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12/24

第12話 『剛堅』

皆さん、明けましておめでとうございます。ライダー超信者です。

3ヶ月も投稿が遅れて申し訳ありません……こんなどうしようもない遅筆野郎でもよければ今年もお付き合いいただければ嬉しいです。


3/23:デストラクションフォームのスペックをほんの少し修正しました。

12/4:諸々編集、修正しました。


杜都町 AM12:01



「もうお昼か~早いなぁ」



私は会社の屋上で空を見上げながら呟いた。最近いろんなことがあったなぁと思い返していく。


(虚空蔵ちゃんが第二号…………未だに現実味が湧かない……まさかあの子があんな……)


未確認の中でも特に話題を集めている第二号。その正体がまさか虚空蔵ちゃんだったなんて…………その上奈緒ちゃんは異世界から来た人間だっていうし…………正直話が大き過ぎて今でも理解が追い付いていないけど一つ納得出来ることもあった。

なんで第二号は人を守るような行動を見せていたのか。テレビでも毎日のように議論されていた謎の答えは私達からすればとても簡単なものだった。

虚空蔵ちゃん(あの子)なら絶対そうする。優しくて強い子だから。


(でも出来ることなら、もう未確認なんて出なければいいのに)


そう思ってご飯を食べようとした時、同僚のみんながやって来た。


「やっほー(あん)ちゃん!一緒に食ーべよ!」

「亜樹子ちゃんそんなに大声出さなくても……」

「亜樹子さんうるさいですよ。杏さん、私達もご一緒していいですか?」

「うん、いいよー」


同じ部署の登米亜樹子ちゃん、大崎比奈ちゃん、栗原夏海ちゃんは私の隣に座ってそれぞれのお弁当を広げる。


「あ~~お腹空いた~~」

「あ、そのお弁当って弟さんの?」

「うん、弟の手作りなんだ~」


虚空蔵ちゃんが作ってくれたお弁当を開ける。今日のおかずは鶏肉のソテーに卵焼き、ブロッコリーとプチトマト、昨日作り置きされていた無限ピーマンだ。


「いつ見てもよく出来てますよね……素敵な弟さんで羨ましいです」

「ふふっ……うん、素敵で可愛い弟だよ」

「いーなー私もそんなきゃわいい弟欲しかったなぁ」

「私も弟はいるけど普通に仲が良いくらいだなぁ。可愛い子ではあるけどね」


そうしてみんなで笑いながら食事をしていると、ふと亜樹子ちゃんが思い出したように口を開いた。それは未確認異形生命体……虚空蔵ちゃん達がエヴォリオルと呼ぶ存在のことだった。


「そーいえば朝のニュース見たぁ?また未確認の犠牲者が云々って嫌な話ばっかりでさぁ、あいつらなんなんだろーね?未だになんにも分かってないみたいだし」

「うーん…………宇宙人、とか?地球の生き物じゃないことぐらいしか分かんないや」

「宇宙人説が全く荒唐無稽ではないのが恐ろしい所ですね……」

「怖い世の中になっちゃったよね……ほんと、これからどうなっちゃうんだか」

「……みんなは第二号についてはどう思う?」

「二号ってあの青と黒の?……うーん悪い存在じゃないって話は聞くけどやっぱり怖いかな……」

「確かに今のところ人を襲ったというニュースは聞きませんが、まだ人間の味方だと決まったわけでもありませんし安心は出来ないと思います」

「そもそもなんで同じ未確認同士で戦ってるんだろ?もうわけ分かんないよね~~怪物同士の喧嘩なら人間の迷惑にならないトコでやってほしいよ」


第二号の正体を知らないみんなの考えはやっぱり否定寄りだった。仕方がないとはいえ、みんなのために戦っているあの子の努力が理解されないのは悲しいし寂しい。


「…………今日は何事も無いといいなぁ」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「…………随分派手にやられたのね~」


学園の食堂。昨日の事の顛末を聞いた楓さんはパンを食べながら気楽な口調で言う。


「虚空蔵殿怪我は?大丈夫でござるか?」

「問題ねぇ、次は勝つ」


楓さんに誘われた俺達は、いつもの面子に楓さんを加えた五人で昼飯を食べていた。

賑わうを通り越して半ば戦争のようになっている食堂の喧騒、そしてみんなの憧れである生徒会長と一緒に食事をしている問題児という珍しい光景を見る奇異の視線を感じながらおかずの鶏肉ソテーを齧ってタッパーに詰めた米をかき込む。


