第13話 『激突』
皆さんお久しぶりです、一週間で2回シン仮面ライダーを観たライダー超信者です。
賛否分かれてますが、個人的には「んなもんしゃらくせぇ」と一蹴するぐらいには大好きな作品です。
そして『郷秀樹/帰ってきたウルトラマン』や『リュウソウジャーの長老』を演じた名優・団時朗さんのご冥福をお祈りいたします。
改めて写真や映像を見ると今も昔もものすごい男前でビックリしますね。若い頃はもちろんですが、ウルトラマンメビウス直撃世代なので渋いダンディなおじ様というイメージも強いです。メビウスでのカッコよさは今でもしっかり覚えています。
本当にありがとうございました。
12/4 少し編集しました。
『キャンッ』
『わぁ~かわいい!』
『ちっちゃ~!片手サイズだよ片手!』
『かわいいねぇ』
『この子が新しい家族…………すごいね!』
『おう、ちゃんと面倒見るんだぞ?』
『名前はもう決まってるんだよね?』
『うん!モカちゃんにする!お姉ちゃん達と決めたの!』
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「……じ……主……起きてよ主」
「………………?……!?」
昔の夢を見ていた俺の意識は、家族の誰のものでもない声で一瞬にして現実に引き戻される。余韻や感傷に浸る間もなく眠気が消し飛び、布団から射出されたかの如く飛び出た。
「あ、良かった起きた。朝から元気だね」
そこにいたのは全く知らない、顔を見たことすらない少女だった。
褐色の肌に銀色のメッシュが全体に入った腰を超えるほど長い黒髪、キラキラと光る緑の目を持つその少女は穏やかな笑顔を俺に向ける。
「誰だ、お前…………!?」
当然ながら俺の警戒心は最高にまで達しており、手にオーブを握って臨戦態勢を取る。
エヴォリオルか……?考えたくはないが…………
「どうやって入ってきた?返答次第じゃぶっ殺す……!!」
「ぼ、ボクだよボク、モカだよ」
「舐めくさってんのか。モカは犬だ、人間じゃねぇ」
「そうだけど……朝目が覚めたらこんな姿になっちゃってたんだよ……ほらこれ見て!耳と尻尾!」
……………………信じられないことに、そこには確かに犬の耳と尻尾があった。ピコピコと動いているため作り物ではなく、本当に本物の耳と尻尾で間違いなかった。
目を丸くして驚くがハッとして部屋の中を見渡す。
「………………モカ…………モカ……?」
一緒に寝ていた筈のモカがいない。モカの身長で自力でノブを回して部屋の外に出るなど不可能なため、部屋にいることは間違いない。にも関わらず、どこにもモカの姿が見えなかった。
「ボクならここにいるよ」
「あり得ねぇ………本当にモカ、なのか……?」
「そう言ってるじゃないか。ほら見て、この髪の毛ボクの毛と同じ色なんだよ」
そう言って少女は自分の髪を一房つまんで見せてくる。銀のメッシュが入った黒髪は確かにモカの毛並みと同じ色だが…………
「どうなってんだ……何が…………!?」
改めて少女を見た瞬間固まる。何故少女に耳と尻尾がついていることが一目で理解ったのか。それは少女が一糸まとわぬ姿だったから。
早い話が、目の前の少女は全裸だ。
「づぅぅぅん!!!」
「あ、主?どうしたの?」
咄嗟に視線を反らした。一瞬とはいえあれこれ焼き付いちゃったじゃねぇか……!!
