………!」
(捕まってたのか、この三人っ……!?)
予想外の出来事に固まった瞬間、背後からエヴォリオルが投げた二又の槍が飛んできた。反応が一瞬遅れたが、間に合わないほど致命的ではない。
「しゃらくせ「はっ!!」」
叩き落とそうとしたその時、俺を貫くかもしれなかった槍は華麗に宙を舞うモカにキャッチされ、エヴォリオルに向かって投げ返された。
「モカ!!」
「やぁ主、来たよ」
「何者だお前はっ!!」
モカは問いには答えずエヴォリオルを睨む。それが気に障ったようで鼻息を荒くしながら突撃してくる。俺は取り出したオーブを装填し、デストラクションフォームにフォームチェンジする。
『Executioners of Immortal!
DistractionForm!!』
「死ねぇ!!」
鋭い牙を剥き出しにして突っ込んで来たエヴォリオルを真っ向から受け止めた。さっきは打ち負けたがパワー自慢のデストラクションフォームなら問題はない、一歩たりとも下がることなくエヴォリオルを押さえ込む。
敵の牙を操縦桿のように握って首を捻じ切るかの如く捻りを加えて投げ飛ばし、回転しながら宙に浮いたエヴォリオルを殴り飛ばした。
「すっご…………」
「ひとまずあっち逃げてろ!!モカ!お前なんで来てんだ!!」
「この前の嫌な臭いがまたしたから主が来ると思って。ボクも戦うよ」
「戦うってお前なぁ……!」
「大丈夫、〝これ〟があれば戦えるんでしょ?」
そう言ってモカが取り出したのは奈緒がエヴォルオーブと呼んでいたあのオーブだ。正面には狼の絵が描かれている。
「ウオォォ!!「うるせぇこの野郎!!」
突っ込んできたエヴォリオルの顔面にカウンターで拳を叩き付けて蹴り飛ばす。
「…………あぁクソ!!俺の言うことちゃんと聞けよ!危なくなったら逃げろ!いいな!」
「分かった、じゃあ行こうか」
『ウェアウルフ!』
オーブを起動したモカの体を刃物のように鋭い竜巻が包む。竜巻が消し飛ぶように晴れると、そこに立っていたのは狼ーー人狼の姿をしたエヴォリオルだった。
ブレード状の突起が全身に備えられた鋭利なフォルム、背中を始めとした体の各所から生えた銀色の毛、ナイフの如く鋭い爪と牙、目は満月のように黄色く爛々としている。
『loyal hunter!!』
怪人態に変身したモカは腰を落として構え、猛然とエヴォリオルに突撃していく。空中で体を捻りながら回転させ全身のブレードでエヴォリオルを斬り裂き、爪を武器にした野性的な格闘攻撃で追いつめる。
敵の反撃をバク宙で躱し、その勢いを利用して両足で蹴り飛ばすとふっ飛んだエヴォリオルに間髪入れずに飛びかかり、押し倒して鋭い牙で喉に噛み付いた。
「ウ゛ウ゛ゥゥゥゥゥゥ……!!」
唸り声を上げながら牙を深々と首に突き立て、もがいて逃げようとするエヴォリオルを咥え上げると地面に勢いよく叩き付ける。衝撃でエヴォリオルはバウンドしながらふっ飛んでいき、地面を滑るように転がっていった。
「ぐ、おぉ……!!貴様、同じエヴォリオルが何故邪魔をする!気でも触れたか!?」
「エヴォリオルが何かは知らないけど関係ない。ボクは主の味方だ」
「……だとよ。ニ対一だ、卑怯とは言わねぇだろ?」
「ちぃ……!テオス様、使わせていただきます!!」
取り出した魔皇石を体内に取り込んだエヴォリオルは小山の如き巨大なイノシシ型怪獣となり、咆哮を上げて突撃してくる。
「モカ!!」
「わっ」
モカを直線上から突き飛ばしてエヴォリオルとぶつかる。パワー、馬力共にさっきとは比べ物にならず、単純な力比べならパワーこそ互角だったが、掬われて宙に放り投げられてしまう。
咄嗟に飛行能力で体勢を立て直すがやはり飛行能力の駆使は苦手だ、まだ体勢を保つのが上手くいかず早々に着地する。
「主、大丈夫?」
「あぁ、なんてこたねぇ」
「どうした!ニ対一でそのザマかスペクター!!」
「フゴフゴうるせぇぞイノシシコラ」
挑発、嘲笑してくるエヴォリオルに吐き捨て、親指を下に向ける。しかしあの巨体にスピードは厄介だな、前の象の奴みたいにいけばいいんだが…………そう思った時、なんの指示も出していない筈のスペクタイフーンが走ってきて吼えた。
何事かと思っているとスペクタイフーンとモカの目がまるで共鳴しているかのように光る。
「主、これって……」
『ばるるるる』
「…………〝合体〟の合図……か……?」
「分からない…………けど…………はっ!!」
モカは人狼から四足歩行の完全な狼型へと変わる。メカニカルながら古代の彫刻のような、どこか神秘的な見た目は勇ましくも美しい。気高い雄叫びを上げると、モカは〝変形を始めた。〟
…………いや本当だ、本当に戦隊ロボの腕や足を構成する動物系ロボみたいに変形している。更に変形したモカは上半身と下半身に真っ二つに分離した。
「ぎゃあぁぁぁモカが分かれたぁぁぁぁぁぁぁ!!
モカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!??」
ちょっと泣きそうになりながらここ最近で一番の絶叫を上げる俺を余所に変形して真っ二つになったモカはスペクタイフーンと合体、融合して新たなマシンとなった。
大型化した重厚なボディにフロントの装甲から伸びた鋭い大きな角が特徴的なマシンはライトを煌々と光らせ、爆音を上げる。
『主!!』
「うお゛ぉぉぉぉぉ喋れんのかお前ぇ!?」
『こんなになっちゃった!でもこれならあの大きなヤツに対抗出来るよ!』
モカ(?)は搭乗を促すようにフロント周りを右に左に揺らす。
『早く!あいつまた突っ込んできてる!』
「ちくしょうなるようになれっ!!」
マシンに跨がり、右ハンドルを思い切り捻った。
体内にまで衝撃を感じる程のエンジン音が響いた瞬間、今までのスペクタイフーンとは比べ物にならない爆発的な推進力が生み出され、ミサイルのようにエヴォリオルと激突する。
「はぁぁぁぁぁ!!」
「ギ、グ、ウオォォァァァァ!?」
ぶつかり合いは僅か数秒、圧倒的なパワーによってエヴォリオルを押し切ってふっ飛ばす。巨体が勢いよく倒れ大地を揺らす。
必死こいてブレーキを掛けながら二回に分けて旋回し、再びエヴォリオルに向かって突撃する。
「きゃっ……!」
「富美花先輩!泉ちゃんも大丈夫?」
「うん、体勢崩しただけ!っていうかなにあれ?なんなのマジで…………」
「フィナーレだ!二人共行くぞ!!」
『うん!』
『グルルルル!!』
三つの力をマシンの角へと集約、エネルギーの奔流を纏い超高速でエヴォリオルへ突っ込んでいく。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ギッ……!「はぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
かつてない衝撃と共に体当たり攻撃をぶちかまし、エヴォリオルは横倒しになったまま地面を滑るように飛んでいく。
百五十mを超えた辺りでようやく止まり、よろめきながら起き上がるエヴォリオルだが叩き込んだエネルギーが迸り、全身がヒビ割れていく。
「ガ、ァ……こんな、まさか…………!!