「しかし爆発そのものの力を持ったエヴォリオルとは……何というか、バラエティー豊かでござるなぁ」

「今までは生物の能力を持っている怪人だったけど必ずしもそればかりじゃない、事象や現象の力を持った怪人もいるってことなのね」

「奈緒が言うには能力の縛りはほとんどないそうです。割りと何でもありって言ってました。ドーパントみたいなモンですね」


興味深そうにしている楓さんに説明し、ため息を一つ吐いた。


「はぁ…………にしても刃さんと氷川さんがいるなんてなぁ……」

「えっ、そうなのっ?」

「おーマジか。まぁ駆り出されててもおかしくはないよなぁ状況が状況だし」

「誰よその女っ、誰よその女っ!」

「そーよそーよその女誰よ!」

「揃ってはたき斃すぞボケ共」

「「やだこわ~~~~い たおすの字がこわ~~い」」


ノリノリでウザ絡みしてくる楓さんと楽人にこめかみをピクつかせると、ヤバいと察した美弥ちゃんと夢芽が割り込むように説明を始める。


「虚空蔵が中学ん時によくお世話になってたお巡りさんですよ。中学ん時のこいつマジで猛獣みたいな奴だったんで。あとどっちも男です」

「それで私達も顔見知りなんです、ねっ?」

「スゥー…………刃野武と氷川潤、どっちも杜都警察署のお巡りさんですよ。刃さんは俺の父親の学生時代の後輩、氷川さんは刃さんの警察としての後輩です。例の一件で色々お世話になったんですよ」

「中学……というと虚空蔵殿がブイブイ言わせていた頃でござるか。別の中学でござったが名前や通り名はよく聞いていたでござるな」

「悪鬼羅刹、宮城の魔王、東北の鬼神、無敵、虐殺者(カーネイジ)喧嘩屋(エクスキューショナー)、日本で一番喧嘩が強い男、嘘みたいな通り名ばっかりだよねぇ~~。

ていうか虚空蔵くんはなんで喧嘩するようになったの?」

「……………………………んー……………」


楓さんの質問にどう返したものかと考えていると、向こうに見覚えのある三人組が見えた。


「………………ん?あれ鈎取先輩か」


そこにいたのは鈎取先輩と南光台、名取の三人だった。混雑の中、三人共座れる場所を探しているのか辺りを見回しており、誘おうと思い声を掛けようとするが俺より早く楓さんが動く。


「やっほっほー!富美花ちゃんお昼?」

「あ、楓ちゃん……うん、でも座れる場所がなくて……」

「この学校のお昼っていっつもスゴい混み具合ですもんね。学食美味しいし安いからしょうがないんですけど」

「なら私達と一緒に食べない?ほら、そこで食べてたの。どうせなら一緒の方が楽しいし!」


そう言うが早いか楓さんは三人を引き連れて戻ってきた。その押しの強さに苦笑しつつ使われていない三人分の椅子を持ってきて並べる。


「虚空蔵先輩ありがとうございます!」

「昨日はありがとうございました。七ヶ浜先輩達のおかげですごく早く終わりました」

「いえいえ~また何かあったら言ってね!いつでもお手伝いするよ!」

「美弥姉ぇんな簡単に安請け合いすんなよ」

「おう。つっても俺ほとんど何もしてねぇけどな」

「そんなことないですよ!僕達だけだと三年生の先輩達に注意出来なかったと思いますから……」

「そうですよー虚空蔵先輩がいなかったらあの人達絶対もっと調子乗ってましたもん」

「まぁ、それはそうだろうな。あの手のバカは一回ギッチリ痛い目見ねぇと分かんねぇ生き物だって相場が決まってる」

「そうですよもっと胸張りましょう!あ、隣座ってもいいですかっ?」


名取は言うが早いか俺の隣に椅子を置き、俺の返事を待たずして隣に座った。

なんか距離近ぇなこいつ……楓さんといい名取といい今時の女子高生ってこれくらいが普通なのか?