「なんっっで服着てねぇんだお前……!!?」
「服?ボクお洋服はいつも着てないじゃないか、何か変かな……」
自分の身体をあちこち見たり触ったりする少女には恥じらいなど一切なく、さも裸が当然であるかのような態度だ。
とにかくこのままでいさせるわけにもいかないため俺の服を適当に投げ渡して着させる。
(これお姉ちゃん達に何て言えばいいんだ……)
「ふふっ……主の匂いがする」
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「ぺリルも死んだ、次は誰が行くの?」
「俺が行く。次のプレイヤーはこのタスクだ」
「はっ、突っ込んでぶち当たるしか能の無ぇイノシシがよく言うぜ。……次のプレイヤーは俺だ」
「あぁ?噛み付くしか出来ねぇ魚野郎が何か言ったかシャープ。アルクスとブリッツみてぇになってから出直してこいカスが」
「口のきき方に気をつけろよ豚野郎、なんなら手始めにお前から殺したっていいんだぞ」
「やれるもんならなぁ?」
「あーあー、また始まった」
「いつものだ、気に止める必要もないな」
「…………そうだ。タスク、シャープ、喧嘩ならスペクター達のいる世界でやってきたらどうだい?どれだけ派手に暴れたって問題ないし、人間も殺せてカウントを稼げる。勝った方が次のプレイヤーで、片方のカウントも加算される。悪い考えじゃないと思うよ」
「おぉ!流石テオス様、そのご提案いただきます!」
「感謝しますテオス様。いくぞタスク、ぼやぼやすんなイノシシ」
「てめぇも吠え面かくなよ雑魚が」
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「ほ、本当にモカ……なんだよね?」
「うん、ボクだよ菜月ちゃん」
月姉は驚きと苦笑が混ざった表情を浮かべている。
あれから直ぐに三人を起こし、モカ……を名乗る少女について話し合っていた。
この家の愛犬を名乗る、端から見りゃ頭のイカれた少女を前に三人はただただ困惑していた。いや俺も困惑している真っ最中だが。
「虚空蔵ちゃんこれって……」
「俺も信じてないけど事実としてモカが何処にもいないんだ。それにこいつの耳と尻尾も間違いなく本物なんだよ、さっき触ったけど本当に体の一部なんだ……」
「モカが人になっちゃった……?」
「ボクも何が何だか分からないけど…………前から人間になってみたいって思ってたから、それが叶ったのかな」
少女は嬉しそうに微笑むが、こっちは頭痛の種が増えてため息しか出ない。仮に本当にモカだとしてなんで人間になってしまったのかが分からない以上、手の付けようも施しようもない。
次から次へと厄介事ばっかりだクソったれ……
「…………つーかこの状況で言うのもなんだけどよ、モカって一人称〝ボク〟なんだな」
「あれ、変かな?昔主が自分のことをそう呼んでたから一番しっくりくるんだけど」
「何時の話だよそれ……てか具合悪いのはどうなったんだよ、昨日調子悪そうだったろ」
「あっ、そういえばそうだった。全然なんともないよ」
「心当たりはなんかねぇのか?」
「うーん」
数秒ほど悩んだ少女は「あっ」と思い付いたように声を上げた。
「昨日優衣ちゃんの部屋で変な石を食べちゃったんだ。きっとそれだよ」
「石ぃ?確かにモカは食い意地張ってたけど石食うほどアホじゃねぇぞ」
「でも石に食べ物の匂い付けたら迷わず食べそうだよねあの子」
「それはそう」
「ひどいなぁ」
「…………!ねぇモカ、食べちゃった石ってもしかして虹色の綺麗な石?」
「そう、それ」
優衣の質問に頷く少女。
「虹色の石?優衣ちゃんそんなの持ってたの?」
「この前にぃにが戦った河原で拾ったんだ。キラキラしてる結晶や水晶みたいでね、すごく綺麗なんだよ。でもお部屋から無くなってて……」
「……………………まさか」
嫌な予感に体が冷える感覚を感じた瞬間、転がり込むように奈緒が茶の間に飛び込んできた。
「虚空蔵さん大丈夫ですか!!?皆さんそいつから離れて早く!!」
「な、奈緒ちゃん?」
「なんでエヴォリオルがここにいるんだ!!