ア、アァァ!ア゛ァァァァァァァァァァァ!!!!」
断末魔の叫びと共にエヴォリオルは爆発四散、結晶の雨が辺り一面に降り注いだ。
「すごい……綺麗……」
「大丈夫か、怪我は?」
「! 第二号…………」
「だ、大丈夫だけどっ、な、なんで助けて……?」
「さぁな。ひとまず場所を変えるぞ、警察が来たらお互い面倒だろ」
三人を連れてその場を後にする。学校の方は奈緒が何とかするって言っていたが、どうなってることやらな。
「奈緒の方はどうなってるかな、って思いました?」
「!? お前いつの間に……!」
「虚空蔵さんどーもです、証拠隠滅完了ですよ」
「え誰?今どこから出てきた?」
「それに虚空蔵って…………」
「お前な……!」
「いーんですよ、この人達ならバレても大丈夫ですからね。まぁ一旦学校に戻りましょう。話も説明もそれからです」
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━━━━━
「塞がってやがる…………」
学校に戻るとエヴォリオルが開けた穴は塞が……というより元から無かったかのようになっており、生徒も教師も何事も無く放課後を過ごしていた。
「なんで……あれだけのことがあったのに……」
「…………私頭痛くなってきた」
「七ヶ浜さん……これは……」
「すいません、俺もよく理解ってないです……」
鈎取先輩に謝ると、学校に戻ってくる途中で奈緒から指定されていた空き教室に向かう。
空き教室は生徒が日常的に使用する教室からは少し離れた場所にあり、人気のある所ではない。聞かれたくない話をするには丁度いいだろう。
空き教室に着くと、そこには奈緒は勿論美弥ちゃんと夢芽、楽人、楓さん、そしてモカと事情を知る面々が集まっていた。
「虚空蔵殿、お勤めご苦労様でござる!」
「やっほー虚空蔵くん。なんか奈緒ちゃんに呼ばれたんだけどどゆことー?それとこの褐色肌がキュートな子は誰?」
「虚空蔵くんおかえりなさい!大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。モカもお疲れ、頑張ったな」
「ふふっ。主がそう言ってくれるなら、頑張った甲斐があったよ」
「お疲れさん。にしてもエヴォリオルが学校にまで現れたってマジなんだよな?それにしては静かだけどなぁ」
「奈緒が何かしらやったらしいな。何したかはこいつに聞かねぇとわからん」
「えーっと虚空蔵先輩これどういう…………?」
困惑しながら名取が尋ねてきたことで説明に移る。
エヴォリオルが異世界から来た超怪人であること、巷で未確認第二号と呼ばれている存在はスペクターと言い、その正体が俺であること、さっき現れた銀髪の少女・奈緒はエヴォリオルによって滅ぼされた世界からやって来たこと、そしてここにいる人間は全員それを知っていること、ひとまず説明に必要なことを一通り話した。
「とりあえずこれだけ知っときゃいい、他に何か聞きたいことは……つっても全部か」
「情報が……多すぎて……飲み込むのに時間が…………」
「僕も、圧倒されて追いつかないです……」
「頭痛いです。ていうかっ!あれだけのことがあったのになんで騒ぎになってないんですか!?絶対おかしいですよこれ!」
「大したことはしてませんよ。美弥さん達を除いたこの学校の人間全員の記憶を消しただけです」
「記憶を……?」
「えぇ、虚空蔵さんの連絡を受けてから一時間前までの記憶を抹消して、壁もそこだけ空間を巻き戻しときました。今日のことを思い出すことはありません。
被害者の遺体もエヴォリオルが暴れていた範囲に置いてきましたよ。後はおまわりさんのお仕事です」
奈緒の言葉に全員衝撃を受ける。もう今更こいつのことでは驚かないだろうと思っていたが……なんなんだこいつ……?