「おじゃましまーす♪︎」

「せめて返事を待て返事を……ったく好きにしろ」

「えへへ。あ!良かったらおかず交換しませんか?」

「あぁ?あー……好きなもん持ってけ」

「わーい。じゃあチキン頂きでーす…………!美味しいです!え、すごっ!めっちゃ美味しい!!」

「そりゃ良かった。美弥ちゃんも食べるかい?」

「いいの?やったー」


美弥ちゃんにもお裾分けしつつ昼飯を食べ進める。しかしこの三人がいるとエヴォリオルの話が出来ねぇな…………まぁ飯の時ぐらいは忘れてもいいか。


「そういえば今日はお手伝いしなくても大丈夫?図書室の先生、今日もいないんだよね?」

「出た、美弥姉ぇのお人好し」

「富美花先輩どうしましょうか?」

「お願いしちゃいましょうよ!折角先輩方もこう言ってくれてることですし!」

「先輩方って美弥ちゃん一人だけなんだが?一言も何も言ってねぇんだが?」

「まぁオレ達もやることないから別にいいけどな」

「えぇと、それじゃあお願いしてもいい、かな……?」

「はいっ!」


こうして美弥ちゃんに流されるように再び図書室を手伝うことが決まったのだった。こうやって美弥ちゃんのお人好しムーヴに巻き込まれるのはいつものことであり、否定も拒否もするつもりは更々ない。

とっくのとうの慣れっこだ。


(ま、あの風間(バカタレ)が来たら追っ払わなきゃなんねぇし、どのみち行くしかねぇか)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「ちっっ!スペクターのヤロウちったぁやるみてぇじゃねぇか……だが勝つのは俺だ!次は必ずブッ殺してやる……!」

「息巻くのはいいけどしっかりしろよぉ。今回のスペクター、前の世界の奴より強いみたいじゃん」

「気になる~~早く殺しあってみたいにゃ~~♡」

「ぺリル、気をつけろ。以前のスペクターと同じであれば、まだ紫の姿が出ていない」

「分かってる!今度こそ跡形もなく消し飛ばしてやるぜ…………!!」



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「かっつじー♪︎かっつじー♪︎みーんちょーたーい♪︎行書に楷書にゴシックたーい♪︎」

「美弥姉ぇなんだその珍妙な歌」

「うん 億は稼げる」

「虚空蔵もバカ言ってないで動け」


美弥ちゃんのかわいさに尊さを感じていた俺を一蹴して夢芽は作業に戻る。

返却されて戻ってきた本を棚に戻している真っ最中なのだが、美弥ちゃん効果と言うべきか返却された本の数がかなり多く、カウンターは鈎取先輩達が、棚への戻しは俺達が担当していた。


「それにしても多いな……ったく碌に読みもしねぇ癖に美弥ちゃんに釣られてホイホイ借りやがって……」

「まぁまぁ、本を読むようになるのは良いことだよ」

「オレは活字苦手だけどさぁ、本ってそんな面白いかぁ?」

「そりゃな。折角だから夢芽も読んでみろよ。これとかどうだ?この厚みなら五百半ばから六百ページくらいだから丁度いいぞ」

「どこをどう取って丁度いいんだ!?そこはせめてラノベみたいな文庫本にしろよ明らかに挿し絵すらないだろこれ!?活字苦手な人間にこんな辞書みたいなの勧めるって最早拷問だぞ!つーかさらっと厚みでページ数割り出すなよ当たってんじゃねーか!!」

「「お~~」」

「それなら、直感的にこれだと思った物を手に取ってみてはいかがでしょうか……」


夢芽の怒涛のツッコミに思わず感嘆の声が出る俺と美弥ちゃん。そこに鈎取先輩がやって来た。


「あ、富美花さん!受け付けの方はもう大丈夫なんですか?」

「うん、もう落ち着いたから大丈夫…………えっと……」

「あ、多賀城夢芽です。夢芽でいいですよ」

「えっと、じゃあ夢芽ちゃん……本はあんまり読まないんですか……?」

「い、いやぁ、オレ漫画くらいしか読まないんですよ。活字はどうにも苦手なんで……」

「そうですか……」


バツが悪そうに苦笑いする夢芽に鈎取先輩は数秒思案して口を開いた。


「もし活字に苦手意識があるなら、絵本や児童向けの本でも構いません……大切なのは、本や文字に触れること……少しずつ字に慣れていけばいいだけですから」

「お、おぉ、なるほど……」

「もちろん無理強いはしません…………本そのものに興味がない方も沢山います…………でも本が素敵なものであることも知っていただきたい、という気持ちもあって……差し出がましくてすみません……」