その人達に手出しなんかさせねーぞ!!」
「奈緒落ち着け!」
「落ち着けるわけないでしょう!!そいつは〝エヴォリオル〟です早く殺さないと!!」
敵意剥き出しの奈緒を何とか宥めて状況を説明する。
しばらく考え込んだ後、奈緒は口を開いた。
「……多分その子は本当にモカちゃんだと思います。
モカちゃんが優衣さんの拾った魔皇石……状況的にあのテッポウウオのエヴォリオルが持っていた物でしょう。それを取り込み、偶々適合出来てしまった……そして〝人間になりたい〟という願いが具現化されたことで人間になった……恐らくはこんな感じでしょう。
魔皇石の力を感じるので、少なくともエヴォリオル化していることは間違いないです」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!エヴォリオルって未確認のことだよね?モカがあんな怪物になったって言いたいわけっ!?」
「月お姉ちゃん落ち着いて……!」
「…………あ、そういえば目が覚めたらこんなのがあったんだけど、奈緒ちゃんなら知ってるかな?」
そう言ってモカが取り出したのはエヴォリオル達が使うあのオーブだった。
「〝エヴォルオーブ〟……!エヴォリオルの証です。やっぱり間違いありません」
「冗談だろ…………」
頭を押さえて座り込む。真っ先に頭をよぎったのは『家族であるモカを敵として倒さなければいけない』という脳内に浮かべるだけでおぞましい最悪の結末。
上手く言葉に出来ない感情や不安を叩き出すように握った拳で額を叩く。
「…………奈緒、モカはどうなる?もう元には戻れないのか?」
「残念ですが不可能です。人と犬の姿を切り替えることなら可能だと思いますが…………」
「モカを……倒さなきゃいけないのか?」
「ひとまず人を襲わないなら保留、ということにしておきましょう。ただ……魔皇石の力は極めて強大です。圧倒的な力に抗えず、呑み込まれて身も心も化け物になり、外道に堕ちた成れの果てが奴らですから。
心を蝕むほどの強大な力に呑まれず、自分を保ち続ける……それが如何に困難を極めるか……」
重苦しい空気が部屋中に充満する。そんな中、何かに気付いたモカが更に追い打ちをかけるように口を開く。
「! 何だろう、この感じ……何だかすごく嫌な気配がした……うっすらだけど嫌な臭いもする……!」
「まさかエヴォリオルか?」
「……モカちゃんは動物からエヴォリオルになった存在、感覚の鋭さや索敵範囲の広さが人間がベースのエヴォリオルより優れているのかもしれません。動物からエヴォリオルになった例を見たことがないので何とも言えない所はありますが……」
「とにかく行くしかねぇか……モカ悪い、一緒に来てくれ!」
モカの手を引いて庭へ飛び出し、バイクのエンジンをかける。
「これかぶってしっかり掴まってろ、いいな!臭いと気配のする方への案内も頼むぞ!」
「分かった、主の言う通りにする」
返事を聞くのとほぼ同時にアクセルを思い切り吹かし、勢いよく走り出すのだった。
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「あーあー、学校やだな~」
「あはは……今日行ったらお休みだし、頑張ろうよ」
私、名取泉のボヤきに南光台琉夏が苦笑する。
「泉ちゃん、頑張ろう……ね?」
「はーい……でも富美花先輩もぶっちゃけ嫌じゃないですかー?るーくんだって嫌でしょ?」
途中で出会った富美花先輩もるーくんも困ったような顔で笑う。
「まぁ確かに月曜日とか火曜日に比べたら気は楽ですけど~、最終日は最終日でダルいというか。あるじゃないですかそーいうの」
「気持ちは分からなくもないけど…………」
「まーた先輩に会えたらなぁ……」
「泉ちゃん、七ヶ浜さんと知り合いなの……?」
「昔ちょっと。でもあのリアクションだと覚えてないんだろうな~」
そう言って前に向き直った瞬間、目の前を爆発したかのように瓦礫と土砂が覆った。
突然の衝撃に後ろに体が飛ぶ。
「きゃあああ!!」
「うわぁぁぁ!!」
辛うじて巻き込まれずには済んだけれど、あまりに突然すぎて何が何だか理解が出来ず立ち上がることも出来ない。
そんな中現れたのは━━
「ふんぬぅあっ!!」
「死ね!!」
異形の人型生命体、世間で未確認異形生命体と呼ばれている怪物だった。
「未確認…………!?」
「なんで、こんな所にも……!?」
「あぁ?……人間か、邪魔だぞゴミ共!」
「退けタスク!そいつらは俺が殺す!」
二体の未確認は仲間割れをしているのか、私達をそっちのけにして取っ組み合い始める。いや、取っ組み合いというより殺し合いといった方が雰囲気としては正しいかもしれない。
とにもかくにも早く逃げなきゃ…………!!