「奈緒ちゃん、そんなこと出来たの?」
「多分もう出来ないでしょうけどね。今回限りだと思っていただければ」
「なんなんだよお前…………」
「でもそのおかげで大事にならなかったんだからめでたしめでたしじゃない。奈緒ちゃんグッジョブ!」
「奈緒殿がいなければ小生達の学生ライフがめちゃくちゃになっていたのは明白。
いやはやまさに立役者でござるなぁ~!」
「いやぁ~それほどでも?あっちゃいますぅ?」
「イヨォ~~!!」
「ワッショイ!!」
「うるせぇ。まぁあれです、鈎取先輩達は今回のこと内緒にしてもらえればそれでいいので、あんまり俺には関わらない方がいいと思います。
ただでさえ嫌われてますからね、俺」
俺の言葉に三人は顔を見合わせる。そして一番に口を開いたのは南光台だった。
「………………僕は、その、知っちゃった以上無視は出来ない……と思います」
「無理すんな。俺への礼とか恩返しみてぇな一時的な義理の感情ならやめとけ。それに言ったろ、嫌われ者の俺と一緒にいりゃただでさえ面倒になるぞ」
「確かに関わったところで僕に何か出来るのか、役に立てるのかどうかも分かりません。
でも…………『何も出来ないこと』と『何もしないこと』って別だと思うんです」
「右に賛成でーす。てゆーか、好きで一緒にいるなら周りからどう思われるかとかどうでもよくないですか?私先輩を避けるとか嫌ですし」
南光台に続く名取の口調はいつも通りだが、至って真面目で真剣な目をしていた。おずおずと鈎取先輩も口を開く。
「改めて、助けていただいてありがとうございました…………その……何か私達にお手伝い出来ることがあれば、力になりたいです。二度も、助けられてしまいましたから……」
「そこのおだてられて調子乗ってる銀髪曰く、『俺にしか出来ないこと』らしいので気にしないでください」
「それ私のことですか虚空蔵さん」
「うるせぇ黙ってろ」
「ひどくねぇ?」
ぼやく奈緒を無視すると、美弥ちゃんにちょんちょんと肩をつつかれた。とても良い笑顔でニコニコしている彼女に首を傾げる。
「美弥ちゃん?どうしたの?」
「お友達増えたなーって思って。良いことだよ~」
「友達……は違くない?まだ顔見知りというか」
「えぇ~もう友達だと思うけどなぁ。でも味方になってくれる人は多い方が良いよ!ねっ?」
「そうですよ先輩~、私達かわいい後輩&先輩で友達じゃないですか~」
「お、おう……」
「味方が増えるのは小生大歓迎でござるぞ!
虚空蔵殿の活躍は本来ならばもっと理解されて称賛されるべき偉業でござるからなぁ。こうして仲間が増えるのはめでたきことでござる」
「だな。虚空蔵、多数決だから諦めとけ」
からかうように笑う夢芽。
「簡単に言いやがって……まぁ、なんだ、俺の側にいるからには俺が守ってやる。ここにいる全員な」
俺がそう言った瞬間、室内がシン……と静まる。
みんなポカーンとした顔でこっちを見ていて、なんだか体がむず痒くなってきた。
「…………なんだ、なんの間だこれ」
「虚空蔵くんカッコいいなぁって……あ、カッコいいのは元々だね」
「そうだね、主はカッコいいよ」
「すげぇ、流れるように惚気たね~!?確かに男前な発言だったけども!」
「これがこの二人の日常っすからね。な、伊達男」
「日常ではねぇよ。あと俺如きが伊達男って伊達男のレベル低すぎるだろ」
「僕もそんなセリフが似合う男の子になりたいなぁ。
ハードボイルド、みたいな」
「るーくんは今のままでいいの!かわいいのがるーくんなんだから」
「えぇっ?」
「ふふっ……それじゃあ、お世話になります……」
こうして俺達に四人の仲間が増えたのだった。
閲覧ありがとうございました。
今回のプロフィールは瑠夏くん、泉ちゃん、富美花さんの三人です。
《南光台 瑠夏》
年齢:16歳
誕生日9月3日
身長162cm
体重53kg
血液型A型
星座・乙女座
好きな食べ物:
ハンバーグ、豆腐、コールスローサラダ(ドレッシングはその時の気分)
苦手な食べ物:
臭みの強い魚介類(魚介類自体は好き)、酒感の強いお菓子(アルコールに弱い)
趣味
テニス、読書(動物図鑑が好き)
好きな花
コスモス
座右の銘
男の仕事の8割は決断
《名取 泉》
年齢:16歳
誕生日8月31日
身長155cm
体重53kg
血液型AB型
星座・乙女座
好きな食べ物:
アイス、スタバとかそれ系のドリンク
苦手な食べ物:
サラダなどの生野菜(ドレッシング有りならなんとか)
趣味
インターネット、SNS、読書(漫画かラノベ)
好きな花
ひまわり
座右の銘
生きてりゃなんとかなる
《鈎取 富美花》
年齢:18歳
誕生日10月17日
身長164cm
体重50kg
血液型A型
星座・天秤座
好きな食べ物
冷たいうどんやそば、つけ麺、
苦手な食べ物:
にんにく(強すぎなければ食べられる)
趣味
読書(ジャンル問わず)、何気なく辞書を眺める
好きな花
胡蝶蘭
座右の銘
心にとっての読書は、身体にとっての運動と同じである。