「いやいや!先輩は悪くないっすよ!」

「夢芽、帰ったら何冊か貸してやるから試しに読んでみたらどうだ?宮部みゆきさんとか伊坂幸太郎さんとかオススメだな」

「…………!私も、そのお二人は大好きな作家さんです……!七ヶ浜さんの好きな作品はなんですか……?」


鈎取先輩は目をキラキラさせながらズイッ、と顔を近付けてきた。心なしか言葉にも熱が入っている。

その目に俺は見覚えがあった。これは所謂、〝同族を見つけた時の目〟だと。


「そ、そうですね……お気に入りでいくとあかんべぇとかしゃばけシリーズとかグラスホッパーとかですかね」

「素敵な作品ばかりですね…………私も大好きです」


趣味の合う人間に会えたのが余程嬉しいのだろう、鈎取先輩は顔を綻ばせる。

と、一体いつからいたのか、いきなり現れた楓さんが背後から鈎取先輩に抱き付いた。


「富ぅ美花ちゅわーん♪︎」

「きゃっ……楓ちゃん……!」

「楓さん。いつの間に」

「生徒会の仕事爆速で片付けてきたんだー。なんかやることな~い~?」

「え、えっと、じゃあ本棚への戻し、お願いしてもいい……?あ、あと、揉まないで……」


鈎取先輩の胸を揉みしだいていた楓さんを呆れながらひっぺがす。正直目のやり場に滅茶苦茶困った。


「楓さん白昼堂々セクハラしないでください」

「えー、これ挨拶代わりなんだけどな~」

「挨拶代わりにチチ揉まないでください」

「チッチッチッチおっ「喋るな」」

「あ、富美花せんぱ~い」

「…………?泉ちゃん、どうしたの?」

「さっきパソコン確認したら期限過ぎてる人が何人かいるんです。催促しにいった方がいいですかね?三週間近く返ってきてないのもあるんですよ!」


訴える名取の勢いに押されて鈎取先輩が首を縦に振ると、今度は俺の方に来る。


「美弥先輩!虚空蔵先輩お借りしてもいいですか!」

「虚空蔵くんは?」

「まぁ俺はいいけど……なんで俺だ?」

「虚空蔵先輩に取り立てられたら絶対返すだろうなーって思って」

「借金取りか地上げ屋か俺は」

「じゃあ決定ですね!リストはあるから行きましょう!」


俺のツッコミなど意に介さず、名取は俺の手を掴んでそのまま引っ張っていく。どことなく楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。


「美弥ちゃーん行ってくるねー」

「行ってらっしゃーい」


美弥ちゃんに手を振り、名取と共に図書室を後にしたのだった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


虚空蔵と泉を見送り作業を続けるオレ達三人。最後の一冊をオレが戻したことで、ようやっと棚への戻し作業が終わったのであった。


「ひやぁ~~やっと終わったぜ……」

「夢芽ちゃんおつかれ様。いっぱいあったね~」

「本当な。図書委員はこれ毎回やらなきゃいけないのか……大変ですね」

「いえ……場所や棚は、背表紙のシールで分かるので、慣れれば直ぐですよ」


成る程、と感心しているとガラガラと図書室の扉が開く。冗談半分に『もう帰ってきたのか?』と思って振り向くと、そこに立っていたのは風間だった。

思わず「ゲッ」と小さく声が漏れる。


「やぁ美弥ちゃん。今日も手伝いをしてるって聞いたから来てみたよ」

「あ、伽怜良くん。いらっしゃーい」

(おいおいおい面倒くさいのが来たなぁ~~~~美弥姉ぇ大丈夫かよ……)