「富美花先輩立てますか?」
「た、多分……立てなかったら置いていって……」
「そんなこと出来ませんよ、しっかり掴まってください!」
るーくんと一緒に富美花先輩に肩を貸して急いでこの場から離れる。ふと未確認がふっ飛んできた方を見るとたくさんの人達が倒れているのが目に入り、反射的に視線を反らす。
「っ!逃げてんじゃねぇぞぉ!!」
「余所見してんなよイノシシがぁっ!!」
「ひっ……」
「誰か、誰かいませんか!!誰かぁ!!」
叫ぶけど当然周りには誰もいない。もうダメだと泣きそうになった時、遠くから一台のバイクがこっちに向かって走ってきているのが見えた。
一瞬警察かと思ったけど正体は直ぐに分かった。エンジンの爆音が轟き、未確認第二号の乗ったモンスターバイクが私達の頭上を飛び越えていく。
そして後部座席に乗っていた女性が宙返りしながら目の前に降り立った。
「うわぁ!?」
「だ、誰……ですか……?」
「安心して、ボク達は味方だよ。さぁこっち、慌てなくて大丈夫」
褐色肌に黒髪のエキゾチックな雰囲気の女性に連れられ、私達はひとまず安全な距離まで避難した。
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(まさかあの三人がいるとはな…………ひとまずモカが避難させてくれたから大丈夫だろうが……)
モカが鈎取先輩、名取、南光台の三人を避難させるのを確認し、エヴォリオルに向き合う。
一方は蛮族を思わせるイノシシ型、もう一方は鋭い牙に恐ろしい顔立ちをした魚型のエヴォリオルだった。
「スペクター!」
「面白ぇ!一番の獲物がのこのこやって来たか!」
「今度も二体か……他にやることねぇのかボンクラ共」
「俺はワイルドボアエヴォリオルのタスク!」
「俺はウルフフィッシュエヴォリオルのシャープ。てめぇのその首、俺が貰う!!」
言うが早いか二体のエヴォリオルは俺に向かってくる。突撃してきたイノシシ型を正面から押さえ込み、顔面に膝蹴り、後頭部に肘打ちのサンドイッチ攻撃を加えて投げ飛ばす。すかさず噛みついてきた魚型をパンチで打ちのめすと再度突っ込んできたイノシシ型にぶつける。
「邪魔だカス殺すぞ!!」
「てめえこそどこに目ぇ付けてんだクソイノシシが!!ブチ殺すぞ!!」
「あのっしゃあっっ!!」
口論を始めた二体を仲良くブットブレイカーで殴り飛ばす。吹っ飛んだ二体を殴りつけ、こちらが優勢に立ち回る。
「調子乗ってんじゃねぇぞスペクタァァ!!」
イノシシ型の突進を防いで流そうとした時、敵は長い牙を利用して俺を掬い、そのまま空中にかち上げられた。
更に魚型が鋭い牙を剥き出しにして襲いかかってくるがブットブレイカーを噛ませる形で防ぎ、そのまま振り回して地面に叩き付けた。
「ごがっ…………!?」
「ちっ……!強いってのは本当みたいだな」
「当たりめぇだろボケ……ん?」
エンジンの音が聞こえた次の瞬間、爆音上げてやって来た赤い影ーーファントムがイノシシ型を撥ね飛ばす。
「ファントム!」
「がっ、あぁ…………!!お前か、最近現れたファントムとかいうヤツは!……」
「ぴんぽーん正解。正解者には地獄行き片道切符のプレゼントでーす」
相変わらずのダルチャラい口調で言うとイノシシ型に蹴りかかるファントム。くるくると回るように蹴りを放ち、振り向き様にベルトから武器を引き抜く。