「………………今日は七ヶ浜の馬鹿はいないんだな」


風間は辺りを見渡すとどこか勝ち誇ったように鼻で笑う。


「今は席外してるんだよ、虚空蔵が帰ってくる前に帰った方がいいぞ」

「あぁ、そうするよ。俺だってあの馬鹿の顔なんて見たくないしな」


それだけ言って風間は美弥姉ぇに向き直る。


「美弥ちゃん。もし良ければ今度の休みに何処かに出掛けない?そのお誘いに来たんだ」

「お出かけ?」

「そう、どうかな」


風間の提案は要するにデートの誘いだった。まぁ美弥姉ぇがデートに誘われるのは十回二十回なんて話じゃないから大して驚かないが、問題なのは相手が風間だということ。

虚空蔵程じゃないにしろ、正直オレもあんま好きじゃないんだよなぁこいつ…………ねちっこいというか嫌味ったらしいというか…………


「今のところ特に予定はないけど……虚空蔵くんと夢芽ちゃんと一緒にのんびりしてるかなぁ?」

「なら七ヶ浜なんか放って多賀城も一緒に遊びに行こうよ。まぁ多賀城さえ良ければだけど」


口ではそう言うが、風間の目には『断れ』『美弥ちゃんと二人にさせろ』という本音がありありと浮かんでおり、思わず苦笑いしながら誘いを蹴る。


「オレはパス。つーか美弥姉ぇ、休みの日はなんやかんや虚空蔵との用事入るんだから約束はしない方がいいぞ」

「うーんそれもそうだねぇ……」

「七ヶ浜なんて捨てておけばいいさ。あんなどうしようもないカスといたって百害あって一利なし、あいつといるくらいなら俺といる方が絶対にいいよ。

そもそも、あのゴミと美弥ちゃんとじゃ全く釣り合ってないしね」

「随分な言い様じゃねーか、お前があいつの何知ってんだよ?」

「ははっ。何って、暴力しか取り柄のないイキりチンピラだろ?それ以外に何かあるか?

確認出来ないのをいいことに暴走族潰しだなんだと大法螺吹いていい気になってるみたいだけど、俺から言わせれば所詮暴力しか能がない社会不適合者さ。

あんなDQN丸出しの底辺のクズがよく何食わぬ顔で学校に通えているもんだとつくづく思うよ。脅しをかけたのか裏口入学したのかは知らないが、あいつに相応しいのは学校じゃなくて少年院だろ」


徹底的なまでに虚空蔵を見下し、嘲笑う風間。

誹謗中傷同然の物言いに頭に来たオレが詰め寄ろうとした時、それより早く美弥姉ぇが動いていた。


「伽怜良くんごめんね。お出かけは行けないかな」

「え……ど、どうして?」

「虚空蔵くんは確かに暴れん坊だよ。喧嘩も今までたくさんしてきたし、怖がられても仕方ないところはあると思う。虚空蔵くんもそれは自業自得だからって自分で認めてる。

でもね、今伽怜良くんの言ったような人では絶対ないよ。それは私と夢芽ちゃんが胸を張って言える」

「え、えぇっ?いやいや、あんなドロップアウト、美弥ちゃんの隣にいることさえ烏滸がましいのに……」


「確かにちょっとだけぶっきらぼうで怪獣みたいなところもあるかもしれないけど……でも本当はとっても優しくて、思いやりがあって、私のことお人好しっていうけど自分も困っている人がいたら放っとけない、ちょっぴり恥ずかしがり屋で素敵な男の子…………私の大切な、大好きな人。

もちろん伽怜良くんのことも好きだしお友達だと思ってるよ。本当は虚空蔵くんとも仲良くなれたらいいなって思うけど…………無理に好きにならなくても仲良くならなくてもいいから、せめて虚空蔵くんを悪く言うのだけは止めてほしいんだ。