そしてよろめくイノシシ型の頭部を豪快なスイングで殴り飛ばした。
「イェーイ。今の野球だったら絶対ホームラン……っしょ!!」
「がぁ!!」
「容赦ねぇなぁ……まぁお互い様かっ!」
「ぐがっ!!」
倒れていた魚型を蹴り上げ、ブットブレイカーでかっ飛ばす。
「くそがっ……!状況が悪い……!」
「数もさして稼いでない、今回は預けてやる!」
「待てっ!」
エヴォリオルは姿を消し、後には俺達二人が残った。用無いと言わんばかりに早々に立ち去ろうとするファントムを見逃さず、前に立ち塞がる。
「…………何」
「悪いな、聞きてぇ話があるって言ったろ」
「いやしつこ、なんも話すことなんか無いっての」
「シラを切るには無理がある反応だったけどな。
言っただろ、出来れば手荒な真似はしたくない」
頭を押さえて呆れた素振りを見せるファントム。しかしため息を吐くと足を持ち上げてI字バランスのような体勢になった。
「分かったいいよ、じゃあ力ずくで聞いてみなよ。それがお望みなんでしょ?」
「…………だな、その方が性に合ってる」
俺も構えて臨戦態勢になった直後、大幅に遅れて到着したパトカーから警官が大勢現れ、周囲を取り囲まれる。
このシチュエーションついこないだもあった気がすんなぁ…………これも前に似たようなこと言ったな…。
「!? 刃野さんあれは!?」
「おいおいおいおい第二号が二人ってか!?冗談だろ…………!」
「刃野刑事どうしますか!?」
「とにかく本部に連絡だ急げっ!!」
「本部、緊急事態!第二号に酷似した新たな未確認異形生命体が出現!至急応援願います!!」
「うわ、なんかメンドくなってきてんじゃん。どーしてくれんのこれ」
「場所を変えるぞ。〝上〟があんだろ」
「……あぁ、成る」
一瞬の沈黙、そして同時に大空へと跳んだ。
「「ーー!!」」
拳と拳がぶつかり、それを皮切りに空中での激しい攻防が始まった。無数のパンチとキックが飛び交い、重い打撃音と衝撃が空に響き渡る。
一旦道路を挟んで向かい合ったビルの屋上にそれぞれ着地すると助走をつけて跳び、再び空中戦を展開する。
街中を走り、跳び回りながら空中戦を繰り広げ、少しずつ人の少ない場所へと移動していく。
「あんた強いね、正直予想以上っ!」
「お前もな!多分俺が今まで戦ってきた中で、お前が一番強い!」
それだけ言葉を交わすと戦闘はどんどん激しくなっていき、辿り着いた大きな工場地帯に人がいないことを確認した上でそのまま突入、タンクやパイプ等を足場にしながら一進一退の攻防が続く。そしてほぼ同時にベルトのオーブを押し込み、空高く飛んだ。
「スペクターキィィィック!!!!」
「マタンサ!デル!ディアブロォォォ!!!!」
青と赤、二つの力が空中で激突する。拮抗する力が火花を散らし、空気が、工場全体が、まるで強大な力に怯えるかのように震えている。
「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
互いに譲らない互角のぶつかり合い。このままでは埒が明かないと悟った俺はダメ押しでもう一度オーブを押し込み、更なるエネルギーを右足に集約させる。
『スペクターインパクト!!』
「やば「キックゥゥァァァァァッッ!!!!!」