大切な人が悪く言われるのはやっぱり嫌だし悲しいから…………お願い……」


美弥姉ぇは決して語気を荒げず、諭すように優しい口調で風間に訴える。

しかしその目には強い意思が宿っており、気圧された風間は唖然とした顔で固まっている。


「……………なんで……なんで…………!!」


風間は俯いて小声で何か呟くが聞き取れない。ただ、その様子から余程堪えたのは間違いなかった。

美弥姉ぇにここまで言わせるってある意味レアな奴だよお前。


「戻りましたー」

「ただいま美弥ちゃ……てめぇ何しに来た」


そこに虚空蔵と泉が帰ってきた。風間は振り返ると鬼のような形相で虚空蔵を睨みつける。


「……お前さえ、お前さえいなければ……!!」

「あぁ?なんの話だオメェ」

「っ…………………………!!」


風間は逃げるように図書室を飛び出していった。

残された虚空蔵は怪訝な顔をしながら歩いてくる。


「…………何だったんだあいつ」

「美弥姉ぇにデートのお誘いだったんだよ」

「はぁ!?」

「安心しろって。きっちりフラれたから」


虚空蔵に経緯を話すと、呆れたようにため息をついた。


「何やってんだあの阿呆は…………」

「オレも(あったま)来たけど美弥姉ぇがぶった切ってくれたからまぁ少しはスカッとしたよ。これでちったぁ反省すればいいんだけどな」

「二人ともごめん、俺のせいで」

「全然全然っ!虚空蔵くんは悪くないよ!」

「人は恋を拗らせるとああも面倒くさい存在になるんだな……」


オレは呟いて虚空蔵と苦笑いする。本当、これで懲りればいいんだけどなぁ。


━━━━━━━━━━━

━━━━━━━

━━━━━


「………………ぺリル、気を付けていけ」

「分ぁかってる。今度こそスペクターの野郎、影も残さず消し飛ばしてやるぜ……!」

「あぁ、だがガドール殿が言っていた通りスペクターにはまだ……」

「分かってるっつってんだろぉお!!今イラついてんだあんま余計なこと言ってんじゃねーぞぉ!?」

「……すまない。では、言ってこい」

「待ってろよ…………スペクターも人間も纏めてブチ殺してやるからなぁ!!」


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━━━━━


五時間目の英語の授業も終了まであと二十分ほど。

『暇』というワードを欠伸と共に噛み殺したその時、何やら音楽の教師が慌ただしくやって来て授業をしていた英語の教師と外で何かを話す。

時間にして十秒ほど、戻ってきた教師から告げられたのは授業の中止、そして速やかな下校だった。


「みんな、授業はここまで。未確認がまた現れたみたいで、今日はもう即帰宅ということになったよ」


教師の言葉を受けてあっという間に帰宅となったが俺は違う。

XR-250に跨がり、現場を目指して走り出した。


「美弥ちゃんは、逃げ遅れた人がいたら夢芽と一緒に救助をお願い」

「うん、虚空蔵くんも十分気をつけてね」

「大丈夫、今回は奈緒から渡された〝これ〟がある」


『虚空蔵さん、これを』

『これは…………』

『超重量の剛力形態、デストラクションフォームに変身できるデストラクションスペクターオーブです。

機動力はやや落ちますが攻撃力と防御力は四フォーム随一、今回のエヴォリオルにはこれが必要になるでしょう…………それに、虚空蔵さんの戦い方には一番合ってるフォームだと思いますよ』


握っていた紫のオーブをズボンに突っ込み、現場へと急ぐ。

目的地に近付くにつれて爆発音と悲鳴が聞こえてくるようになり、黒煙や焦げた臭いも確認出来るようになってくる。そしてそこから更に進むとヤツがいた。


「オラァァァァ!!死ねや人間共がぁぁ!!

スペクターどうしたぁ!さっさと出てこいよあぁん!!?」


「いやがったな……!美弥ちゃん、夢芽!」

「うんっ! 大丈夫ですよ、こっちです!」

「落ち着いて逃げてください、大丈夫ですから!」


二人に避難誘導を任せ、エヴォリオルと相対する。向こうもこっちに気付き手当たり次第の爆撃を中断した。


「スペクタァ……!」


『デストロイヤー!』


「よぉ。今度こそギッチリやっつけてやっから覚悟しろーー変身っ!!」


『チェンジ!デストラクション!』


紫の炎が全身から噴き出し、肉体が強靭頑強な生体甲冑に包まれる。

上半身を覆う要塞の如き胴体アーマーに大型の肩アーマー、両腕のガントレットはメタリックパープルと銀で彩られ、両目は深い紫に染まる。


『Executioners of Immortal!

        DistractionForm!!』


「今度こそ死ねぇぇぇぇぇぇっ!!」


エヴォリオルの放った爆撃が命中、大爆発を起こすがデストラクションフォームの装甲にはまるで効かない。動揺するエヴォリオルを余所にベルトからブットブレイカーを引き抜くと新たな武器に変身(モーフィング)した。


俺の身の丈を超える大きさにまでなった〝それ〟は、デストラクションフォームと同じく紫と銀のカラーリングのバカデカい剣だった。


『デストラクションソード!!』


銀色に鈍く輝く片刃の刀身を振るい、ゆっくりと歩き出す。一歩踏み出すごとに超重量によって地面が沈み足跡がはっきりと刻まれる。

エヴォリオルは我に返って再び爆撃を仕掛けてくるが物ともせずに爆発と炎の中を歩いていく。


「ぎいぃぃぃぃ死ね!死ね!死ぃぃぃねぇぇぇ!!」


半狂乱で爆撃を続けるエヴォリオルだが効かないものを幾ら撃ったところで効く筈もなく、静かに一歩ずつ近付いていく。


「っ…………!!エヴォフェイリャー!!」

「あぁっ!?」


エヴォリオルに呼ばれ、現れた二体のエヴォフェイリャーが唸り声を上げて襲いかかってくる。

こいつがいるってことは、こんな化け物にされた人間が二人もいるのか……!