雄叫びと共にファントムのキックを撃ち破り、こちらの必殺キックが命中した。炸裂する瞬間に威力は弱めたものの、隕石の如く猛スピードで地上に激突したファントムは衝撃で出来たクレーターの中で倒れ伏して動かない。
「畜生……そこそこ本気で蹴りやがって…………!」
「俺の勝ちだファントム。約束通りお前が知ってること、全部話してもらうぞ」
ひとまず倒れているファントムを引き起こそうと踏み出した時、どこからともなく一人の少女が飛び出してきた。
「虚空蔵さん待って!!だめっ!!」
ファントムを護るように俺の前に立った少女はこの場に似つかわしくない可憐な雰囲気を醸し出している。系統としては美弥ちゃんに近い正統派な美少女だ。
まぁ今は外見なんてどうでもいい、問題は見覚えのないこの少女が俺の名前、そして正体を知っていることだ。
「誰だ。なんで俺を知ってる」
「私っ那智ヶ丘瞳です!覚えていませんか、昔よく遊んでもらった……!」
「ひと、み…………」
『ごめんね虚空蔵、瞳の相手させちゃって』
『大丈夫だよー、瞳ちゃん良いこだもん』
『こくぞうお兄ちゃん次これやりたーい!』
『うん、いいよ~』
「…………あり得ねぇ……!!本当に、本当に瞳ちゃんか……?」
「うん……!私です、虚空蔵お兄ちゃん……!」
「瞳……あんたっ、出てくるなっていったでしょ!なんで出てきたっ……!」
「だってお姉ちゃん!これ以上虚空蔵お兄ちゃんと戦う必要なんてないよ!二人が戦って良いことなんか何もないのに…………!」
瞳ちゃんの口から出たお姉ちゃんという言葉。
「お姉ちゃん…………お前まさか「だから余計なこと言うなってのっ!!」
ファントムは瞳ちゃんを抱き抱えて飛び立つと空間の裂け目を作ってそのまま消えてしまった。
「っ…………くそっ」
裂け目の消えた空を見上げる。
「…………………………もしあの子が本当に瞳ちゃんなら、ファントムは…………」
サイレンが聞こえてくるまでのおよそ数分、俺はその場に立ち尽くしていた。
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七ヶ浜家 AM9:29
「虚空蔵くん、話って?」
「妙に改まってどうしたんだよ。なんかあったのか?学校が休みになったってんなら知ってるぞ?」
「…………………………………………二人共、今から滅茶苦茶あり得ないこと言うけど……信じてくれるか?」
「もちろん」
「当たり前だろ」
「…………ファントムの正体が分かった」
「! 本当っ?」
「誰なんだよ。やっぱりお前の知り合いか?」
「俺、瞳ちゃんに会ったんだ。恵里の妹の、あの瞳ちゃんだよ」
「…………………………え…………?」
「は、はぁ…………!?お前、何言ってるか分かってんのか!?」
「分かってる、俺も完全に信じたわけじゃねーよ。
…………でも瞳ちゃんは俺を虚空蔵お兄ちゃんって呼んだんだよ、しかもファントムのことをお姉ちゃんって呼んでた。」
「……………………虚空蔵くん……まさか、まさかファントムの正体って……!!」
「ファントムの正体は恵里だ。
七年前に姿を消した、俺達の幼馴染みだ」
閲覧ありがとうございました。
スペクターとファントムの戦闘シーンがシン仮面ライダーの1号2号の戦闘シーンと割りと似た描写になってますが、パロディしたわけではなくマジで偶然です。
そもそもこのシーンを考えた、書いたのが公開より前なんです………シンジテ……