「てめぇよくもこんな化け物を二匹も……!」

「はっ!てめえはそいつらの相手でもしてろ!」


吐き捨てて逃げようとするエヴォリオル。


「はぁっ!!」


しかし逃げようとした直後、何処からともなく現れたファントムの跳び蹴りがエヴォリオルに炸裂した。


「逃げんなタコ」

「ファントム!」

「スペクター、そっちの二体はウチに寄越しな。あんたはそいつブッ殺せ」


言うが早いがファントムはエヴォフェイリャー二体を連れて俺とエヴォリオルから離れていった。


「…………あぁ、直ぐに終わらせてやる」


ベルトから外したオーブをデストラクションソードにセットし、必殺技待機状態に移行する。


『Set&Charge Ready For bisection!』


「ぐっ…………ちぃっ!」

「スペクタイフーン!!」

『グアルルガァァ!!』


再び逃げようするエヴォリオルをスペクタイフーンをけしかけて妨害し、その間に距離を詰めていく。

スペクタイフーンも俺の考えを理解し、後輪の一撃でこちらへ吹っ飛ばしてくれた。


「クソが…………!………………!?」

「よぉ」


『SPECTER! OVER DESTRUCTION!!』


破壊の力が満ちた剣を振り下ろし、エヴォリオルを〝地面ごと〟頭から真っ二つに両断した。


「スペクター……ギガンティックスラッシュ」


真っ二つになったエヴォリオルは結晶化し、倒れると同時に砕け散った。


「お、終わってるじゃ……うわ、なにこの地割れ」

「ファントム…………エヴォフェイリャーは?」

「どっちも倒したよ、心配すんな」

「そうか…………」


あっけらかんとした態度に複雑な気持ちを抱きつつもファントムに向き直る。こいつに聞きたいことはまだあるんだ。


「ファントム」

「あ?なに」

「お前、何者なんだ?昔の俺を知ってるような口振りだったな…………誰だ?」


俺の質問の聞いた瞬間、ファントムの纏う空気が変わった。


「誰、ね……さー誰だろうね、聞き間違いじゃない?」

「質問してんのこっちだ。俺の質問に答えろ」

「いや答える義理ないでしょ、黙秘権使っていい?」

「ナメてんのかふざけてんのか知らねーが、出来れば手荒な真似はしたくねぇぞ。美弥ちゃんと夢芽を助けてもらった恩がある」

「なら見逃してくれたっていーんじゃないの?」


このままでは埒が明かない。そう思って詰め寄ろうとした瞬間、鋭い蹴りが鼻先を掠めた。


「っっっ……!!」


後ろに下がり、臨戦態勢を取る。


「お前……!」

「しつこい男はモテないよ。じゃあね」


そう言うと走ってきたサイドカー型マシンに飛び乗りファントムは走り去ってしまった。苛立ちから出た蹴りが空を切る。

だがこれで確信した。奴は何かを知っている。知った上で隠している。


「野郎…………次は絶対ぇ聞き出す………!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


七ヶ浜家 PM22:50


「おやすみ。また明日」

「おやすみ~」

「まった明日~~」


夜。姉二人に挨拶をして二階に行こうとした時、元気のないモカが足下にやってきた。


「モカ、大丈夫か?」

「フゥ~~ン……」

「調子悪そうだよね、明日病院かな」

「明日学校休んで病院連れてっかなぁ……念のため美弥ちゃんと夢芽にLINEしとくか」


どうにも俺が帰ってきた辺りからあまり調子が良くなさそうにしていたが、この調子だと明日病院に連れていった方がいいかも知れない。

モカを抱き抱えて自室に向かい、一緒に布団に入った。


「モカ、明日病院行こうな。朝になったら少しは良くなってるといいんだけどな……」


モカを優しく撫でながら俺は眠りについた。















「主…………」












第12話、閲覧ありがとうございました。

今回のスペックはデストラクションフォームです。


《デストラクションフォーム》

パンチ力:80ton

キック力:130ton

ジャンプ力:62m

走力:100秒を9m

必殺技

スペクターギガンティックスラッシュ:450ton

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